【感想・ネタバレ】資本主義が人類最高の発明である:グローバル化と自由市場が私たちを救う理由のレビュー

あらすじ

「リベラル」も「保守」も、実は資本主義を理解していない。今こそその真価を知るべき時だーー。
★「脱成長せよ」「トップ1%が搾取」「格差と不幸の元凶」etc.……データを見れば、すべて間違いだった!
★資本主義の「真価」と「本質」を、豊富なデータと根拠で示す世界的話題作、ついに邦訳。
★フィナンシャルタイムズ紙、エコノミスト誌ほか絶賛の嵐!
★イーロン・マスク、異例の推薦。
「資本主義が正義である理由が完璧にわかる名著。特に第4章を読んでほしい」
★「できるだけ多くの人が本書を読んで、人類がいまや手にしている強みと今後の発展につながる叡智を、改めて認識しなおしてくれることを願いたい」ーー山形浩生

資本主義を打倒せよとかグローバリストをブチ殺せとか、そういう極端な主張をしても何の役にもたたない。
最終的には個人の創意工夫を信じ、なるべく競争原理を活用することで、経済や社会の活力を維持する――それが重要なことだ。
市場が万能だと思う必要はない。しかし市場がかなり大きな力を持っているし、価格の持つ情報を通じて人々をまとめる能力を持っているのも事実だ。ここ数世紀にわたる人類の空前の発展は、まさにその力をうまく活用できるようになったおかげなのだ。
それを続けようじゃないか、と本書は述べる。
できるだけ多くの人が本書を読んで、人類がいまや手にしている強みと今後の発展につながる叡智を、改めて認識しなおしてくれることを願いたい。
ーー山形浩生(訳者解説より)


・「強欲な資本家」がいなければ「貧乏人」はもっと貧しくなる
・全億万長者の資産を分配しても、貧しい人の生涯所得は「27万円」しか増えない
・世界の課題を解決するのは「再分配」ではなく「経済成長」
・「脱成長」は地球温暖化を悪化させる
・グローバル化のおかげで、世界の貧困率は過去20年で「70%」下がった
・資本主義下でお金を儲けるには「利他」と「協力」が不可欠
・資本主義以前のほうが、「搾取」も「環境破壊」もひどかった
・「個人主義社会」のほうが献血、骨髄・臓器提供、人助けの参加度が高い
・金銭的インセンティブは人々の「公共の精神」を奪わない
・資本主義はゼロサムではなく「プラスサム」ゲーム

【目次】
はじめに
第1章 資本主義は世界を救う
第2章 経済成長はなぜ必要?
第3章 自由市場は労働者を救う
第4章 トップ1%はなぜ必要?
第5章 独占企業は悪なのか
第6章 産業政策がダメなわけ
第7章 中国経済、虚像と実態
第8章 地球温暖化と資本主義
第9章 人生の意味と資本主義
おわりに
原注
訳者解説

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Posted by ブクログ

タイトルどおりの内容。ただし、その内容を細かなデータに基づいて立証しているところが、凡百の通俗評論家との違いである。マスコミが、資本主義のためにひどい生活を強いられていると表現している人たち(例えば、ウーバーのギグワーカー)の多くが、自分たちの生活をそれ以前よりも良いものと評価していると言うデータは驚かされる。取り敢えず読むべき本。

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2025年05月16日

Posted by ブクログ

資本主義を通して人類の歴史を知る。
サピエンス全史ともまた違った扇情的なニュアンスも多分にありつつ、資本主義の成り立ちに感心させられる部分も多い。

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2025年03月17日

Posted by ブクログ

資本主義は格差を生み出すだけの残酷な世界、という先入観をデータを使って見事に覆してくれる本。

ただしいいことばかりではないことも教えてれます。それはたくさん失敗することがあるということ。それでも自由な選択肢がある方がいいじゃない?

自分には無理と言い訳ばかりする人には耳の痛い話かも。自分がそうならないように思わせてくれる本でした。

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2025年02月27日

Posted by ブクログ

起業家が利益を出したというのは、彼らが社会に何かを与えた証拠
利益を得るのは最後

ゾンビ企業が生き続けると、もっと良い企業に使われるべき補助金や労働力がしばりつけられる

アリアナマッツカート
国家がイノベーションの資金を生み出してるという主張、著者は否定的

著者はピケティにも否定的


偉大なブレイクスルーは政府の計画や孤高の天才から生じるものではない賑やかなエコシステムから生まれる

中国は財の市場は認めてアイデアの市場は許さない
これが続く限り革新的で豊かな経済にはなれない

イースタリンのパラドックス(豊かになっても幸福度は高まらない)は間違っていた
幸せはお金で買える、経済成長は幸福に貢献する

資本主義は、あらゆる人に、他人のために価値を作り出す新たな方法を見つけ出そうと絶えず試してみる強力な動機を与えてくれる

訳者の最後の解説がわかりやすい
そして訳者が著者に異論があるパターンもおもしろいな
ピケティも、著者も同じデータを、見て主張が異なる
こんな世界トップレベルの学者たちも見解違うんだな、そりゃそうか
そう言った点も良い本でした

