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Posted by ブクログ
おすすめしたいのは、子育てに悩んでいる人。
殺処分寸前の野犬(野良犬にあらず)の仔犬を引き取って、大人のシェパードと2匹の猫と一緒に飼うはなしなのだが、この仔犬がなかなか馴れないだけでなく、決してリードをつけさせない。この悩みが大きなテーマとなっている。
犬を飼うということは、リードをつけて散歩させることを含んでいる。犬の健康や楽しみ、ストレス解消のためにも散歩は絶対に必要と誰もが思う。広大な敷地を持っていて絶対に脱走できない塀があれば自由に駆け回らせれば良いかもしれないが、そんなことが可能な人はほとんどいないのだから、リードをつけないわけにはいかない。が、この仔犬チトーはリードをつけられそうになるとほとんど殺されるのと同じくらいの恐怖を感じているようなのである。
自分がもっと若かったら、仕事が忙しくなければ、あるいは他に人間の家族がいたら、他の犬猫がおらずチトーと自分の一対一だったら、つけられたのではないかと思う。
犬好きのアドバイス(なぜ散歩させないのか、リードをつけないのか、こうしろああしろ)に凹む。
ご本人も書いているが、本当に子育てと似ているのである。
おむつがとれないとか、歩かないとか、話さないとか、子育てには悩みが付きまとう。それがすんなりできた子どもの親は(もちろん良かれと思って)こうしたらああしたらとアドバイスするが、とっくにやっているのである。でもできない。自分が悪いのか、環境が悪いのか。もっと自分が若く体力があったら、仕事がなかったら、他の子の育児がなかったら、家事しなくていいなら、もっと向き合えればどうにかなるのか、とか。
しかし、仕事をやめることも家族構成を変えることも、若がえることもできない。
だとしたら、受け入れるしかないこともある。腹を括ってやるべきことをやり、あとはなるようになれと。
チトーは散歩には行けないが、先住犬猫とも仲良くできるし、伊藤さんのことも信頼している。来た頃に比べればよくなついているし、粗相も減った。成長している。
そういう犬もいる、と受け入れて生きていく。元気で情緒も安定している。信頼できる犬と人がいる。もしかして、チトーがもっと大人になったら(犬猫は肉体的には1年で大人になるが、精神的には3〜4年かかる感じがする。5年経つとかなり落ち着く)、リードを受け入れてくれるかもしれない。そんな日が来るかもしれない。来ないかもしれないが、それならそれでもいい。
伊藤さんはケアするのが本当に好きなんだと思う。また、相手といる時は全力でやっている。今まで子育ても介護も、学生と対峙するときもそうしてきたのだ。その本気が相手にも伝わるから、信頼されるのだと思う。
犬猫植物と暮らすのも、「プライベート」「仕事」とわけられるものではなく、まるっと一つ。
相手の生き方をありのままに、そして自分の生き方も否定せず受け入れるということでもあるな、と思った。
Posted by ブクログ
育児をしている母親の心をうたった『今日』という詩を、育児で疲れ果てていた頃に読んで涙した。そして、助けられた。その詩を訳したのが伊藤比呂美さんだった。さっき、調べるまで、この詩の作者が伊藤さんだと思っていた。訳者だったのか…
誤解をしたままこの本を手に取った。犬や猫、植物が大好きな作者。熊本に住んでらっしゃるそう。でも、仕事で家を空けることも多く、その度に、留守の間、動物と植物のお世話を頼む人を探し求める生活をしている。
野犬だった仔犬を保健所から連れて帰った。チトーと名づける。野犬は野良犬より更に懐かない。懐かないだけではなく、部屋中荒らされ、物を破壊され、糞尿で汚される。よく耐えられるなぁと正直思う。
私もかなりの犬猫好きだ。以前飼っていた柴犬が痴呆になり、晩年は2年近く、ちょっとした買い物以外はほぼ家に閉じこもりで介護した。ちょっと側にいない間に部屋中うんちまみれなんてこともよくあった。だから大変さは少しはわかるつもりだ。でも、それは長年一緒にいた愛犬だからできることであり、新たに野犬のお世話をするのとは随分違う。本当に頭が下がる。
時々登場する、作者が大学で教えている生徒に対しても、本当に懐広く、慈悲深い。
チトーの姿を見たくて、画像を探してみた。かなり可愛い。たまらない。同居犬のクレイマーと猫のメイとテイラーも見ることができた。大満足!
ここまで動物を愛せるものなのか…と信じられない気持ちと、その偉大さに圧倒されっぱなしだった。
(一番感動したところ)
◯犬猫のいない暮らしをベルリンで3ヶ月やってきました。快適で、便利で、1日の予定が自分中心に作れて、どこへでもすいすい行けたんですが、行きながら、犬がいない犬がいないといつも思っていました。犬がいれば犬がいればとも思っていました、もっともっと充実してるだろう、と。
(どうしてここまでできるんだろう?の問いのヒントになったところ)
◯世話の必要なものたちを、わざわざ集めて、浮世の義理みたいなものを人工的に作り上げて、情で自分をがんじがらめにして、必死で世話しているのはなぜか。自分が、この浮世にどうにかこうにか引っかかって、生き抜くためなんではないか。
◯『これだけは心に決めています。私は、チトーが死ぬまで、死ねません。』
これは愛するペットを飼っている全ての人に共通する想いでしょう。チトーがリードをつけて楽しくクレイマーと散歩できる日が来るといいな。
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