あらすじ
義経をもって天下を制す――。「物の怪」と蔑まれ、野心と利害にまみれた男が求めたのは、「源氏の血」を掲げての天下取りであった。武蔵坊弁慶の名を得た男は、義経を御旗とし、一気に世に躍り出る。だが、それは偽りの旗であった……。敵は平家、そして頼朝。虐げられし者どもが乾坤一擲の大博打! 『戯史三國志 我が槍は覇道の翼』で2012年度吉川英治文学新人賞候補。最注目の新鋭による痛快時代長編!
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匿名
姉妹編の「義仲これにあり」が性善説的な話だったのに対し、
そちらにも出てきた鬼若こと弁慶が主人公のこちらは、なんというか、とても気持ち悪いお話、と言ったら失礼か。
多分意識して気持ち悪く書かれたんじゃないかなとも思うんですが。
主人公の弁慶の要望からして、片腕が短く四本指、片腕は長く六本指なうえ、疱瘡で片目がつぶれている身の丈七尺の大男。
生後すぐに捨てられ、鬼一法眼に拾われ養育され、修験者としての能力を得るも、その容貌から他人に疎んじられ虐げられ、
怒りと恨みしか知らずに育った。
世に恨みを抱いた弁慶は、復讐を考え、その旗頭として源義朝の遺児牛若を求めたが、
その牛若のひ弱さ加減に腹を立ててあっさり殺害、
山賊や掏摸など4人を集めて「義経党」をつくり、義経を騙らせて世にのさばろうとする、という感じですかね。
とにかく「イイヒト」が出てこないので、少々辟易とさせられる部分はあるけれど、
最後の段になって人の心を知ったことに気づいた弁慶に、少し救われた気がしました。
Posted by ブクログ
前作『義仲これにあり』の姉妹編…。
源平合戦の最終盤、平家滅亡~奥州藤原氏滅亡までを描く。
前作『義仲…』では、
悪名高く語られる木曾義仲を、義の哀将として描いており、
その続編的な位置付けとなる本作への期待感は高かったが、
各キャラクターの設定が、ちと酷過ぎたかもしれなぃな~。
物語は、世の歴史書をおおむねトレースしていましたが…、
義経やその郎党は、すべて偽者で、静も女海賊で…って…。
結果として、有名かつ大事なエピソードに皺寄せが生じ…、
平家滅亡以降の最後の盛り上がりに向けて失速したかも…。
作者は、お話自体は、とても丁寧に書かれているので…、
もぅ一人の義の哀将である義経の一代記をベースとして、
法皇、頼朝、秀衡の三つ巴の魑魅魍魎とした覇権争い等、
敗者から見た正統派の源平合戦の終結を読みたかったな~。