あらすじ
飲んだくれの農場主ジョーンズを追い出した動物たちは、すべての動物は平等という理想を実現した「動物農場」を設立したが、指導者であるブタは手に入れた特権を徐々に拡大していき……。権力構造に対する痛烈な批判を寓話形式で描いた風刺文学の名作。『一九八四年』と並ぶオーウェルもう一つの代表作、新訳版
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人間から虐げられていた動物たちが反乱を起こして理想の共和国を築こうとするものの、指導者となった豚の独裁によって、結局はかつてと変わらない(あるいはそれ以上に過酷な)支配体制へと変質していく過程を描いた寓話小説
【登場人物(キャラクターとメタファー)】
①指導者の豚たち(支配階級)
・老メジャー(Old Major):カール・マルクス、ウラジーミル・レーニン
12歳の中年豚(ミドルホワイト種)
賢く穏やかな外見で、すべての動物から深く尊敬されていた
人間による支配を「泥棒」と呼び、動物たちに反乱を説いて世を去る
老メジャーが語った「人間を排除すればすべての動物が平等で豊かな社会を築ける」という理想思想(動物主義)は、マルクス主義(共産主義思想)そのもの
・ナポレオン(Napoleon):ヨシフ・スターリン(ソビエト連邦の独裁者)
バークシャー種の大きな雄豚
獰猛な外見で、寡黙だが「自分の考えを押し通す」男として定評があった
密かに犬たちを獰猛な護衛犬へと育て上げ、武力によって農場を独裁支配する
都合の良い「歴史の改ざん」や武力(犬)を用いた「大粛清」によって反対派を次々と処刑し、自らを神格化していった過程が、ソビエトを武力で支配したスターリンと重なる
・スノーボール(Snowball):レフ・トロツキー
ナポレオンよりも陽気で、早口の演説が得意な独創的な豚
風車建設を計画し、動物たちのために数々の「委員会」や読み書きクラスを組織するなど、知的なリーダーシップを発揮する
スノーボールが農場を追放された後、すべてのトラブルや陰謀の責任をなすりつけられ、歴史から彼の功績(「牛舎の戦い」での活躍など)が改ざんされて消し去られた描写は、スターリンとの権力闘争に敗れてソ連を追放されたトロツキーと重なる
・スクイーラー(Squealer):ソ連のプロパガンダ機関(政府機関紙「プラウダ」など)
小柄で太った豚
甲高い声で喋り、難しい説明をする際には尻尾を振って左右に跳ね回る、極めて優れた説得力を持つ演説家
他の動物からは「黒を白に変えることができる」と評されている
指導者(ナポレオン)のいかなる横暴や贅沢も「すべて動物たちのためである」と言葉巧みに美化し、無知な労働者たちを洗脳し、壁の戒律を都合よく書き換え続けた「情報統制と世論誘導」の象徴
②農場の動物たち(労働者・一般市民)
・ボクサー(Boxer):従順で真面目な「プロレタリアート(労働者階級)」
巨大で非常に力強い馬車馬
少し頭は悪いが、粘り強く真面目な性格で、「俺がもっと働けばいい」「ナポレオンは常に正しい」という口癖のもと、風車建設などの重労働を身を粉にして支え続けた
ボクサーは、革命の理想を信じて国家に尽くしたものの、最後は年金も与えられず、豚たちによって馬の解体業者へ売り飛ばされてしまう、最も悲劇的な搾取の象徴
・クローバー(Clover):違和感を抱きつつも、抵抗の手段を持たない「一般市民層」
ボクサーを親身に看病する優しい中年期の雌の馬車馬
現状の農場の変化(粛清や不平等)に漠然とした悲しみや違和感を抱くが、自分の言葉でそれらを表現する知性(ボキャブラリー)が足りず、従うことしかできない
