山形浩生のレビュー一覧
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このアイヒマン実験について著者のミルグラムは、参加者の良心と権威に対する服従についての葛藤の場として見ている。一方で日本語訳者は、参加者の社会に対する信頼の度合いと、なにがより高位の規範であるかについての判断の場として見ている。これら実験に対する向き合い方の違いは、人の理性について理解しようとする際の方向性の違いだけでなく、アウシュビッツの存在がそれぞれに与えた衝撃の受け止め方の違いのように感じた。
前者の考え方の落とし穴は、人の良心を信じる者がアイヒマン実験の結果を知ったときに、その結果を人の性悪説の証明であるかのように感じ、実験のプロセスを含めて強い拒否反応を示すことにある。また後者の考え方の落とし穴は、その思考にのみ拘泥していてはアウシュビッツを防ぐための倫理的な防波堤を構築しえないことにある。人の本質を性善と性悪に簡単に分類できるものではないだろうし、また、倫理的判断を各人の判断や時代の判断にまる投げできるものでもないだろう。
正常と異常の判断または、優位と劣位の判断はその定義からして、あくまでも正常な側や優位な側が行わざるを得ないことを肝に命じながら、前者の考える倫理と後者の考える法規範をもって、人の行動に制約をかけることの大切さをあらためて教えられる。 -
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ネタバレ人生100年時代と呼ばれ、健康な期間も延びている中で、かつ、変化が早いという最悪の組み合わせに思えるような時代で、大げさでなく「生き残る」ためには、一言で言えば適した変化ができるということなのだろう。
ネットワークや学習、プルや創発、回復力、というワードからも確実に読み取ることができ、変化のための失敗の費用は確実に下がっているから、どんどん実践していこう、というもの。(分野によるが)
そのためには「面白い」ということを思える必要があるし、複雑性やカオスな状況にも対応できる必要がある。ワード以上にタフな印象を持つ。
一方で、「必要な時に必要なものプルできる」ということは、逆に言えば自分もそのネットワークの一部として何かをgiveすることができる必要がある。
これは一過性のものではなく、やっぱり磨き続ける必要がある。何かしら自分の武器となるものを。 -
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「アベノミクス」という言葉を耳にしたことがないという人はもはやいないと思います。ではアベノミクスって具体的にどのような戦略なのかを語れるか、というとかなりの方が「難しいよね」と言うのではないでしょうか。
そのような方に読んで頂きたいと思いました。
ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授の名は、ある程度、経済や金融に親しんでいる人にはなじみがあるかと思いますが、一般の方に定着しているほどではないと(私の肌感覚ですが)思います。
本書は、口述されているせいか、とてもわかりやすいです。
アベノミクスの功罪が議論される中、どちらに手を挙げるにしても、アベノミクスをきちんと理解していなければなりません。現在の経済政策や金融政策は、どういう理論を基にし、どういうゴールを目指しているのかを知るために、本書は一助になると思います。
逆に、普段から経済ニュースに触れ、エコノミストの主張に耳を傾けている方には、平易すぎて面白くないかもしれません。
本書を読んでの感想については、私個人的には、財政出動のやり過ぎはごめんだと思ってはいるものの、ケインズ派であるクルーグマン教授の主張も一理あるなとも思います。
期待が人を動かし、その結果、実体経済が動くのであり、まずは将来に期待を寄せることが大切だとのこと。確かにそうだと思います。人々の期待が変わらず将来への不信感だらけであれば、どんなに頑張っても経済は良くならないからです。
ケインジアンへの批判に対して、反論を説明していますので、アベノミクスを快く思わない方も反対意見として一読されることをお勧めします。
なるほどと思った個所は、「平常時は現場の人の持論で良く、非常時には学者の意見が参考になる」という記述です。確かに、実務面での経験が生かされるのは、それに似た状況を経験した現場の人間です。誰もが未経験の環境では、学術研究に耳を傾けることも必要だな、と気づかされました。 -
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ノーベル経済学者のクルーグマン教授いわく、デフレを脱却して景気回復するには、ケインズ的な財政出動で赤字国債を大量発行し、公共投資を行うしかない! 過去20年にわたってデフレの不景気が続き、ゼロ金利で金利操作もできない流動性の罠そのものにはまっている日本で、公共投資を減らして、事業仕分けで節約して、縮こまっていてどうする!
