下村敦史のレビュー一覧
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後天的に障害を抱えてしまった人が、ケアやリハビリを行うために入所する施設「天使の箱庭」。
施設内で施設長が刺殺される事件が起こる。容疑者は全盲の女性。しかし、女性は殺人を否定。でも、女性は何かを隠している様子。
弁護士の竜ヶ崎は無罪を勝ち取れるのか。
といったあらすじ。
実際に裁判を見たことはないのですが、裁判のシーンは、かなりの臨場感。
劇場型裁判で、ゲームの「逆転裁判」をプレーしているかのようでした。
弁護士、検察官は頭がいいですね。
証人から、本来聞き出したい言葉を出すために、まずは別の質問で逃げ道を塞いで、それか本来聞き出したい言葉を引き出す。
実際の裁判もこんな駆け引きがある -
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中国残留孤児問題を軸に、家族と血のつながりを描いたミステリー。
全盲の主人公は、腎臓移植を必要とする孫を救うため検査を受けるが適合せず、27年ぶりに帰国した中国残留孤児の兄に提供を頼む。しかし兄は検査すら拒み、その態度に小さな違和感が生まれていく。
兄の帰国時、主人公はすでに視力を失っており、その顔を確認していない。兄は本当に兄なのか。
見えないからこそ、声や言葉、空気の揺らぎから真実を探ろうとする過程が静かな緊張感を生む。疑いはやがて、家族の過去や母の死へとつながっていく。
満州からの避難行の描写は胸に迫り、中国では「日本人」、日本では「中国人」とされる残留孤児の孤独が丁寧に描かれる。
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江戸川乱歩が還暦のとき創設された江戸川乱歩賞、推理作家の登竜門として歴史を重ね、賞として還暦を迎えた年に、本作が受賞した。主人公が盲目というユニークな設定で、主人公が常闇の中で、歯痒いながらも推理を重ねて、真実に近づいていくプロセス、読んでいる途中で、謎が複線化していき、人間関係に違和感を感じた推理が、最後にどんでん返しにあうか、主人公と同じ真実の闇の中で手探りする感覚が味わえる。
満州開拓団として満州に送り込まれた人々、終戦間際にソ連が攻めてくる情報から、日本を目指して過酷な帰国路を歩む。幼い主人公も、母と兄とともに川を渡って逃れる途上、兄が流されていき、生き別れになる。戦後結婚するが、無理 -
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とある一室に閉じ込められた者達、彼彼女らには事件の真犯人を明らかにしなければならず、、、というお話(?)。
自殺、SNS等での誹謗中傷、虚偽告発、活動家デモ、でっちあげ、現実にあるようなないような。
確かにタイトル通り、全員犯人でもあり被害者でもあり探偵だった。
事件の被害者でもありながら、見方を変えれば加害者にもなり得、それぞれが己の主張の正しさを疑わずに他者を貶め、矛盾を暴こうと探偵めいたことをする。
ゲームマスターとしてみている者もまた、、。
探偵の部分は最後のほうまで??だったけど、ちゃんと探偵だった。
さらなる真相にも驚かされた。 -
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「あなたをプロデュースします」——。
恋愛塾に通う冴えない主人公のもとに届いた一通のメール。それはAIによる人生の指南だった。
AIがワールドカップの番狂わせを連続的中させたことで主人公はその指示を信じ、思考を委ねていく。
人生が好転したかに見えたが、やがて不穏なトラブルに巻き込まれていく。
展開自体は先は読めるものの、続きが気になり面白く読むことができた。
印象的なのは、主人公として描かれた現代の若者像だ。コスパ・タイパを重視し、考えることを放棄して最適解に従う姿は、闇バイトなどに普通の若者が流されてしまう構造とも重なる。努力を避け、テイカーとして生きることの危うさがリアルに描かれており、 -
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ネタバレおもしろかった!
ただ、かなり重い話でなかなか読み進められず、正直読むのに時間はかかったな…でも終盤に入ってからは一気にスラスラ読めた。
学生時代に授業で習ったことはあるけど、中国残留孤児や満州事変について、改めてちゃんと知るきっかけになってよかったなと思う。知識として知っているだけのときと、物語として読むのとでは、受け取る重さが全然違った。
全盲になったうえに、育ててくれた親が本当の親じゃなくて、しかも自分が純中国人だったなんて、設定としてもしんどすぎる…。どれか一つでも相当きついのに、それが全部重なってくるのが本当に重い。
でもその分、話の作りはすごくうまくて、途中で感じていたモヤモ -
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下村敦史『ガウディの遺言』PHP文芸文庫。
サグラダ・ファミリア、或いはガウディの歴史を下敷にした重厚なミステリー小説にして、家族の物語でもあった。
下村敦史の作品はまさに変幻自在というくらいにその都度、舞台や作風を変化させるので、なかなか底が見えて来ない。これだけサグラダ・ファミリアやガウディについて調べることは並大抵のことではないだろう。そして、それを小説という形に昇華させる腕前には驚かされた。
舞台は1991年、スペインのバルセロナ。現地で父親と共に暮らす佐々木志穂は、真夜中に出掛けて帰ってこないサグラダ・ファミリアの聖堂石工である父親を探している最中に、父親の友人であるアンヘル