あらすじ
じめじめと降りしきる長雨、闇にすだく虫の声、おかっぱ頭の市松人形──四季の移ろいを背景に、日本人だからこそ感じる恐怖や夢と現実のあわいを描く七つの短篇。これぞホラージャパネスク、これぞ怪談文芸の神髄!
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Posted by ブクログ
確かな筆力と細かい描写、そして最後の1ページでがツンとくる中編集。私はどれも大変面白かったです。特に「不登校の少女」の畳み掛ける不条理には呆然。
Posted by ブクログ
不自由や不満がないわけではないが、確かに彼らは日常を送っていたはずだったのに……。 あるふとした出来事をきっかけに彼らの日常は非日常に侵食され始めた。一度日常から離れてしまったが最後、もはや元に戻る道などない。夢と現実を行き来して、恐怖を体感する。この作者の本を読むのはこれで二冊目。前作の感想でものべたが、わっと驚かせる文体ではなく、じわじわと恐怖を与えてくる。まさに、怪談といった感じ。 ただ、前作と違いオチが「なん、だと(恐怖を伴う)」と、なる展開が多かった。この作者の話は好きだなぁ。
Posted by ブクログ
初読みの作家さんです。
いろいろな作品をお書きのようですが、こちらは怪談七編。
解説は平山夢明さんで、各短編をさすがの筆致で紹介されていますので、私は、タイトルのみ。
「廃屋の幽霊」
「庭の音」
「トンネル」
「超能力者」
「不登校の少女」
「市松人形」
「春の向こう側」
内容的には、実話怪談と言えるかな?
実話っぽい怪談です。
好きなタイプのホラーではあるんです。
怪異と思わせて、いやそれには理由があると安心させて、ラストにもう一度怖さを増してくる――三段構えの怪談。
七編とも題材はスタンダードですが、そこに物語の厚みを加えて“怪談文芸”と呼びたくなるような、日本的ホラーに仕上がっています。
Posted by ブクログ
表題作の短編を読んだだけでも、ホラーとしても良く、ホラーに関係ない部分の登場人物の心理描写としても良く描けていて面白かった。
時間による心理の変化の方は、自然でリアリティのあるものだと感心したので、著者の他の作品も読んでみたくなった。この感じならどんな物語でも大丈夫な気がする。
ホラーも気味の悪さは良く出ていて、徐々に雲行きが怪しくなっていく感じがうまく出ていた。廃屋で鉢合わせした2人が何を見たのかや、向き合わなければいけない・考えなければいけない"コト"については終わってから考えると叙述トリックのようにも思えて面白い。
途中で、2006年のものを双葉社の35周年に合わせて復刻したものだとわかったので、この本だけが良いとならないことを願っている。
すべてを読んでみると、我々のいる世界と背中合わせの異界を書くのがこの著者の作風なのかなと思った。
どの作品もシームレスに異界に入り込んでしまう怖さがある。
幽霊や怪物が出てきて脅かされるホラーとは違う、どこにでも落とし穴が待っているような、そこへ落ちたことにそのときは気づけないような気味の悪さがある。
一方で、話の幅が狭いようにも感じる(どの話も"日常から異界へ"の同じテイスト)ので、怪談だけだと数冊で飽きてしまいそうだとも感じた。