あらすじ
全てのまばたきが、伏線。
『江花病院』に長期入院している閉じ込め症候群(ロックドインシンドローム)の女性患者・岸部愛華が深夜に体調を崩した。当直中の産婦人科医・水瀬真理亜が診察すると、愛華は妊娠していることが判明する。寝たきりの愛華は誰に妊娠させられたのか? 病院は騒然となり、政治家である愛華の父は激怒するが、前代未聞の事件はマスコミに報道されて世間の知るところとなる。真理亜は真相を探るべく、話すことができない愛華のまばたきを通して彼女の”声”を聞くが――
社会派ミステリーの旗手が人間の尊厳と命の倫理に迫る、新たなる傑作。
※この作品は単行本版『アルテミスの涙』として配信されていた作品の文庫本版です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
中盤までは予想した通りにストーリーが展開されました。もうこれ以上悲しいストーリーにはならないで欲しいと願いながら読みました。
しかし、その考えも終盤にひっくり返されます。これは読む価値ありです。扱っている内容は、賛否両論あると思いますが、自分がこの医師だったらどう動くのかも含めて考えさせられる一冊でした。
Posted by ブクログ
寝たきりで身体が動かせないが意識はある
「閉じこめ症候群」の女性が入院中に妊娠してしまう…。彼女を妊娠させたのは誰なのか?
倫理をつきつける医療ミステリでした。
設定上いやーな気持ちになって始まりますが、
命とは?尊厳とは?を考えさせられる良い作品だったと思います。
とても読みやすい文体で一気に読めてしまいました。下村先生の別作品も読んでみたいな。
Posted by ブクログ
デビュー作『闇に香る嘘』への著者による再挑戦と、解説者が述べているとおり、障害によるコミュニケーションが困難な状態で生きる意味を問うミステリー。
確かにデビュー作に匹敵する、それ以上の傑作と言える。
産婦人科医の水瀬真理亜は、「閉じ込め症候群」で入院している女性患者岸部愛華が体調を崩したので診察すると、彼女は妊娠していることが判明。
寝たきりで身体が動かせない彼女に誰が妊娠させたのか。病院は騒然となり、マスコミも知るところとなり、騒ぎは拡大し、愛華の両親は病院を非難する。
真相を探ろうと水瀬真理亜は、話すことが出来ない愛華のために、文字盤を使い彼女の声を聞く。
そして驚天の事実が明らかになるが、話を聞く側の事実誤認や誤解が混迷をもたらし、どんでん返し的な展開になる。
次々と語られる真実に、読む手が止まらない。
著者の巧みな伏線の張り方に、読者も翻弄されるが、芳醇なワインを飲んだかのような読後感が味わえる。
一連の騒動の後で、ある人物が述懐する。
「正論なんてものはね、人を追い詰めるためにしか役立たないものなんだよ。人間は、自分は正論に不快を感じて反論するくせに、他人には平然と正論をぶつけたくなる生き物だ。自分は正しいことをしているという思い上がりがあるから、相手の心の傷に気づけない」
Posted by ブクログ
下村敦史『アルテミスの涙』小学館文庫。
冒頭からの驚きの展開にあれよと言う間もなく物語の中に引き込まれていく。見事な感動のミステリーであった。
千街晶之は解説で、この作品をデビュー作『闇に香る嘘』への著者自身の再挑戦と評しているが、まさにその通りだと思った。
江花病院に7ヶ月もの間、入院している交通事故による『閉じ込め症候群』で、意識がありながら、身体を動かすことが出来ない女性患者の岸辺愛華が深夜に体調を崩す。当直の産婦人科医・水瀬真理亜が診察すると、愛華が妊娠していることが判明する。
寝たきり状態の愛華は誰に妊娠させられたのか、病院は騒然となり、政治家である愛華の父親は激怒する。前代未聞の事件はマスコミにも知られ、報道により世間の知るところになる。警察も院内に捜査に入り、真理亜も真相を探るべく、話すことの出来ない愛華のまばたきで彼女の意思を知ろうとする。
身動きの全く取れない愛華を妊娠させたのは、あろうことか……
少しずつ明らかになる妊娠の真相……
本体価格770円
★★★★★
Posted by ブクログ
閉じ込め症候群の女性が妊娠した!このセンセーションな出だしから、多分読者は、担当医師を疑ったでしょう。もちろんわたしもです!
この先はネタがバレるのでやめますが、こんな愛の形があるのかと?驚きと、現実には、どうなるのかと考えさせられる話でした!
