下村敦史のレビュー一覧
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救われた。
きっとこの本は、物語に仕組まれた「仕掛け」が一番の魅力、売りなのだろう。舞台が由緒あるホテルであるからこその魅力がたっぷり詰まっている。
ミステリー好きならきっとニヤニヤしながら結末を読み満足できるだろう。
ただ、私が救われたのは、登場人物たちが『思いやり』で苦しんでいることだ。誰かにもらった思いやりが苦しく感じてしまうとき、それは受け取る自分に余裕がなかったり、誰かのせいにして生きているときだったりする。
多分、今の自分がそう。
自分がダメになっていることに気が付いた。
ちょっと休んだらまた誰かと力を合わせて、頑張れる。
気がする。多分。
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Posted by ブクログ
ネタバレ伝統ある超高級ホテル「ヴィクトリアン・ホテル」が、明日100年の歴史にいったん幕を下ろす。
ホテルを訪れるのは、女優、スリ、作家、宣伝マン、老夫婦。一貫した主人公のいない、群像劇だ。ただ、仕掛けがある。
女優の印象が変わること、文学賞の回数、震災、パンデミック、どこで気がつくかは読む人次第だけど、いや〜してやられた!
最初は嫌なやつと思っていた人物が、ある人と出会った事で変わったり、心中を考えていた夫婦が踏みとどまったり、スリが更生を決意したり。物語は多岐に渡るが、だいたいが良い方向への変化で、いい気持ちで読み終えることができた。
そして、登場人物の様々な「ことば」がとても良い。当たり前か -
Posted by ブクログ
ネタバレミステリーとして非常に面白く、専門的な用語についても分かりやすい説明があるため、読みやすい。誰が嘘をついているのか、というようなミステリー小説を読む時には当然の疑問や、障害がある人の生活について考えながら読み進めていた。
怪しい人物はみえているものの、どう結末を迎えるのか予想がつかないまま残り少ないページ数になり、ようやく真相に辿り着いた。その途端、信じられないほどに驚愕した。今まで読んだ小説で様々などんでん返しの結末を見てきたが、私の中では本作が一番である。
実際に起きたら前代未聞な事件だが、色々と考えさせられる小説だった。表現が難しいが、本当に読んでよかった。
現代における裁判員制度は -
Posted by ブクログ
安楽死をテーマにした下村さんの作品。
ホスピスで起きた三件の不審死。そして、安楽死措置を行ったとして、神崎医師が逮捕され裁判にかけられる。
神崎医師は、裁判で黙秘を貫く。
なぜ、患者思いの優しい彼は、安楽死措置を行ったのか?
そして、なぜ、黙秘を貫くのか?
そこには、深い苦悩があった。
それぞれの立場から綴られる物語。
・望まれない命
・選択する命
・看取られる命
・奪われた命
・償う命
・背負う命
命のあり方や、人の生き方など、すぐに答えは出ませんが、どれも深いテーマの内容です。
特に、第四話の『奪われた命』は、涙なしでは読めません。
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Posted by ブクログ
うわぁうわぁうわぁ!!!
と、途中から何度も心の中で叫びながら読んでいた。
セリフの応酬、しかも仮定と否定の繰り返しなので、ずっと読んでいると頭が痛くなってくるが、それでも面白い。
合間にチラ見えする奇妙な違和感のある『多分伏線』が気持ち悪すぎて(褒め言葉)、早く結論を知りたい!と思いながら読んだ。
竜胆が一瞬志賀川か?と推理したが違った(笑)
なんかもう、緻密すぎてため息が出る。ミステリー作家には毎回「どんな頭してるんだ」って思わされるけど、本当どうなってるんだろ。かといって、難しいわけでも複雑なわけでもなく読みやすい。
一章目(プロローグ除く)のタイトルが
『結末であり、始まり③』