あらすじ
親を看取った、夫も見送った、子どもたちは独立した。根っこのない寂しさをひしひしと感じる六十代半ば。女ひとり、自然と寄り添い、犬猫と暮らす日々。生まれたり死んだり咲いたり遊んだりする生きものたちの傍にいると、自分自身の「生きる」もしっかと受け止められる。そんな人生を楽しむ比呂美さんの家に、野犬の仔犬がやってきた。ワンオペ、シニア、多頭飼い。不自由だけれど愛おしい、犬猫たちとの賑やかな日々を綴る。
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Posted by ブクログ
犬好きの私には身につまされる
もうマイラバー(犬)がいなくなったら、飼えないかなと思うと、すでに涙が
人間と動物が好きなように、寄り添えるといいな
Posted by ブクログ
おすすめしたいのは、子育てに悩んでいる人。
殺処分寸前の野犬(野良犬にあらず)の仔犬を引き取って、大人のシェパードと2匹の猫と一緒に飼うはなしなのだが、この仔犬がなかなか馴れないだけでなく、決してリードをつけさせない。この悩みが大きなテーマとなっている。
犬を飼うということは、リードをつけて散歩させることを含んでいる。犬の健康や楽しみ、ストレス解消のためにも散歩は絶対に必要と誰もが思う。広大な敷地を持っていて絶対に脱走できない塀があれば自由に駆け回らせれば良いかもしれないが、そんなことが可能な人はほとんどいないのだから、リードをつけないわけにはいかない。が、この仔犬チトーはリードをつけられそうになるとほとんど殺されるのと同じくらいの恐怖を感じているようなのである。
自分がもっと若かったら、仕事が忙しくなければ、あるいは他に人間の家族がいたら、他の犬猫がおらずチトーと自分の一対一だったら、つけられたのではないかと思う。
犬好きのアドバイス(なぜ散歩させないのか、リードをつけないのか、こうしろああしろ)に凹む。
ご本人も書いているが、本当に子育てと似ているのである。
おむつがとれないとか、歩かないとか、話さないとか、子育てには悩みが付きまとう。それがすんなりできた子どもの親は(もちろん良かれと思って)こうしたらああしたらとアドバイスするが、とっくにやっているのである。でもできない。自分が悪いのか、環境が悪いのか。もっと自分が若く体力があったら、仕事がなかったら、他の子の育児がなかったら、家事しなくていいなら、もっと向き合えればどうにかなるのか、とか。
しかし、仕事をやめることも家族構成を変えることも、若がえることもできない。
だとしたら、受け入れるしかないこともある。腹を括ってやるべきことをやり、あとはなるようになれと。
チトーは散歩には行けないが、先住犬猫とも仲良くできるし、伊藤さんのことも信頼している。来た頃に比べればよくなついているし、粗相も減った。成長している。
そういう犬もいる、と受け入れて生きていく。元気で情緒も安定している。信頼できる犬と人がいる。もしかして、チトーがもっと大人になったら(犬猫は肉体的には1年で大人になるが、精神的には3〜4年かかる感じがする。5年経つとかなり落ち着く)、リードを受け入れてくれるかもしれない。そんな日が来るかもしれない。来ないかもしれないが、それならそれでもいい。
伊藤さんはケアするのが本当に好きなんだと思う。また、相手といる時は全力でやっている。今まで子育ても介護も、学生と対峙するときもそうしてきたのだ。その本気が相手にも伝わるから、信頼されるのだと思う。
犬猫植物と暮らすのも、「プライベート」「仕事」とわけられるものではなく、まるっと一つ。
相手の生き方をありのままに、そして自分の生き方も否定せず受け入れるということでもあるな、と思った。
Posted by ブクログ
面白かった!まあ繰り返して飽きる部分もあるんだけど。カノコちゃんサラ子ちゃん時代からファンだから。私も動物が飼えたら、老後の不安と向き合わずに済むのかしら。
Posted by ブクログ
元保護犬の犬と猫2匹と一緒に暮らす伊藤さんが、野犬の仔犬を引き取って一緒に生活していく日々が日記のように書かれています。人間や人間社会におびえる仔犬は想像以上に人に慣れないらしい。シャンプーもできないから汚れも臭いも引き受けて、動物たちにまみれての生活は中々壮絶。でも、一緒に暮らす犬猫の愛おしさは生きるベースですね。
Posted by ブクログ
すごいな、比呂美さん、としか言いようがない。
こちらまで毛だらけ気分。
読んでいる最中、高橋源一郎さんのラジオ番組『飛ぶ教室』でこの本を紹介しているのを聞いた。なんか嬉しかった。
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ゆっくり読んでたのに読み終わってしまった。
伊藤比呂美の新刊。
私は犬は飼ってないし、動物臭が苦手なのに、伊藤比呂美の生活臭を味わいたくて(笑)読む。
生き物への(多分植物も)情の深さが、心地よいのです。ここまで情が深くてもいいんだよね、とクールな現代社会に生きる私たちに思わせてくれる。
私も安心して情を垂れ流す…溢れさせることが増えてきたような?
