岡本裕一朗のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
哲学の潮流が門外漢でも分かるように見通しよく整理されているのがありがたい。
その上で、IT、バイオ、資本主義、宗教、環境保護といった現代の諸問題に対する現代哲学者の代表者とその哲学、立場などが整理して紹介されている。
哲学者や用語に関する説明や、ブックガイドもあり、非常に親切。
内容は勿論、写真やイラストも分かりやすく効果的に使用されているし、フォント、紙、配置から色から全てのデザイン、帯に至るまで、過不足なく非常に効果的で素晴らしい。デザインにまで哲学を感じた。
最近の啓蒙書は図もカラーも多いし、親切で分かりやすく読みやすい本も多いとはいえ、1000円台であらゆる点でこんなに完璧な啓蒙書は滅多にないと思う。
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Posted by ブクログ
内容が各章でコンパクトにまとまっており、かつ章の最後にまとめてあるので非常にわかりやすい。
以下読書メモ
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・思考実験という言葉をはじめに使ったのは物理学者エルンスト・マッハ
1, トロッコ問題というのは、「5人か1人か、いずれの命を優先するか」という問題ではない。
2.トロッコ問題では、形式的には同じ構造(「5人か1人か、いずれの命を優先するか」)を持った二つ以上の事例が対比され、その答えが違うのをどう説明するかが問われる。
3,最初にトロッコ問題を提起したフットは、この問題を「人工妊娠中絶」をいかに正当化するか、という文脈で語っている。
4.フットは、「ネガティブな義務」と「ポジティブな義務」とい
概念にもとづいて、トロッコ問題にアプローチした。
5,フットの問題提起を受けて、トムソンは「トローリー電車」
ろな事例を考案し、どの命を優先すべきかを議論し、それが「トロッコ問題」として有名になった。
・ミルの自由論の原則(他者危害則)によれば「他人に危害を与えない限りその人の自由に鑑賞することは許されない。」
・実際、ガザニガも明言するように、「普通より攻撃的な脳というのは確かに存在し、それを裏づける証拠もある」。脳の器質的な障害や神経回路の乱れによって、暴力行為や犯罪が引き起こされる、とも言われている。ある精神病理学者は、「殺人は脳の病である」とさえ語っている。
・ギャレット・ハーディン「救命ボートの倫理:貧者救済に反対する理由」論文
・ロールズ「正義論」より「生まれつき恵まれた立場におかれた人びとは誰であれ、運悪く力負けした人びとの状況を改善するという条件に基づいてのみ、自分たちの幸運から利得を得ることが許される。有利な立場に生まれ落ちた人びとは、たんに生来の才能がより優れていたというだけで、利益を得ることがあってはならない。」
・いつも「ホント」が前提されるからこそ、ときどき「ウソ」をつくことが有効になる。逆に言えば、私の発言が最初から「ウソ」だと見なされると、「ウソ」をついたところで、誰も聞いてくれないだろう。カントが「ウソをつくな!」という義務の絶対性を主張したのは、まさにこうした「ホント」の先行性のことだ、と理解できる。
・リン・ホワイト「現在の生態学的危機の歴史的根源」論文、ギャレット・ハーディン「コモンズの悲劇」
・最近の日本の論調では、日本の人口減少に警鐘が鳴らされ、政治家が盛んに「産めよ!殖やせよ!」のアピールを行なっている。女性に対して、あたかも「子どもを産む機械」であるかのような発言が後を絶たない。こうした発言を、「出産パターナリズム」と呼んでおくことにしよう。
・とりわけ重要になったのは、J・S・ミルが「自由論」のなかで、自由を次のように規定したからである。
『その原理とは、人間が個人としてであれ集団としてであれ、ほかの人間の行動の自由に干渉するのが正当化されるのは、自衛のためである場合に限られるという文明社会では、相手の意に反する力の行使が正当化されるのは、ほかのひとびとに危害が及ぶのを防ぐためである場合に限られる。』
この原理は別名「他者危害原理」とも言われるが、誰かの自由に介入・干渉できるのは、その人が他者に危害を及ばす場合だけ、とされている。言いかえると、その人の行為が他人ではなく、本人自身に危害を及ぼす場合は、第三者が干渉したり、お節介を焼いたりできないわけである。
・ここで、「未婚」という言い方をやめて、「単身生活者」と表現するようにしたい。というのも、「未婚」という言い回しは、結婚することが前提されていて、「結婚にまで到達していない」という否定的なニュアンスがあるからだ。それに対して、「単身生活者」という表現は、一つの生き方(ライフスタイル)として、肯定的に語ることができる。
・人口減少に歯止めをかけるために、日本の政治家は出産パターナリズムの立場から、「産めよ殖やせよ」のイデオロギーを口にする。しかし、統計資料をよく見ると、少子化の原因となっているのは、結婚しないで生涯にわたって単身生活を貫く人たちの増加である。「これは、生き方の問題であって、第三者が外からいろいろお節介を焼いても仕方ない。」