現状への批判的な思考力やそれを表現する言語能力を奪われ、全体主義に絡め取られていく無力な一般大衆を象徴している
・ベンジャミン(Benjamin):冷笑的で沈黙を守る「知識人・高齢市民」
気難しく滅多に笑わない、農場で最も年寄りのロバ
豚と同じくらい字が読める知性を持つが、「文字を読めて得なことは何もない」と静観し、反乱に対しても冷淡
「状況が良くなろうが悪くなろうが、人生の厳しさは変わらない」という諦念を持ち、全体主義の欺瞞を見抜きながらも何もしようとしない冷笑的な層を象徴している
しかし、親友のボクサーが解体業者へ連れ去られる土壇場になって初めて、必死に声を上げて周囲に警告を促した
・モリー(Mollie):革命に非協力的な「プチブルジョワ(中産階級・資産家層)」
バカで白い雌馬
働くことよりも、角砂糖を食べることや、たてがみに人間からもらった赤いリボンを飾ってうっとりすることに関心がある
反乱後、労働を嫌がって農場から脱走し、別の人間に飼われて満足そうに暮らした
革命運動によってそれまでのささやかな特権や贅沢を奪われることを嫌い、革命から離脱して西側諸国や旧体制の庇護へと逃れていった亡命者たちの象徴
・モーゼス(Moses):宗教(ロシア正教会)
ジョーンズ氏のペットだった飼いならされた渡りガラス
働こうとせず、死後にすべての動物が行くという神秘の国「シュガーキャンディーマウンテン(砂糖菓子の山)」についておとぎ話を聞かせる
豚たちは彼の話を「大嘘」と叩きつつも、なぜか農場に置くことを許し、ビールを支給し続ける
過酷な現実から民衆の不満をそらすための「天国の話(阿片としての宗教)」の象徴
初期の革命政府(豚たち)はこれを否定するが、やがて独裁が深刻化すると、労働者の不満のガス抜きのために教会・宗教勢力(モーゼス)を黙認し、体制維持に利用した
③周辺の人間たち(対外的な国家)
・ジョーンズ氏(Mr. Jones):ロシア皇帝ニコライ2世、旧支配階級・資本家
マナー農場の元の主
酒に溺れて荒れ、動物たちに餌をやらずに追放される
搾取を繰り返し、最後は自らの怠慢と無能によって国(農場)を追われ、二度と戻れなくなった旧体制の象徴
・ピルキントン氏(Mr. Pilkington):イギリスやアメリカなどの「西側民主主義国家」
隣の「フォックスウッド農場」の主
農場は荒れているが、本人は気楽で、釣りや狩りに大半の時間を費やしている
物語の最後、ピルキントンとナポレオンが和解のゲーム(テヘラン会談)を行いながらも、お互いに「スペードのエース」を同時に出して大喧嘩になるラストシーンは、第二次世界大戦後の米ソ冷戦の到来を予言している
・フレデリック氏(Mr. Frederick):アドルフ・ヒトラー(ナチス・ドイツ)
隣の「ピンチフィールド農場」の主
小規模ながらもしっかり手入れの行き届いた農場を経営しており、抜け目なく、動物に残酷な虐待をしていると噂されている
ナポレオンを偽札で欺いて材木を奪い、風車を爆破した
不可侵条約を結ぶフリ(材木取引)をしながら、突然裏切ってソ連に侵攻した独ソ戦(風車爆破の戦闘)を象徴している
【要約】
①反乱と「動物農場」の誕生
マナー農場の老豚メジャーは、人間こそがすべての搾取の元凶であり、人間を追い出せば動物たちは自由で平等な社会を築けると説き、反乱を促して世を去る
その後、農場主ジョーンズの怠慢をきっかけに、計画よりも早く動物たちの不意の反乱が成功し、人間たちは農場から追放される
農場は「動物農場」と改名され、最も知能の高い豚たち(特にスノーボールとナポレオンという2頭の若い豚)が指導的立場に立つ
