伊藤比呂美のレビュー一覧

  • 禅の教室 坐禅でつかむ仏教の真髄

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    ネタバレ

     禅入門、である以前に禅僧による仏教入門としてもそうとうわかりやすい。
     で、ちょっとした符牒だの専門用語が出てくるたびに話を止めて確認する伊藤比呂美さんが非常に読者にとって頼もしい存在に思えてくる。

     座禅は「本当の自分探し」だの「潜在意識の覚醒」だののためにあるんじゃなくて、ただそこに座っていることで身のまわりとのつながりを確認し己を調えるものなのだ、という辺りが本書の肝で、修行は苦しいものでも特別なものでもない、というところにこの先の未来での布教のヒントがあるのではないかしらん。

     とまれ、仏教とはナニか、を説明するために手元に置いといてもいい本なんじゃないかしら。

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    2016年06月28日
  • 日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集

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    宇治拾遺物語しか読んでないけど実に良かった。文章に芸があるから、こういう皆が名前だけ雰囲気だけ知っている作品をリライトすると相乗効果で作品が映える。

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    2016年06月11日
  • 日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集

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    ネタバレ

    どの説話もとても面白かったです。「瘤取り爺さん」のように私の世代の人ならだれでも知っている話も収録されていました。昔は日本人は性に対して開放的であったことがうかがいしれました。なにより笑ってしまったのは『宇治拾遺物語』の町田氏の訳文です。大阪弁のどぎつく、汚いことはなはだしい。「新妻が平仮名の暦を作って貰ったら大変なことになった話」ぶっ飛んでいます。ハチャメチャが楽しいです。でも、宇治って京都ですよね。この際そんなことは気にするな、って言われそうですが。『発心集』は仏教そのものですね。

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    2016年04月16日
  • 日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集

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    ネットで読んだのだと思うけど、どこかに「これは宇治拾遺物語の再発見だ」と書かれていて、まさにその通り! と膝を打った。
    ただ単に面白おかしく書かれているのではなく、原文の面白味を充分活かしていると知った時の衝撃たるや! 堅苦しいと思われていた古典がこんなに愉快によみがえるとは思いもしなかった。

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    2016年02月17日
  • 読み解き「般若心経」

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    僧侶が書いた本かと思って買ったのだけれど、そうではなかった。
    50代になった女性で、詩人で、特定の宗教を持たずにこれまで生きてきて、業とか、死にゆく親しい人々とか、慈しみとかの日々の中で出会ったお経。
    紡ぎ出す言葉の美しさと救い。

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    2014年02月22日
  • とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起

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    カリフォルニア在住、更年期真っ只中の作者が、自身の不調を抱えながらも太平洋を越え、
    まだまだ手の掛かる小学生の娘を連れ、重い荷物を引きずって熊本への移動。
    何度も何度も往復する。親の介護のために。

    母親は入院。一人残された父親は何もする事がなくて、何もする気が起こらず半分鬱のよう。
    幼い頃は自分を守ってくれた偉大なヒーローだった父親が、老い果てた今は、
    家庭をほったらかして何週間も側にいる娘を心配する事もなく、弱みを見せるばかり。

    ユダヤ系英国人の文化に育った外国人の夫は
    作者の2倍以上の年齢というから、こちらもかなりの老境。
    離れて暮らす癇癪持ちのこの夫と、メールのやり取りはするが異文化

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    2014年03月07日
  • 女の絶望

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    しろみ先生が相談者の悩みを自分の事のように受け止め、
    その人と同じ立場に立って考え、
    苦しみを共有する姿に敬服の念を抱いた。

    悩みを解決するよりも
    いかにして相談者の心を楽にしてあげるのかに
    心を砕いておられる。

    大海のような包容力と
    人間に対する深い慈愛を感じた。

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    2014年03月22日
  • とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起

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     伊藤比呂美さんの、実生活の話。母親がボケ始めたと思ったら脳梗塞になり、父親の足元もおぼつかず、再々婚の夫(ユダヤ人)も粉瘤などこさえて老いてきて、長女はふさぎこみ、次女は行方不明、三女は状況に振り回される。熊本とカリフォルニアを行き来する生活。だんだんとみんな老いてきて、自分のちちははの死を見つめねばならなくなって。ほぼノンフィクション、なんだろうと思います。現在進行中のblogと比較すると、当然本作の方が本質に肉薄しています。とうぜんです。文藝なんですから。これで群像に載っていたんですから。

