小松左京のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
小松左京のSF長編。
突如として現れた未知のウイルスによって人類が滅亡していく様と、感染を何とか免れ最後の人類となった一万人の人々が人類復活への道を模索して行動する様が描かれる。
ストーリーは非常に面白く、示唆的だった。
「人類の滅亡」さらに「人類の復活」という壮大なテーマを描き切ることができる作者の力量には脱帽する。
本作で人類の滅亡の直接的原因となったのは未知のウイルスだが、その背景にあるのは大国間の既知の対立である。彼らの対立がもたらす際限なき軍拡の結果として開発されたウイルスが漏出し、そしてこの事実も「軍事機密」の壁により世界の防疫体制に向けて発されることはなかった。
故に、世界中の人々は必死に闘いながらも、何故人類が滅ぶかもわからないまま、惨めに死んでいく。この凄惨な描写は本書の山場のひとつだろう。
本作における作者のメッセージは、作中でも何度も語られるように、「人類間の対立を終わらせ、種としての普遍性を獲得すること」の重要性である。
宇宙や地球レベルから観測すれば、人間など、文明など、表皮をなぞるちっぽけな存在でしかない。そんなちっぽけなもの同士の価値観の違いなどで争っておらず、もっと大きな存在に目を向けてそれを乗り越えるべきだと説く。人間的な精神が巨大な物質に勝つことを目的としなければならないと訴えるのだ。
本作は1964年に発表された作品であり、旧冷戦の緊張が最高潮に達していた頃に書かれたものである。故に米ソの対立や軍拡が本作の一つの大きなテーマとなっているわけだが、現代に生きる我々もこれを杞憂に満ちた妄想だと切り捨てることはできないだろう。
確かにソ連は崩壊し、核ミサイルの応酬を招くことも、未知のバイオ兵器が暴走することもなかった。しかし旧冷戦が終結した後も大国間の軋轢と対立は残っている。ロシアはウクライナに攻め込んで今も戦争をしているし、中国はアメリカをはじめとする西側諸国への反感を隠そうともしない。いつこの対立が暴走して、人類を滅亡の道に誘うかはわからない。
さらに我々は2020年からのCovid-19の流行を本作と重ねずにはいられない。幸い、このウイルスは人類を滅亡させる前に自ら弱毒化し、人類との共生の道を選んだために人類が絶滅することはなかった。
さらにかつてない速度でワクチンを作り上げ、我々はここに人類の科学の崇高さを感じた。だがそれは同時に世界に「ワクチン格差」を表出させ、このことが現在の発展途上国の人々の将来の反感の種となってしまったとも言える。
現時点でCovid-19の詳細の発生原因は判明していないが、中国武漢の軍事研究施設から漏出したといつ説もある。発生から3年以上経っても詳細の調査ができなかった今更、これが明るみに出ることはないだろう。しかしこれが事実であるにしろないにしろ、そうした説がまことしとやかに囁かれる現状が非常に危険な状況なのだ。
「人類は試行錯誤し、間違えながらでしか前に進めない」これはある程度は真実だろう。
しかし、その試行錯誤がいつか取り返しのつかない事態を招く可能性は常にあることを肝に銘じなければならない。人類の為したことがいつも人類でリカバリーできるとは限らないのだから。 -
Posted by ブクログ
本作品が出版されてちょうど50年とのこと。完全なるフィクション、とあるが、そうとは思えない読後感です。
相当科学は進歩したんでしょう。でも「日本沈没」が起こらないなんて言えない。
自分が突然難民になったら、なんて想像をしたことがない。そんな必要もなかった。ホント自分のいるところは平和なんだ。
著者の息子さんによる「文庫版にあたって」に、執筆動機は「戦争」だったと。「日本」を愛しているがゆえ、叱咤を込めて、日本人とは何か、日本とは何かを考え直したと。
天災も怖いが、人災も怖い。
長らく執筆をためらわれた『第二部』をしばらくしたら読んでみよう。 -
購入済み
緊迫した場面が続きますね
この巻は日本海溝の調査で終始した感じでしたね。小野寺さんは原作の第2部でも活躍しますが、この辺からしんかいのオペレーターとしての突出した技術が出てくるのが良かったですね。
数学者の中田先生が出てくるのはもう少し先なのでしょうね。この方も割とキーパーソンです。 -
ネタバレ 購入済み
良い出だしでしたね
日本沈没の原作は何度も読んでいますが、映画等はあまりちゃんと見ていません。
一色さんによるこの作品は40年ほどアップデートされていますが、基本的な登場人物は概ね一緒のようですね。玲子さんの設定はリメイク映画に近いのか、だいぶ変わっていますね。
冒頭部分とかは結構、アレンジされていますね。
主要登場人物の1人、田所教授と日本のフィクサー・渡老人の場面が1巻終盤に出てきますが、こちらは重要な場面なので、ほぼ原作依拠でしたね。
科学者としての重要な資質、田所教授の言っている通りだろうと思いますね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ恐怖小説と銘打ちながら、結構SF寄りというか、ほぼSFです。共に行間から世界観を立ち昇らせ、読者の想像力を100%喚起することに心血を注ぐ、SFとホラーという両ジャンルの親和性の高さを見せつける短編集です。
1960〜70年代に発表された古い作品ばかりですが、今読んでも本質的に古びていないのがさすが。
どの作品も、不条理極まりない展開をしつつ、最後にちゃんと理屈をつけているのが、SFテイストを感じさせる1番の要因だと思います。まぁ、その理屈自体がとんでもない作品も多いんですけど(笑)この振れ幅の広さこそ、まさにSF。
鴨のお気に入りは、「怨霊の国」「飢えた宇宙」「葎生の宿」。「怨霊の国」は、ホラー風味を前面に出しつつも、物語の骨格に「ゴルディアスの結び目」と同様の問題意識が貫かれています。「飢えた宇宙」は、宇宙×SF×吸血鬼というぶっ飛んだ三題噺ながら、最終的には「あー、なるほど・・・」と納得してしまうこの力技よヽ( ´ー`)ノ「葎生の宿」は、とてもリリカルでセンチメンタルな結末なのですが、そこに至るまでの展開が破壊力あり過ぎて、最後の詩情がどこかに吹っ飛んでしまう、という(笑)いろんな意味で、SF者にこそ読んでほしい作品集ですし、ジャンル関係なく「面白い本が読みたい!」という読書子にも、ぜひオススメです! -
Posted by ブクログ
ネタバレ小松左京作品をちゃんと読んだのは初めてだと思います。ショートショート「ある生き物の記録」は「誤解」とかいくつか既読の作品があるのでアンソロジーとかで読んだのかもしれません…記憶違いでなければ。
ハードなSFで好みでした。日本を、人を諦めたくない…何度でも戦争や災害の危険を警告する、そんな作品が多かったように感じます。地球や日本が消滅したり、消滅していたりする世界がたくさん。
加えて、自動車の描写が印象的でした。自動車を信用していないのかな。平城京建設のお話も好き。
長編も読みたくなりました。星新一さんのショートショートはSFなのもそうでないのもあるので実写もいけるけど、小松左京さんのショートショートはSF色が強いのでアニメの方が合うのかも。GAINAX制作のアニメも観たいです。