彼らはメジャーの教えを「動物主義」という思想体系にまとめ、大納屋の壁に「すべての動物は平等である」を含む「7つの戒律」を書き記して、自分たちの手による自主運営をスタートさせる
②権力闘争と独裁体制の確立
農場の運営や風車建設をめぐり、行動的で雄弁なスノーボールと、寡黙ながら裏で根回しに長けたナポレオンの間で激しい意見対立が生じるようになる
スノーボールの風車計画案に対する決議の際、ナポレオンは密かに母犬から引き離して育てていた9頭の獰猛な犬を放ち、スノーボールを襲撃して農場から追放する
その後、ナポレオンは日曜日の会議をすべて廃止し、すべての意思決定を自身が率いる豚の特別委員会へと集約させ、恐怖による完全な独裁体制を確立する
③戒律の改ざんと粛清
ナポレオンをはじめとする豚たちは、かつて自分たちで禁じたはずの「人間との売買取引」や「農場屋敷への居住」を始め、ベッドでの睡眠、さらには酒(ウイスキー)を飲むといった特権や贅沢を貪るようになる
これらの行動に疑問や不満を漏らす動物たちに対し、豚の広報担当であるスクイーラーが言葉巧みな演説で丸め込み、壁の「7つの戒律」も豚の都合に合わせて「理由なくして他を殺してはならない」「シーツを敷いたベッドで眠ってはならない」などと密かに書き換えられていく
農場の様々なトラブルや風車の崩壊はすべて、追放されたスノーボールの陰謀のせいにされる
ナポレオンは犬の武力を用いて、かつてスノーボールの陰謀に協力した、あるいは不服従の意思を見せたとする動物たち(豚、鶏、羊など)に次々と自白を強要し、その場で犬に喉笛を引き裂かせる「大粛清」を断行する
農場で最も献身的に働き、どんな困難にも「俺がもっと働けばいい」「ナポレオンは常に正しい」と自分を追い込んできた馬のボクサーさえも、過労で倒れた末、豚たちによって病気治療の名目で馬の解体業者(肉粉・ニカワ製造業者)に売り飛ばされ、豚たちのウイスキー代へと変えられてしまう
④人間との同化と結末
年月が流れ、反乱以前の記憶を持つ動物はほとんどいなくなる
豚たちは、かつて敵と定義した人間のように「二本足」で歩くようになり、手に鞭を持ち、ジョーンズらの衣服を着るようになる
壁の戒律はすべて消され、ただ一つの歪んだ原則だけが残された
「すべての動物は平等である ただし一部の動物はもっと平等である」
農場名は元の「マナー農場」に戻され、豚たちは近隣の人間(農場主たち)を屋敷に招いて宴会を催し、対等な関係で友好を深める
最後、その様子を窓から覗いていた他の動物たちは、豚が人間のように見え、人間が豚のように見え、もはやどちらがどちらであるか区別がつかなくなっていることに気づき、物語は幕を閉じる
Posted by ブクログ
アレゴリーに富んだディストピア寓話。短めで読みやすいのに色んな示唆に富んでる。
社会主義の批判ではなく、意思決定者に倫理が問われるという話だと受け取った。理念を実行するには体制が必要になる。そこには運営者の意思が介在するので、人格化された手段が理念にとって変わることが起こり得る。これを抑止するためのシステムが権力の外側に必要とされるが動物たちは盲目あるいは事勿れ主義でなす術がない。
世界には別々の軸上の問題がごちゃ混ぜになっていて、それを解きほぐしていけば、目的の設定された構造的な問題は解決可能だが、目的や在り方自体を問う倫理的な問題は解決が難しいのだと思う。
別の軸の問題を混同すると、焦点がずらされて障害の根本原因ではない理念自体への批判にすり替わってしまう。理念の善悪と、それを実現するシステムの善悪と、システムを運用する人間の善悪は、別々に評価する必要がある。