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2024年11月17日

Posted by ブクログ

資本主義の良さを(改めて)理解できる本。
私たちの周りでは、成長は無意味だとか、GDPくそ食らえとか、格差が甚大な悪影響をもたらしているとか、これまでの経済システムは限界に行き当たっているとか、いろんなネガティブ意見が飛び交っていて暗澹たる気持ちになりますが、資本主義は基本的に上手く機能していることを様々なデータに基づいて冷静に教えてくれます。
資本主義の現状と先行きに自信を持てない方は是非読んでみましょう。
これまで資本主義は様々な問題を解決してきたし、これからも解決してくれるでしょう。
もちろん、資本主義に様々な問題があるのは事実ですが、マイナス面よりプラス面の方が圧倒的に大きいというのが本書の主張。
資本主義をきちんと(ここが重要!)運営さえすれば、私たちの将来はそれほど暗くありません。
むしろ、習近平政権の下で社会主義色を強める中国経済の先行きには不安を抱かざるをえません。

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2024年09月29日

Posted by ブクログ

資本主義は今後も安泰だと見通しがたった。巷に多くの「資本主義限界説」が流布しているが、おそらくそれはない。あらゆる社会問題は資本主義の中で修正されていく。
市場倫理(付加価値を出さない人間は除外されて行く)は、ほかのどんな社会制度の動機付けよりマシということ。付加価値を生み出した者が祝福される世界。

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2025年11月03日

Posted by ブクログ

資本主義を無批判に首肯するでもないが、改めて本書の流れを辿ってみると、加速主義的な解決策を用いたうえで果たして人類がどうなるのかというスタンスになるのかという気もする。テーゼは大胆だが、議論の理路はしっかりと固められている。

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2025年10月18日

Posted by ブクログ

本書の主張は「資本主義はこれまですばらしい成果をあげてきた。グローバル化することで、その威力はさらに高まった。しかもそれは、先進国が途上国を搾取とか、金持ちが貧乏人を足蹴にしてとかいった、不均衡な発展ではない。格差はあるけれど数十年単位で見れば、みんな良くなっている。それは、常に自由と競争とそれによる技術革新が起こり、それが生産性を激増させたおかげだ」というものである。グローバル化が格差を生んでいる、格差が不幸の元凶、分配をどうするか、これからは脱成長を目指すべき、中国のような強力な統制が経済を強くするといったような話が新聞やテレビで良く聞かれるが、過去からのデータを用いてその様な主張が全くデタラメであることを看破した目から鱗の一冊。その一方、本書一冊読んで思考停止という態度も危険なので、他の複数の本で別の主張も読んでみたいと思った。
本の帯に書かれている「金持ちがいない世界では貧乏人がもっと貧しくなる」「トップ1%の富を再分配しても貧しい人の生涯所得は27万円しか増えない」「グローバル化のおかげで、世界の貧困率は過去20年で70%下がった」「資本主義以前の方が搾取も環境破壊も酷かった」「脱成長は地球温暖化をなおさら悪化させる」「資本主義はゼロサムではなくプラウサムゲーム」について、しっかりと本文で言及されており、単なる煽りではない。

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2025年08月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

