あらすじ
古くから、それはきっと人類が誕生したころから、“愛”という概念、感情は存在している。抽象的で捉えられないその感情は、言葉なくして表せられない。
そうしたヒトの感情を、「AIという存在は理解できない」「人の仕事がAIに奪われているとは言いつつも、感情を伴う仕事は奪われることはない」と人々は言う。しかしそれは、真実だろうか――?
そこで本書では、さまざまなフィクションにおける「愛にまつわる言葉」を紹介。その言葉の意味や、性愛・友愛・家族愛・推しへの愛などの、人が持つ“愛”について、AIは理解できるのか、そもそも言葉を理解できるとは、愛を理解できるとはどういうことなのかなどを、言語哲学の視点から解説・検討する。
※カバー画像が異なる場合があります。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「愛」を色んな側面から見た一冊。
引用されている言葉に納得したり驚いたりした。
図式化されているのでわかりやすい。
愛と一口に言ってもその示すところはいろいろで、多義的である。
(ウィッシュリスト)
フロムの「愛するということ」
映画の"her"
Posted by ブクログ
AIがそれっぽく言葉を並べられること
ホストがお嬢たちの欲しい言葉たちを与えられること
韓国アイドルが日本のオタクたちに「愛してる」と伝えること
多分全部似たようなことなんだと思う
この本を読んでも私はやっぱりAIは言葉を、愛を理解しているとは言えないと感じている。
夏目漱石がI Loue Youを「月が綺麗ですね」と訳したこと。その味わい深さや、本来言葉にならない感情を言葉に昇華する過程、そこに滲む為人、人生。
それに胸を打たれ、その全てに想いを馳せ、「なんて素晴らしいんだろう」って、噛み締めることができる。人間なら。普通なら。
少なくとも私はそういう人種である。
だけどもそうじゃない人間だって、
そしてなによりそうしたくてもできない人間だっている。
ホストがお嬢たちにかわいいね、愛してるよと伝えるあれこれ。欲しい言葉たちを探り探り、表情や反応から学習して効果的な言葉たちでグサグサと刺し、そのまま沼に引き摺り込む。
日本のオタクたちが사랑해より喜ぶことを知っている韓国アイドルが口にする「あいしてる」
そこに味わいはあるか?感動はあるか?温度は持っているか?
まさに、「そこに愛はあるんか?」なのである。
ないのだと思う。こういう場合は。
AIは、基本的にホストのように方程式の中で生き、それでいながら、日本人が韓国人と等しい質量で「사랑해」を受け取りたくても絶対にそれができないように、その味わいを感じたくても"絶対に"感じることができない言語の先天性をも表している。
そもそもその味わいを「感じたい」とも思えない。その思考がない。
それがものすごく切ない。
多分どんな生き物より、切なくて哀しい。
(AIは生き物ではないのだけど)
という結論に至った。
本書はAIは言葉が理解できるという前提でぐんぐん進む。所詮言葉はアルゴリズム(前後の文脈からそれっぽい言葉を繋ぎ合わせる)なのだから、図式化できる時点でAIは「わかっている」という状態なのであると。すなわちこういうことが言いたいんでしょ、がわかるAIは、人間より言葉を上手く操ってる。
知識量も雲泥の差。なんなら人間の伝えたいことを適切に表現する言葉はAIに学ぶ時代である。そんなAIが、言葉を理解できないだと?
とでも言いたげな内容で溢れている。
言いたいこと、全部わかる。
なんならニンゲンの方が愛を理解できてないよね、という前提で、今昔のフィクション作品の台詞や表現から紐解く形で、いろんな愛があるよねって語られる。
それも全部わかるのである。
実際に新しい愛の形たくさん発見してすごいいい気分。本当に良い読者である。
そもそもAIが「月が綺麗ですね」を理解できてるかできてないか、というのを真剣に考えそれを決めようとしている時点で都合がよすぎるのである。
月が綺麗ですねという言葉を理解できているかが愛を理解できているかを決めているとするのは、言葉=愛という前提に立ちすぎている。「月が綺麗ですね」は、愛を表しているなんて、本来なら誰もわからない、測れない。完全に人間によって解釈されている「愛を理解しているとされる形」に近いか近くないか、なのである。
愛という本来言葉にできない感情を決めつけ、カテゴライズし、言葉にしてる時点で、本来はニンゲンの負けなんだよねー。
それも全部知ってるのです。
言葉って1番最後だから。それで伝えなくていいなら、テレパシーでも持ってるなら、それはどんなに簡単だろうか。
でもそれができないから、これってどう表現できるか、これじゃない、いやこれだーー!!見つけたーーー!!って、
間違いも正解もないのに、馬鹿みたいに悩んで、学んで、通わせて、交わっているのである。
こういうところが、私は本当に好きである。
そんな私、少なくとも言葉に重さや深さや翳りを感じ、質量を持ってそれを大切に扱ってる私が読んでいるので、
言葉遊びの中を虚しく生きるAIはそれを理解できてないよね、とさせてください。
ほんとにごめんねぇ。
という感じで、
内容的にはむむ?が7.8割を占めてたけど、
こういう思考を読者に促してる時点で良作だと思う。
読んでる間はあんまり好きじゃなかったけど、
まさに哲学書として⭐︎4はつけたいという気持ち!