穂村弘のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
一般公募した短歌を、3人の歌人がテーマ別に批評していく一冊。対談形式で書かれているから読みやすい。詩や短歌の面白さがわからなかったが、多少なりとも触れてみることで、制限があることではじめて得られる視点があると気づけた。
<第二の教訓は、限定や限界の必要ということです。いいえ、別に難しい話ではありません。相撲の技術は、狭い土俵というものが あるから生まれたのだということです。もし直径100mというような土俵であったら、相撲は、到底、あの美しい緊張の瞬間を生み出すことは出来ないでしょう。大自然を写すためにキャンパスを無限に大きくして行ったら、迫力のある絵を描けるでしょうか。そう考えると、何を書いてもよい、どんな言葉を使っても構わないという言論の完全な自由というのは、実は、少し始末の悪いものなのです。>
<なにも、戦争中の厳格な言論統制のほうがよいなどと言っているのではありません。しかし、どこかに土俵のようなもの、額縁のようなものがあった方が、本当に重要な事柄が鮮明に浮かび上がり、文章に緊張が生まれるのだと思います。今日では、面倒な話ですが、そういう限定や額縁を自分で作り出して、これを自分に課するよりほかはないでしょう。>
『私の文章作法』(潮新書75 潮出版社)清水 幾太郎著 第六章より引用 -
Posted by ブクログ
新潮社のPR誌「波」の連載。
お友達からお題を募って、ふたりで題詠したもの(本来すべてがいいわけではないので、玉石混淆はやむなし)を、エッセイ風に自作解説した上で、二度にわたって対談で褒めそやす。
なんという企画。
でも本来歌界や句会ってそんなもんだろうし、作品性の違いというか世界の捉え方の違いみたいなものが見えて、結構面白い。
穂村さんはファンタジーや架空の夏を設定。
堀本さんは自身の体験や季語から発展。
もちろんそれぞれ幅はあるけど。
短歌と俳句の違い、それぞれにフィットした味方なんだろうな、とも。
出題者ー作者ーもうひとりの作者ー読者という関係の中で生まれる・立ち上がる場。
おおっと思ったのは、
・街師走信じられない多情の日
・秋蝉(しゅうせん)の尿(しと)きらきらと健次の忌
※8月12日中上健次没。堀本は和歌山生まれ。
題詠ではない、エッセイ中での自作引用。
・切り口の楕円うつくし胡瓜漬
・妹の寝顔の上の蟻を吹くおいてけぼりのアリスの姉は
解説の壇蜜もナイス。
(1)椅子 穂村弘 歌人
(2)動く 堀本裕樹 俳人
(3)たまゆら 北村暁子 編集者
(4)信じられない 藤野可織 作家
(5)風見鶏 竹本健治 作家
(6)まぶた 松家文子 大学生
(7)唾つば 又吉直樹 芸人
(8)かわいい 名久井直子 装丁家
(9)挿入 荒木経惟 写真家
(10)流れ 鏡リュウジ 占星術研究家
(11)カルピス 高橋久美子 作詞家
(12)謀叛むほん 北村薫 作家
(13)たしなめる 柴崎友香 作家
(14)ゆとり 朝井リョウ 小説家
(15)黒 千田朝子 小学生
(16)水際 中江有里 女優
(17)ぴたぴた 谷川俊太郎 詩人
(18)背骨 菱刈チ力 整体師
(19)四十八 道尾秀介 作家
(20)放射線 新妻香織 相馬市議会議員
(21)夢精 ビートたけし コメディアン
(22)客 柳本あかね 「茜夜」店主
(23)塗る 堀江敏幸 作家
(24)文鳥 梅崎実奈 書店員
(25)罪 北村篤生 牧師
(26)ロール 寺島さやか 「本屋B&B」店長
(27)はにかむ 石田ゆうすけ 旅行作家
(28)古本屋 広瀨洋一 古書店主
(29)ゲーム 米光一成 ゲーム作家
(30)誕生日 千野帽子 文筆業
(31)部長 長嶋有 作家
(32)稲荷 布上智範 イタリア料理店店長
(33)逃げる リヒト モデル
(34)適性 西崎憲 作家
(35)舞台 柳家喬太郎 落語家
(36)楕円 竹内亜弥 女子七人制ラグビー日本代表
(37)着る 祐真朋樹 スタイリスト
(38)腹 佐藤隆信 出版社社長
(39)描く 師岡とおる イラストレーター
(40)歌う 大住憲生 ファッションディレクター
(41)やわらかい 会田朋代 幼稚園教論
(42)安普請 壇蜜 タレント
(43)ふるえる 青柳いづみ 女優
(44)瀬戸内海 田丸雅智 ショートショート作家
(45)おいてけぼり 小松孝知 運送業
(46)愛嬌 山田邦子 出版社受付係
(47)うらはら 五戸真理枝 「文学座」劇作
(48)忖度そんたく 迫田朋子 ジャーナリスト
(49)共謀罪 藤田直哉 文芸評論家
(50)ぴょんぴょん 馬場あき子 歌人
【穂村弘×堀本裕樹】あとがき対談
【穂村弘×堀本裕樹】対決! 短歌と俳句 公開勝負
解説 壇蜜 -
Posted by ブクログ
短歌について知るための入門書のようだけれど、ずいぶんボリュームがあって難解だった。
構造図の章では、著名な短歌の読み解き方を事細かく解説してくれているが、『〈実存的な読み〉の可能性を探る』という形而上学みたいな話で、ほとんど何を言っているのかちんぷんかんぷんだった……。
でもそれこそ今すぐ歌人になりたい人にとってはスペシャルに親切な文章なのやもしれない。私は歌人にはなれぬ……。
でも心に残る表現はたくさんみつかった。
ふわふわしたことばっかり言っているほむほむさんが好きだけど、こういう真面目な話をしているほむほむさんもすてきです。
「世界を覆す呪文を求めて」の終章は、穂村弘さんがどのように短歌と出会っていったかがイノセントに綴られていてたまらない気持ちになる。
〈それまでに誰も考えなかったような、自分だけの呪文を意識して歌を作るようになった。それとともに、誰か僕の呪文を好きになってくれないだろうか。誰かそれを覚えていっしょに唱えてくれないだろうか。そんな風に思うようになった。たまたま隣の席に座った友達に歌のカードを見せてみた。友達はちょっと困ったように歌を見て「いいね」と言った。 〉 -
Posted by ブクログ
「これ知ってる。」息子は突然私が読んでいた本を横取りして読み出した。
あのさ、母さんまだ途中だけど。
「なんて知ってるの?」
「この間お父さんといったマルジナリア書店に置いてあった。」
「へえ〜あそこ狭いなのにね。」
「にょにょっ記もにょにょにょっ記もあったよ。」
そう言いながらゲラゲラと笑いながら持って自分の部屋に帰っていった。
おいおい、だから母さんはまだ途中だって!
