山形浩生のレビュー一覧

  • 服従の心理

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    このアイヒマン実験について著者のミルグラムは、参加者の良心と権威に対する服従についての葛藤の場として見ている。一方で日本語訳者は、参加者の社会に対する信頼の度合いと、なにがより高位の規範であるかについての判断の場として見ている。これら実験に対する向き合い方の違いは、人の理性について理解しようとする際の方向性の違いだけでなく、アウシュビッツの存在がそれぞれに与えた衝撃の受け止め方の違いのように感じた。
    前者の考え方の落とし穴は、人の良心を信じる者がアイヒマン実験の結果を知ったときに、その結果を人の性悪説の証明であるかのように感じ、実験のプロセスを含めて強い拒否反応を示すことにある。また後者の考え方の落とし穴は、その思考にのみ拘泥していてはアウシュビッツを防ぐための倫理的な防波堤を構築しえないことにある。人の本質を性善と性悪に簡単に分類できるものではないだろうし、また、倫理的判断を各人の判断や時代の判断にまる投げできるものでもないだろう。
    正常と異常の判断または、優位と劣位の判断はその定義からして、あくまでも正常な側や優位な側が行わざるを得ないことを肝に命じながら、前者の考える倫理と後者の考える法規範をもって、人の行動に制約をかけることの大切さをあらためて教えられる。

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    2018年06月06日
  • 9 プリンシプルズ 加速する未来で勝ち残るために

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    ネタバレ

    人生100年時代と呼ばれ、健康な期間も延びている中で、かつ、変化が早いという最悪の組み合わせに思えるような時代で、大げさでなく「生き残る」ためには、一言で言えば適した変化ができるということなのだろう。

    ネットワークや学習、プルや創発、回復力、というワードからも確実に読み取ることができ、変化のための失敗の費用は確実に下がっているから、どんどん実践していこう、というもの。(分野によるが)

    そのためには「面白い」ということを思える必要があるし、複雑性やカオスな状況にも対応できる必要がある。ワード以上にタフな印象を持つ。

    一方で、「必要な時に必要なものプルできる」ということは、逆に言えば自分もそのネットワークの一部として何かをgiveすることができる必要がある。

    これは一過性のものではなく、やっぱり磨き続ける必要がある。何かしら自分の武器となるものを。

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    2018年04月08日
  • 9 プリンシプルズ 加速する未来で勝ち残るために

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    触れている分野が広いし、訳のせいなのか少し難解だったけど、これからのヒントがいっぱい詰まっている。これまでも21世紀がどうあるべきか発信されてきた多様性に始まる新たな創造性の創出について、研究・技術の視点で改めてそうなんだと再認識させられる内容だった。日本の大企業が足りない視点(きっと多くは自らは変えられないけど)、大学などの研究機関の必要な視点、考えさせること盛り沢山であった。でも、ひとつ確実に言えること、世の中20世紀より面白くなる。そういう高揚感が読後に残った。帯にもあるけど何度も読み返すべき本なのだ。

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    2017年09月25日
  • 9 プリンシプルズ 加速する未来で勝ち残るために

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    現代のイノベーションの仕組みは実に多様化している。それゆえ技術オンリーではNGだし、用途提案力だけでもNG。双方を併せ持ち、そのために必要なリソースの組み合わせを考えることができ、しかもモノを生み出した結果、用途環境をどのように変えるかを見通せる力まで要求される。日本でも昨今「異業種融合」とか「医工連携」といった分野の複合化が一般的になってきているが、その結果生み出されるアウトプットに対しての展望力はどうだろうか?MITの方が上とか下とか、そういう議論ではなく、本書を教訓に一度考えてみる価値があるということを言いたい。

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    2017年09月17日
  • ティモシー・アーチャーの転生〔新訳版〕

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    山形浩生さんの訳で読みました。とてもおもしろかった。ジョンレノンの亡くなったニュースはそろばん塾で聞いたなーとか。そんときそもそもビートルズってまだ生きてるんだくらいに思ってたこととか。シャタックアベニューの中華料理屋とか言われるともうなんか懐かしくて泣けるし。

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    2017年03月18日
  • 21世紀の不平等

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    ピケティの本をさらに深堀りしたような本と認識している。未来に関心がある人であれば、まず読んでおいて損はないと思われる。

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    2016年10月25日
  • ヴァリス〔新訳版〕

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    初めて読んだ時は「釈義」の内容についていくのに必死だったけど、読み直す内に、これはディックにとって非常にパーソナルな小説だったのではないかと思うようになった。ソフィアがリピドン協会の三人に語る言葉(実に感動的!)は、書いている自らに檄を飛ばしているように見える。人間の可能性と、その善なるところを信じる。ディックからの人間讃歌、それが『ヴァリス』。