Posted by ブクログ
病院で寝たきりとなっている、若い女性患者に突如発覚した妊娠。
瞬きのみでのコミュニーケーションから読み取った、本人の希望は『子供は産みたい』だった。
ミステリー要素も強い本作ですが、生命倫理や当事者の人権問題など、多くの社会問題も複雑に孕んだ本作。
ページを捲る手が途中から加速していくように、のめり込んで読めました。
この著者の作品、他にも積読してるので、そっちも楽しみだなー。
・
・
・
・
・
全てのまばたきが、伏線。
『江花病院』に長期入院している閉じ込め症候群(ロックドインシンドローム)の女性患者・岸部愛華が深夜に体調を崩した。当直中の産婦人科医・水瀬真理亜が診察すると、愛華は妊娠していることが判明する。寝たきりの愛華は誰に妊娠させられたのか? 病院は騒然となり、政治家である愛華の父は激怒するが、前代未聞の事件はマスコミに報道されて世間の知るところとなる。真理亜は真相を探るべく、話すことができない愛華のまばたきを通して彼女の”声”を聞くが――
社会派ミステリーの旗手が人間の尊厳と命の倫理に迫る、新たなる傑作。
Posted by ブクログ
-------------------------
閉じ込め症候群で
寝たきりの
女性患者が妊娠した。
一体誰が―――!?
全ての
まばたきが、
伏線。
コミュニケーションの極限で
生きている意味を問う
渾身のミステリー
-------------------------
YouTube「ほんタメ」で紹介されていて、
気になっていた一冊です。
文庫化されていて、迷わず購入しました。
話せない動けない彼女が病院内で妊娠していた。
彼女の両親、病院、SNS、マスコミ…
全てが騒然とし、病院の管理体制を糾弾する。
産婦人科医の水瀬真理亜が、
彼女とまばたきを使って会話を試みる。
通勤中に読んでいましたが、
続きが気になりすぎて、一気読みでした。
家族って、子どもって、生きることって。
彼女が選んだ結末を気になる方はぜひ読んでみてください…!
Posted by ブクログ
小説の導入部分から性犯罪を匂わす描写があったが、
それは読者をミスリードに導くものであったことが
結末が分かってから再度読むとそれが分かる。
本当の愛の形かもしれないが、生まれた子供の立場になってみたら「親のエゴ」と思われるかもしれないと考えされられた。
Posted by ブクログ
事故の影響で意思の疎通を目のまばたきのみで行うという推理小説
子を産む、中絶をするという命に関わることとはどういうことかということも考えさせられる作品
良い悪いの二者択一しかないという問題では無いからこそ読者に考える余地があるのが良い
身体が動かない、意思の疎通もままならないことからの先入観、思い込みを逆手にとったのはやられた
ラストのキレイな終わり方もGood
Posted by ブクログ
閉じ込め症候群について考えると私はとても怖くなる。
自分の身体が動かず、声を発声する事もできず、表情を変える事もできない・・・
しかし、意識はある!
そんな状況で私は耐えられるかを考えると恐怖が浮かび上がってくる。
私の身体が五体満足に稼働する事に感謝します!!!
併せて、個人の価値観について考えさせられる・・・
メディアに乗りやすい美談には気をつけて、個人的な正義は誰かにダメージを与えている可能性がある事を考えなければならない!!!
閉じ込め症候群の女性患者が妊娠した?
彼女を妊娠させたのは誰なのか?
警察と病院と女性患者の家族は彼女を誰が妊娠させたのかについて調べ始めたところ、ある男が犯人である可能性が高い事を示す証拠が集まり出した・・・
今回もミスリードに引っ張られない事をお祈りします。
因みに、個人的なことではありますが、本レビューが2024第1号になります!
本年もどうぞよろしくお願いいたします!!!
Posted by ブクログ
意識はあるが、まばたき以外の意思表示ができない「閉じ込め症候群」の女性が入院先の病院で妊娠させられた事が判明。彼女は誰の子を身籠っているのか。
目新しい設定が面白くイッキ読み。意思が伝えられない怖さを感じたが、こんな事が可能なのかと驚き、感動。
Posted by ブクログ
久々の下村作品。
閉じ込め症候群なるものを初めて知る。
寝たきりの状態になり指1本を動かすことも出来ないが
意識はあり周囲の事もしっかりと認識できる状態の事をそう呼ぶそうで。
話すことも出来ず、一見すると植物状態のようだが
患者本人の意識ははっきりしてると言うのが
想像するだけで辛い。
閉じ込め症候群の女性患者が妊娠していることが発覚する。
倫理観を中々に揺さぶられる社会派サスペンスだった。
Posted by ブクログ
今回も、下村節が光ってました。でも、重い問題を題材としているのに、そこの心理描写が物足りなくて、個人的には、少し惜しい気がしてしまいました。
ひとつ言えるのは、親だからって子供を支配してはいけないということですね。
Posted by ブクログ
202311/部外者にあっさり話したり、文字盤に気づくの遅いとか、ツッコミ所もあるけど、勢いとうまさで読ませる。やはり下村敦史は面白いし毎回意欲を感じる。愛華の判断等は、現実には女性のほうが共感しにくいような気がする。