歴史上の経済を見てきて、資本主義が最も世界を豊かにしてきた。
世界の分配不平等は資本主義の分配が不均等だから生じる。
それが沢山あると豊かになり、なければ貧乏なままだ。
(適切な資本主義においては分配の公平さよりも経済の成長率を優先した方が貧困に関する
問題は解決する)
→適切でない資本主義とは?
権威主義者による経済対策
剛腕指導者は短期的な成長ばかりを重視する
→ポピュリストが権力の座について 15 年経つと経済は平均で 1 割以上小さくなるという
結果が出た
アメリカの言う、中国のせいで労働が奪われているのは嘘。
中国の輸入に直面した企業は他企業に比べて年率 2 パーセントも多く雇用拡大している。
中国が、奪うというならより多く仕事をくれた
ただ中国の経済は成長しているというより、2010 年代の中央集権的なものの恩恵に過ぎ
ず、現在は停滞させている。
またそもそも中国が経済発展したのは 1970 年代の飢えた農民が行った土地の私有化の結
果であり、国策ではない。
関税に批判的な対策を取ると、中低所得者に被害をもたらす。
彼らは国内サービスに使う金額は小さい。
仮に国際貿易が完全に止まると、英で最も豊かな世帯の 10 分の 1 の世帯は購買力を 1 割
なくす。
またこれは逆進税で貧しい人から奪い金持ちに与える結果になる
資本家は搾取家ではない。
世界の豊かな数人の資産が全世界の半数の資産と同額ということへの批判。
ただ彼らの生み出したサービスを当たり前のように使える時点で既に恩恵は受けている。
また彼らがリスクを犯してまでそのサービスを受け取り利益を得ていることは、不当では
なく適切な労働の対価である。
億万長者の金を分配するより経済成長の方が貧困解決には有効
脱成長=気候対策は嘘
むしろ脱成長が気候変動のリスク高める
2020 年にマイナス成長のおかげで減った二酸化炭素 1 トン事に 1750 ドルの費用がかか
る。
賢く気候対策をする
→最高のものを少ない材料で生み出す
お金を持っていることの良さはお金以外も考えられる。
所得と幸福度には関連があるからこそ、豊かであるということは必要。
感想
この本で言っていることを鵜呑みにするのも危険ではあるが、根拠もなくただ闇雲に資本
主義のせいという言葉で批判するのも危険だと思った。
特に世界の億万長者数人の所得が世界の下位半分と同等の富をもっていることなどは、確
かに課題ではあるが、それを億万長者などの批判につなげてしまうのは正しく理解できて
いない故だとこの本を読んで認識を改めた。
データが多く要約が簡単なものになってしまったが、資本主義に問題があると考えている
人は一度この本を読み、その上で判断することを勧める。

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2025年05月08日

Posted by ブクログ

資本主義の意味と素晴らしさが理解できる一冊。本を読む前から、私は資本主義に対して肯定的且つ希望的な感想を抱いていたため、その思考が後押しされた感覚がある。また、"肯定的且つ希望的な感想"とやらを解像度を上げて説明してくれている。一方で、著者の仮説を"正"とするべく並べられる根拠の数々は、少しの偏りと回りくどさがあると感じた。(実際に偏りがあるかは分からないが)

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2025年04月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

進歩の代償とされる、よい職の減少、賃金の停滞、格差、などは生じていない。資本主義は常に美しい訳では無い。
市場は、価値観、才能、努力に報いてくれるわけではない。唯一、他人のために効率よく価値を作り出したものに対して報いてくれる。この自由市場の仕組みが、他の仕組みに比べて優れたものにしている。新たな価値を作り出す動機になる。

豊かさ、食事、寿命など過去よりも、ずっとよくなっている。
アフリカでも、モーリタニアやボツワナなど、大発展している国がある。他の国は支配階級が利権を温存しているから発展しない。
経済成長がなければ、他の問題も解決しない。
コロナ、戦争などの危機にも自由な対応力が発揮できる。
トップ1%が100倍生きられるわけではない。全員の生活向上に比べたら優位性は少ない。
資本主義のほうが、やりたいことができるので幸福をもたらす。

孤独死、ブルシットジョブ、ハイテク独占、SNSのデータ資本主義、なども、中国などのミッション志向主義よりも自由主義のほうが解決方法が柔軟で進んでいる。

古典的リベラリズムの立場。
左派をリベラルと呼んで、大きな政府と規制を要求するのは、本来のリベラリズムとは違う。
リベラリズムは自由主義のことだが、新自由主義やネオリベラリズムというと、右派のレッテルになっている。政府介入を拒み、規制を緩和する主張。
どちらの立場とも少し違うので、古典的リベラリズムと呼んでいる。ハイエクなどのオーストリア学派に近い。

とはいえ、規制がまったく不要ではない。警察、司法、インフラ、などは必要。エリツィン時代のロシアは、法治がなかったため、失敗した。
環境問題は、どうやって解決するか。市場の失敗を償うための方法には、規制や管理者が必要。

適切な範囲で規制が必要。適切な範囲が、人によって違う。
市場万能論は、粗雑に見える。市場の失敗をあげつらうほうが利口に見える。問題はどちらに寄るか。
同じデータを見ても、解釈が違う。
底辺層の35%の人々が脱出できている=格差は固定されていない。一方、半分以上の人は脱出できていないので肯定されている、と解釈するか。

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2025年03月04日

Posted by ブクログ

一読して、仕組みとしての資本主義というものは、人類にとって今のところもっとも「マシ」な仕組みだな、ということが理解できました。問題はそれに安住して、発展を望まないようになること。トライ&エラーの精神を失わないようにしたいですね。