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    2016年05月20日
  • 服従の心理

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    人間が社会的な生物だからこそ権威への服従という性向は進化の過程で要請されたのだろう。またこの実験の詳述を見るに改めて観察とは対象への影響を及ぼさずにはいられないということを感じる。
    人格とは真空状態で観察できるものではなく、
    人間関係のネットワークにリンクする関係体としかありえないのだなあ

    あとがき訳者の「蛇足」のミルグラム批判、一番クリティカルなのはやはり人間にはそもそも攻撃的性向があるのでは?という点。
    非人道的な行いができるのはまさに攻撃対象たる他者が
    もはや人間とは認識されていないゆえなのだろうか。

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    2015年12月19日
  • 服従の心理

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    組織や経営の研究、または大学で学生が獲得すべきスキルとして権威や服従のシステムを理解し、社会に出た中で、役立てられるような教育の仕組みを考えられるのかもしれない。紛れも無い名著であると感じた。

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    2015年05月29日
  • お金の改革論

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    今リーマンショック後に世界の中央銀行で行われている、量的緩和政策についての重要な要素となる、インフレとデフレと貨幣量との関係が書かれており、本書を手に取り熟読されたら、何故デフレよりもインフレの方がマシなのか。
    お金とは何かと云う考えがスッキリするだろう。

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    2014年10月13日
  • 雇用、利子、お金の一般理論

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    本文の内容を読解する事は難しくないのだが、書き方から言葉の意味や概念を理解するのが大変な気がする。私の語彙の無さも問題なのだろうが…

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    2014年06月17日
  • そして日本経済が世界の希望になる

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    「アベノミクス」という言葉を耳にしたことがないという人はもはやいないと思います。ではアベノミクスって具体的にどのような戦略なのかを語れるか、というとかなりの方が「難しいよね」と言うのではないでしょうか。
    そのような方に読んで頂きたいと思いました。

    ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授の名は、ある程度、経済や金融に親しんでいる人にはなじみがあるかと思いますが、一般の方に定着しているほどではないと(私の肌感覚ですが)思います。

    本書は、口述されているせいか、とてもわかりやすいです。

    アベノミクスの功罪が議論される中、どちらに手を挙げるにしても、アベノミクスをきちんと理解していなければなりません。現在の経済政策や金融政策は、どういう理論を基にし、どういうゴールを目指しているのかを知るために、本書は一助になると思います。

    逆に、普段から経済ニュースに触れ、エコノミストの主張に耳を傾けている方には、平易すぎて面白くないかもしれません。

    本書を読んでの感想については、私個人的には、財政出動のやり過ぎはごめんだと思ってはいるものの、ケインズ派であるクルーグマン教授の主張も一理あるなとも思います。

    期待が人を動かし、その結果、実体経済が動くのであり、まずは将来に期待を寄せることが大切だとのこと。確かにそうだと思います。人々の期待が変わらず将来への不信感だらけであれば、どんなに頑張っても経済は良くならないからです。

    ケインジアンへの批判に対して、反論を説明していますので、アベノミクスを快く思わない方も反対意見として一読されることをお勧めします。

    なるほどと思った個所は、「平常時は現場の人の持論で良く、非常時には学者の意見が参考になる」という記述です。確かに、実務面での経験が生かされるのは、それに似た状況を経験した現場の人間です。誰もが未経験の環境では、学術研究に耳を傾けることも必要だな、と気づかされました。

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    2014年02月19日
  • さっさと不況を終わらせろ

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    久しぶりに読んだ経済書。平易にくだけた形の文章も多く、読みやすい一冊だった。マクロ経済学の面白さを感じることができた。
    アメリカの経済政策が論点の中心であったが、ヨーロッパの不況のメカニズムに関する解説が分かりやすく印象に残った。

    次は、財政規律を厳格とせねばならないという立場の人の本も読んで、比較をしてみたいと思う。

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    2013年10月14日
  • そして日本経済が世界の希望になる

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    クルーグマンによるアベノミクスの評価。ざっと7割くらいは肯定的な意見であるが、そうでないところに対してはそれぞれ独自のアドバイスを提供している。新書なので、全体的に細かい議論は抜きで主張ばかりか書かれているが、それでも十分な説得力があった。
    ここはらは感想。個人的にはだいぶマクロ経済学の知識が抜けてしまっているので、あまり批判的に(というか理論と関連づけて)読めなかったのが残念でならない。おそらく、クルーグマンの議論も基本に基づいたものばかりであるのは何となくわかるので、もう一度マクロ経済学をしっかり復習した後で読み返したい。

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    2013年09月20日
  • さっさと不況を終わらせろ

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    どちらか択一ではないが、「社会は分配であり、政治は平等を実現する」と思った事と、データをただしくみながら何かをかえる勇気をもつならば、ケインズ派の政策を考えた方がいいのは確かだと思ったー。

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    2013年03月27日
  • さっさと不況を終わらせろ

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    ノーベル経済学者のクルーグマン教授いわく、デフレを脱却して景気回復するには、ケインズ的な財政出動で赤字国債を大量発行し、公共投資を行うしかない! 過去20年にわたってデフレの不景気が続き、ゼロ金利で金利操作もできない流動性の罠そのものにはまっている日本で、公共投資を減らして、事業仕分けで節約して、縮こまっていてどうする! 

