齋藤孝のレビュー一覧
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著者は、東京大学法学部卒業。現在、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。
著書に「ブレない生き方」「古典力」「教育力」等多数。
論理力、文脈力、交渉力など、一般にコミュニケーションに必要だとされる能力以前に、まずはどんな対面状況でも問題なく応対できるようになるための、社会を生き抜くための力。
いわば、コミュニケーションのもっとも根源的なところにあるもの、それが対面力である。
対面力とは「状況に即応して、場や相手にアジャストしていく」。適応力である。柔軟に相手に合わせつつ、自分を印象付け、「この人とまた会いたい」と思われるための能力のことである。
そんなコミュ -
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部下に進められて読みました。
心・技・体の話に似ていました。
自分の気分はコントロールできる。
日本社会は不機嫌が得する社会になってきている。
それはおかしい。
上機嫌でいることが大切である。
上機嫌を保つテクニックがある。
要約すると、自分のマインドを巧くコントロールして、気分に左右をされない強い自分を作りましょうということでした。
仕事に活かす部分としては、気分の波があり、極力気が付いたら、違う作業をしたり、自分が得意な仕事を入れてみたりとしていますが、新たに管理職になって、それが崩れてしまったきがします。
改めて見直すのにいいかなと思いました。 -
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著者の身体論・教育論で読み解く太宰治解釈として興味深く読みました。
『新樹の言葉』の最後で、家が焼き落ちたときに乳母の子どもたちが微笑んだのを目にした主人公が「力こぶ」を入れるところに着目しているのは、この著者らしい着眼点だと思いました。この物語の主人公は、これまで筋肉にまったく力が入らない、腹が定まっていない生き方をしてきたと著者は言います。ところが、急に現われた兄妹を前にして、初めて兄になれたという感覚を抱くことになり、全身に力が入ったのだと著者は考えます。主人公のアイデンティティの形成が、力こぶを入れるときの身体感覚に象徴されていることを見て取り、そこに「さわやかさ」が感じられると著者 -
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「学ぶこと」に対する「リスペクト」がなくなってしまったという指摘は納得できます。この国の未来に対する強い危機意識が、著者にこの本を書かせたのではないかと思いますが、「あとがき」で取り上げられている子どもたちの読書や学習に対する熱気を伝えるエピソードには、まだこの国には希望があるということを感じさせられます。
ただ、大正教養主義を「リスペクト」する著者自身の好みが強く反映されていて、ドイツ哲学やロシア文学を学ぶべきだとされていますが、これには全面的には賛同できないとも感じました。もっと多くの、それこそどんな対象からでも、私たちは学ぶことができるのではないでしょうか。著者が批判的に言及している、 -
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『福翁自伝』ほかの福沢諭吉のことばを引用して、そこから「生きる指針」を読みとっている本です。
「ほとんどの日本人は、悩むことに誠実さを見出す」と著者は述べています。これに対して福沢は、自分のことを「カラリとした精神」の持ち主だと述べていました。このことばが意味するのは、「くよくよするな」というような単純なポジティヴ・シンキングではなく、独立と自由の気風に満ちた現実主義のスタンスというべきだと、著者は考えています。
とくにおもしろいと思ったのは、精神の不安定さは仕方がないところもあると著者が認めているところです。そういうタイプのひともいるし、そういう時期がやってくることもありますが、それでも -
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アウトプットに結びつけることで、勉強の効果を高めるテクニックを説いた本です。
著者が提唱する「1分間アウトプット勉強法」は、(1) 問いを立てる、(2) 三色ボールペンでキーワードを囲みながらテキストを読み込む、(3) キーワードを盛り込みながら、問いに答えるポイントを3点ほどにまとめ、メモ書きする、(4) 問いに対して1分で答えてみる、という4つのプロセスから成っています。
さらに、法律の勉強、英語の勉強、グラフの読み方といった具体的な例に即して、アウトプット勉強法の実際のやり方が説明されています。
個々のテクニックはそれほど感心することもなかったのですが、つねにアウトプットを意識する -
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佐藤一斎『言志四録』からセレクトした珠玉の言葉に、著者が解説を加えた本です。
昌平坂学問所の総長を務めた佐藤一斎は、儒学や陽明学、道教などの幅広い知識を背景に、『言志四録』を執筆しました。著者は、『言志四録』にはそうした「東洋のさまざまな学問が、いったん佐藤一斎の体の中に全部流れ込み、そこから日本人にとって重要だろうと思われるものが、長い時間をかけて一滴また一滴と絞り出されてきた言葉の集積」だと述べています。そして本書は、こうして搾り出された言葉のエッセンスを凝縮して示しています。
「克己の工夫は一呼吸の間に在り」という言葉を目にしたときには、本当に気が引き締まる思いがしました。西郷隆盛が -
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著者は冒頭で、「「頭がいい」状態が訪れると、人は幸福感を感じます」と言います。一見したところ、「頭がいい」ということと「幸福」ということとは、直接結びつかないようですが、勉強やスポーツ、人とのコミュニケーションなどで成功したときの感覚を「手応え」として自覚化し、増幅させていくことで幸福な快感を得られる機会を作り出すことこそが「頭がいい」ことだと著者は主張します。
ハンマー投げの室伏広治やスピード・スケートの清水宏保、プロ野球の古田敦也といった一流のスポーツ選手は、こうした意味で「頭がいい」とされています。彼らは、全体の文脈の中で自分が置かれている位置を把握し、文脈の中に自分自身を絡ませること -
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著者は「コミュニケーション力」を、意味を的確につかむことと、感情を理解することという、二つの座標軸が構成する平面として理解しています。ここから、ディベートによって論理力を養うというトレーニングとは異なる、著者独自の見解が導かれることになります。
ディベートのばあい、相手の言い間違いを取り上げて議論を有利に運んだり、論理をの穴をうまく利用したりすることが有効です。これに対して著者の考えるコミュニケーションは、相手の言いたいことを的確につかんで、よりよいアイディアを作り出していく、クリエイティヴな営みを意味しています。著者は、「弁証法的な対話」というかた苦しい言葉を持ち出しますが、これは、相手を -
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巷にあふれる自己啓発書の原点ともいうべき『フランクリン自伝』から、齋藤孝がとくに興味深い内容をえらび出し、そのエッセンスを著者自身の言葉で紹介しています。
手帳の活用法に関する本は数多くありますが、反復練習によって「徳」をみがくことを何よりも強調するという視点は、現代ではかえって斬新に感じます。精神論にすぎないということもできるかもしれませんが、「徳」の内容として第一に「節制」をあげ、一週間単位でチェックをおこなって改善を積みあげていくという実践的なスタイルがとり入れられており、単なる精神論というよりもむしろ成功哲学の「原点」として、真摯に学びたいと思わされました。