時々伊藤比呂美読まなくてはね。
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野犬と捨て犬の野良犬は、異なるのだと教えてくれた。
著者の、チトーとの交流が詳細に書かれているエッセイ?
少々長いかな。。伊藤氏の文体がとにかく好きなら、楽しいと思う、
Posted by ブクログ
カリフォルニアから熊本に戻ってきて、6歳の雄犬クレイマーと1歳の雄猫のメイとテイラーに加わったのは、野犬の仔犬・チトー。
2ヶ月半ほどのチトーが、なかなか懐かない…から始まった日記である。
著者である伊藤さんの動物好き、植物好きがとてもわかる。
愛情がなければ育てられないし、体力もいるし、根気もいる。
うちにもラブラドールを飼っていたことがあったので、ついつい思いだしてしまう。
長期間家を留守にして帰ってきたときの様子もたまらない。
クレイマーは声をあげてすすり泣いた。にこっちまで泣きそう…。
Posted by ブクログ
育児をしている母親の心をうたった『今日』という詩を、育児で疲れ果てていた頃に読んで涙した。そして、助けられた。その詩を訳したのが伊藤比呂美さんだった。さっき、調べるまで、この詩の作者が伊藤さんだと思っていた。訳者だったのか…
誤解をしたままこの本を手に取った。犬や猫、植物が大好きな作者。熊本に住んでらっしゃるそう。でも、仕事で家を空けることも多く、その度に、留守の間、動物と植物のお世話を頼む人を探し求める生活をしている。
野犬だった仔犬を保健所から連れて帰った。チトーと名づける。野犬は野良犬より更に懐かない。懐かないだけではなく、部屋中荒らされ、物を破壊され、糞尿で汚される。よく耐えられるなぁと正直思う。
私もかなりの犬猫好きだ。以前飼っていた柴犬が痴呆になり、晩年は2年近く、ちょっとした買い物以外はほぼ家に閉じこもりで介護した。ちょっと側にいない間に部屋中うんちまみれなんてこともよくあった。だから大変さは少しはわかるつもりだ。でも、それは長年一緒にいた愛犬だからできることであり、新たに野犬のお世話をするのとは随分違う。本当に頭が下がる。
時々登場する、作者が大学で教えている生徒に対しても、本当に懐広く、慈悲深い。
チトーの姿を見たくて、画像を探してみた。かなり可愛い。たまらない。同居犬のクレイマーと猫のメイとテイラーも見ることができた。大満足!
ここまで動物を愛せるものなのか…と信じられない気持ちと、その偉大さに圧倒されっぱなしだった。
(一番感動したところ)
◯犬猫のいない暮らしをベルリンで3ヶ月やってきました。快適で、便利で、1日の予定が自分中心に作れて、どこへでもすいすい行けたんですが、行きながら、犬がいない犬がいないといつも思っていました。犬がいれば犬がいればとも思っていました、もっともっと充実してるだろう、と。
(どうしてここまでできるんだろう?の問いのヒントになったところ)
◯世話の必要なものたちを、わざわざ集めて、浮世の義理みたいなものを人工的に作り上げて、情で自分をがんじがらめにして、必死で世話しているのはなぜか。自分が、この浮世にどうにかこうにか引っかかって、生き抜くためなんではないか。
◯『これだけは心に決めています。私は、チトーが死ぬまで、死ねません。』
これは愛するペットを飼っている全ての人に共通する想いでしょう。チトーがリードをつけて楽しくクレイマーと散歩できる日が来るといいな。
Posted by ブクログ
熊本で、イヌ一匹猫ニ匹と暮らしていた伊藤さんは、野犬の仔犬も引き取ることになる。野良犬ではなく、自然の中で親犬と暮らしていた犬で、仔犬だけが保護され、殺処分を逃れ伊東家にやってくる。人に飼われた経験が皆無なので、なかなか心を開いてくれない。そんな野犬チトーを中心に伊藤家の動物たちとの日々の記録。
なかなか覚悟のいる生活だが、それが伊藤さんのエネルギーの元になっているようだ。
Posted by ブクログ
雄のジャーマンシェパードのクレイマー(6歳)、雄の灰色キジの大型猫・メイ(1歳)、雄の茶キジの大型猫・ティラー(1歳)。
3匹の犬猫と暮らしていた伊藤家に野犬のチトーがやって来た。
保健所から受け入れたチトー、ベッドの下にもぐりこみ不安そうだ。
そんなチトーが少しずつ家族になっていく日々が微笑ましかった。
今年69歳を迎える伊藤さん、自身の人生を考えながら彼等と暮らすさまに、深い愛情と覚悟を感じる。
大変な事も沢山あるだろうけれど生き物へ対する優しい眼差しが伝わって来た。
Instagramのチトーが堪らなく可愛い。