【感想・ネタバレ】闇に香る嘘のレビュー

闇の中、真実に辿り着けるのか!
第60回江戸川乱歩賞受賞作。全盲の村上和久は孫に自分の腎臓を提供しようとするが状態が悪く適さない。兄である竜彦に提供を訴えるも拒否され、次第に兄は偽者なのでは?と疑いはじめる…。
視覚以外の描写が続くため、急に襲われたりしたら?今話している相手は本物なのか?と、読者自身も闇の中にいるような恐怖や不安に襲われます。
中国残留孤児という難しい問題を随所に挟みながらも、見事に伏線を回収する爽快感のあるラストに「やられたっ」と思うはずです!闇をイメージさせるようなブックカバーも素敵です。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

かなり好きな感じ
そこで繋がっててここで繋がるのね、って思うことが多くて、章ごとに場所で区切られてるのが印象的だった。
主人公が盲目という設定を惜しみなく使ったミステリ、いつも見るような殺人事件とは一味違って最後全ての霧が晴れた時すごくスッキリした
中国在留孤児、二十歳過ぎの自分にはすごく昔の話に感じるけれど、自分のルーツを考えるとほんとつい最近までの話で、さほど遠くない出来事なのだなと身近に思った
歴史的事実に基づいた作品は、一見すると自分とは程遠い話に感じるけれど、実はそんなことなくて、過去に限られた事でなくても、今現在に起きている事からも目を背けてはダメだと思わせてくれる

2023.12.31

0
2024年01月07日

Posted by ブクログ

盲目の男性、孫の腎臓移植に向けて兄に相談したら協力できないと言われる、そこから全ての疑惑が始まる、、、この人、本当に私の兄なのか?
もうあらすじだけで気持ち掴まれてしまいました。
話しは中国残留日本人孤児をベースに進んで行き、最後は優しい気持ちで終わる話しでした。
戦争と言えば原爆の話しや日本に居ながらの悲しさややるせなさを感じる話しが数多く聞かれますが、新天地に夢を持ち海を渡った先の満州、中国での日本人もまた苦難を強いられ、今なお消えない傷として持ち戦っている人がいるということ、忘れてはいけないと思いました。

0
2023年09月10日

Posted by ブクログ

 謎が短いペースでやってくるので、続きが気になって、どんどん読み進めました!
 目が見えないハラハラ感がたまらなかった!
 最初は残留孤児がテーマなのかと思うと難しそうで抵抗感が生まれそうだったけど、すごく読みやすいし、実際はどうだったのか、さらに調べてみたくなりました。

目が見えない人は白杖を持つことが義務とは知らず、驚きました!みんな当たり前に知っているのでしょうか?
中国語の発音が最初の一回しかふりがながないので、最後まで適当な発音で読んでました。笑

0
2023年08月30日

Posted by ブクログ

優しい嘘が至る所に。泣くよこれは(涙)
戦争等の辛い話は苦手なので、読めるかどうか不安だったけど、引き込まれたー。止まらない。素晴らしい。
本だからこそ味わえるミステリー。

0
2023年05月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最初に思っていた結末と全然違う結末だった。
点字の謎も面白かったが、全体的なストーリーを通しての謎解きのような感覚が面白かった。
2人の兄を疑い、真実を知り、家族としていい結末になるようにする、この筋書きがとてもスルッと入ってきた。
結果全てが上手くまとまるストーリーでした。

0
2023年01月10日

Posted by ブクログ

職場の上司にお勧めされて読んだ最初の一冊。はじめは難しい内容の話で読むのを中断しようと思いましたが、半分ほど進んだところで次の展開にワクワクし始めていました。盲目となった主人公。音と香りを頼りに謎を解いていくストーリーは感動でした。最後の重要な問いは答えが無くモヤモヤとしますが、感動した一冊。これを機に下村敦士さんの作品を読み漁っています。