穂村弘の一冊めは食に纏わるエッセイだったですが、今作も相変わらず鋭い観察力と突拍子のない発想に笑撃を受けました。なんだろう。大人になるとなかなかこんな目線で物事を見れなくなるが、大人になった穂村さんはまるで大きい子供のように、いろんな発想を文字にしてくれた。
読み終ったら、感想を聞かせてね。と、息子にもこんな自由な人間になってほしいと思うばかりでした。 -
Posted by ブクログ
穂村弘(1962年~)氏は、札幌市生まれ、上智大学文学部卒、1986年に連作「シンジケート」で角川短歌賞次席(同年の受賞作は俵万智の『サラダ記念日』)、1990年代には加藤治郎、荻原裕幸等とともに「ニューウェーブ短歌」運動を推進した、現代短歌を代表する歌人の一人。エッセイスト、絵本の翻訳家等としても活動している。
私は50代の会社員で、最近短歌に興味を持ち始め、これまで俵万智、穂村弘、東直子、枡野浩一、木下龍也等の歌集や短歌入門書、また、現代短歌のアンソロジーである、山田航の『桜前線開架宣言』、瀬戸夏子の『はつなつみずうみ分光器』、東直子/佐藤弓生/千葉聡の『短歌タイムカプセル』等を読み、半年ほど前から新聞短歌に投稿している(最近ぽつぽつ採用もされるようになった)。
本書については、少なくない若手歌人が、短歌をつくるきっかけとなったとか、影響を受けたと語っていることから読んでみた。(実は、著者の入門書では、『はじめての短歌』を読んだ後、本書を一度本屋で手に取ったことがあるのだが、難しそうで断念した)
そして、今回一通りページを繰ってみたが、著者が「読み手にインパクトを与えて、世界を一瞬揺るがせる短歌の魅力とはいったい何なのか。破壊力のある爆弾の中身はどうなっているのか」を語ったメインの章については、一つ目に挙げられていた、いい短歌は読者に「共感(シンパシー)」を抱かせるだけではなく「驚異(ワンダー)」を与えるものである、という点以外は、残念ながら消化不良に終わった。そういう意味では、解説で枡野浩一が書いているように、本書は「初心者向けじゃ、ない!」し、素人・初心者には枡野の『かんたん短歌の作り方』、木下龍也の『天才による凡人のための短歌教室』、俵万智の『考える短歌』等の方がはるかに実践的・有用だろう。(私はいずれも読んだ)
また、本書には、文庫化(2013年)された際に、単行本(2000年出版)の内容に、「爆弾のゆくえ 現代短歌オデッセイ2000~2013年」というインタビューが加えられており、そこでは、著者や俵万智の世代以降の短歌界の歴史について語られているのだが、こちらは、上述した現代短歌アンソロジーで多数の歌人の作品を読み、その主題・スタンス・スタイルのバリエーションの広さに驚いている私としては、とても興味深く読むことができ、頭の整理にもなった。
もう少し作歌を続けてから、改めて読み直してみたいと思う。
(2021年12月了) -
Posted by ブクログ
穂村弘さんによる食まわりのエッセイ。
夜中に布団かぶってもそもそ菓子パンを頬張ることに喜びを感じるような彼が書く食エッセイとは……?と訝しんでしまったが、その期待(?)を裏切らない面白さでした。
あまり食に興味が持てず、食事未満のぐだぐだ食ばかりを好んで口にしている側の人間としては共感できるところも多かった。脳内に住む”逆ソムリエ”、私もいる!!あれはなんなんだろうなぁ。
そして自分の味覚に確信が持てないのも同じ。だから美味しいと思っても人に薦められないし、得意料理だとしてもよそさまに振る舞いたくない。
読みながら共通点に笑ったりしたけど、うーん、このままじゃまずい気がしてきた。