     石牟礼道子さんとおぼしき方との話があって、一緒に梁塵秘抄(パソコンが一発で変換した。えらいな

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    2013年07月02日
  • 死を想う

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     80歳、パーキンソン病の詩人、石牟礼道子さんと詩人・伊藤比呂美さんの「死を想う」こと。伊藤が聞き手となって、石牟礼の家族の死のこと、そして自分自身の死のことを聞いている。
     伊藤自身も両親を介護しながらだから、いずれかならず訪れるであろう身近な人や自分自身の「死」について考えている、うちに、話は「梁塵秘抄」に行き着く。後白河法皇の編纂した歌謡集で、平安時代の当時からどのようにして死んでいくか(そして、仏になるか)はずっと人々が思い悩んでいたということらしい。

     仏は常に在せども 現ならぬぞあはれなる
     人の音せぬ暁に ほのかに夢に見え給ふ

     なにかこう、人々が朝早くぱっちりと目が

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    2013年07月01日
  • 女の絶望

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    人生相談をまとめた本だけど、完全なるフィクションでもあるそうで、ジャンルとしては何になるんだろう。
    とにかく文体が江戸弁で歯切れがよくって爽快。読みながら時に大笑い。
    「女の人あるある」がてんこもりすぎて、これは必読の書だと思う。解説にあるように、若い女の子にも、男の人にもおすすめです。
    悩みに真摯に沿う「しろみさん」の回答が、時に具体的に、時には相談者に共感を示し、常にちゃんと「答え」になっているのがうれしい。さすが人生の達人。やさしくて、かっこいい。
    文庫版は金原瑞人の解説も秀逸。これを読んで佐野洋子氏の「クク氏の結婚、キキ夫人の幸福」も読んでみたくなった。

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    2013年04月18日
  • とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起

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    母の苦、父の苦、夫の苦……。
    母は入院、父は犬とふたりきりでさびしい、夫には瘤ができ娘はやせ細っている。伊藤比呂美は人々の苦を案じながらスーパーマンのように家庭のあるカリフォルニアと実家の熊本を飛行機で行ったり来たり。

    そうしてたまに思い出したように巣鴨のとげ抜き地蔵にお参りして皆の苦のとげを抜いてもらう、はたまた「みがわり」をもらっていく。
    「みがわり」をオグリさんに渡す伊藤比呂美の言葉はまさに巫女さんのそれのよう。この言葉が心地いい。
    エッセイなのか小説なのか詩なのか、なんだかそんなものたちの中間のような本でございます。

    中原中也をはじめとする詩人たちの「声」、それから娘や夫のはなす英

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    2012年10月02日
  • あかるく拒食 ゲンキに過食 リターンズ

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    二十年以上前にかかれた本。その頃の私と同じような年頃のこたちへのインタビューです。
    年中ダイエットしつつ太ってたあの頃。
    今だって、飲食のコントロールは難しいわあと日々思っています。

    家族という強迫から自由になれば~

    という、斎藤さんの言葉に同感です。

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    2012年09月06日
  • おなか ほっぺ おしり 〔完全版〕

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    二人目の子が生まれる前から上3歳半・下1歳半になるぐらいまでの、(わが経験的にも)怒涛の時期に育児月刊誌に寄稿されていた文章。
    レインボウママなりたての(多くはあとになってみればたいしたことのない)不安も迷いもそのまんま、体調不良やストレスの波も、「仕事ができない」「自分の時間がほしい!」という本音などもせきららに。そんなこんなも25年後に読み返せばみなよい思い出、というところまでわかるのが完全版のおもしろさ。
    自分の通ってきた既視感たっぷりのキモチやエピソードがあまりに次から次に登場して、ほっとするというか、しみじみを通り越してはげしく共感してしまう。

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    2012年01月24日
  • とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起

