吉川永青のレビュー一覧
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ネタバレ久々の吉川永青作品。井伊の赤備えといえば、その甲冑が彦根城にも展示されていて、ひこにゃんも着ていて、地元のこんにゃくは赤色というくらいに、近江では有名なものなのだが…これ、元は甲斐の武田に所属していた武士団(備え)の甲冑色。
三方ケ原の合戦で家康を震撼せしめた武田軍団。その中でも最強をもって知られる赤備えは、長篠の合戦で織田・徳川連合軍に敗れた後、徳川に呑まれ、家康直轄の所属ながら井伊長政の指揮下におかれることとなる。
武田から徳川に移った赤備え、その軍団の中にいた男2人の物語。日本史の動くさま、合戦描写の見事さ、武田勝頼・徳川家康・豊臣秀吉・大政所・井伊長政など歴史上の著名人の描写の巧み -
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『決戦!関ヶ原』
誰もが知る関ヶ原の戦い。
4時間で決着がつき、そして最後の西軍 島津が退陣するまでが8時間。
●読みどころ
1.関ヶ原
家康と三成。
戦い前に密談あり。
互いの狙いは何か?
2.戦終えての三成
「勝者はいない。
徳川も豊臣もそして毛利も、さらに私三成も全員
敗者なり。」
その意図とは?
3.織田信長弟 長益。兄に囚われた人生
武勲無しの武将。
最初で最後に近い戦いは家康方で。
千利休の弟子であった長益。
戦場で何を思えたか?
4.島津義弘
66歳。西軍の敗北が決まり、1500の兵で家康の
本陣3万人に向かう。
「己の魂と引きかえに敵をうつ -
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絵師の写楽の正体はよく判らないが、本作の作者は最近の研究で有力視されている「斎藤十郎兵衛説」を採って、それに依拠しながら物語を展開している。斎藤十郎兵衛がどういう経緯で絵を描くようになって行くのか?何を思って絵を描き続けようとしたのか?そういう物語だ。
正体が必ずしもよく判らない江戸時代の絵師を主人公とした物語ではあるが…或いは「人ならではの営為」である、例えば絵を描くというような“創作”に向かって行く「人を人たらしめている何か」というようなことが語られている物語というような気もした。更に、斎藤十郎兵衛や一部の他の作中人物達が「世間の主流を外れてしまったような作中人物に向ける温かい眼差し」、「 -
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戦国時代の“フル装備”という感じの甲冑で身を固めた、眼光鋭い武士のイラストの表紙に凄く惹かれる。
6篇を纏めた一冊に『老侍』(おいざむらい)と題を冠している。各篇の主人公達は何れも「老雄」とでも呼ぶのが相応しい、60代以上の人達ばかりである。
各篇の主人公は史上の人物達をモデルにしているということになるが、相当な高齢になっているにも拘らず、熱いモノを胸に行動する姿に何か心動かされる。単純に「高齢な人物が頑張って…」ということではなく、色々なモノを視て、考え、行動し続けて来た自身の裡の想いに考え至り、「衝き動こう!」とする“生き様”に心揺さぶられる感だ。
各篇の中、島左近(清興)を主人公とした『 -
購入済み
はじめて読む作家さん。関ヶ原の戦いに直接かかわっていない武将たちの物語。心理描写も巧みで
生き残りをかけたそれぞれの思惑がよく描かれている。ほぼすべての作品に石田三成が登場するが、
黒田如水の語る三成像が斬新で興味深かった。マイナーな佐竹や最上を登場させるあたりはなかなか
だと思う。 -
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<毒牙>という題名に2人の人名が付されている。義昭は「足利義昭」で、光秀は「明智光秀」である。
足利義昭は、室町幕府の15代にして最後の将軍であった人物である。かの織田信長が彼を擁して京都に入って、彼は将軍となったが、後に織田信長によって駆逐されてしまった。そして足利義昭に仕え、後に織田信長に仕え、<本能寺の変>で織田信長を倒してしまうのが明智光秀である。
本作はこの足利義昭と明智光秀とを中心視点人物に据えた小説である。義昭が中心の部分と光秀が中心の部分とが在るのだが、義昭が中心の部分の比率が高い。
将軍位を継承し得る者を出す一族に産まれながら、嫡男ではなかったことから仏門に入って興福寺で僧と -
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「治部」と言えば、かの石田三成のことである。昔の武士に関しては、「〇〇殿」とか「〇〇様」というような姓や名前で呼ばれるよりも、官職等に因んだ呼ばれ方をすることが多かったようだ。かの石田三成は「治部少輔」という官職を与えられていて、それに因んで“治部”、場合によって“殿”や“様”が末尾に添えられるという呼ばれ方であったようだ。本作の題名はそこから「治部の…」というようになっている訳だ。更に、官職ということでは律令制度の上で「治部省」というモノが存在し、そこの次官というようなことで従五位に相当する「少輔」が在って、「治部少輔」という官職は永い間に存在していた訳だが、江戸時代以降には「あの石田三成」
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匿名
ネタバレ 購入済み戦国時代の東北陸奥、盟主の伊達氏の内乱から大小の武士が群雄割拠する状況にあった。
会津の蘆名氏もそのひとつで、葦名止々斎盛氏に仕える一門の金上盛備が本作の主人公。
何かと横やりを入れてくる伊達氏との戦に加え、止々斎の死後、望まれながら葦名氏の長には立たず
あくまで家老的な立場で会津をまとめようとする盛備は「会津の執権」と呼ばれるようになる。
かたや、伊達氏には政宗が生まれ、早くから天下を取ろう決意する。
政宗は早く陸奥を平定し、中央を窺いたいが、葦名が目の上のたん瘤になり果たせない。
盛備は織田信長や豊臣秀吉に会いに行くなど外交の才を発揮するが、家内をまとめきれず最終的に伊達と対決して敗れ、戦 -
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石田三成好きとしては非常に好ましい人物造形であったが、物語としては至って平凡という感想。
豊臣の忠臣ではなく、泰平の天下を実現するという大義を終始貫く三成像は面白い。例えば、朝鮮侵攻も国の利益とならない挙兵を早期に終結させるため、好戦派を陥れ停戦を急いだなど、視点が変れれば事件の印象も変わる。島清興・大谷吉継という二人の友の描かれ方も良い。無念の最後も三人で共通の思いを共有できているという事実は何よりも辛福だったのではないだろうか。最後の対家康への啖呵は痺れた。「1度の戦で豊臣を滅せよ」というセリフは初めて目にした。事実、家康が治部の礎で近世日本をつくり上げたというのは実に感慨深い。 -
匿名
ネタバレ 購入済み姉妹編の「義仲これにあり」が性善説的な話だったのに対し、
そちらにも出てきた鬼若こと弁慶が主人公のこちらは、なんというか、とても気持ち悪いお話、と言ったら失礼か。
多分意識して気持ち悪く書かれたんじゃないかなとも思うんですが。
主人公の弁慶の要望からして、片腕が短く四本指、片腕は長く六本指なうえ、疱瘡で片目がつぶれている身の丈七尺の大男。
生後すぐに捨てられ、鬼一法眼に拾われ養育され、修験者としての能力を得るも、その容貌から他人に疎んじられ虐げられ、
怒りと恨みしか知らずに育った。
世に恨みを抱いた弁慶は、復讐を考え、その旗頭として源義朝の遺児牛若を求めたが、
その牛若のひ弱さ加減に腹を立