0
2022年01月02日

Posted by ブクログ

私の祖母も満州におり、敗戦後列車の中で椅子の下に隠れ、日本に帰ってきたと聞いたことがあります。

シベリアや満州など、同じような境遇の方は沢山いたのではないでしょうか。
同じような悲劇は二度と起こさぬようにしなければならないと感じました。

0
2021年12月24日

Posted by ブクログ

『私の兄は、本当の兄なのか?』
中国残留孤児を巡るミステリー。

本作の主人公は、69才の村上和久。
41才で全盲となり、やがて妻とも離婚し、一人娘・由香里とも確執があり、一人暮らしを続ける。

そして、孫娘・夏帆の腎臓病で移植手術を必要としたが、自分の腎臓は不適合に...
唯一の望みは、岩手県で老いた母と暮らす、たった1人の兄・竜彦であった。

竜彦は、幼少期に満州で一度生き別れになり、中国残留孤児として、やっと帰国した時は、既に、和久は盲目となった後であった。

そして、夏帆の腎臓病の事を兄に相談するも、臓器提供はおろか、適合検査さえ拒否する態度に、疑惑が目覚める。
『果たして、兄は、本当の兄なのか?』
『もしかして、兄を騙る偽物ではないか?』

そこから、本当の兄と名乗る男からの電話があったり、謎の点字の暗号が送られてきたり、などなど

様々な伏線があり、盲目の主人公の視点から、疑惑が疑惑を生み出す。
誰が嘘をつき、誰が本当の事を言っているのか?
真実の裏に隠された本当の真実とは?

最後の最後に、どんでん返しがありますが、それもこれも、家族の愛情の裏返しなのですね。
エピローグが、希望に満ちたもので良かったです。

0
2021年09月29日

Posted by ブクログ

全盲の主人公の描写が巧みで非常に引き込まれました。視覚を頼れない分、杖から伝わる感触や匂い、音などを頼りにしているというのは読んでいて深く刺さるものでした。
小説の設定もすごく引き込まれます。自分の兄は本当に兄なんかという疑問から謎を解くミステリーですが、殺人というのを大きく扱っている訳では無いので、そこに物足りなさを感じる人はいるかもしれません。

0
2024年04月28日

Posted by ブクログ

目が見えない…
自分がなったことないから、イメージでしかないけど、見える人が簡単にできない不自由さはキツい。
この主人公は、40歳ぐらいまで、見えてただけに余計にね。

これ、映像化されたら、全盲の主人公だけ分からんけど、その他大勢は分かるっていう真実が…
 「なに疑ってんねん!」
 「なに怒ってんねん!」
 「ほんまに…」
  ………
って、その他大勢さんからのかけ声というかコールが連呼されそう〜

確かに、見えない自分に苛立ち、母、妻、娘に当たり散らしてとか分からなくはない。
その他、色々に対しても…
兄がホントの兄なのか?
ホントの兄はどこか?
母は殺されたのか?

疑心暗鬼になる気持ちは分かるけど、やっぱり、闇は、目だけにして、心には光を灯したままにして欲しいな…

最後に分かる真実!
途中に、大きな空回りはあったけど、良かったんかな。
終わりよければ全てよしや〜!

  (*'ω'ノノ゙☆パチパチ

常闇の中にも家族の温かさをー光を感じた。

まっ!
見えてもお先真っ暗な人もおるし(ーー;)

誰のことやろ?…

0
2024年03月09日

Posted by ブクログ

ミステリー要素を除けば、中途視覚障碍者、中国残留孤児、開拓団の悲劇など、細かく描写されていて圧倒された。

目が見えないことは、想像する以上に困難な状況だと知った。それが、手に取るように描かれており、それだけでも、読んで良かったと思えた。

0
2024年02月10日

Posted by ブクログ

最初から最後までドキドキしながら読んだ。
フェイシズって映画みたいな恐怖を想像していたけど、最後はただの良い話でした。
生みの親より育ての親。
濃い霧、嵐の夜が明けて快晴、みたいな小説。

0
2023年12月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

目が不自由な主人公が謎を解く小説は初めて読んだので新鮮でした。
一見単純なトリックでも主人公は視覚以外の情報を頼りに行動するので他者の言葉が全て本当なのか、気配を消した誰かがすぐ近くにいるのではないか等、読み手にも主人公の緊張感が伝わってきて面白かったです。
視覚から与えられる情報を含まない分、ミステリーが単調化するのではと読み始めたときは思ってましたが、ストーリー自体が(主人公が視覚障害者であるため)ゆったりと進行するため十分だと思います。
点字を使ったトリックは普段から点字を使用してなければ理解できない分、著者の発想の素晴らしさを非常に感じる作品でした。

