あらすじ
「使える哲学」とはなにか?
AIロボット、ドローン、自動運転。シンギュラリティの恐怖も叫ばれる中、いよいよ活気づいてきた人工知能の世界。アメリカではすでにUberによるタクシーの自動運転が実践化されているといいます。しかし、一方でAIが紛争や殺人に使われる懸念があるなど、モラルや倫理が追いついていない状況に見えます。
果たして、「合理的で」「最適な」答えを出す、人工知能にどうすれば「考え方」を与えられるのか。
本書では、哲学だけでなく、テクノロジーやITまで幅広い分野に造詣の深い岡本先生に、「人工知能に哲学を教える」という設定のもと、「究極な問い」を立てながら、哲学はそれにどうこたえるか…の考え方を提示いただきます。話題の人工知能と哲学を掛け合わせることで、「哲学のおもしろさ」を味わってもらう1冊を目指します。
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哲学の面白さを感じた本
哲学に関するいくつもの思考実験が書かれており、それがなかなか面白い。
例えば、トロッコ問題。
トロッコがすごいスピードで走っていて、このまま行くと線路で作業をしている作業員5人を轢いてしまう。しかし、あなたの目の前にあるレバーを引くと、線路の走る方向を変えることができるが、そこには作業員1人がおり、その1人を轢いてしまう。
あなたならどうする?
この場合、犠牲者が少ない方を選ぶ人が多い。
では、この場合はどうだろう。
あなたはトロッコが走る線路の上の歩道橋にいて、トロッコが勢いよく走ってくるのが見える。このままでは前にいる作業員5人か轢かれてしまう。歩道橋の上にはあなたの他に太った1人の男性がいる。この太った男性を突き落とせば、トロッコの勢いを止められて、5人の作業員を助けることができる。
この場合も犠牲者が少ない方を選ぶだろうか?
と言った思考実験がたくさん出てきて、なるほどと思わされます。哲学というと固いイメージがありますが、この本は哲学に馴染みがない人でも読みやすく、面白いと思える本だと思います。
Posted by ブクログ
なるほど、人工知能が普及して失業率が75%になっても、そこまで働く必要のない社会が実現していればそんなに深刻な問題には確かにならないな。様々な論点、問いを提示するタイプの面白い本。
Posted by ブクログ
非常に面白い。有名な思考実験について分かりやすくまとめられており、思考実験のアレンジバージョン(人工知能について考えるとどうなるのか)も提案されている。誰にとっても読みやすく手に取りやすい本であると思う。ロボットや倫理学に少しでも興味のある人ならば読んで損はない一冊。
Posted by ブクログ
人工知能と哲学の関係を隅々まで解説した1冊。
幸せ、宗教、労働、などの様々な概念に人工知能が人間と同じように踏み入るには、多くの倫理問題を踏み越えないといけないことがよくわかった。
例えば、自動運転と人工知能を語る時によく出てくるフレーム問題やトロッコ問題だけでなく、事故の責任の有無を歩道者か乗員に求めるのかなども載っている。
仕事がなくなると言われるが、
「人工知能が人間と同様に労働する時代」
が訪れた社会や経済が果たして成り立つかなど、哲学者ならではの見解がとても面白い。
人工知能を理解するなら、ぜひとも読んでほしい一冊だ。
Posted by ブクログ
人工知能と哲学、なんてワクワクするタイトルだろう。読まなくても自分の中に妄想が膨らんでいくのがわかる、危険なフレーズである。人間とはなんなのかを悩み続ける主体が気付けば自分も人工知能だったなど星新一が何十作も書いてそうなありきたりな妄想に勤しみながら読むことを決意した。
大学で哲学を教えているという筆者が人工知能と哲学(ここでいう哲学は主に倫理面だ)について様々な面からあり方を考えるものだ。全ての章が巧妙に純粋な希哲学者の私の興味をせっせと引いてくる。万有引力を実感した。その中でも特に面白かったトピックは1章の「AIvs正義」や3章の「AIvs芸術家」や5章の「AIvs労働者」などである。どうだろう、これが面白そうに見える人とはとても気が合うと思う。