全体として、根源的な人の欲への警鐘を感じた。
Posted by ブクログ
スターリニズムの批判を逸話にて展開しつつ、その目的は黙過を起こす国民、メディアに向けられる。全体主義に向かうプロセスを「対話」の黙殺という点で鮮やかに描ききる。
何故、全体主義的になっていくのか、カーニバル理論や双子自己対象転移とも関係があるのかもしれない。推し活のメカニズムへの連結も可能だろうか。
Posted by ブクログ
動物に例えながらも、独裁政治をを皮肉った作品です。
当時でいうと、ソ連をモチーフにしているのかなと思いますが、革命から共産主義が生まれ、徐々に独裁政治に変わっていく様を、非常にわかりやすく描いています。
日本はアメリカ側なので、世の中動きが民主主義で動いているようにも見えますが、現実的にロシアが今行っている戦争を考えると、独裁政治はまだまだ世に蔓延ってるなと実感しました。
正直日本も民主主義を謳いながらも、社会主義思想が強かったりするので、自分自身をしっかり律して、何が自分にとって正しいかを判断していく必要があるなと、強く感じました。
Posted by ブクログ
『動物農場』
(ジョージ・オーウェル)
『1984年』に続いて読んだオーウェル作品。
動物たちの革命とその後の変質を通して、「平等」を掲げる革命がやがて新たな支配者を生み出す過程を鋭く風刺している。
ロシア革命やスターリン体制を下敷きにした寓話とされるが、権力が集中すれば理想は変質し、不平等が生まれるという問題は現代にも通じる。
「すべての動物は平等である。しかし、ある動物は他の動物よりもっと平等である。」
この有名な一文に、オーウェルの思想が凝縮されている。短編ながら非常に示唆に富み、『1984年』と並んで読む価値のある一冊だった。
Posted by ブクログ
同じジョージ・オーウェルの『1984年』を読んで直ぐこの本も読んだ。
どちらも同じ20世紀半ば頃のソ連、スターリンの圧政、恐怖、独裁政治の時代を題材にしている。
動物農場は、より分かりやすくて短くてすぐ読める。
1984年は、より現実味があり、絶望感が濃いなと感じました。
現在日本でも政治や世界情勢への関心が強まったと感じています。
これらの本を読み、更に調べ考えて、
私達は常に目を開き『豚』が少しでも間違ったら何かしらの手を打たなければなりません。
私達は『頭の悪い羊』『間違っていても全力な馬』『不干渉なロバ』になってはいけません。
Posted by ブクログ
知識を持つというのは、尊いことであると同時に、恐ろしいことでもあるのだとこの本を読んで思った。知識を他者のために使うか、他者を傷付け自己利益のために使うかはそれぞれの自由だが、知識に対抗するのはきっと知識しかない。9章以降のブタたちがあまりに酷くて、ナポレオンより賢くて優しい動物が1頭でもいたらなぁ泣…と考えてしまった。
Posted by ブクログ
こちらのジョージ・オーウェル氏は「一九八四年」の方で御存知の皆様もいらっしゃるのではないでしょうか?
私はどうも「星を継ぐもの」以来、SF的な作品に慎重になってしまいまして(笑)。
「狐には向かない職業」のヴェラに出会った事ですっかり気持ちは「シェイディ・ホロウ」の住人になってしまっておりました故、以前から気になっていたこちらの「動物農場」を購入致しました。
こちらの作品も、私は非常に楽しめました!!!
一説では当時の時代を風刺した作品だとも言われており、実際後書きにもそのような内容が書かれてはいるのですが、個人的には風刺うんぬんは関係無く普通にファンタジーとして楽しみました(笑)!!!