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    伊藤比呂美のとげ抜き 新巣鴨地蔵縁起を読みました。
    ずっと昔、結婚する前にこの人の良いおっぱい悪いおっぱいと言う本を読んで、「がさつ、ぐうたら、ずぼら」という合言葉にしびれてしまったのでした。
    その頃からのファンなので、友人の読書欄に載ったのを見てすぐに買って読んでみました。

    読み始めてみて、その文体に驚きました。
    普通の文章ではない、話し言葉でもない、講談調でもない、詩でもない、頭の中にわき出てくる言葉をそのまま書き下ろしたような文体なのです。
    日本語だけでなく、英語のエッセンスもふんだんに盛り込まれているようです。
    最初は面食らったのですが、そのうち煮込んだモツ煮のような文体に引き込まれ

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    2011年10月19日
  • 女の絶望

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    全ての女友達にプレゼントしたくなった。
    結婚と離婚を繰り返し、子供を育て、若き日は摂食障害をわずらい、今は外国人と再婚しカリフォルニアに住む。詩人でもある彼女が、彼女独特の言葉をもってして私たちに語りかける人生というものは、ただただうなずくしかない。

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    2011年04月03日
  • 女の絶望

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     待望の文庫化。23の女としての自分のぬるさが怖くなるとともに(これからもっとずっとしんどいんだろうなって)、ひとりじゃないって、みんなしんどいしんどいって思いながら凭れたり凭れられたりして生きてるって勇気づいた。しろみ先生ありがとう。詩じゃないのってどんなんだろうと思ったけど、伊藤比呂美のリズミカルな言葉は気持ちいい呪文。

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    2013年02月28日
  • 日本ノ霊異ナ話

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    腐敗した屍の肉であったり、女または男の性液(精液)であったり、かつて体から流れ出た生臭い血であったり、この本全体から、酷く粘着性の強いぬちゃぬちゃしたものを感じる。
    それらは濃厚な死臭を撒き散らせながらも、今生への糸を引くような未練をも感じさせ、少し泣けてくる。
    伊藤の言葉を「即物的な営み」と表し、即物的女性観を語る津島佑子の解説もとても良い。

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    2011年02月26日
  • ふたつの波紋

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    題材となる人物の知識が全くなくても、難しい話題で理解が追いつかなくともとても面白く読める。そしてそれらを読んでみようと思わされる。町田康のファンではあるが伊藤比呂美さんは知らず、これも読んでみたいと思った。
    あれだけ個性の強い町田康がどんな想いで文を書いているのか見えたこともとても面白い。


    石牟礼道子
    種田山頭火、村上護
    太宰治、中原中也

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    2025年11月18日
  • いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経

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    藤田一照さんとの対談本で読んでから気にかかる存在であったので、どんなものかと読んでみた。

    なんだ、間にエッセイが挟まれるのか、ふーんと思ったがその幕間のエッセイも心地の良いワードセンスでさらさらと。

    多分に評価の分かれそうな現代語訳だが、音とリズムを大事にした訳になっていて非常に詩人らしいし比呂美さんらしい。

    僕は法事で聴くお経は音楽だなと思って毎回楽しんでいるけれども感覚が似ているように思う。

    興味の入り口はそこで、仏教に興味を持ち、ようやく今年に入って重い腰をあげて歩み始めたので、僕の知識は雀の涙だが、また10年後にこの本を読むと感じ方も変わりそうだなと思うよ。

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    2025年10月23日
  • 石垣りん詩集

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    光村図書の中学二年生の教科書に「挨拶ー原爆の写真によせて」が載せられている関係で、石垣りんの教材研究をしようと思って、友人がいっしょに読んでくれることになった一冊。石垣りんの詩以上に、伊藤比呂美の解説が、ものすごく丁寧に一つひとつの詩集の流れを追っているところの方が、ものすごく印象的で、なるほどと思ってもう一度読み返してしまった。
    第一詩集『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』は、伊藤比呂美に、「率直すぎて、現代詩というより、ほとんど社会の正義と反戦と平和のプロパガンダだ。アジテーションだ(p287)」と言わしめる戦争をテーマにした詩に始まり、「身のまわりのp日常的なことがらを見つめ始める(p2

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    2025年10月22日