山形浩生のレビュー一覧
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オードリー・タン氏の安定感。本書はオープンソースで成長していくプロジェクト、というのが素晴らしい。おかしかったら自分で直せと。日本のカイゼンやPDCA、なめらかな社会といった考えにはサイバネティクスが通底している。pluralityを社会に浸透させていく上でのオープンソースのマインドセットの重要性。一方、オープン性だけだと、合理性の名の下で画一化が進んで協調的創造による発展が損なわれるため、pluralityによる多様性の担保でバランスを取る必要がある。plurality money、plurality市場、うまく行くんだろうか…今は結構、性善説ベースの話に聞こえるが、時代はゆっくり彼女の言う方向に進んでいくのかなと思った。オープンソースコミュニティにもっと財政的支援を。この本の副題があるとしたらオープンソースというキーワードも入りそう。
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「うわぁ……」と、読み終わったあと、しばらく動けなくなりました。
よくある「めでたしめでたし」の物語よりも、心に深く残る「嫌な傷跡」のような読後感。
でも、その傷こそがSFの醍醐味だと思う。仕事のモヤモヤや日常の小さな悩みなんてどうでもよくなってしまうくらい、強烈なインパクト。
この「救いのなさが、人を救う」という不思議な感覚を、物語の構成に沿って振り返ってみました。
1. 導入:この世界観、意外とリアル?
「動物がしゃべる」というぶっ飛んだ設定。SFが苦手な人にはハードルが高そうですが、実はここが現実世界の鋭いメタファー(比喩)になっています。ただの説明じゃなく、丁寧な描写で「これって私たちの世界の話かも?」と思わせる仕掛けが秀逸です。
2. 第一幕:ワクワクから始まる悲劇
「人間に反抗しよう!」という豚の熱い遺言。ここで読者は一気に引き込まれます。人間を追い出し、自分たちの国を作った瞬間の達成感。でも、このワクワクが最高潮の時に、ラストへの伏線がこっそり撒かれているんですよね。
3. 第二幕:じわじわ忍び寄る「違和感」
国づくりの大変さと、動物たちの純粋な喜び。その裏で、リーダーである豚たちが少しずつ独裁の兆しを見せ始めます。「あれ、おかしいな?」という違和感が確信に変わる頃には、もうページをめくる手が止まりません。キャラクターに感情移入するほど、その変化が苦しくなってきます。
4. 第三幕:最悪で、最高のエンディング
結末は、希望か、絶望か。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のような爽快なハッピーエンドもいいですが、本作はその真逆。
・農場は豊かになったのに、動物たちの暮らしはボロボロ。
・支配者の豚たちが、どんどん嫌いだったはずの「人間」に似ていく。
このバッドエンドは、単なる「悲劇」ではありません。人間のどうしようもない業(ごう)を描きつつ、「結局誰がやっても同じなのかも」という虚無感さえも突きつけてきます。
でも、その突き放された感覚が、なぜか個人としての責任感から解放してくれるような、妙な「救い」にも感じられるから不思議です。
読んだあとに数日間引きずってしまうような「心地よい傷」を求めている人にオススメ。 -
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多元性を尊重する価値観には大いに共感できる。目指したい価値観がいわゆるPESTを網羅した形でまとめられており、論調は極めてポジティブ。類似する形態の文書は他に思いつかないほどユニーク。
ただ著者(陣)の頭が良すぎるのかもしれないが、専門用語が前提なしにどんどん使われていくので、読み手を選ぶ本である。せめて索引は欲しかったかなとも思う。
また、ITを社会が徹底的に使うべきなのは賛同するが、やはり人間の社会性に伴う分断や紛争はそう無くならないのかなとも思ってしまう。例えば、仮にプルラリティ的な投票が常識となっても、個人が僅かに抱く不満のようなものは少しずつ蓄積されていくのではないかな、とか。
加えて、規制の在り方は抽象論にとどまり、悪用に対する抑止として十分かは納得しきれなかった。
しかし上記のような議論を誰かとしてみたいと思わせてくれる時点で良書であると思った。
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私たちは誰しもが個性を持ち、一人ひとりが異なる視点と考え、死生観や宗教観、生き方や行動の仕方も生まれながらの多様な環境による影響を日々受けて生まれた時から死ぬまでそれは変化し変質し成長し進化していくだろう。
