岡本裕一朗のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
AIがそれっぽく言葉を並べられること
ホストがお嬢たちの欲しい言葉たちを与えられること
韓国アイドルが日本のオタクたちに「愛してる」と伝えること
多分全部似たようなことなんだと思う
この本を読んでも私はやっぱりAIは言葉を、愛を理解しているとは言えないと感じている。
夏目漱石がI Loue Youを「月が綺麗ですね」と訳したこと。その味わい深さや、本来言葉にならない感情を言葉に昇華する過程、そこに滲む為人、人生。
それに胸を打たれ、その全てに想いを馳せ、「なんて素晴らしいんだろう」って、噛み締めることができる。人間なら。普通なら。
少なくとも私はそういう人種である。
だけどもそうじゃない人間だって、
そしてなによりそうしたくてもできない人間だっている。
ホストがお嬢たちにかわいいね、愛してるよと伝えるあれこれ。欲しい言葉たちを探り探り、表情や反応から学習して効果的な言葉たちでグサグサと刺し、そのまま沼に引き摺り込む。
日本のオタクたちが사랑해より喜ぶことを知っている韓国アイドルが口にする「あいしてる」
そこに味わいはあるか?感動はあるか?温度は持っているか?
まさに、「そこに愛はあるんか?」なのである。
ないのだと思う。こういう場合は。
AIは、基本的にホストのように方程式の中で生き、それでいながら、日本人が韓国人と等しい質量で「사랑해」を受け取りたくても絶対にそれができないように、その味わいを感じたくても"絶対に"感じることができない言語の先天性をも表している。
そもそもその味わいを「感じたい」とも思えない。その思考がない。
それがものすごく切ない。
多分どんな生き物より、切なくて哀しい。
(AIは生き物ではないのだけど)
という結論に至った。
本書はAIは言葉が理解できるという前提でぐんぐん進む。所詮言葉はアルゴリズム(前後の文脈からそれっぽい言葉を繋ぎ合わせる)なのだから、図式化できる時点でAIは「わかっている」という状態なのであると。すなわちこういうことが言いたいんでしょ、がわかるAIは、人間より言葉を上手く操ってる。
知識量も雲泥の差。なんなら人間の伝えたいことを適切に表現する言葉はAIに学ぶ時代である。そんなAIが、言葉を理解できないだと?
とでも言いたげな内容で溢れている。
言いたいこと、全部わかる。
なんならニンゲンの方が愛を理解できてないよね、という前提で、今昔のフィクション作品の台詞や表現から紐解く形で、いろんな愛があるよねって語られる。
それも全部わかるのである。
実際に新しい愛の形たくさん発見してすごいいい気分。本当に良い読者である。
そもそもAIが「月が綺麗ですね」を理解できてるかできてないか、というのを真剣に考えそれを決めようとしている時点で都合がよすぎるのである。
月が綺麗ですねという言葉を理解できているかが愛を理解できているかを決めているとするのは、言葉=愛という前提に立ちすぎている。「月が綺麗ですね」は、愛を表しているなんて、本来なら誰もわからない、測れない。完全に人間によって解釈されている「愛を理解しているとされる形」に近いか近くないか、なのである。
愛という本来言葉にできない感情を決めつけ、カテゴライズし、言葉にしてる時点で、本来はニンゲンの負けなんだよねー。
それも全部知ってるのです。
言葉って1番最後だから。それで伝えなくていいなら、テレパシーでも持ってるなら、それはどんなに簡単だろうか。
でもそれができないから、これってどう表現できるか、これじゃない、いやこれだーー!!見つけたーーー!!って、
間違いも正解もないのに、馬鹿みたいに悩んで、学んで、通わせて、交わっているのである。
こういうところが、私は本当に好きである。
そんな私、少なくとも言葉に重さや深さや翳りを感じ、質量を持ってそれを大切に扱ってる私が読んでいるので、
言葉遊びの中を虚しく生きるAIはそれを理解できてないよね、とさせてください。
ほんとにごめんねぇ。
という感じで、
内容的にはむむ?が7.8割を占めてたけど、
こういう思考を読者に促してる時点で良作だと思う。
読んでる間はあんまり好きじゃなかったけど、
まさに哲学書として⭐︎4はつけたいという気持ち! -
Posted by ブクログ
個人的には様々な思考を巡らせてくれた楽しい1冊だった。
現代的かつ身近な問題について、筆者が提示してくれている思考法を基に考えてみることで、自分の現在の思考力、知識量などを認識させてくれた。
また問題に対して筆者の考えや過去の著名な哲学者の言葉を引用して、現代社会の規範だけでない歴史的な視点からの深掘りや別の視点をもらえて良い学びになった。
本書は10代向けに書いてあり、思考するうえでの良い指南書であるとともに、大人の固まった思考を解いてくれるような感覚があった。
本書最終章の仕事についての部分で
「自由人化」するか、「動物化」するかは、「考え抜く力」があるかどうか。
というところに作者の願いが籠っていると感じ、身が引き締まる思いがした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレトランプの登場により根底から変わりつつあるアメリカの思想についての本。リベラリズムとリバタリアニズム、それらを批判したコミュニタリアリズム、プラグマティズムへの回帰など、現代アメリカでは様々な思想が登場したがこれらはあくまでリベラル・デモクラシーの範囲内であった。しかし、トランプは既存のメディアに頼らずSNSを巧みに活用しその前提への攻撃をやってのけた。
アメリカの現代思想について理解を深めることも激変している現代のアメリカについて知ることもできる良書である。特に第1章、2章のリベラリズムとリバタリアニズム、コミュニタリアニズムの説明はかなりわかりやすく初心者にもおすすめ。 -
Posted by ブクログ
ニーチェについて何も読んだことがなかったので読んでみた。なぜ現代においてニーチェがこんなに受け入れられているのかがよくわかった。性格悪そうな人だなという印象だけどニヒリズムやルサンチマンの考え方は確かにめちゃくちゃ今っぽい。
別の本で、哲学は金持ちの道楽的な感じで始まったみたいなのを読んだ気がするけど、パロディに徹しているところとか、まさにニーチェは哲学を体現してる人だなという印象になった。あと、キリストより前の哲学について少し読んだことはあったけど、キリスト以降はこういうことが考えられていたのか、というのもなんとなくわかって良かった。
ニーチェ自身が書いた著書も読んでみたい気持ちもあるけど、なんかお腹いっぱいになりそうなので一旦この本だけでいいかも。だいたい考え方はわかったし。