あらすじ
じめじめと降りしきる長雨、闇にすだく虫の声、おかっぱ頭の市松人形──四季の移ろいを背景に、日本人だからこそ感じる恐怖や夢と現実のあわいを描く七つの短篇。これぞホラージャパネスク、これぞ怪談文芸の神髄!
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
表題作の短編を読んだだけでも、ホラーとしても良く、ホラーに関係ない部分の登場人物の心理描写としても良く描けていて面白かった。
時間による心理の変化の方は、自然でリアリティのあるものだと感心したので、著者の他の作品も読んでみたくなった。この感じならどんな物語でも大丈夫な気がする。
ホラーも気味の悪さは良く出ていて、徐々に雲行きが怪しくなっていく感じがうまく出ていた。廃屋で鉢合わせした2人が何を見たのかや、向き合わなければいけない・考えなければいけない"コト"については終わってから考えると叙述トリックのようにも思えて面白い。
途中で、2006年のものを双葉社の35周年に合わせて復刻したものだとわかったので、この本だけが良いとならないことを願っている。
すべてを読んでみると、我々のいる世界と背中合わせの異界を書くのがこの著者の作風なのかなと思った。
どの作品もシームレスに異界に入り込んでしまう怖さがある。
幽霊や怪物が出てきて脅かされるホラーとは違う、どこにでも落とし穴が待っているような、そこへ落ちたことにそのときは気づけないような気味の悪さがある。
一方で、話の幅が狭いようにも感じる(どの話も"日常から異界へ"の同じテイスト)ので、怪談だけだと数冊で飽きてしまいそうだとも感じた。