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2024年12月18日

Posted by ブクログ

世界の極貧者がこの40年で約30%から約8%まで下がっている。これは驚きの事実。
これは資本主義が関わっているからであり、これからも上手に活用しなければならない。

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2024年11月11日

Posted by ブクログ

ヨハン・ノルベリ氏は、1973年ストックホルム生まれの歴史学者・著述家。ストックホルム大学で歴史学修士号を取得後、思想史・経済学・統計学・進化生物学などを横断的に研究。経済グローバリズムと古典的自由主義を擁護する立場で、『進歩』(原書は2016年出版)、『OPEN』(原書は2020年出版)で、英誌「エコノミスト」のブック・オブ・ザ・イヤーを連続受賞。2007年から米ケイトー研究所のシニアフェローを務め、公共テレビ向けのドキュメンタリーも多数制作。
本書は、題名の通り、資本主義によるグローバル化と自由市場の優位性を説いたもので、2024年に出版された。原書は『THE CAPITALIST MANIFESTO』(2023年)。
私がポイントと思った点を列挙すると概ね以下である。
◆資本主義はこれまで、世界の貧困率を劇的に下げてきた。経済的に自由な国は、平均寿命が長く、経済成長が高く、賃金が高く、貧困削減が大きく、投資が多く、汚職が少なく、主観的な厚生が高く、民主的で、人権が尊重されている。
◆「成長」とはGDPの水準が上がること。成長と進歩はほぼ確実に相関している。世界の貧困をなくすための最高の方法は、全体の成長を生み出すことであり、ケーキの大きさの方が分配よりも重要。自由市場は、意図せずとも多くの人が協力することになるため、あらゆる中央管理のシステムよりも生産力を向上させる。自由市場の価格は、人々の求めるものの情報を伝え、かつそれに適応するような行動を促す、経済の「GPS」である。市場経済は、他人のために最善を尽くし、代わりに他人に最善を尽くしてもらう、互恵のシステム。
◆自由市場に反対する人々は、かつては、貧困国を貧しくすると考える左派が多かったが、今では、貧困国を豊かにするが、富裕国を貧しくすると考える右派ナショナリストが多い。しかし実際は、多くの中産階級の所得は増え、労働時間は減り、仕事の満足度は上がっている。自由貿易のために失業した人を救う方策として保護主義(関税)は逆効果。
◆資本主義において富が公平に分配されないのは事実だが、資本家は利益を出したこと自体が社会還元なのであり、自らの取り分は決して多過ぎるとは言えない。むしろ、現代はかつてないほど、重要な多くの財・サービスが平等に分配されている。世界の億万長者2,153人は、最も貧しい46億人を合わせたよりも多くの資産を持っているが、仮にそれを配ったとしても、46億人の年間所得を1年だけ60%押し上げるに過ぎない。よって、貧困を減らすには、既にある繁栄を再分配するのではなく、投資によりもっと多くの繁栄を生み出すことが必要。
◆GAFAなどの大企業は、イノベーションの主体であり、労働条件もよく、我々にとってむしろ有益。資本主義は、消費者が資本家を監督する手段としても機能する。資本主義のデメリットとされる、計画的陳腐化は言われているほど多くはなし、流行を追う行動も、商業的に作られたものではなく、進化で身についた本能。
◆偉大なイノベーションは、政府の計画や孤高の天才から生まれるものではなく、民間の相互協力から生まれる。
◆地球温暖化とその影響を減らすには大規模な変化が必要。しかし、多くのエコ論者がいう「脱成長」は全く無意味で、それは、コロナ禍のロックダウンで減ったCO2排出量がわずか6%だったことからも明らか。温暖化に対応するには、繁栄と技術が必要。これまでの環境問題は、天然資源の枯渇リスクなども、上手く対処されてきた。近年では、資源の消費量と人口・経済規模において、絶対的デカップリングが起こっている。気候・環境問題を解決できる技術やイノベーションは、今の段階では誰にもわからず、だからこそ、できるだけ多くの人々を動員してそれに取り組まなければならないのであり、脱成長は解決策ではない。
◆自由市場と個人主義的な社会は、人間関係やコミュニティ等の私たちを人間たらしめるものの対極にあるのではないか、人を幸福にしないのではないか、という指摘がある。しかし実際は、心を病む現代人は増えておらず、金銭的インセンティブが私たちの公共心を損なうことはなく、市場主義社会の方が人助けの意欲が高く、経済成長が幸福に貢献することが明らかになっている。
私は、著者とは反対に、最近の(行き過ぎた)資本主義による、格差の拡大、気候・環境への影響等は看過できないと考えており、斎藤幸平氏が『人新世の「資本論」』で提案した「脱成長」に基本的に賛同する立場で、セルジュ・ラトゥールの『脱成長』、ジェイソン・ヒッケルの『資本主義の次に来る世界』等の本も読んできた。そして、こうした意見の対立の大きなテーマにおいては、逆の立場の考えを知ることは不可欠であり、本書を読んでみた。(以前に、柿埜真吾氏の『自由と成長の経済学』等も読んではいるが)
一読して、内容は概ね予想通りだったのだが、この考え方の違いはどこから生じるものなのか、しばらく思案して、思い至ったのは、「足るを知る」ことに対する考え方の違いである。つまり、本書に賛同する人々は、物質的な豊かさや便利さ(今日よりも明日という意味でも、他人よりも自分という意味でも)を求める気持ちが強く、よって、何か問題があっても、それは解決されるに違いないと希望的に考え、一方、賛同しない人々は、物質的な豊かさや便利さはもう十分なので、よって、何か問題があるなら、豊かさや便利さを引き換えにしてでもそれを解決するべきと考えるのではないか。。。実際、本書の主張を振り返ってみると、多くは驚くほど楽観的である。
また、本書では論じられてもいないが、私が強く懸念しているのは、資本主義(=成長至上主義)が科学万能主義とつながり、人間が人間らしさを失っていくことである。生命工学やAIの技術は、使い方を間違えれば、オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』やフィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』(映画「ブレードランナー」の原作)のような、ディストピアに繋がりかねないのだ。人間は過去に、原子力技術の使い方を間違う過ちを犯していることを忘れてはいけない。
まだ別の道を選ぶことができる今(もう遅いのかもしれないが)、それぞれが、自分事として、他人の意見を鵜吞みにするのではなく、自分の頭で考えることが必要なのだ。
(2025年11月了)