0
2023年12月04日

Posted by ブクログ

中国残留孤児のお話し。真実がどうなるのかドキドキしながら読みました。大人になって歴史を学ぶ機会が減っているので、過去に悲しい出来事があったことを知れて良かった作品でもありました。
ラストも嫌な終わり方ではなく、スッキリとした終わり方だったので良かったです。

0
2023年09月18日

Posted by ブクログ

第60回江戸川乱歩賞受賞作。全盲の主人公が兄の正体を探るミステリー。主人公が視覚障害者であるということもあって、心理描写が巧みに描かれており、ハラハラドキドキの展開でした。

0
2023年03月23日

Posted by ブクログ

孫への腎臓移植を望むも適さないと診断された村上和久は、兄の竜彦を頼る。しかし、移植どころか検査さえ拒絶する竜彦に疑念を抱く。目の前の男は実の兄なのか。27年前、中国残留孤児の兄が永住帰国した際、失明していた和久はその姿を視認できなかったのだ。驚愕の真相が待ち受ける江戸川乱歩賞受賞作。

0
2023年01月17日

Posted by ブクログ

久しぶりに江戸川乱歩賞受賞作品を手に取り、久しぶりに、面白い江戸川乱歩賞受賞作品を読みました。

69歳の村上和久は、渡満した経験のある、全盲の男性。
視力を失った後、離別した妻との間には娘・由香里がおり、由香里の幼い娘、すなわち和久の孫娘は腎臓を患い、透析を受けている。

己の身勝手から娘と絶縁状態となり、以来孤独と闇の中を生きていた和久は孫娘への臓器提供を機に縁を取り戻せないかとかすかな光を見出だし、期待を寄せるが、結果は不適。

その時、やはり距離を置いていた郷里・岩手に住む兄の存在を思い出し、臓器提供を依頼する為、娘と共に帰省するも中国残留孤児であった兄は、検査自体を頑なに断る。

これを機に、兄は果たして本当に、満州で離れ離れになった兄なのかーという疑念に駆られるようになった和久は真相を探るべく動き出す。
同時に和久の周囲で不可解なことや、危険な事態が次々と起こり、「兄」への疑念は一層深まっていく。

果たして真相はー。


私はミステリー小説、推理小説が好きですが、単なる謎解きに終わらないものが特に好きです。

謎解き以外の要素は様々ありますが、この作品はかつての戦争の悲惨さ、恐ろしさを教えてくれます。

また、視覚に障害を持つ方の不安や恐怖も教えてくれる作品でした。

全盲の男性が主人公ということもあり、作品全体を通して描写が細かく、読み手である私にも和久の感じる風景、不安、恐怖が手に取るように伝わります。
それほどに、描写力が高い。
クオリティの高い文章に触れるのは読書の醍醐味の一つ。

ではもう一つの醍醐味、ストーリーはどうか。

詰めの甘い部分は多少あり、「あの人は誰だったのよ?」「あの違和感は何だったのよ?」という疑問が残ったりもしますが、残留孤児、密入国、戦争といった難しい問題をよくここまで、後味の悪さのない結末に仕上げたな、という感心の方が勝りました。

総合的には、良い作品。
ストーリーがいいのか、文章力かいいのか、学べる事があるのがいいのか、これが散らばっちゃう感じが、マイナスポイント。

でも、オススメです。

2015年4冊目。

0
2022年09月20日

Posted by ブクログ

 あまりミステリーは読まないが、とあるきっかけでこの本と出会いました。
 腎不全を患う孫のため、全盲の主人公は岩手の田舎の実家に住む兄に依頼するのだが、適合検査すらも拒絶されることから、中国残留孤児による永住帰国した兄の存在を疑うということから話しが展開していく。
 全盲の息苦しさ、中国人残留孤児の生きづらさなど考えさせられ、話の大半はミステリーを読むというよりは、まるで戦争に巻き込まれた生き証人の話しを聞いているような感覚に襲われ、気持ちが沈み行くのを止められなかったのは本音である。
 全盲の高齢である主人公を動かしまくっていることに疑問があるものの、それでもいつの間にかストーリーに吸い込まれていたことも否定できない。点字を使用した謎解きなどよりも、しっかりとストーリーとしての素地が出来上がっているために評価ぎいいのであろう。
 