・思考実験というのは、現実の世界では実験せず、頭の中で「もし〜ならば、どうだろうか」と考えることだ。言葉としては、物理学者のマッハが導入したと言われているが、厳密には、それ以前から使われていたようである。ただし、哲学において、思考実験そのものはずっと古くから行なわれていた。
・フランシス・フクヤマは、2002年の『人間の終わり』のなかで、「現代バイオテクノロジーが重要な脅威となるのは、それが人間の性質を変え、我々が歴史上「人間後(ポストヒューマン)』の段階に入るかもしれないからだ」と述べている。 -
Posted by ブクログ
聞き書きを文字起こししただけの量産体制の新書ブームにあって、読んで損のなかった数少ない社会評論。とくに、カネとモノ、技術と物質化に関する連関を明解に説明しているところに、自分自身と同じ意見を見た。社会がヒトをモノ扱いし、その結果としてまるで機械の一部のようなあつかいや取り替え可能のようなフィクションが蔓延している弊害。この本を読んで確信したのは、モノ・サピエンスという社会傾向が生み出した技術が「臓器移植」であるということだ。「臓器移植」はレシピエントもドナーも両方を物質あつかいしている。命は取り替え可能な交換物ではない、という見失ってはいけない事実を、医学はあえて無視して「移植」技術に邁進している。
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Posted by ブクログ
今アメリカ社会でなぜトランプが求められるのかを知るために、アメリカ思想史の流れをライトに追いたくて手にした本書。大枠で主要な考え方を理解できて、良かった。
1980年代にレーガンやサッチャーがネオ・リベラリズムの流れを作る。当時は人々が豊かになる未来が描かれていたが、グローバリゼーションが加速し移民が流入したことも相まって米国の中関層は貧しくなってしまう。国民国家の強化という名のもと、登場したのがトランプというのが大まかな流れ。
個人的に興味深かったのが、1970年代に提唱された自由主義(リベラリズムとリバタリアニズム)が形を変えて今の時代に戻ってきていること。
まず、1971年にロールズが提唱したリベラリズムは、多様性を前提としながらいかに公正な社会をつくるかという考え方。よって、生まれつきの才能も共通の財産として社会で分かち合うべきとしている。現在資本主義に限界を感じ、社会主義に好感を持つ人たちの思想はこの流れを引いている。
一方で同じ自由主義でも、リバタリアニズムという考え方は、公正による観点で人の自由を制限しないことが前提となっている。この流れを引いているのが、新反動主義、オルタナ右翼と言われる「自由に基づき民主主義を否定する」思想。ピーター・ティールなど、トランプを支持する情報テクノロジー主義者が主張している。この思想は「加速主義」へと移行しつつあり、ポスト労働の世界、つまりAIが労働を肩代わりすることで、人間社会では支配する側とされる側にくっきり分かれるという未来まで描かれている。
私は圧倒的に前者派だが、後者の流れが一気に加速しそうで非常にこわい。まだ粗々でしかつかめてないので、このあたりをもう少し深く学んでみたい。
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Posted by ブクログ
1日で読み終わる非常にコンパクトな新書。
第1部はロールズとノージック、サンデル、テイラー、ローティという感じでリベラリズム周りの議論をざっくり追える。
他の本で予備知識があったから読めたもののこれだけじゃ厳しいだろという記述もあったが、とにかくコンパクトなので満足。
コミュニタリアニズムの積極的な主張って何なんだろうと以前から思っていたので、「亡霊」と著者が切って捨ててくれてスッキリした。あとローティの思想もよく分からなかったけど、ロラン・バルトみたいな感じで時代に合わせていろいろ変遷してきた人らしい。ロールズが変わったんじゃなくて周りが誤読してただけ、というローティの評も面白かった。著者の好みに影響されてる気もするけど、結局ロールズなんだろうか。
第2部はデモクラシーについて。
フランシス・フクヤマやネオ・リベラリズム、ポスト資本主義などなど。正直ここは時事ネタ感が強く、どれも古い話に思えてあまりピンと来なかった。
一番最後に「ミラーワールド」の話が紹介されていたけど、これって完全にメタバースのことだよな。メタバース元年でもある2021年に提唱されたらしいが、当時はまだ近未来の話って感覚だっただろうか。覚えてないけど、それだけここ数年で世界が大きく変わったってことなんだろう。 -
Posted by ブクログ
刺激的な本だった。
ドラマやエンタメで扱われ
知っているものもあった。
・テーセウスの船
・トロッコ問題
・悪魔の証明
・シュレディンガーの猫
などは有名だと思う。
知らない思考実験とも出会えて面白かった。
中でも興味を惹かれたのが最終章。
AIについて。
シンギュラリティが近いと言われているが
どのように進んでいくのかを
「AI 2027」をもとに説明してくれている。
私の生きている近い未来に
こんな状況になるのだろうか。
科学技術の進歩はロマンだしわくわくするが
自立性のあるAIは、人間と変わらず
何を考え何を行動に移すのか
全く予測できない。
それほどまでに知性がある存在。
便利という理由で全ての社会機能について
依存してしまって大丈夫なのだろうか。
行く末を見守りたい。