本文はトピックに関連して過去に議論された思考実験や筆者の創造などが混ざり合って面白いものになっている。どこまで内容が有効なのかはわからないが、読みながら自分の妄想に取り込む材料としてはもってこいな内容だと思う。内容について細かく話したいがいかんせn興味深い内容なので本分量にも負けないほどの文量で書いてしまいそうなので遠慮しておく。
1番印象的だったのは「人間主義の終わり」というフレーズだ。確かに人権や倫理観について人工知能にも当てはめると人間の範囲がどんどん広がると感じた。ただ変に拗らせてハルマゲドン信仰などに入れ込まないように注意したい。我々人類にとって最も大切にするのはなんなのか、全ての思考を人工知能に任せる世界になる前にもう一度考えるべきではないだろうか。
Posted by ブクログ
哲学から科学へ分化したが、また哲学へ回帰した。そんな印象を本書から受ける。
人工知能に様々なテーマをぶつけ、思考実験と名付けた具体的な問いの中で、読者に問題の本質を問いかける。人間本位な考えでは行き詰まる。これから科学が進むべき針路について、簡単に答えられない、重大な示唆が随所に見られる。技術者たる者は一読すべし、と感じた。
Posted by ブクログ
1章ずつが短くまとめられており、内容も平易でとても読みやすい。AI、哲学、どちらにも少し興味があるけれど全く知識はないくらいの人間がちょっと覗いてみる程度の読み物としてオススメ。
Posted by ブクログ
哲学者の視点から人工知能を考えた本で、思考実験という形で色々なテーマを考えてみる本、とても勉強になりました。「ホモ・デウス」でも正しさをジャッジするのに倫理の問題というのが大きく関与していたと思うけど、AIは無人化の形で意思決定をするものであるから、主体として倫理が問われる存在であるということかな。テーマは、「正義」「脳」「芸術家」「恋愛」「労働者」「宗教」「遺伝子」の7つだけど結論から言うと、程度問題という形で白黒は付けられない感じだけど、データ化が進めば人工知能はかなりのところで人間に近づき、超えていくことは間違いないなという印象を持った。世の中はAIを使う人とAIに使われる人に分かれてしまうことも説得力がある。そして、リカレントではないけれども、時代時代で自分の役割を再確認し、自分を順応させられる人だけが生き残れるのだなと改めて考えさせられました。
Posted by ブクログ
人工知能は、思考することができるのか。
人工知能は、感情をもつことができるのか。
人工知能は、人類に反乱しうるのかー。
様々な思考実験を通し、人工知能というものがもつ可能性やそれがもたらす社会変容について仮説をたてる。
「ホモ・デウス」下巻をAIという側面から咀嚼したような内容、と私は感じた。
Posted by ブクログ
個人的な読書メモです
哲学の思考実験はこれまでの常識を考え直すきっかけになった
「決断」とは高度な思考である
「フレーム問題」 人間が決断出来るのは人間が有限な処理能力しかもっていないから。あらかじめ情報のフレーム(枠)を限定している
実際には無限の情報があるので決断が出来なくなる
芸術の評価は客観的にはありえない、それは個人的な好みや趣味判断の表現以上のものではない。芸術の評価とは純粋に主観的なことがらである
芸術には「権力価値」と「市場価値」がある
学校の語源は古代ギリシャ語の「スコレー」にあると言われ、その意味は「暇」である
「主人と奴隷」のパラドックス
人工知能と宗教 一人ひとりの生き方に合わせた「カスタマイズ化された神」が作られる
人間主義(ヒューマニズム)が終わりを迎えている
Posted by ブクログ
思考実験と過去の哲学者の考えを通して、AIの知性について、理解を深められました。
AIがどういう理屈で、どう考えてもを知る上で役に立ったのはもちろん、人間との対比も面白かったです。
