あらすじ
ドイツの哲学者、フリードリヒ・ニーチェ。
「神が死んだ」「ニヒリズム」「超人」「ルサンチマン」……。
私たちがいま当然のこととして見なしている考えの多くが、実はニーチェに由来しています。
ニーチェを一度も読んだことがなくても、知らず知らずのうちにニーチェ的にものごとを考えています。
意識するかどうかにかかわらず、私たちはニーチェの掌の上で踊らされているのです。
「どう生きていくのか」という問いが、ニーチェの生涯の最初から最後まで貫いていました。
彼の思索は、すべての人に何かしらのヒントを与えてくれます。
現在の生きづらい世の中で、ニーチェを読んでみてはいかがでしょうか。
序 章 ニーチェって、どうして人気なの?
第1章 ニーチェを知ると、何が変わるか?
第2章 神が死んで、どうなるか?―「神は死んだ」
第3章 生きる意味なんてない―「ニヒリズム」
第4章 真実はひとつではない―「パースペクティブ主義」
第5章 妬みが道徳を生み出した―「ルサンチマン」
第6章 人間の向こうに何があるか―「超人」
第7章 遊び、そしてパロディ―「永遠回帰」を生きるヒント
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Posted by ブクログ
非常に読みやすく、入門書として非常に分かりやすかった。
「ニヒリズム」「超人」といったニーチェの基本的なキーワードの解説だけでなく、それらのキーワードに対する誤解を解こうとする解釈や真に理解すべき重要なポイントなどが語られている。
ニーチェの言葉や思想を並べるだけでなく筆者なりの解釈が入っており、その解釈が正しいかどうかは判断を保留すべき部分だと思う。しかしだからこそ、これを読んだ自分はどう解釈するのかという点が重要になるだろう。
ニーチェがどのような時代背景の中で、どんな思想家の影響を受けながら思索を深めていったのか、その経緯や思想の背景にある流れも分かりやすく理解できた。
巻末にはニーチェ著作の解説もついており、これも大変参考になる。なんとなくニーチェを知っているけど思想的な背景を知りたい人、基本を押さえてこれからニーチェを読みたい人におすすめの入門書。
自己啓発的な要素は全くないので、哲学の先生から分かりやすい授業を聞いているようなスタンスで読みたい人向け。
Posted by ブクログ
中高生でも読めきれるくらい易しいレベルだが、本質からずれることなくニーチェがどんな思想を持っていたのかがよく分かり、まさに教養として身につけるにふさわしい内容だった。
ニーチェは次の2世紀(20、21世紀)はニヒリズムの時代と予言した。これまではキリスト教の世界観を軸に道徳形成がなされてきたが、ニーチェによれば普遍的で絶対的な真理など存在しない。人々は道徳の根拠を神に求めていたが、「神の死」によって価値観の基準がなくなることになる。極端な話人殺しへの反論も不可能に。
『反哲学入門』でもあった通り、ニーチェを転機に西洋思想批判や反哲学が始まったと認識していたが、多くの概念は先人のパロディとして書き換えられたものであり、その点多方面で思想が引き継がれている旨が綺麗にまとめられている。点と点が線で繋がるような感覚でものすごくスッキリした。
ニヒリズム:ツルゲーネフ、ロシア政治思想、(ドストエフスキー?)