時代がどうとか世間がどうとか政治がどうとか風刺がどうとか、そう言った事は当時其処にいた訳でもなく情勢に詳しい訳でもなく体験した訳でも御座いませんので、何だか良く分からない小難しい解説は置いておいて、人間に対する教訓を動物達に置き換える事で大人だけではなく子供達にも伝わりやすい内容だと私は感じました。
アニメーション映画も制作されていたようで、チラッと予告編を検索して拝見致しましたが、カートゥーンアニメのようで非常に分かりやすく、全編通して見てみたいと思いました。
裏テーマとしては確かにその小難しい風刺が含まれているのかも分かりませんが、純粋に「動物の世界のファンタジー」として、私はとてもお気に入りの作品と相成りました。
スノーボールと、ボクサー…この二人に関してが、少々心残りで御座います。
Posted by ブクログ
豚は誰か
本書に登場する豚がこのコロナ禍で誕生しつつあるように読んだ。知識は専門家に任せろと主張して囲い、解釈を恣意的に変え、他の価値を踏み躙り、人々の行動を制限し、人々を支配しようとする。今、この現実の世界で、専門家にしてやられてしまったのが政治家であることが、情けない。本当に情けない。ウイルスが人間ジョーンズ、豚ナポレオンが政府系専門家、豚スノーボールが政治家といった当てはめか。本書が結末で豚の王国の崩壊を描いていることを期待したが、叶わなかった。『1984』で描かれる全体主義国家も揺るぎなかった。揺らいだのは個人だった。相当まずい時代が来ている。本書を読んで改めて感じた。
Posted by ブクログ
この混沌とした時代に読むべき1冊。
単純な体制批判に留まらず、現状に甘んじてしまいがちな一般市民にも警鐘を鳴らしているところがすごい。この内容を1945年に発表する勇気もまた、称賛に値すると思う。
Posted by ブクログ
久々に本でぶち飛んだ
巻末の作家による序文案は、文章に対してありがたいとさえ思ってしまった笑
いままで読んできた本ベスト5には入れたい
カオスな時代を生身で経験したからこその重みがすごい
まさに知的な反抗って感じでかなりくすぶられた
オーウェルあんた最高にロックだよって感じ
Posted by ブクログ
これは本当の話。信じられないかも知れないが「国民英雄」の圧政粛清の時代には、かつての「建国の元勲」が次々と「祖国への裏切り・反革命勢力との内通」を公開自白したのち処刑されていったのだ。あまりにあからさまなので「(連合国の一角を)悪し様に言うのは好ましくない」として出版は拒否された。一応「ナポレオン」はスターリンであり、「養成した9匹の猛犬」はゲーペーウー、「スノーボール」はトロツキー。
誠実なインテリとして、メディア・リテラシー&記録の偽造・改竄されないことを訴えているようだが、一般大衆はそれほど物覚えが良くないし(記憶を頼りに権力に逆らうほど)正直でもない。
(本書のテーマ=スターリンによる’36〜38大量粛清を日本の教科書も緘黙)’37年に着想し’44年2月に脱稿したが、刊行する出版社はなかなか見つからず戦後となり、アメリカ版は46夏となりフランス語版はさらに遅れ「ナポレオン」を「カエサル」としてはと提案されてオーウェルは激怒したというあ。’47年、ドイツにあったウクライナ難民キャンプでウクライナ語版が頒布され別に序文が書かれた「ソ連には口出ししないが。社会主義者の矜持として、現状についてはきちんと伝えないと」現物は残っていないが英語に訳し戻したものが巻末付録。
(’36年結婚の直後スペイン内戦が勃発。対フランコ救国戦線に義勇兵として参加した体験は『カタロニア讃歌』にまとめられている)P178この戦争の初期、外国人は全般に、政府を支持する様々な政党同士の内部闘争には気がついていなかった。いくつかの偶然のおかげで、私が参加したのは多くの外国人の属する国際旅団ではなく、POUM民兵、つまりスペインのトロツキストたちの派閥だった。だから1937年半ば、共産主義者たちがスペイン政府を(すくなくとも部分的には)掌握し、トロツキスト狩りを開始したときには、二人とも{夫婦共}被害者側になっていた。一度も逮捕されず、生きてスペインを出られたのは本当に運がよかった。友人たちの多くは射殺され、そうでない人々は長い懲役を受けたり、あっさり姿を消したりした。スペインでのこうした人間狩りは、ソ連での大粛清とほぼ並行して行われていおり、いわばそれを補うものとなっていた。スペインでもロシアでも、糾弾の中身(つまりはファシストとの共謀)は同じで、そうした罪状はどう見てもウソだったと考えている。こうしたことをすべて体験できたのは、貴重な具体的教訓だった。