岡本裕一朗のレビュー一覧
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著者は、フランスだけでなく、ドイツ、英米系の哲学史も研究されているようで、そのこともあってか、陽に示していたように、距離をとって書くという姿勢をとるとあったが、その点においては成功していたと思う。
所謂、ポストモダンの三人衆、フーコー、デリダ、ドゥルーズは、日米で流行っていた頃には、本家フランスでは、熱気が冷めていたことには驚いた。
批判している論者が、その論点によって、自らの首も絞めてしまうところは面白かった。例えば、フーコーの、権力論のアポリアである。著者の手厳しい指摘に対しては、どんな思想家も、出る杭は打たれるようにも感じた。
マルクスが意外にも、幅を利かせていたことにも驚く。私よ -
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非常に読みやすく、入門書として非常に分かりやすかった。
「ニヒリズム」「超人」といったニーチェの基本的なキーワードの解説だけでなく、それらのキーワードに対する誤解を解こうとする解釈や真に理解すべき重要なポイントなどが語られている。
ニーチェの言葉や思想を並べるだけでなく筆者なりの解釈が入っており、その解釈が正しいかどうかは判断を保留すべき部分だと思う。しかしだからこそ、これを読んだ自分はどう解釈するのかという点が重要になるだろう。
ニーチェがどのような時代背景の中で、どんな思想家の影響を受けながら思索を深めていったのか、その経緯や思想の背景にある流れも分かりやすく理解できた。
巻末にはニ -
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ネタバレ第一章のリベラリズムとリバタリアニズムについて、A、B、Cの例え話がとてもわかりやすいです。リバタリアニズムを理解するのにチェンバレン選手を例えに説明があり、併せてよく理解できました。各ページに載っている図もイメージが浮かび入門者の私としては、最後まで挫折せずに読み進めることができました。全体の概要をサクッと学びたい人にオススメです。思想というと何かすごい固いイメージでしたが、この本を読んで勉強になりました。
AI、ロボットが将来は働き、人類の雇用が減っていくが、ベーシックインカムを全ての人が獲得したとして余剰の時間が増えるとすると人間は毎日何をして過ごすようになるのだろうか。 -
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中高生でも読めきれるくらい易しいレベルだが、本質からずれることなくニーチェがどんな思想を持っていたのかがよく分かり、まさに教養として身につけるにふさわしい内容だった。
ニーチェは次の2世紀(20、21世紀)はニヒリズムの時代と予言した。これまではキリスト教の世界観を軸に道徳形成がなされてきたが、ニーチェによれば普遍的で絶対的な真理など存在しない。人々は道徳の根拠を神に求めていたが、「神の死」によって価値観の基準がなくなることになる。極端な話人殺しへの反論も不可能に。
『反哲学入門』でもあった通り、ニーチェを転機に西洋思想批判や反哲学が始まったと認識していたが、多くの概念は先人のパロディとし -
ネタバレ 購入済み
哲学の面白さを感じた本
哲学に関するいくつもの思考実験が書かれており、それがなかなか面白い。
例えば、トロッコ問題。
トロッコがすごいスピードで走っていて、このまま行くと線路で作業をしている作業員5人を轢いてしまう。しかし、あなたの目の前にあるレバーを引くと、線路の走る方向を変えることができるが、そこには作業員1人がおり、その1人を轢いてしまう。
あなたならどうする?
この場合、犠牲者が少ない方を選ぶ人が多い。
では、この場合はどうだろう。
あなたはトロッコが走る線路の上の歩道橋にいて、トロッコが勢いよく走ってくるのが見える。このままでは前にいる作業員5人か轢かれてしまう。歩道橋の上にはあなたの他に太った1人の男性が -
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ハラリに触発された形で、ポストヒューマニズムという脱人間中心主義の観点から、ニックランドに始まる加速主義、さらにそこからの影響圏としてのメイヤスーの思弁的実在論、そしてヒューマニズムへ回帰する新実在論のガブリエルまでを明快な説明で解説した一冊。
ニックランド、特にマークフィッシャーには非常に興味はあるけど、個人的にはガブリエルのヒューマニズムが自分としては腑に落ちるし、息の長い思想に感じる。
ポストヒューマニズムにより人間不在の世界を論じるのは、当然ながら、結局はヒューマニズムに立ち返らざるを得なくなるのではないか。論点先取りとさえ感じられる。
マックスシェーラーやエルンストカッシーラーが近代 -
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哲学の潮流が門外漢でも分かるように見通しよく整理されているのがありがたい。
その上で、IT、バイオ、資本主義、宗教、環境保護といった現代の諸問題に対する現代哲学者の代表者とその哲学、立場などが整理して紹介されている。
哲学者や用語に関する説明や、ブックガイドもあり、非常に親切。
内容は勿論、写真やイラストも分かりやすく効果的に使用されているし、フォント、紙、配置から色から全てのデザイン、帯に至るまで、過不足なく非常に効果的で素晴らしい。デザインにまで哲学を感じた。
最近の啓蒙書は図もカラーも多いし、親切で分かりやすく読みやすい本も多いとはいえ、1000円台であらゆる点でこんなに完璧な啓蒙書は滅