小松左京のレビュー一覧
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1973年に発表され、社会現象ともなった小松左京(1931~2011年)氏の『日本沈没』の続編で、2006年に小松左京氏と谷甲州(1951年~)氏の共著(執筆は谷氏)として刊行された。「続」ではなく「第二部」とされているのは、小松氏にはもともと、難民となって世界中に散っていった日本人の行く末を描く第二部の構想があったためで、小松氏と氏を慕う若手SF作家(谷氏や森下一仁氏)を中心に執筆プロジェクトが立ち上げられ、老齢であった小松氏の代わりに谷氏が執筆を担当したものである。
舞台は、日本が沈没した25年後の世界で、日本人は、ニューギニアやカザフスタンなど世界各地に散らばり、難民として様々なコミュニ -
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小松左京はデビューが31歳であり、遅咲きのSF作家といってよい。しかし、ここからわずか8年後には万博のサブプロデューサーを務めることになる。小松の30代は恐ろしく濃密なものである。
先に8年後と書いたが、万博とのかかわりはそれより前である。本書の年表に従うと、未来学研究会を発足し梅沢忠夫らと各国へ万国博の視察に行くのは1966年、小松は35歳だ。いまのぼくは、万博開催を迎えたときの小松と同年齢だが、自分が梅沢忠夫などと丁々発止のやりとりをできるとはまったく思えない。
本書の話をすると、前半は小松の学生時代を振り返るエッセイ、後半は万博に携わった顛末である。直接的なつながりがあるわけではない -
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小松左京氏の最後の長編にして未完の大作ということである。
苦労したがとりあえず最後まで読み切った。
地球から5.8光年離れたところに長さが2光年もある異常に大きい円筒形の構造物(SS)が現れる。生身の人間が調査に行くには遠すぎるので、AE(人工実存)という、知能だけではなく自我も持つような存在を研究していた人物の分身であるAEを送り込む、というところまでが序章。ここまででもボリュームがあり、内容もかなり濃密。
そのAEが地球との交信を自ら断ち、SSの調査へ自ら乗り込んでいくというところが本編。要するに本編には生身の人間は登場しない。AEは自らの別人格を作り上げ、それぞれに名前と役割を与え、その -
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ネタバレ著者初読。
小松左京の『日本沈没 上』を手にしたとき、まず感じるのはその徹底したリアリズムである。地殻変動の兆候、列島を襲う連続的な地震、社会の混乱──それらは単なる娯楽的パニック描写をはるかに超え、読者に「国家の存立とは何か」「民族のアイデンティティとは何か」という根源的な問いを突きつけてくる。
科学的知見に裏打ちされた地質学的考察は冷徹であり、国家レベルでの対応が試みられる一方、人々の生活は無情に崩壊していく。その落差が、現代に生きる我々の現実感覚と響き合う。半世紀前に書かれた作品でありながら、震災大国日本に暮らす者として、ページを繰る手に冷たい汗を覚えずにはいられない。
また、本書 -
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ネタバレ『日本沈没 下』は、上巻で提示された「予兆」が、ついに不可逆の現実となってゆく過程を描き切る壮大な終章である。地殻は裂け、都市は崩壊し、そして人々は祖国そのものを喪失する。小松左京の筆は、災厄を単なる悲劇として描くのではなく、人類史における試練として冷徹に刻み込む。
この下巻において最も重く響くのは、「国を失った民は何者として生きるのか」という根源的な問いである。日本人が民族として存続し得るのか、それとも世界に散じ、同化し、やがて消えていくのか。その切実な問いは、戦後の日本人が無意識に抱き続けてきた不安をあらわにする。作品の終盤で描かれる国土消滅の瞬間は、単なる地理的喪失ではなく、歴史と文化 -
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日本が沈みゆく中 第一部完
そして世界中に散っていった日本国民の続編は なかなか書けなかったようです