0
2022年07月18日

Posted by ブクログ

みえないからこそ、どんどん深みにはまっていくんだよね。主人公同様に恐怖心と猜疑心が湧きつつ、真相を知った時はえぇ、そういうことだったの?って驚かされた。
それは信じて疑わないだろうなぁ。。
自分だって何一つ疑わず生きてきたし、根底が覆されるよなぁ。。
下手したら受け入れられずに最悪な結果になることだってあるわけで。
温かさに気づけてほんと良かったよ。

視覚障害者の生きづらさと中国残留孤児の生きづらさも知ることができて、恵まれた環境を改めてみなおせた。

0
2022年07月08日

Posted by ブクログ

中国残留孤児をテーマにした社会派ミステリ。作者さんが海外に行ったことないらしいですが、参考文献がとても多く、しっかり調べてあるなぁと感心しました。
凄いのは、主人公が全盲の男性なのですが、視覚情報のない中しっかり周囲の描写や必要な情報、見えないことへの不安などをきっちりと伝えていること。すごい筆力だと思います。

ラストも、家族愛を感じさせる心温まるもので、良かったです。

0
2022年06月07日

Posted by ブクログ

最初は重たい展開だったけど、後半になるにつれて、えっ、なんか変、あーれーという具合に騙された感満載。でも最後は愛を感じるお話で終わりましたね。
読後感思ったほど悪くなかった。
もう少しミステリー読んでいこう。

0
2022年06月03日

Posted by ブクログ

昔に一度読んでいたものの、ほぼ内容忘れておりもう一度読みました。が、誰が本当のことを言っていて何が真実だろうとどんどんはまってきて面白かったです。

0
2022年04月02日

Posted by ブクログ

ミステリー小説は最高です!
予想が出来なかったし、最後まで読まないと
真相が分からない内容となってますね!

主人公の和久は全盲。
孫の夏帆に腎臓移植が必要となり、自分が不適合な結果となり
兄の竜彦に検査を依頼するが、それを拒む竜彦。。
それと同時に起きる、横浜港に運び込まれた
コンテナ内に密航者の大量死体事件。

この2つの出来事から物語が始まる!
読んでいる僕も主人公の身になって、読み進めましたが
全然、予想ができなくて。。。
誰が真実を語っているのか、分からないんですよね!
和久は深く憶測を立てるが、全盲なので
「見えないから検討がつかん」的な結果になっちゃう
その辺の状態がリアリティに表現されてて良かった
また、家族関係もドラマチックに表現されておりました。

絆は血に勝るんですよ!本当に、家族大事!

0
2022年03月29日

Posted by ブクログ

ミステリー好きの彼氏にオススメされて読みました。
前半、戦争シーンや主人公の孤独な感じが通勤時に読むには暗く重く何度か読むのを止めてましたが、半分過ぎたあたりからの物語の進むスピードが早く、最後伏線回収が見事でした。
とても丁寧な細かいところまで作り込まれた本だと思いました。解説で江戸川乱歩賞が新人の人が取る賞だと知り、なるほどなと思いました。
中国残留孤児など歴史を知るきっかけにもなりました。

0
2022年03月02日

Posted by ブクログ

堅苦しそうで苦手かと思ったけれど、話が面白かったので一気に読めた。
主人公の目が見えないという他にない設定で面白かった。

0
2022年01月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中国残留孤児の話が重く序盤は読み進めるスピードは上がりませんでしたが、中盤から終盤にかけてはあっという間に読み終わりました。
伏線もとても綺麗に回収されています。


序盤はほんとに重苦しい雰囲気が伝わってきますが主人公の心の変化とともに物語も明るいものになっていきます。その過程と結末には感動しました。



久々にハッピーエンドの作品を読んで清々しい気持ちです笑

0
2021年10月26日

購入済み

悔しい!ヤラレタ

真相が分かったとき、何故その可能性にもっと早く気づかなかったのか、悔しさがこみあげた。
ミステリーにおいては、この悔しさは満足度と同義語だ。
少しだけ残念なのは、せっかくタイムリミット付きの誘拐事件まで発展させたにも関わらず、えらくあっさりした解決。
もう少しハラハラドキドキさせてもらっても良かったかも、
なので⭐️一つすくなめ。
ミステリーとしては⭐️5つ間違いない。

