吉川永青のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
「隅々まで遍く幸ある世」を造ることを夢と掲げる木曾義仲。
まずはそのために平家を打倒すると。なぜならば平家は幸を独占しているから。
世話になった中原兼遠に甘いと言われながら、それが理解できないまま旗揚げすると、
平時はどちらかといえば穏やかな気性が一転、源氏の荒ぶる血の故か、バーサーカーと化してしまう。
特に倶利伽羅峠の戦で平家を壊滅させたその戦のさなかの高揚と後の落ち込みの落差が激しい。
京に上った後は、今度は公家や法皇との「付き合い」に翻弄され、人の欲を知り、苦悩する。
また叔父である新宮十郎行家や遠く鎌倉の源頼朝は、同族であっても心を一つにできないことがなかなか理解できない。
今まで -
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題名に「家康が」と在るが、徳川家康を主要視点人物に据えた時代モノの小説である。
「徳川家康」とでも言えば、「誰でも名前位は知っている」という程度に大きな存在感の史上の人物で、小説等の劇中人物としても限り無く多く登場している。そういうことだが、本作は「在りそうで、余り無かった?」というような感じで綴られているかもしれないと思った。
本作は、最晩年に至った75歳の徳川家康が登場する。既に身体も少し弱っていて、先は長くないと自身でも自覚しているような状態だ。
そういう中で徳川家康は自身の来し方を振り返りながら「遺訓」というようなモノを纏めようとしていた。そこに学者の林羅山が訪ねて来る。
林羅山は、徳 -
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家康の実像にせまるために
いろいろなヒントをもらった。
ともすれば江戸時代に神格化された徳川家康にやや嫌悪感を感じた若き日の記憶がある。この書を読んで家康の心のヒダまで書き出して人間、家康に大きく近づけたように思う。近年家康への親近感が高まってきた。奇しくも来年のNHK大河ドラマも家康だ。楽しみたい。 -
Posted by ブクログ
「世の中、おめえさんが思うほど悪かねえよ」「人って……多かれ少なかれ、誰かに何か皺寄せをしながら生きている気がします」
世間の悪い部分に翻弄される写楽とお喜瀬。特にお喜瀬は心と体の不一致を理解されずマイノリティとして苦しみ続ける。それでも世間は悪い人ばかりではないし、互いに迷惑をかけあって生きていくものだとお喜瀬自ら気付き、一方で世間に絶望しかけた写楽を諭すシーンは大きなカタルシスを味わえた。
作者の他の作品とは異なる人情者でこんな作品も書けるのかという大きな驚きがあった。ただ、他の作品でも1人の人物の心情描写は丁寧で今回は2人のみにスポットを当てた関係でより丁寧に心を描けたのだと思う。