〈上〉では 日本が沈没するという予測について詳細に
〈下〉では 沈没した後の日本人の行き先と今後の生き方について多方面から検討されている
1970年代に書かれているけれど 日本から移民を打診されている各国の状況に対する言動が 今書いてもきっとそうなるでしょうねと思わせる
人も国も性格は変わらないなと思う
年齢が高い人達は 国土と運命を共にしたい派が多いのも理解できます
日本が沈没するという状況だけでなく その後をどうするか、脱出に対する経済問題までしっかりと考えられていて、やはり名作だなと -
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石毛直道さんの「座右の銘はない」に小松左京さんについて、たぐいまれな独創力と構想力を備えて、考えたことを実現できる天才として梅棹忠雄と並び称されている。
万博公園に民族学博物館ができた経緯に岡本太郎さんや小松さんの思いがあったことを知った。
さて、本書。
前半は戦中戦後の青春期。
昭和ヒトケタの僕の父母も戦中に軍国主義で平気で生徒を殴っていた教師が戦後「元々民主主義の人間です」と云っていた奴を罵っていた。そんな卑怯な教師は沢山いたんだな。
恐ろしいのは戦災孤児。僕はテレビ漫画のタイガーマスクぐらいしかイメージがなかったが、4つから7つぐらいのチビ達が大人にタバコの火をおっつけ、驚いた大人に因 -
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小松左京文学忌、沈没忌
1973年第8回新風賞
1974年第27回日本推理作家協会賞
1974年第5回星雲賞 日本長編部門 受賞
小松左京は、他「首都消失」と「復活の日」をいつか再読したいなと思っている
読んでいるつもりだったけれど 読み始めて読んでないかもという気分
映画やドラマでの印象が強いからかな
第一章で 日本列島に続く地震
小笠原諸島の小島が海底に沈む様子に危機を感じ始める
そこから 地球物理学者、地質学者らが 海底調査艇で現地調査に臨む
当時の近未来という設定
リニアが進んでなくてね、という会話があり、全くね、今もよと思う
第二章で 東京に舞台を移し
関東で続く地震は遂には -
匿名
購入済み尻上がりに
序盤があまり面白くない。本題になかなか入らず、予兆にしても軽微で、いくらなんでも周囲の反応が薄すぎ
キャラの感じもよくわからず、作画がそこかしこで無駄な見せゴマや書き込みをしていて、迫力があるというよりはただみづらいだけ
海底に行く中盤くらいからようやく話が動き始め、また作画も落ち着いてきて見やすくなり面白くなっていく
この巻以降も内政編みたいなのが多すぎなければ面白そうだから、是非セールの時にでも読んでみたいと思った -
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それはまるで2020年の世界のようすと紙一重……。
これは1960年代の作品で、当然に当時のテクノロジーをもとにしたSF。
オリビア・ハッセーや草刈正雄が出演し、ホンモノの潜水艦をチャーターするなどで話題となった1980年の映画が有名だが、小松左京の原作は映画で描かれているよりも、滅亡へのカウントダウンを、強烈に、生々しくシミュレーションし、訴えていた。
とくに、第一部「災厄の年」の終盤、命の絶える直前の文明史教授による痛烈な後悔の独白は、圧巻。
21世紀も四半世紀を過ぎようとしている「今」に当てはめた時、移動と情報伝達の伝達スピードと比例して感染スピードも増す……
そして、それは事実、起 -
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会社の読書会で後輩に「ぜひ読んでください」と紹介され、手に取った。
1970年代、高度経済成長著しく「もはや戦後ではない」と言われるほど繁栄を謳歌していたころに書かれたディストピア小説。
日本列島で次々と起こる地震に対して、ちょっと世間離れした学者1人が、地殻変動で日本が沈没するという持論を展開する。他の学者はじめ世間からバカにされ、相手にされないのだが、火山の噴火や大地震はますます激化する。
「国土が丸ごと沈没するなど、ありえない」と思うのだが、地球物理学に関する解説が詳細で分かりやすく、国形が短期間で大きく変わってしまう恐ろしい現実がジワジワと近づいてくる様子が、迫力を持って語られている。