岡本裕一朗のレビュー一覧
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本書は、あくまでも「人工知能に哲学を教えたら」どうなるか?という思考実験である。
実際にそのような実験を行ったわけではなく、哲学・倫理学を専門とする著者による思考実験でしかない。
その発想は面白いが、人工知能の専門家ではないため、「人工知能」が何を指すのか、定義があいまいなまま(著者にとっては明確になっているのかもしれないが)、思考が進んでいるように見えてしまった。
正義、脳、芸術、恋愛、宗教、遺伝子といったテーマごとに章が分かれているので、興味のある分野をかいつまんで読めるのはよい。
自分の興味のあるテーマについて、読みながら自分自身でも「思考実験」すれば、より思考が深まるだろう。
切り口は -
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もてはやされる人工知能への期待感、危機感に対して哲学を代入して問題提起をする本。
ディープラーニングの登場により、将棋、囲碁、チェスで人工知能がプロを負かしたり、自動運転車がアメリカで試運転をやったり、クイズ番組で優勝したりといった出来事が起こり、人工知能ブームが巻き起こっている。
一方
人工知能が雇用を奪うとか、人類を滅ぼすとか、人間の知性を超えた人工知能が2045年に出現するんじゃないか(シンギュラリティ)とか警鐘を鳴らす人もいる。
しかし
人工知能の現実は、まだまだ萌芽期で『ある特定の分野(囲碁とか)において』人間より優れているだけだ。
構造としては『人間よりコンピューターの -
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人間をめぐる様々な問題を考えるための事例をもとに、哲学の理論を学ぶもの。「自己」、「他者」、「倫理」、「社会」の4つのテーマ、75の思考実験が取り上げられている。
こういうのは有名なサンデル教授の本でも学ぶことができるが、著者曰く「奇抜なアイデアやpuzzleのような形式がしばしば話題となる。ひとつひとつの『思考実験』が、前後の脈絡のないままに、いわば頭の良さを競うように提出されるのだ。しかし、この方法では。『思考実験』のそれぞれが何を目指しているのか、あまり明確にはならないように思われる」(p.10)、とか「最近の『思考実験物』は、奇抜なアイデアを競って、自己目的化しているように見える。 -
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フランスの現代思想史の中心であるレヴィストロースを中心にその周囲やそれ以降の哲学者やその思想を紹介した書籍。
構造主義についての考え方はある程度理解できたものの、ポスト構造主義以降の考えかたについては難易度が高かった。
著者がドゥルーズ=ガタリの文章を引き合いに、哲学とは"思想のメガネ”であり、「相性と、生き方と、スタイルを考えてそれぞれ自分に合った"思想のメガネ”を選ぶことになるだろう」と語った点は、「哲学とは何か」という基本的な問いに対する、最も分かりやすい回答の1つだと感じた。要はものの見方であり、戦略論が「企業経営のものの見方」であるように、哲学は「世の中(特に政治 -
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本書は、古今東西の現代思想をごく一部を活用して12歳からでもなんとか太刀打ちできるように解説したガイドブックだ。全ての読者が本書を理解することは難しいかもしれないが、現代思想が存在して、かつそれは私たちの生活に密着していることを知るだけでも、読む価値があるといえる。
個人的に興味を持ったことは、誰とでもメタ・コミュニケーションが成立させるように努力しないといけないのか、ということと、ダブルバインド(二重拘束)に陥らないように、あえてコミュニケーションのプロセスの中でズラシ戦略をとることも能力の1つ、ということだ。双方の合意無くして「メタ・コミュニケーション」は成り立たないし、ビジネスの全ての -
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この手の本は、哲学書をいろいろと限って読みあさり、何となくわかった人、もしくは、わかりたいと思う人向けなので、「現代思想」にまったく縁のなかった人には一読して「????」であることには変わりないと思う。しかしながら、どういうわけか、こうした、「現代思想を簡易に伝えようとする書物」が新書で毎年、発行されているので、それらを読み続ければ、そのなんとなくの輪郭を少しずつあらわしてくれると思う。
さて、この本では、特に医療科学の分野に結構な量をさいているように思う。現代思想と医療は、今後、心や脳、人間そのものを巡る議論を含めて、かなり大きな分野になりそうな印象を強く受けた。