0
2017年12月29日

Posted by ブクログ

中国残留孤児の兄は主人公が全盲になった後日本に帰って来たんやけど、態度に違和感を覚えた主人公は兄が偽物ではないかと疑い調べる話。読み進める度謎は増えるし疑いは深まるんやけど、終盤一気に謎が解けて伏線回収も鮮やか!家族愛の深さが伝わる。

0
2023年08月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

兄ではなく自分が養子で中国人だったのか。
久しぶりのどんでん返しだな。
戦争時のことや残留孤児のことなど
知らないことがたくさんあったから勉強になった。

0
2023年05月19日

Posted by ブクログ

「下村敦史」の長篇ミステリ作品『闇に香る嘘』を読みました。

「横関大」に続き、「江戸川乱歩賞」受賞作家の作品です。

-----story-------------
孫への腎臓移植を望むも適さないと診断された「村上和久」は、兄の「竜彦」を頼る。
しかし、移植どころか検査さえ拒絶する「竜彦」に疑念を抱く。
目の前の男は実の兄なのか。
27年前、中国残留孤児の兄が永住帰国した際、失明していた「和久」はその姿を視認できなかったのだ。
驚愕の真相が待ち受ける「江戸川乱歩賞」受賞作。

「週刊文春2014ミステリーベスト10」国内部門 第2位
「このミステリーがすごい!2015年版」国内編 第3位
歴代の「江戸川乱歩」賞受賞作で両ランキングのベスト3に入ったのは史上初の快挙!
選考委員の「有栖川有栖氏」が「絶対評価でA」と絶賛し、選考会では満場一致で受賞が決定。
第60回を迎える記念の年にふさわしい、「江戸川乱歩賞」受賞作!
-----------------------

2014年(平成26年)の「第60回江戸川乱歩賞」受賞作です… 選考会での評価も高かったようなので期待して読みました。


開拓団として移住した両親の子供として満州で生まれ育った69歳の「村上和久」は、戦中・戦後の食糧難による栄養不足が原因で、41歳の時に光を失い盲目になった… それから数年後、満州での避難行の最中に濁流に飲まれ、もはや死んだものと諦めていた兄「竜彦」が中国残留孤児として日本に帰国し、再会する、、、

中国人の養父母に育てられた兄の言動に、日本人とは違う相容れないものを感じた「和久」は自然と距離を置くようになり、兄は岩手の実家で母親と暮らすようになる… 「和久」は視覚障害が原因で妻に去られ、やがて一人娘「由香里」との関係も悪化し断絶、時が経ち、69歳になった「和久」は、腎臓病を患う孫娘「夏帆」への腎臓移植の適合検査を受けるが、数値に問題があり、移植は叶わず、和解しつつあった娘からも冷たい言葉を浴びせられる。

そんな折、残留孤児支援政策の不備を訴え、国家賠償の集団訴訟を起こしていた兄から訴訟費用を無心する電話が入る… またかとうんざりする「和久」だったが、兄に移植の件を頼もうと岩手へ向かう、、、

久しぶりに母の手料理や懐かしい郷土料理を味わい、場の空気が和らいだのを見計らって、兄に移植の検査の件を伝えると、兄は言下に拒否する… せめて検査だけでもと粘るが、兄の態度は頑なだった。

諦めきれない「和久」は、なぜ兄がそこまで頑なに移植を拒むのか理解出来ず、検査を受けると何か困ることがあるのか、兄は本当に自分と血が繋がった兄弟なのか、まさか偽残留孤児ではないかという疑問が頭をもたげてくる… 兄が帰国した時、母はすぐに兄だと確信したというが、既に失明していた「和久」には確かめようがなかった、、、

兄の正体を探ろうと、同じ開拓団で生活を共にしていたかつての仲間たちを訪ね、手がかりになるものがないかと当時の様子を聞くと、兄にはあるはずの火傷の痕がないことが分かる… 間もなく、猜疑心に苛まされる「和久」の元に本物の兄を名乗る男「徐浩然(シュー ハオラン)」から電話が入り、疑惑はますます深まっていく。