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

多少極端かなと思うところもあるし、このデータって本当に全体を見たとき、また違う視点から見たときに正しいのだろうかと思う点もあるが、資本主義がこの世界の中で主流となっていることや、今起きている世界に対してある1つの見方を知るという意味ではよかった。
資本主義は人間の欲と密接に結びついており、よく=より良い生活をしたいより、お金を得たいと言う欲求をもとに成り立っている。
そのため、資本主義はあらゆる経済や産業に対して発展をもたらす。それは何かの発明であったり改革と言うわけではなく、そこに対してのエネルギーが注がれていた結果だと私は思う
資本主義があらゆる世界で広まったことによって、人々の経済水準が上がって、より良い暮らしになったと言われている。これは本当のデータ本当に相関性があるのかと言われると断定はできないが、確かに一理あるかと思う。何よりこの本で話していたのは人が強制ではなく、自由に働く場所や住む場所であったり、どのように生きるかと言うことを選択できることと書いてあった。確かにこれは今までの制度ではなかった仕組みだったと思うので、私の中では参考になった。

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2025年05月18日

Posted by ブクログ

資本主義について突き詰めて考えさせる本。 格差がどんどん拡大しているのではなく、全体で見たときには大きな底上げが進んでいること、また貧しさから抜け出せないのは社会制度に大きく依存していることを理解できた。 かと言って手放しで資本主義を礼賛はできないなとも感じた。

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2025年02月02日

Posted by ブクログ

日本からみた世界ばかりでなく、外からみたアジアの中の日本が見えたり、欧米を中心とした視点からの世界の動きが見えたり、とても視野が広がりました。
物事は、自分のいるところからだけ見渡すのでなく、多角的な視点から見るのが大事だなと感じました。

同じデータも、捉え方によって見方が変わるのも感じ、情報を鵜呑みにせず、どのようにしてその見解に至ったかということまできちんと見ていけるようにしたいなと思います。

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2024年12月09日

Posted by ブクログ

資本主義の良い面の指摘は納得。環境問題は環境税の導入が前提となっているが未達成。
資本主義の批判主体が左派から右派に変化したのは興味深い。

・資本主義は儲けのために、人種差別を拒否する。
 例)1900年米国南部の人種分離州法導入時の反対訴訟

・ラストベルトの貧困はグローバル化と相関しない。補助が複雑で稼ぐ、貯蓄すると手取りが減る。移動の自由がないこと。

・ゾンビ企業が1ポイント増えると、経済の生産性上昇率は0.1ポイント下がる

・中国の改革プロセスは「自発的な力の利用に習熟し、自発的な力を意識的な政策に変える」という話だった。
・2010年以降も専制化

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2025年02月09日

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