民主国での啓蒙された人々の意見を、全体主義的なプロパガンダがどれほど簡単にコントロールできてしまうかを教えてくれたのだ。スペインでのこうした人間狩りは、ソ連での大粛清とほぼ並行して行われており、いわばそれを補うものとなっていた。スペインでもロシアでも、糾弾の中身(つまりはファシストとの共謀)は同じで、そうした罪状はどう見てもウソだったと考えている。こうしたことをすべて体験できたのは、貴重な具体的教訓だった。民主国での啓蒙された人々の意見を、全体主義的なプロパガンダがどれほど簡単にコントロールできてしまうかを教えてくれたのだ。妻も私も罪のない人々が単に異端の疑いをかけられただけで投獄されるのを見てきた。それなのにイギリスに帰ってみると、陰謀説が横行している。
結末で、支配階級の豚はニンゲンと晩餐会を開きカードゲームして、窓の外から見る動物たちにはニンゲンと見分けがつかなくなる。丁度、ナルニア国物語の最後で、アスランがライオンと見えなくなることの裏返しのように。
Posted by ブクログ
農場の動物が反乱を起こし、農場主を追い出した。彼らは知能の高いブタをリーダーとし、7つのルールを七戒として掲げ、搾取から解放され自分たちのために働き、食べ、より豊かになるための労働をしていく。
二匹のブタ、スノーボールとナポレオンはどちらもリーダーだが意見は合わない。スノーボールが風車の建設を掲げ、今は労働が増えるが一年後には電気が使えて週休3日になると言うも、ナポレオンは絵空事だと否定。
それでもなんとか一つにまとまって生活していたが、ある日農場主が仲間とともに銃を持ってやってきた。
みんな平等に生産して平等に配分する社会主義。それだけ聞くと良さそうなのに社会主義国家はどこも独裁制である理由が、寓話で語られる。
なかなかにえぐい。
訳者後書きを読んで、スターリン時代のロシアそのままに近いような(実際のロシアの方がひどかったそうだが)設定で、イギリスでとはいえ出版社に嫌煙されたのもわかる。でもそうやって怖いから口を閉ざしたり、非難されるかもしれないから避けていたりするのが重なるとまさに動物農場のようなことになるんだな、と。
今の日本も、そうなりつつあると恐ろしくなった。
Posted by ブクログ
家畜たちが人間を追い出して、動物たちだけが暮らす社会、「動物農場」をつくる。初めは美しい理想に基づいて「動物農場」が運営されていくが、次第に賢いブタの権力が肥大化していく。
・巻末の解説で、肥大化するブタの権力に対して声を上げなかった他の動物たちを非難する意見があったけど、殺されるかもしれないという恐怖を乗り越えて声を上げられる人はどのくらいいるのだろうか。自分なら殺されるくらいなら敢えて1人で声を上げることはしない。
・この物語はレーニン没後のスターリンによる専制政治をもとにしているらしい。自分の利害を第一の関心事にする権力者の「弱さ」が、どのようにして苛酷な環境を生み出すのかを具体的にイメージすることができてよかった。
・登場人物の中で一番嫌いだったのはスクウィーラーだった。流れに乗っかる、口が上手いだけの奴って本当に卑怯だと思う。こういう人って何に幸せを感じるの?と思う。
Posted by ブクログ
4.5
短いけど印象に残る物語だった。
奴隷から解放されるために革命を起こしてもその中で新たな権力者が現れ、支配するものとされる者に分かれてしまう。
そこに至るまでの流れを動物の世界を通して描かれているのがめちゃくちゃ面白かった。特に最後の章は衝撃だった。豚なのか人間なのかわからない描写はかつて自分たちが批判していた存在と同じ"支配する側"になってしまったことを表してるのだと思う。
人間の歴史は繰り返されて行くのだろうか、と考えさせられる作品だった。
Posted by ブクログ
夏はww2に関連した本を読もうとAIと喋っていたところオススメされた1冊。
社会主義革命が独裁になる寓話。
社会主義自体が悪いとは思えず、(ブタや犬以外の動物たちの殆どは真面目すぎるし、協力的)、それを悪用するものが出て独裁者になる。
日本も最近とても不穏だ。日本人はとても勤勉で努力家が多く文句を言わず黙って働くことが美徳のようにされてきたけれど、その結果が今日だとしたら動物農場の動物たちと変わりがない。黙っていても政治が良くならないことを自覚しないといけないと思った。
Posted by ブクログ
旧ソ連を風刺した伝説の1冊。動物の長が豚というのも酷い例え方だなと。これがライオンとか像とかなら、まだこんなに腹だたしい気持ちにはならんだろうと思います。
1984同様、モヤモヤが止まらない社会風刺の名著です。で、、、スノーボールは結局どこいったんだ??
