下村敦史のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
医療ミステリとしてツイッターでおススメいただいたので読んでみた初めての作家さん。
短編かと思いきや、<最後の話でそれまでのすべてがつながる系>だった。
勘のいい方はもっと早く気づくのだろうけれど、私は最後の話で、「え?」「ええ~っ!」となりました。
こう説明すると、「あ、どんでん返し系ね」との認識で終わってしまうかもしれないけれど、本書のテーマは「命」です。
テーマが命とは、これまたありがちじゃんと思われる向きもあるかもしれませんが、けっこうガチで「命に順列はあるのか」と突き付けてきます。
それも人間だけでなく動物をも含め、そしてこれをさらに突き詰めていくと、植物ももちろんのこと、この世の生 -
Posted by ブクログ
警視庁の通訳捜査官の七崎 隆一。
過去に、同じ職にあった義理の父の不正を告発し、そのせいで、義父は自殺。
そこから、家庭も職場も、針の筵となった。
歌舞伎町で起こった中国人の刺殺事件。
その直後、息子の部屋で隠していた血だらけのジャンパーを発見する。
もしかして、息子は、事件と関係しているのか?
息子を守るため、独自に捜査を始める。
職場で、わざと通訳内容(中国語)を変えたり、捜査方針を変えたり。
気が付けば、やっていることは、義理の父と同じことでは?
最後にどんでん返しがありますが、更に、もう一枚のどんでん返しも...凄いですね。
正義の在り方を問うミステリーです。
必読の一冊ですね -
Posted by ブクログ
幼い頃、両親による一家無理心中に巻き込まれ、ひとり生き残ってしまった女性。彼女は最愛の両親に殺されかけた記憶を抱え、他人への信頼や愛情を疑いながら生き続けた。
そんな主人公が偶然出会ったのは、無理心中で娘を殺害したが、自らは生き残り、懲役刑を終えた女性。主人公は自分の過去を隠し、彼女に接近する。
家族に殺害された女性と家族を殺害した女性。2人の心情の変化を軸に展開されるストーリー。途中、主人公家族の死の原因を作った男が登場。ここから、一気にストーリーは盛り上がり、意外な方向へ。
家族殺人に関わる登場人物たちの揺れ動く心情をしっかり描写しつつ、ミステリー性も両立している見事な作品。さらに、 -
Posted by ブクログ
文庫帯に書かれている各感想が、決して誇張ではないと実感できる傑作。
圧巻なのは、終盤での墓場のシーン。
まさに、オセロで黒が白に次々と反転するかのよう。
さらに、主人公たちに希望を持たせる爽やかなエピローグ。
著者の巧まざる技と仕掛け(ある個所で、主人公と同様気づかなかった)に、やられた!との充足した気持ちに満たされた読後感。
一家心中の果てに生き残り、両親を加害者と思い、被害者意識を持ち続け苦しむ娘幸子。
子どもを巻き込む無理心中を図り生き残ってしまった母親の雪絵。
被害者と加害者ともいうべき二人が出会うことによって、事態が動き出す。
そして、雪絵の生き残った娘美香、両親を心中に追いやった加 -
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下村敦史『悲願花』小学館文庫。
一家心中で生き残った被害者と加害者の双方の苦しみをテーマにしたミステリー小説。
後半の全ての予想を覆す展開には驚いた。そして、後を引くような結末。重いテーマなのに取りこぼしも無く見事に昇華させた著者の手腕には感服した。
夫婦のいさかいが絶えず、裕福でない家庭に育つ山上幸子に訪れた一時の夢のような時間。ある日、幸子の一家は遊園地でこれまで経験したことの無い贅沢な時間を過ごすが、両親は家に火をつけ、一家心中を図る。両親と兄妹を失い、たった独り生き残った幸子。
孤児院で育ち、工場の事務員として働き始めた幸子は忌まわしき過去と訣別しようと両親の墓を訪れると、そこ -
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ネタバレ序盤からあるいくつかの謎がなかなか明らかにならず、それどころか食い違う証言や新たな疑問がどんどん出てきて、とてもやきもきさせられます。
それで嫌な気分になるわけではなく、むしろ読むモチベーションがどんどん上り、最後まで駆け抜けるように読み切ってしまいました。
あとがきに「ルービックキューブのようにおもしろい」とありましたが、それに完全同意ですね。なかなか色が揃わないけれど、終盤はたたみかけるように色が揃っていく様が、クライマックス以降あれよあれよという間に真相が解明されていく展開に似ていると思います。
白馬岳での美月たち女性陣の行動には、ほんとにそんなことを美月がしたのかなぁと少しスッキ