異形、というと高級感すらあるが、ゲテモノ、見世物芸人、不適応者、エグい、どうしょうもない、といった重層的意味を持たせているはずだ。
(オタク、マニア、といったニュアンスはまだなかったころの小説だ。)
「存在しているだけで稼げる」という素晴らしいアイデアから畸形を作り上げる、という奇矯な家族小説からス
...続きを読むタート。
フツウを見下すという価値の顛倒。囲いの中でのマジョリティとマイノリティ。
やがて カリスマへの傾倒が始まる。
躰の歪みだけでなく、家族の兄に対する/フツウのフリークスに対する傾倒という精神の歪み(内面のフリークス)でもある。
ここにおいて話は家族を超えて集団心理を描き出す。
その反面、語り手オリーのうちでは、愛される、から、愛する、へ思考が変容していく。
彼女だけは家族小説を醸成し続けていたのだ。
訪れる悲劇。
時間を経て、移動し続ける生活から、定住生活へ。
最後には娘を思う母、兄を卑小に再現する女から娘を守りたい、という家族小説に、見事着地。
奇想と構成の奇跡的な融合が、この素晴らしい小説を成立させた。