巨額の財政赤字が将来のツケになるかって?? 戦後アメリカが負った1250億ドルの債務は、当時のGDPの120%に達していたが、今では1250億ドルなどGDPの1%にすぎない。つまり、アメリカは赤字国債の借金を全く返さずに、15兆ドルの経済規模に成長した。要は、経済成長とインフレで、国の借金はチャラになったわけである。 日本だって、明治維新のときの赤字国債依存は80%もあったし、戦時中もGDP比200%近い債務を負っていた。国はその借金を返したことはないのである。
インフレになったら購買力は下がるけど、デフレで額面の賃金カットをされるより、よほどマシだ。毎年下がる給料で280円の牛丼食べるより、毎年少しづつでも昇給して、400円の牛丼食べたほうが、労働者にとっては幸せだろう。計算するとバカかもしれないが、お金の購買力がインフレで下がっても、会社や上司に文句を言う労働者はいない。
ギリシャやスペイン、イタリアは自国通貨を放棄してしまったため、通貨を切り下げることができないから、労働者の賃金カットでしか競争力を回復できない。ギリシャやスペインは自国の中央銀行を持たないから、デフォルトの恐れがあって、投資家がパニックになる。 日本は自国通貨であることが決定的に違う。アメリカではFRB、や日本では日銀(中央銀行)が赤字国債を買い続ければ、国家のデフォルトなど起こらない。 日本の国債は、国の債務がGDP比200%に達していても、10年もの国債の金利が1%にすぎないのは、デフォルトのリスクがないからだ。
日本がジンバブエみたいなハイパーインフレになるかって??? -
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サイバー空間というものが非常に曖昧であり、その曖昧さが実体空間の法の持つ曖昧さをも浮き彫りにした。それからどうするのか、というのがここでの議論となるのだが、コードがサイバー空間の法であり規制でもあるが規範ではないという点を理解して議論しなければならない。また、規制するのは法だけでなく市場も規制するという点も理解しておかなければならない。さらに「コードを書くのは誰か?」という問題もあって一筋縄ではいかない。そして「自由とは何か?」「民主主義とは何か?」という問題にまで発展してしまう。
サイバー空間における法のあり方についてのかなり深い議論がなされており、また範囲も非常に広いため一読しただけではなかなか理解するのは難しい。しかし読み終わった後の名状しがたい不安感こそが筆者の求めるまず最初のものではないかとも思う。 -
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ノーベル経済学賞も受賞したクルーグマンの最新著書。リーマンショック以来の経済の低迷に対する処方箋を平易な文章で訴えるもの。主張は単純明快で、政府はより積極的な財政出動を行うべきであり、中央銀行は更なる金融緩和を行おうというもの。議論の中心はあくまで米国経済であるが、ギリシアなど南欧諸国の債務危機に陥った欧州と失われた10年(20年?)に苦しむ日本といった先進諸国全てに当てはまるものとして議論を展開している。著者の現状認識は米国においては、オバマ政権成立後のリーマンショックに対する財政出動があまりに小さかったこと、バーナンキ率いるFRBの実施した量的緩和が中途半端であるとしている。バーナンキに対しては日銀の金融緩和が不十分だと学者時代に主張していたのに、FRB議長になった当の本人が学者時代の主張を実行できていないと痛烈に批判されている。一方で、これを逆手に緊縮財政と金利上昇を目論む人々(ようは米国内の共和党支持者)を彼らの理論が如何に間違っているかを彼らの主な主張を取り上げ論破を試みている。
読み物としては基本的な経済の理論(高校の政治経済で習う程度の知識)を持ち合わせれば容易に理解できる内容であり多くの人に勧めることのできる一冊である。