下村敦史のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
正義とは、幸せとは、そして、真実とは?
『闇に香る嘘』の作者・下村氏の放つ慟哭の社会派ミステリー。
一気読み必須の冤罪事件を描いた作品です。
大学生の石黒 洋平は、4ヶ月前乳がんで亡くなった母の遺品整理をしていたところ、押入れの奥から奇妙な箱を見つける。
中から出てきたのは、父とは異なる男性と仲睦まじい若い母の写真と手紙であった。
自分は、母の両親を殺害した凶悪な殺人犯・赤嶺 信勝の息子なのか?
次々に生まれる疑惑の数々。そして、実の父の冤罪の可能性が生まれる。自分は、何を信じれば良いのか?
冤罪事件を取材対象とする雑誌記者の夏木 涼子。
彼女とともに、様々な他の事件を調べながら、『赤 -
Posted by ブクログ
「難民調査官」を務める如月玲奈が主人公の物語である。「難民調査官」という仕事は大切な役目なのだとは思うが、広く知られているのでもないように見受けられる仕事だ。そういう仕事にスポットライトを当てる“仕事モノ”な小説である他方、本質的には良質な「事件の謎を明かす」というミステリーであり、展開の中で「巷での情報の発信、受け止め」というような社会の色々な事に問題提起も行われている面も在って、少し夢中になってしまう。
難民申請をしているシリア人の父娘が在り、両者は180度違う話しをしている。父娘の話しがそういうことになるのは、何故なのか?何なのか?操作が少し手詰まりになっている殺人事件の謎と相俟って、そ -
Posted by ブクログ
下村敦史『サイレント・マイノリティ 難民調査官』光文社文庫。
東京入国管理局の難民調査官・如月玲奈を主人公にしたシリーズ第2弾。
前作より断然面白く、読み応えがあった。
今回、如月玲奈が調査するのはシリアから娘と共に訪日したナディームという男性。シリアで政治的迫害を受け、家族を殺害されたと主張するナディームに対して、何故か娘のラウアは故郷で平和に暮らしていたと主張する。同じ頃、新宿で発生したシリア人殺害事件とその妻の誘拐事件。食い違う父娘の主張と殺人誘拐事件、謎が謎を呼び……
シリア国内の現実を知ると、つくづく平和な国に暮らせて良かったと思うのだが、世界の国々で大小様々な衝突が起きてい -
Posted by ブクログ
下村敦史『失踪者』講談社文庫。
『生還者』に継ぐ、壮大なスケールで描かれる山岳ミステリー。細部まで巧く考えられたミステリーであり、10年という時間と地理的なスケールの大きさにも驚かされた。気が付けば、早く真相を知りたいと願いながらも、読み終えたくないと願うジレンマに苦しむ自分が居た。
2016年、山岳カメラマンの真山道弘は10年前にクレバスに置き去りにしてしまった親友・樋口友一を捜しにシウラ・グランデ峰を登る。真山はクレパスの底に変わり果てた姿の樋口の遺体を発見するが、有り得ないことに遺体は明らかに歳を取っていた……
下村敦史の作品には裏切られることがなく、安心して読める。 -
Posted by ブクログ
下村敦史『叛徒』講談社文庫。
やはり下村敦史は巧みで、面白い。通訳捜査官という異色の警察官を主人公にした警察ミステリー小説である。ミステリーと同時に進行する家族の物語も非常に良い。
通訳捜査官の七崎隆一は同職の義父の不正を告発し、自殺に追い込んだことから、職場でも家庭でも居場所を失う。歌舞伎町で起きた殺人事件の捜査直後に、息子の部屋で血まみれの衣服を発見した七崎は目撃情報と併せ、息子が犯人である可能性に戦慄し、単身捜査を始める…
組織に属するが故の正義と組織の存続というジレンマ。そこに大切な家族が絡んだ時、如何に行動するのが、正しいのか…
“裏切り”の黒いミステリー -
Posted by ブクログ
中国残留孤児問題を軸に、家族と血のつながりを描いたミステリー。
全盲の主人公は、腎臓移植を必要とする孫を救うため検査を受けるが適合せず、27年ぶりに帰国した中国残留孤児の兄に提供を頼む。しかし兄は検査すら拒み、その態度に小さな違和感が生まれていく。