Posted by ブクログ
読みやすい。
社会主義、共産主義への批判の寓話。
古典作品だけど今も通ずるものがある。
農場の動物たちをまとめ上げ動物主義革命を起こし人間の農場主を追い出した豚さんスノーボールが、同じく同志の豚さんナポレオンに農場を追われ、ナポレオンが私腹を肥やし恐怖政治を敷いていくお話。
何て腹黒いんだナポレオン!!と思っていたら、スノーボールのモデルがトロツキー、ナポレオンのモデルがスターリンだとは。(訳者解説に説明されてあった)
何て腹黒いんだスターリン!!
そして恐怖政治を敷いていくなかで、ナポレオンの出す指示や行動が、だんだん動物たちに不利となりナポレオン側に有利になっていくのに、動物たちが「おかしい、…でも、実は最初からこうだったような気もする」と洗脳または思考停止していく過程がとても恐ろしい。
ナポレオン側の声明を、腰巾着のスクウィーラーという豚が毎回話すのだが、事実を捻じ曲げ決まっていたことをひっくり返しているのに、巧みな演説で動物たちを騙していく過程も怖い。ナポレオン自身はそんなに表に出てこず、このスクウィーラーが動物たちを丸め込んでいくのですよね。
スクウィーラーにモデルがいるとは書いていなかったが、これは当時の新聞などのメディアの擬人化かなと思った。偏った情報のみしか出さないメディアの洗脳は恐ろしい…。
ナポレオン自身もだが、スクウィーラーのほうがヤバさ100倍な気がする。
オーウェル実は自身は社会主義者で、当時の社会主義を正道に戻すという目的で書かれたらしい。
が、訳者解説にもあったように、今までの現実世界で理想を掲げて始まった革命国家が独裁化せずに成功した例は少ないみたいなことが書かれていて、人間ってやはり理想の◯◯を実現するためにみんなで頑張ろうと行動を起こしても一定の悪い人物が出てきて独裁化しちゃうんだよなあ、と切なくなる。
これは国家だけじゃなくてもっと小さい単位、会社でも何かのグループでも家族でも同じ。
どこかで不正を糾弾するシステムや勇気がないと結局は自分たちの首を絞めることになるということを教えてくれる作品。
Posted by ブクログ
「うわぁ……」と、読み終わったあと、しばらく動けなくなりました。
よくある「めでたしめでたし」の物語よりも、心に深く残る「嫌な傷跡」のような読後感。
でも、その傷こそがSFの醍醐味だと思う。仕事のモヤモヤや日常の小さな悩みなんてどうでもよくなってしまうくらい、強烈なインパクト。
この「救いのなさが、人を救う」という不思議な感覚を、物語の構成に沿って振り返ってみました。
1. 導入:この世界観、意外とリアル?
