伊藤比呂美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
随筆だと思って読み始め、削ぎ落とされた文章と比呂美節に翻弄され、ああ、これは詩なのね、と途中で読み方を改めた。
鴎外の小説に出てくる「花子」。元芸者が日本の伝統芸を負って世界に打って出る。その腹の座ったまがいものぶりが、最後、自分の詩の朗読でクロスする。
作者はそれを「移民芸」と名づける。彼の地で生き抜く術の力強さ。奇妙な完成形の力強さ。
ドイツでの詩の朗読の舞台を、見ていないにも関わらず、まるで観客としてそこにいたかのように感じた。足を踏み鳴らし、四股を踏む伊藤比呂美と、ゾフィー・ショルの役をやったドイツの俳優の二人が融合し、舞台を震わせる。
この結末が書けるのが、伊藤比呂美なのだよね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ飛翔能力があるから詩人なのであって・・・(伊藤
歌詞って、歌ってなんぼ、聴いてなんぼ(町田
歌いたいと思うもの、ああいいなと思うもの 音と発せられたところがすべて
カッコよくした文章が声に出したとき、意味の分からない音になってしまう可能性
語りもの 目の前で音が発せられているかのような錯覚 (伊藤
「私」にこだわり続ける 実は「私たち」
自分らしい語彙 本当の意味で使えるか 世界観 (町田
自分の力で何かをコントロールしたい (伊藤
比喩で話を転がす、小ネタを入れ込む話芸 (伊藤から見た町田
言葉も植物も私たちの周りに繁茂する(伊藤
言葉にはそれが生まれてきた理由や成り立ちがあ -
Posted by ブクログ
此処にひとりのほとけさまがいる。
もはや、詩人伊藤比呂美を聞き手にした石牟礼版「歎異抄」。
人は何故生き、何故死ぬのか。
‥‥次の世というのは、あるんだと思いますよ。「次の世は良か所に、行かれませ」って言いますよ。亡くなったあとに、体を清めてあげるときに。
‥‥人間というのはね、「願う」存在だと思いますね。(略)逆に言えば、人間はそれほど救済しがたいというか、救済しがたい所まで行きやすい。願わずにはいられない。
‥‥(この世に生まれた意味は?と聞かれて)役割とも違いますね。役割を自分は見つけたとしても、その役割を果たすのは至難の業で、ただ、なんか「縁」がある。
‥‥(死とは何かを聞かれ)(賢 -
Posted by ブクログ
『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集』は一冊も読んでいないし読む気もないが、現代語訳をした方々が何を思ったのか、そして単純に「平家物語」と付くものは何でも摂取したいという気持ちから手に取りました。
「平家物語」古川日出夫
…『平家物語』のなかで人は本当によく泣きますよね。…月を見て泣きます。風が鳴ると泣きます。…現代のわれわれは近代ヨーロッパ以降に教育された泣き方しか知らないんです…現代の教育が入ってくる前の人は別の感性をもっていて、別のことで泣いていたはずなんです…(p.48)
私は月を見て泣き、空の色が変わっていくのを見て泣く人間なので、そうか私は別の感性で生きている人間なのかと指摘された