兄の帰国時、主人公はすでに視力を失っており、その顔を確認していない。兄は本当に兄なのか。
見えないからこそ、声や言葉、空気の揺らぎから真実を探ろうとする過程が静かな緊張感を生む。疑いはやがて、家族の過去や母の死へとつながっていく。
満州からの避難行の描写は胸に迫り、中国では「日本人」、日本では「中国人」とされる残留孤児の孤独が丁寧に描かれる。
-
Posted by ブクログ
江戸川乱歩が還暦のとき創設された江戸川乱歩賞、推理作家の登竜門として歴史を重ね、賞として還暦を迎えた年に、本作が受賞した。主人公が盲目というユニークな設定で、主人公が常闇の中で、歯痒いながらも推理を重ねて、真実に近づいていくプロセス、読んでいる途中で、謎が複線化していき、人間関係に違和感を感じた推理が、最後にどんでん返しにあうか、主人公と同じ真実の闇の中で手探りする感覚が味わえる。
満州開拓団として満州に送り込まれた人々、終戦間際にソ連が攻めてくる情報から、日本を目指して過酷な帰国路を歩む。幼い主人公も、母と兄とともに川を渡って逃れる途上、兄が流されていき、生き別れになる。戦後結婚するが、無理 -
Posted by ブクログ
とある一室に閉じ込められた者達、彼彼女らには事件の真犯人を明らかにしなければならず、、、というお話(?)。
自殺、SNS等での誹謗中傷、虚偽告発、活動家デモ、でっちあげ、現実にあるようなないような。
確かにタイトル通り、全員犯人でもあり被害者でもあり探偵だった。
事件の被害者でもありながら、見方を変えれば加害者にもなり得、それぞれが己の主張の正しさを疑わずに他者を貶め、矛盾を暴こうと探偵めいたことをする。
ゲームマスターとしてみている者もまた、、。
探偵の部分は最後のほうまで??だったけど、ちゃんと探偵だった。
さらなる真相にも驚かされた。 -
Posted by ブクログ
「あなたをプロデュースします」——。
恋愛塾に通う冴えない主人公のもとに届いた一通のメール。それはAIによる人生の指南だった。
AIがワールドカップの番狂わせを連続的中させたことで主人公はその指示を信じ、思考を委ねていく。
人生が好転したかに見えたが、やがて不穏なトラブルに巻き込まれていく。
展開自体は先は読めるものの、続きが気になり面白く読むことができた。
印象的なのは、主人公として描かれた現代の若者像だ。コスパ・タイパを重視し、考えることを放棄して最適解に従う姿は、闇バイトなどに普通の若者が流されてしまう構造とも重なる。努力を避け、テイカーとして生きることの危うさがリアルに描かれており、 -
Posted by ブクログ
ネタバレおもしろかった!
ただ、かなり重い話でなかなか読み進められず、正直読むのに時間はかかったな…でも終盤に入ってからは一気にスラスラ読めた。
学生時代に授業で習ったことはあるけど、中国残留孤児や満州事変について、改めてちゃんと知るきっかけになってよかったなと思う。知識として知っているだけのときと、物語として読むのとでは、受け取る重さが全然違った。
全盲になったうえに、育ててくれた親が本当の親じゃなくて、しかも自分が純中国人だったなんて、設定としてもしんどすぎる…。どれか一つでも相当きついのに、それが全部重なってくるのが本当に重い。
でもその分、話の作りはすごくうまくて、途中で感じていたモヤモ -
Posted by ブクログ
下村敦史『ガウディの遺言』PHP文芸文庫。
サグラダ・ファミリア、或いはガウディの歴史を下敷にした重厚なミステリー小説にして、家族の物語でもあった。
下村敦史の作品はまさに変幻自在というくらいにその都度、舞台や作風を変化させるので、なかなか底が見えて来ない。これだけサグラダ・ファミリアやガウディについて調べることは並大抵のことではないだろう。そして、それを小説という形に昇華させる腕前には驚かされた。
舞台は1991年、スペインのバルセロナ。現地で父親と共に暮らす佐々木志穂は、真夜中に出掛けて帰ってこないサグラダ・ファミリアの聖堂石工である父親を探している最中に、父親の友人であるアンヘル