小松左京のレビュー一覧
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ついに日本列島が海に沈む。それまでの脱出劇から政治家の対応など、どれも真に迫る。2015年から2016年にかけて、火山の噴火が相次ぎ、熊本で大きな地震も発生した。この作品は、もしこのような未曾有の災害が発生したときの状況をシミュレーションしてくれている。政府の災害担当者は、「日本沈没」を読んでおくべき、緊急事態発生時の対応マニュアルのベースになるから。
この作品は災害発生時の行動指針を知るだけでなく、ユダヤ人など祖国を失った人々の気持ちを考えることもできる。いかに祖国というものが大事なのかも再認識させてくれる。古くささを感じさせない傑作だ。 -
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2011年3月11日の東日本大震災からまだ復興していないなか、2016年4月14日の熊本地震が発生した。地球物理学的な時間の観点ではほぼ同時に発生した地震ともいえよう。そろそろ東京や南海トラフがやばいことになるんじゃないかと多くの人が思っている。そんな状況を予言したかのような物語。有名な作品なのであれこれ書くこともないのだが、このような時代だからこそ本作品を読んで、さらに恐怖を感じた。天災はいつやってくるか分からない。だから怖い。読んでいるうちにいきなり地震が襲ったらどうしよう、など作品の内容以外のところでパニックになりそうだ。恐怖を引き連れつつ下巻を読む予定。
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リメイクの映画は興味を引かれなかったけれど、「第2部」が出たとき、「第1部」からまた読まねば、ということで、30年ぶりで読んだ。
30年前、最初に読んだ当時、『果てしなき流れの果てに』だとか『復活の日』だとかと比べて面白くないと思った覚えがある。設定が宇宙や未来でなくて、もの足りない気がしたのである。そもそも小松左京は、世界に離散しながら強い影響力を持っているユダヤ人に想を得て、国土をなくしてさまよう日本人の未来史のようなものを構想したのだが、国土がなくなる部分を緻密に描いたらそれだけで終わってしまったのだ。月植民地にいち早く入植する日本人とか、火星に日本国を再興しようとする日本人、あるい -
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小松左京の短編集です。
読後の感想一言、 怖い。
現代風にアレンジすれば「世にも奇妙な物語」で
出てきそうな内容です。
内容としては、
古事記などの古典や大戦中の話など織り込まれていたりするので、
ものによっては少し良く分からないものもあったのですが、
うそ寒い感じだけは全作品共通です。
古典文学がお好きな方には面白いかもしれません。
個人的には「召集令状」と「くだんのはは」、
「影が重なるとき」、「黄色い泉」が好きです。
「影が重なるとき」と「召集令状」はパラレルワールド感のあるSF調、
「くだんのはは」は大戦中の神語(?)調、
「黄色い泉」は古事記のイザナギが黄泉 -
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下巻は中盤まで政府やら国連やらの話が書かれていて、なかなか読み進めるのが大変でした。しかし、第6章の「日本沈没」は、一気に読み進めました。中央構造線大地震から始まり、その後は日本が地震や火山の爆発でとんでもないことになっている時に北アルプスを縦走して遭難した人々を小野寺が救助に行くというシーンが描かれています。この部分は本当に面白かったですね。舞台となった新潟県南部と長野県北部の地理がもともと自分の頭の中に入っていたのも一因かと思います。自分が住んでいる街の名前も数回チラッと出てきましたし。そして起こる高妻山の爆発。高妻山が爆発したのであれば、そこから少し東にいったところにある黒姫山や飯縄山、
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地震は大嫌いですが、地学分野は好きなので読んでみました。この本に書かれていることが実際には起きてほしくないですね。特に東京大地震の被害が本当に桁違いですね……。
また、300ページくらいからの田所博士の講義が、完全に地学の教科書と化していました。(多少フィクションは含んでいますが。)また、政府が入ってくるところから内容が少し難しいと感じました。まぁなんとかなるレベルですが。それにしてもこれが40年前に書かれていたとは……。小松左京さんの本を読んでみたのはこれが初めてですが、これを読んで「凄い作家だ」と思いました。
面白いですが、多少人を選ぶ小説かもしれません。ただ、地学、地理の好きな人は読ん -
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「お召し」だ、とすぐにわかった。
巻末にもそのことが書いてあるが、小松左京の「お召し」と違うのは、本作での年齢ラインが18才であることと、両方の世界が描かれていることである。
「お召し」の方は、混乱のあとの「明日はお召しの日だ」という少年の静かな思いが印象的なのだが、本作はもちろん、まったく違うテイストで、オープニングはとても「萩尾望都的」である。ここからどういう世界が展開されていくのかとても楽しみである。
本当に、「平穏無事な日常生活を送って行くこと」って実はとてもむずかしくて、危うい均衡の上にかろうじて成立しているものなんだよなあと思う。 -
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1993年に刊行された作者自身のセレクトによる怪奇、SF奇談の15話から成る短編集。
日本古来から伝わる伝説から怪談や妖怪の怪奇譚のみならず、時空の歪み、超能力といったSFテイストのストーリー、過去の経験から戦争に対する日本人の深層心理に根付く不安などバラエティーに富んだ小松左京の手腕がさえる『恐怖』のショートショート。昔から伝承される怪談も、科学に裏打ちされたSFも、人が感じる恐怖には“時代”は意味を持たないという「日本民族研究家」であり日本を代表するSF作家の小松左京独特の視点が光る。
中でも『件の母』は主に関西方面で語られた都市伝説の一つ。敗戦の色が濃くなった戦争末期の混沌とした社会不安 -
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なんかの小説で「SFは難しい」と書かれてて、そのときはよく分からなかったのですが…ああそういうことね、と骨身にしみて理解させられた一作。
製作当時、やっとこさっとこ一般化したくらいのプレートテクトニクスを理解しきった上で、その上にフィクション的な設定を載せてきてる。フィクション設定を載せる前の背景が正確・緻密であるが故に、フィクションであるにも関わらずどこまでがホントでどこからがフィクションかが分からなくなる、そんな一作。
製作当時は「SF」であった部分の一部が、40年の年月を経て「現実の科学的モデル」となっているところもあり、さらに読みとくのが難しくなっている一冊。
こんな本も含めて乱読し