    巨額の財政赤字が将来のツケになるかって?? 戦後アメリカが負った1250億ドルの債務は、当時のGDPの120%に達していたが、今では1250億ドルなどGDPの1%にすぎない。つまり、アメリカは赤字国債の借金を全く返さずに、15兆ドルの経済規模に成長した。要は、経済成長とインフレで、国の借金はチャラになったわけである。 日本だって、明治維新のときの赤字国債依存は80%もあったし、戦時中もGDP比200%近い債務を負っていた。国はその借金を返したことはないのである。

    インフレになったら購買力は下がるけど、デフレで額面の賃金カットをされるより、よほどマシだ。毎年下がる給料で280円の牛丼食べるより、毎年少しづつでも昇給して、400円の牛丼食べたほうが、労働者にとっては幸せだろう。計算するとバカかもしれないが、お金の購買力がインフレで下がっても、会社や上司に文句を言う労働者はいない。 

    ギリシャやスペイン、イタリアは自国通貨を放棄してしまったため、通貨を切り下げることができないから、労働者の賃金カットでしか競争力を回復できない。ギリシャやスペインは自国の中央銀行を持たないから、デフォルトの恐れがあって、投資家がパニックになる。 日本は自国通貨であることが決定的に違う。アメリカではFRB、や日本では日銀(中央銀行)が赤字国債を買い続ければ、国家のデフォルトなど起こらない。 日本の国債は、国の債務がGDP比200%に達していても、10年もの国債の金利が1%にすぎないのは、デフォルトのリスクがないからだ。

    日本がジンバブエみたいなハイパーインフレになるかって??? 

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    2012年12月15日
  • さっさと不況を終わらせろ

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    この本を読んで大規模な財政出動と大胆な金融緩和の重要性が理解できた。

    日本の政治家、官僚、日銀、そして国民。

    力を合わせて、さっさと不況を終わらせよう!

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    2012年11月22日
  • CODE VERSION 2.0

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     サイバー空間というものが非常に曖昧であり、その曖昧さが実体空間の法の持つ曖昧さをも浮き彫りにした。それからどうするのか、というのがここでの議論となるのだが、コードがサイバー空間の法であり規制でもあるが規範ではないという点を理解して議論しなければならない。また、規制するのは法だけでなく市場も規制するという点も理解しておかなければならない。さらに「コードを書くのは誰か?」という問題もあって一筋縄ではいかない。そして「自由とは何か?」「民主主義とは何か?」という問題にまで発展してしまう。
     サイバー空間における法のあり方についてのかなり深い議論がなされており、また範囲も非常に広いため一読しただけではなかなか理解するのは難しい。しかし読み終わった後の名状しがたい不安感こそが筆者の求めるまず最初のものではないかとも思う。

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    2012年11月11日
  • さっさと不況を終わらせろ

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    現在の不況の原因は需要の不足であり、対策は財政赤字の解消ではなく需要の創出であることは明らかだ。しかし、財政赤字対策のために支出の削減や消費増税が先行し、公共投資という声がどの政治家からもあがらない。
    本書の主張は直情的であり明確だ。かなり辛口で面白い。米国の経済政策について書かれたものだが、日本こそ参考にして欲しい。最近の日銀の余りにもリスクを恐る対応を見ていると、永遠にデフレスパイラルから抜け出せない気がしてくる。

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    2012年11月04日
  • さっさと不況を終わらせろ

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    ノーベル経済学賞も受賞したクルーグマンの最新著書。リーマンショック以来の経済の低迷に対する処方箋を平易な文章で訴えるもの。主張は単純明快で、政府はより積極的な財政出動を行うべきであり、中央銀行は更なる金融緩和を行おうというもの。議論の中心はあくまで米国経済であるが、ギリシアなど南欧諸国の債務危機に陥った欧州と失われた10年(20年?)に苦しむ日本といった先進諸国全てに当てはまるものとして議論を展開している。著者の現状認識は米国においては、オバマ政権成立後のリーマンショックに対する財政出動があまりに小さかったこと、バーナンキ率いるFRBの実施した量的緩和が中途半端であるとしている。バーナンキに対しては日銀の金融緩和が不十分だと学者時代に主張していたのに、FRB議長になった当の本人が学者時代の主張を実行できていないと痛烈に批判されている。一方で、これを逆手に緊縮財政と金利上昇を目論む人々(ようは米国内の共和党支持者)を彼らの理論が如何に間違っているかを彼らの主な主張を取り上げ論破を試みている。
    読み物としては基本的な経済の理論(高校の政治経済で習う程度の知識)を持ち合わせれば容易に理解できる内容であり多くの人に勧めることのできる一冊である。

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    2012年10月17日