現代(2026)において、私たちはAIという皆の知識や過去の書物やあらゆる情報からの恩恵を受けることができる時代となった。これから、更に多様で多角的な影響を受け環境や人格形成から気づきの連続により複雑化していくだろう。日本において、未だAIの普及率は少ない。個人レベルでは、生成AIを使ったことがある人は2024年度時点で約26.7%と、米中などと比べてかなり低い水準にとどまり、企業では、生成AIをすでに業務利用している・導入予定の企業を合わせると6〜7割程度に達しており、一方で4割前後は利用する予定がないと答えるなど二極化も見られる。それは本著の指すところの「協働」が核となり、Pluralityは「技術の有無」よりも、「技術を介してどのように多様な人の声を集め、理解し合い、意思決定につなげるか」という“関係性のインフラ”を重視する枠組みとしての機能と活動が意識される「AIへの期待はあるが、どう使えばいいか分からず、意思決定の場にも市民や現場が十分参加できていない」という状況は、まさにPlurality型の合意形成・協働ツールが効きやすい良い土壌であると私は思う。
さて、巷で多様性を説く場で見かけられる「皆違ってみんないい」という枠で、終わる話ではなく、「違いを“そのまま”尊重するだけでなく、それをつないで新しい価値や解決策を生み出す仕組みを作ろう」というところまで踏み込み、Pluralityは「多様な人がただいる状態(ダイバーシティ)」より、「多様な人が交わり、新しい選択肢や解決策が生まれる状態」を大事にする考え方であり、本著が目指すところは「違いを橋でつなぎ、対立を創造に変える実践と技術の体系」と言うほうが正確であると言えよう。
本著はこれからの時代に沿った複雑で多様性に富んだ次世代型の視点であり、これからの常識になり得る良書であると言えよう。 -
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多様な声を生かす未来は単一の正解を求める焦燥からは生まれない。オードリー・タンとグレン・ワイルが示す「Plurality」は対立を否定せずむしろ創造の源として迎え入れる発想だ。テクノロジーは社会を分断する刃にも協働を育む橋にもなる。彼らは後者の道を選ぶ。
AIや巨大プラットフォームに権力が集中すれば人々の声は薄れ民主主義の根が弱る。だからこそ多様な意見が可視化され互いの違いを理解し合える仕組みが欠かせない。
単なる技術論ではない。投票制度、参加型議論、市場設計など社会の基盤そのものを「協働」に向けて編み直す構想である。
世界はひとつの声に支配されるべきではない。多元性を尊ぶ社会こそが孤立した未来を避け共に創る時代を切り開く。Pluralityはその羅針盤となる一冊だ。 -
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ネタバレ異星人(リーグ星人/リリスター星人)、人工臓器、時間を移動できる謎のドラッグや、独裁者や…とにかくモチーフが詰め込んであって、読んでいて楽しい。これぞ、ディック作品に求めているものなんだよなーと思う。
ストーリーラインは2つ。
1つは、ディック自身の当時の奥さん(3人目のアン。浪費家だったというけど…圧倒的にディックの方がおかしいし、、)との状況を表していて、つまり、先行きが良くないことが明らかな夫婦関係をどうするのか?という葛藤。
もう1つは、人類が侵略されてしまいそうな状況。
ものすごく個人的なお話と、人類の存亡がかかった大きいお話が並行して進む。
最後、主人公はドラッグで脳がやられてしまって介護が必要な妻…しかも関係は劣悪…に対してどうするべきかをアンドロイド(厳密には自律機構というもので…違うけどまぁ一旦)に尋ねる。機械の答えは、自分なら離婚はしないと。その理由は
人生はそういうふうに構築された現実設定で構成されているから。彼女を見捨てるというのは、そういう現実に耐えられないというに等しいから。独特のもっと優しい条件を与えてもらわないとダメだというに等しいから。
とのこと…
主人公のエリックは、確かにその通り。妻と別れずにいようと思うと答える。機械は、素晴らしいですね。あなたは良い人ですねと返し、エリックはありがとうと答えて妻の元へ向かう。
実際には、主人公は結局どうしたのか、までは描かれてはいない。ちなみに、アンとディックは離婚した。
要は人生をあるがままに受け入れて耐えなさい、良い人でいなさいというド正論をぶつけてくる機械。無性の愛(アガペー)、人生の苦難を受容すること。つまり、キリスト教的な回答に思える。
エリックが無機物から神託を得た…人間性を機械によって与えられた、とまでは読みすぎてるのかな?