哲学を学ぶ意欲を高めてくれる一冊でもありました。
Posted by ブクログ
人工知能の可能性については不確定要素が多いという断りを入れた上で、その可能性の行き着く先について、哲学の対象となるテーマごとに思考実験した本。人工知能は人間ではないものの、人工知能も「哲学できる」という結論。いわゆる哲学の問題「世界とは何か?」「良き根拠とは何か」など、哲学のテーマについて人工知能としての問題解決能力があるということです。そして「信念」もある。しかし人工知能は生き物でももちろん人間でもないので、生き物としての本能だとか人間としての自我や情動だとか意識みたいなものはありません。果たしてその境目はどこなのか?哲学者としてもうちょっと深掘りして説明して欲しかったです。
Posted by ブクログ
実際に人工知能に哲学を学習させた内容を紹介した本ではありません。さまざまなケースの“思考実験”を取り上げて、その哲学的考え方を解説しているのが本旨で、人工知能はそういった哲学的思考を解説するための“”補助線的な役割を担っているといった立ち位置です。
哲学・人工知能、双方を専門的に取り上げた内容ではないので、私のような中途半端な知識レベルの読者でも結構興味深く読み進めることができました。
Posted by ブクログ
人工知能と哲学のカンケイを色々と解説。芸術や幸福など、様々なジャンルでの思考実験が紹介されています。
哲学的に深く考えるネタは多くは無い(哲学書ではない)ですが、内容も比較的平易で、読み物として面白かったです。
Posted by ブクログ
本書は、あくまでも「人工知能に哲学を教えたら」どうなるか?という思考実験である。
実際にそのような実験を行ったわけではなく、哲学・倫理学を専門とする著者による思考実験でしかない。
その発想は面白いが、人工知能の専門家ではないため、「人工知能」が何を指すのか、定義があいまいなまま(著者にとっては明確になっているのかもしれないが)、思考が進んでいるように見えてしまった。
正義、脳、芸術、恋愛、宗教、遺伝子といったテーマごとに章が分かれているので、興味のある分野をかいつまんで読めるのはよい。
自分の興味のあるテーマについて、読みながら自分自身でも「思考実験」すれば、より思考が深まるだろう。
切り口は面白いので、考えるきっかけにはなるであろう一冊。
Posted by ブクログ
もてはやされる人工知能への期待感、危機感に対して哲学を代入して問題提起をする本。
ディープラーニングの登場により、将棋、囲碁、チェスで人工知能がプロを負かしたり、自動運転車がアメリカで試運転をやったり、クイズ番組で優勝したりといった出来事が起こり、人工知能ブームが巻き起こっている。
一方
人工知能が雇用を奪うとか、人類を滅ぼすとか、人間の知性を超えた人工知能が2045年に出現するんじゃないか(シンギュラリティ)とか警鐘を鳴らす人もいる。
しかし
人工知能の現実は、まだまだ萌芽期で『ある特定の分野(囲碁とか)において』人間より優れているだけだ。
構造としては『人間よりコンピューターの方が計算が早い』のと同じだ。
よって
現在の人工知能は単なるコードであり、『昔よりかなり自動化されたプログラム』に過ぎないのだ。
つまり
現在の人工知能はほんの表紙にあるような「トロッコ問題」の1人を助けるために5人を犠牲にできるか?という正解のない問題には解答できない。
と言うのが大体の本書の主張である。
しかし
僕の意見では、人工知能も個人が個人なりの正解を積み重ねることで、それをもとに統計的な正解を導き出せるようになると思う。
そこに、人工知能ならではの演算能力で個人情報や社会的評価、遺伝的資質をパラメーターとして追加して、どちらを助けるかの判断をしてくれればいいと思う。
犠牲にされた側は不満に思うだろう。
しかし、相手は無機質で無感情なのだからしょうがない。
ちなみに
僕は、トロッコ問題であればより多くの命が助かる選択をする。
ただし
自分が1人の側で、犠牲を決める選択権が自分にあれば、僕は5人を犠牲にするだろう。