時を同じくして、「和久」の元には差出人不明の不気味な内容の点字の俳句が連続して届くようになっていた… その俳句の謎、苦労の末に解いた秘められた暗号は「お前の兄は人を殺した――」と告げていた、、、

臓器移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄「竜彦」の疑惑… 中国残留孤児の「竜彦」が永住帰国をした際、既に失明していた「和久」は「竜彦」の顔を確認しておらず不信感は募る、そして、その疑問をぶつけた母親は「そんな……そんなことしちゃいかん。今さら兄ちゃんを調べ回っちゃいかんよ」という反応だった。

27年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか―― 


主人公が全盲で満州からの帰国者、満州で生き別れになった兄は中国残留孤児として帰国… しかも主人公は狷介な性格で一人娘との間にも確執があるという設定なので、やや重苦しい展開だし、感情移入もし難い面はありましたが、、、

終盤に意外な真相が判明し、二人の兄のイメージが一変する展開が印象的でしたね… それまでの展開から、勝手に哀しい結末をイメージしていましたが、伏線が見事に回収されるハッピーエンドだったので、その意外性が愉しめました。

巧いなー って、思いましたね。


以下、主な登場人物です。

「村上 和久」
 69歳。盲目。41歳の時に失明するまで、カメラマンをしていた。
 差出人不明の点字の俳句が郵送されてくる。
 記憶障害のおそれがあるからと医者に注意されているのにも関わらず、精神安定剤を酒で服用する習慣がある。
 長らく断絶状態にあった娘・由香里との融和を図ろうと、
 人工透析を受けている腎臓病の孫娘・夏帆への腎臓移植のための検査を受けるが、
 数値に問題があり、叶わなかった。
 兄に検査を打診するも断られ、兄が本物なのか疑い始める。

「村上 竜彦」
 和久の兄。元中国残留孤児で、1983年の訪日調査で永住帰国した。
 国家賠償訴訟中で、和久に訴訟費用を無心する。

「郷田」
 大和田海運社員。
 赤字が続く輸入事業の回復のため、コンテナでの密航を受けるが、開けておいた空気穴が塞がれ、
 密航者たちが窒息死してしまう。

「磯村 鉄平」
 「残留孤児の未来を取り戻す会」の会長。

「比留間 雄一郎」
 残留孤児支援団体の職員。

「大久保 重道」
 90歳。村上一家と同じ開拓団で生活していた。
 竜彦への疑惑を聞き、本物ならば右前腕に火傷があることを教える。

「張永貴(ジャン ヨングェ)」
 同じ開拓団で生活していた残留孤児二世。

「曾根崎 源三」
 竜彦を探して張を訪ねてきたという男。

「徐 浩然(シュー ハオラン)」
 本物の和久の兄を名乗り、和久に電話をかけてきた男。大和田海運のコンテナ船で密入国した。

「稲田 とみ子」
 元満州移民。現在は北海道在住。

0
2023年05月09日

Posted by ブクログ

盲目の人が主人公なので、ままならない展開にハラハラドキドキ。
じれったい。

そしてラスト近くのどんでん返しには、
2重3重のどんでん返しネタが隠されていて
どれが正しいのかわからなくなってくる。
そこまでやんなくても...と思たよ。

ラストがほっこりなあたりはいいと思うが、
途中のじれったい感ハンパないっす。

0
2023年02月06日

nao

購入済み

皆さん結構絶賛されているので読んでみましたが。
すみません、最初の密入国の部分で私が勝手に新宿鮫っぽい話になるんだろうと思い込んでしまったのが悪かったです。おかしいな、ならないなーと思っている内に終わってしまいました。
しかも、えっ終わり?どうするの、この人今後の人生って感じに終わったのでびっくりです。いいのか本当に。
大陸へ渡った方々、残留孤児の方々のご苦労が並々ならぬものなので、主人公(結構わがまま)の悩みに感情移入できず、もうこの人が兄でいいんじゃないのかなと思って読んでいました。

0
2018年09月01日

「小説」ランキング