神の死:ヤコービ、ヘーゲル
生きる意味:ショーペンハウアー
パースペクティブ:ライプニッツ
妬み:キルケゴール
超人:ゲーテ、ベートーベン
Posted by ブクログ
ニーチェ思想を理解する上で、助けになる一冊でした。“ルサンチマン”“超人”“永劫回帰”“ニヒリズム”などの言葉をニーチェがどのように解釈していたのかを詳しく説明してくれます。
すべての言葉がニーチェオリジナルではなくて、昔からあったものをパロディとして、自分の語りの中で使っていたという考え方がおもしろかった。
人生ずっと“ごっこ遊び”をしていて、自分のことをキリストと言ったり、ナポレオンと言ったりする理由が少し理解できた。
Posted by ブクログ
絶対的な価値はない(ニヒリズム)、人間が神を殺した(パースペクティブ)、人生は同じことの繰り返し(永劫回帰)。こんなにも、自分の考えに近い哲学者がいたとは驚いた。分かりやすい解説や著者の解釈も理解の助けになった。
Posted by ブクログ
ニーチェについて何も読んだことがなかったので読んでみた。なぜ現代においてニーチェがこんなに受け入れられているのかがよくわかった。性格悪そうな人だなという印象だけどニヒリズムやルサンチマンの考え方は確かにめちゃくちゃ今っぽい。
別の本で、哲学は金持ちの道楽的な感じで始まったみたいなのを読んだ気がするけど、パロディに徹しているところとか、まさにニーチェは哲学を体現してる人だなという印象になった。あと、キリストより前の哲学について少し読んだことはあったけど、キリスト以降はこういうことが考えられていたのか、というのもなんとなくわかって良かった。
ニーチェ自身が書いた著書も読んでみたい気持ちもあるけど、なんかお腹いっぱいになりそうなので一旦この本だけでいいかも。だいたい考え方はわかったし。
Posted by ブクログ
事実は存在しない、全ては解釈である
子供は敵を倒すことも、敵を批判することもなく自由に遊ぶ
社会的な価値観や道徳よりも自分の世界を生きていこう(超人)と思った
Posted by ブクログ
ニーチェの思想を、たいへんわかりやすいことばで解説している入門書です。
「はじめに」で著者は、「私たちがいま当然のことだと見なしている考えが、実はニーチェに由来する」ことがすくなくないといいます。たとえば、絶対的な真理など存在しないという相対主義の発想は、現代において広く受け入れられていますが、ニーチェのパースペクティヴィズムの思想はこうした考えかたをいち早く示すものであり、またそのような考えかたがいきわたったために人びとがニヒリズムに陥ってしまうという問題を、明確に自覚していました。
ニーチェの思想のなかで、こうした現代のわれわれにとって受け入れやすい側面を紹介するという本書のスタンスは、入門書としてはオーソドックスな切り口であるように思います。一方で、ニーチェの思想が含んでいる「毒」は、いささか薄められているようにも感じました。たとえば清水真木の『ニーチェ入門』(2018年、ちくま学芸文庫)のような、本書とは異なるスタイルで書かれたニーチェの解説書とあわせて読むことで、ニーチェについて立体的な見通しが得られるのではないかと思います。
Posted by ブクログ
私にとってのニーチェは「忘却はよりよき人生を云々」というもの。どこからの引用なのか今となっては不明だが,永遠回帰の話を聞くと,人生は同じことの繰り返しでつまらないけど生きていく理由を考えないといけないニーチェにとっては忘却は「同じ」でなくするので毎日が新しくなる,つまり,更新されるので生きることに意味を見いだせたのか。しかし,第三者的に見ていたら本人が忘れているだけで結局は永遠回帰だな。ルサンチマンの考えが面白かった。弱者が弱者故に強者を引きずり落とすために道徳を生んだとは,そんな発想はなかなかできない。みんな権力志向があるから,弱者は強者に対して道徳で強さを縛る。それを扇動する教会。道徳が浸透した社会は弱者だらけの社会だな。強くなるための努力や工夫でなく,強き者を生み出さないことで自らの弱さを隠し,弱い者同士で支配し合う。こんなふうに書いたらひどい世の中だ。大きいことは良い事だ,強いことは良いことだ,がルサンチマンの道徳で大きいことは良くないこともある,強いことは良くないこともある。まさに多視点,パースペクティブ主義,そして厭世的でニヒリズムに陥る。人間であることがもう業である。生まれないことが最善で,もうすぐ死ぬことが次善という,人生のパラドクスだ。そして,それでも生きていく。