あらすじ
麻薬中毒者リーは「触れあい」を求めて近づいた青年アラートンとともに南米へと旅に出る……笑いにまみれた孤独と喪失感、デビュー直後に執筆されながら長らく封印されてきた告白的純愛小説。
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Posted by ブクログ
ウィリアム・バロウズ『クィア』を読んだ。メキシコシティに暮らすヤク中でゲイの中年男性リーと、若く美しい恋人アラートンとの短い恋愛の話。
メキシコシティの社会情勢からくる荒廃した治安の悪さの描写と、そのなかに突然現れる美しいアラートン。男女の恋愛話なら、荒んだ日常にいきなり魅力的な人物が登場するのはよくあるフィクションの始まり方だと思う。
作中には、いわゆるゲイバー(文脈的にはハッテン場的な意味合いに近い)で性行為の相手を探す場面がたびたび出てくる。そして、リーがアラートンとの関係を切実なまでに保とうとするのは、当時の同性愛者を取り巻く社会的承認の欠如と出会いの困難さから来るのではないかと思った。
もともと『おかま』というタイトルで1985年に出版されたが、物語としては1953年の小説『ジャンキー』の続編であることを考えると当時としてはかなり先駆的な作品でもある。
リーはヤク中で情緒も不安定だし、かなり口汚くて卑俗な言葉をまくし立てたりもするのだけど、映画『クィア』ではあのダニエル・クレイグが演じるというのだから、どういうリーになるのか楽しみにしている。まだ居住地では公開されていないので、公開されたら絶対に観に行く。
Posted by ブクログ
もしかしたら初バロウズかもしれません。もうパッとしないのしないのって、本当にパッとしないオジサンの身勝手な一方通行のナルシスティックな愛を、ひと時の恋の思い出に変換したみたいな…どうしようもない激甘(歪んだ苦い甘み)ラブロマンスなので、もしかしたら太宰好きとかに良いのかもしれませんし、中島らも好きなら問題なく楽しめると思います。
訳は滑らかでどこも止まることなくさらさらと進みます。読みやすい。