医療ミステリとしてツイッターでおススメいただいたので読んでみた初めての作家さん。
短編かと思いきや、<最後の話でそれまでのすべてがつながる系>だった。
勘のいい方はもっと早く気づくのだろうけれど、私は最後の話で、「え?」「ええ~っ!」となりました。
こう説明すると、「あ、どんでん返し系ね」との認識
...続きを読むで終わってしまうかもしれないけれど、本書のテーマは「命」です。
テーマが命とは、これまたありがちじゃんと思われる向きもあるかもしれませんが、けっこうガチで「命に順列はあるのか」と突き付けてきます。
それも人間だけでなく動物をも含め、そしてこれをさらに突き詰めていくと、植物ももちろんのこと、この世の生きとし生けるすべてのものを含んでいくんでしょう。
そう考えたとき、本書でASGが声高に主張する内容はこれまた一方的な見方にしかすぎず、ただただ煽情的で正義とは程遠いものだとわかります。
結局ありきたりではあるけれど、私は「自分という命がここに存在している以上、かならず他の犠牲の上にあり、だからものをいただくときには、感謝しておいしく残さずいただく」ということ、「ものを使うときには大切に長く使う」ことが大切だと今まで以上に心に刻んだ次第です。
なお本書に低評価をつけている方には、最終的な問題である”あれ”が荒唐無稽すぎるという意見がありますが、それは現実を知らなすぎるおめでたい意見だな、と。
少なくとも私はこの本で取り上げられている最終的手段の心臓移植と同じ手術が先日他国でなされたというニュースを新聞で読んでいます。
はじめての作家さんでしたが<社会派>の方だそうなので、今後も追いかけてみたいなと思いました。
★黙過=だまって見のがすこと。知らないふりをしてそのままにしておくこと。
====データベース=====
第7回徳間文庫大賞受賞!!
瞠目の医療ミステリー
移植手術を巡り葛藤する新米医師――「優先順位」。安楽死を乞う父を前に懊悩する家族――「詐病」。過激な動物愛護団体が突き付けたある命題――「命の天秤」。ほか、生命の現場を舞台にした衝撃の医療ミステリー。注目の江戸川乱歩賞作家が放つ渾身のどんでん返しに、あなたの涙腺は耐えられるか。最終章「究極の選択」は、最後にお読みいただくことを強くお勧めいたします。