建設作業員兼怪談屋を生業とする私は、怪談が好きで筆を取ったくせに今更怪談が怖くなってしまった。嬉々としていた頃を思い出しつつも、書き進めようとするがやはり恐ろしい。ーそんなことを、もう12年もやっている。私は、どこか異常だ。
一番最初に言うが、これは他の怪談話とは少し雰囲気の違うものだ
...続きを読むった。これは作者自身が一番最初に前書きとして公言しているのだから、私がいまさら隠すことでもないだろう。感じとしてはエッセイ+怪談話。ただし、日常の話ではテープレコーダーに吹き込まれた音声をそのまま書き起こしたかのように、ゲップがわざわざ会話文の中に登場したり、下品な部分もあったりするのでそういうのが苦手な人は少し嫌かも。まあ、読むならそれも一つの味だと思って読んだほうがいいかもしれない。ともあれ、日常の話も全部が全部そういう感じかといえば、作者の人を想う優しい気持ちだったり、考えだったりが見て取れてそこは正直に好感が持てた。怪談の方は作者は自分の腕じゃそんなにうまく書けないと作中で常々つぶやいていたが、本編が始まる前の「みだりに長い前口上」に試しだといって載せていた話からすでに恐ろしい。その後9話の怖い話が続くが、どれも不気味さとうそ寒さをまとった話ばっかりだった。読み始めは怖くないな?と思っていた話でも最後はきっちり怖かった。