「動物がしゃべる」というぶっ飛んだ設定。SFが苦手な人にはハードルが高そうですが、実はここが現実世界の鋭いメタファー(比喩)になっています。ただの説明じゃなく、丁寧な描写で「これって私たちの世界の話かも?」と思わせる仕掛けが秀逸です。
2. 第一幕:ワクワクから始まる悲劇
「人間に反抗しよう!」という豚の熱い遺言。ここで読者は一気に引き込まれます。人間を追い出し、自分たちの国を作った瞬間の達成感。でも、このワクワクが最高潮の時に、ラストへの伏線がこっそり撒かれているんですよね。
3. 第二幕:じわじわ忍び寄る「違和感」
国づくりの大変さと、動物たちの純粋な喜び。その裏で、リーダーである豚たちが少しずつ独裁の兆しを見せ始めます。「あれ、おかしいな?」という違和感が確信に変わる頃には、もうページをめくる手が止まりません。キャラクターに感情移入するほど、その変化が苦しくなってきます。
4. 第三幕:最悪で、最高のエンディング
結末は、希望か、絶望か。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のような爽快なハッピーエンドもいいですが、本作はその真逆。
・農場は豊かになったのに、動物たちの暮らしはボロボロ。
・支配者の豚たちが、どんどん嫌いだったはずの「人間」に似ていく。
このバッドエンドは、単なる「悲劇」ではありません。人間のどうしようもない業(ごう)を描きつつ、「結局誰がやっても同じなのかも」という虚無感さえも突きつけてきます。
でも、その突き放された感覚が、なぜか個人としての責任感から解放してくれるような、妙な「救い」にも感じられるから不思議です。
読んだあとに数日間引きずってしまうような「心地よい傷」を求めている人にオススメ。
Posted by ブクログ
ソ連の社会主義体制や史実を基に書かれた、動物たちだけで暮らす農場を舞台にした寓話小説。
人間社会の出来事を動物ものの寓話に落とし込むという作者の技術に驚いたと同時に、物語が進むにつれて人間化する豚に強い不快感を覚えた。作品全体を通じて、食糧という既得権益を得たり、風車造りという仕事にしっかり従事しなかったりと、豚はまるで現代の日本の一部の政治家のような存在だった。出版当時にはソ連の指導者、現代では日本のような民主主義国家の政治家といったように、時代、読み手、見方次第で「豚」のモデル解釈が異なりそうだと思った。
Posted by ブクログ
当時のソ連の権力集中、スターリン政権の批判、皮肉で書かれた話。
権力集中だったり現代の労働そのものの話にもなってるなと思った
民衆が声を上げることも大事という解説には確かになーと思いました
Posted by ブクログ
「人間は権力を持つと必ず腐敗する」という普遍的な心理を描いている。
「リーダーを盲目的に信じ、自分で考えることをやめた動物たちが、どのようにして自由を奪われていくか」をリアルに描いたビターな寓話。
Posted by ブクログ
とても薄いのであっという間に読み終わるだろうと思っていたら、いやいや、倍以上あるページ数の小説を読むのと同じかそれ以上に時間がかかってしまったことにまず驚いた。易しい文章なのに怖くて怖くて。こうなっているけれど実はこうで、みたいなことがない。
考えることをやめてはいけないと思った。分からなくても、知ろうとすることをやめないことが大切。
Posted by ブクログ
メキシコマフィアと戦った自警団の新たなる支配を思い出した
独裁政権の民衆の心理を操る様子が、寓話を通して描かれており楽しみながら読める
社会風刺でロシアの比喩らしいが、その体制が崩れる比喩まで欲しかったのが本音...後味悪い...
Posted by ブクログ
ある農場で多くの動物たちが飼われていたが、彼らは全ての動物を平等にするための動物農場を設立した。農場主に反旗を翻したが、今後は動物たちで内輪揉めを起こすという、皮肉なことになった。
Posted by ブクログ
言葉を覚えたり書いたり支配することとか、人間を嫌ってるくせになんだかんだ人間に近づきたいのかな。なんて。
牛の乳搾りが達者なブタってのも面白い。
こんなおとぎ話のような世界観だけど、元となる題材はロシア革命とその後。
独裁者となる豚はスターリンがモデル。
風刺がきいたおどろおどろしいディストピアな世界だった。
誰も反発せず考えようともしない環境。
知能の高い者が知能の低い者を洗脳して刷り込ませた言葉を繰り返させ思考を許さない現状に恐ろしさを感じた。
支配されて失うものは大きい。
知識や思考を止めないことがいかに大事なものか痛感させられた。
読んでて苦しくなる政治的皮肉めいた作品でした。