怪しいドラッグ、発達した未来の文明、キーキーやかましくて感情をコントロールできない女。翻弄されまくった主人公の決意。意味ありげに出てきた割に特に解説されないあれこれ。ディックらしい内容。だから好き。
まぁ、わたしなら即離婚。 -
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サピエンス全史を読む前に予習をしておこう、と読んだ一冊。本書の内容を漫画化している訳ではなく、社会に出た後に働くことに悩み、世間との乖離に焦る女性にフォーカスした別のストーリーを通じて、サピエンス全史が描く内容を分かりやすく伝えている。
今生きている資本主義社会も、中世で起きた価値観の変化が長期間続いてるに過ぎないし、その価値観が正義であることもない。主人公の女性は最終的に周囲の考えに囚われず、好きな道を選ぶ。
「サピエンスの勝因はフィクションを信じる力」
「私達が直面している真の疑問は、『私たちは何になりたいのか?』ではなく、『私たちは何を望みたいのか?』かもしれない。
虚構の中で生きていくならば、その事実を受け入れ、縛られずに自分の幸福を追求するべきなのかもしれない。自分自身を俯瞰で見る契機になった。 -
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PLURALITY多元性 オードリータン他
サイボウズ式ブックス
本文だけでもこの550ページに及ぶ
紙による本は3,000円だけれど
本来の公式サイトでダウンロードすれば
日々更新する生きた最新版に無料で参加できる
時代を先取りした最初の一行目から
「目から鱗」の異次元では無いか‼︎
コンピュータもインターネットもSNS も
軍事用に開発されたものだしそのルールや仕組みを作る管理者がそこから生まれる情報も富も権力も独り占めして格差社会を広げ中央集権体制を広げてきた
しかし一方でシンギュラリティと呼ばれるAIが管理者の手を離れて自己管理するようになると民衆も解放されて
競争原理社会から逃れお互いの分断が解けそれぞれの多様な存在を確認し合い相乗効果を発揮して切磋琢磨の環境を生み出すだろうと私は思う
さて
この本を囲むコミュニティではどこへ向かうことになるだろうか?
二章では突然台湾の歴史が語られだし
それがあまりに綺麗事なのに驚きをおぼえ
流し読みして先へと進む
三章では本題であろう多元生に踏み込む
この分厚い本が言いたいのはつまり
この相対性三次元時空間には何一つ決まったものなだ無く常に全てが有機的に変化をしつつも全体と部分がフラクタルに調和していると言いたいのだろう
神も仏も悪魔も全ての答えを含んだまま
1成る無限を創造していると言うことなのだろう
この本はそこに辿り着く具体性を持ったプラットフォームをここに作り
みんなで模索し続けて行こうと言う提案なのだろう -
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ウィリアム・バロウズ『クィア』を読んだ。メキシコシティに暮らすヤク中でゲイの中年男性リーと、若く美しい恋人アラートンとの短い恋愛の話。
メキシコシティの社会情勢からくる荒廃した治安の悪さの描写と、そのなかに突然現れる美しいアラートン。男女の恋愛話なら、荒んだ日常にいきなり魅力的な人物が登場するのはよくあるフィクションの始まり方だと思う。
作中には、いわゆるゲイバー(文脈的にはハッテン場的な意味合いに近い)で性行為の相手を探す場面がたびたび出てくる。そして、リーがアラートンとの関係を切実なまでに保とうとするのは、当時の同性愛者を取り巻く社会的承認の欠如と出会いの困難さから来るのではないかと思った。
もともと『おかま』というタイトルで1985年に出版されたが、物語としては1953年の小説『ジャンキー』の続編であることを考えると当時としてはかなり先駆的な作品でもある。
リーはヤク中で情緒も不安定だし、かなり口汚くて卑俗な言葉をまくし立てたりもするのだけど、映画『クィア』ではあのダニエル・クレイグが演じるというのだから、どういうリーになるのか楽しみにしている。まだ居住地では公開されていないので、公開されたら絶対に観に行く。