大島真寿美のレビュー一覧
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江戸時代の大坂・道頓堀、浄瑠璃作家近松半二の物語
テンポの良い大阪弁で語られ、生き生きとした登場人物たちに江戸時代ということを忘れてしまいそうで、文楽を題材にした架空の人物のストーリーかと思っていたら、近松半二は実在の浄瑠璃作家だったと知り、驚きました。
物語を作り出す苦労。
書いても舞台をヒットさせなければいけないプレッシャー。
読んでいるこちらの方までそのプレッシャーに苦しくなってしまうほどでした。
人形浄瑠璃といえば、今は文楽として知られていて、私も子供の頃大阪の国立文楽劇場に観に行ったことがありました。
薄暗さとリアルな人形と言葉が難しいイメージしかなくて‥。
でも、こうして今も続く文楽の、作品作りに生涯をかけ、人形浄瑠璃を愛した人たちの熱い思いを知り、改めて文楽を観に行ってみようと思います。 -
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17歳の主人公。
生きづらさを感じ学校はサボり癖がついてしまった。
振り返るととにかく疲れていた。
それが父親がいないせいだとは本気で思っていないのだが、『どうせ父親も知らない私ですから』と母に反論した事で知らされていなかった父がいる香港に連れて行かれてしまう。
それが香港じゃなくても良かったのかもしれない、きっかけさえもらえれば。
でも主人公にとっては自分を主張する怒っていそうな口調だけれど優しい人々のいる香港の街が丁度良かったのだろう。
やり場のないエネルギーを賑やかな街で発散できた。
日本に帰ってからのおばあちゃん、エミリー、テツヤ、ロイの関係性がとても良い。
特に何度も香港を訪れたおばあちゃんのバイタリティは素晴らしい。
もう17歳のあの頃の気持ちは思い出せない。
けれど確実に通ってきた道。
自分で決めて良いのだ、自分の事は自分で決めるしかないのだ。
どこにいても『ここはどこなんだ?』と地に足がつかなかった主人公が『私はここにいる』と思える様になった大きな変化。
爽やかな読後感だった。 -
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ふじこさんは、離婚調停中である父の彼女
小学6年生のリサは、周りの大人と違って自分を大人扱いしてくれて、無邪気でキラキラしてるふじこさんを好きになる
「ある日出会うの。リサはリサの宝物に」
大人の世界への不信感や不安を抱えるリサに、同じ目線で語りかけるふじこさんが魅力的
文中に多用される繰り返し言葉は、緊張感をほぐすためなのか
ひょいひょい、ほいほい、ふらふら、不承不承、ぽくぽく、ぴりぴり、へなへな、ふふふふ
ハ行は呑気で何だか愛らしい
前向きに生きるための金言も沢山ありました
大人として、子どもの不安を優しく包み込んで光ある未来を示すためにも
子どもから「キラキラしてんなー」って思われるように生きたいものです -
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人形浄瑠璃作者、近松半二の一代記。
浄瑠璃が下火になっていく時期に、大ヒット作「妹背山婦女庭訓」を書いた人だ。
うん、むか~し、文学史の教科書でちらっと見たような。
その半二を、エンパシーの人として(そんな言葉は使っていないが)描く。
これが、この作品の肝なのではないか。
なんでも取り込んでいく人。
一見、人柄としては天才的な感じには見えないのが面白い。
勃興していく歌舞伎も、衰退していく浄瑠璃も、作り手たちは混然一体となって、何か面白いものを作ってやろうという熱気を持っている。
それが、この時期の道頓堀というところ。
半二も、物語や、キャラたちに呼びかけられたように作品を作り出す。
読んでいるこちらも、わくわくする。
一方、虚実皮膜の世界で、虚無の淵を覗いてしまう作者たちの存在も描かれる。
半二の幼馴染、並木正三が代表だ。
また、よい浄瑠璃のためならどんなことでもするという、人形遣いの初代吉田吉三郎。
その思いの強さのために身を滅ぼしていく、ある種悲劇の天才タイプ。
こんな人たちが周囲に点綴され、半二の作者としての強靭な在り方が際立ってくる。
読み終わっても、もうしばらく、作品の世界に浸っていたい気分がした。 -
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スカイツリーを見上げる下町の片隅にある商店街の物語、第4弾。
戦後の焼跡に24軒集まって始まった商店街ということだったけれど、今では80軒近くの店があるという。
毎回、冒頭に地図が載っているけれど、その本に載っている短編のタイトルのお店だけなので、これは・・・あの物語のお店の場所なのだが・・・と迷ってしまう。
今回の桜さんのように、お店を出て歩きながら紹介してくれると、ふむふむ、川平金物店は、水沢文具店の向かって左隣なのだな?とわかって嬉しい。
今までに登場した、全部のお店が載った大きな地図が見たいなあ〜
老朽化した二階建てで、一階がお店で二階が住居という作りが多い。
看板も古い言葉で、若い子には読めないようなものもある。
かといえば、おしゃれで新しいお店もあり。
ずらりと並ぶ入り口の奥には、それぞれの深い物語があるのである。
今までも、老いと若きの交流のお話が多く描かれてきた。
今ではおばあちゃんたちも商店街のグループLINEで連絡を取り合っているという。
20代30代の若者たちで作る青年会の活動も活発になりそうだ。
デパートがオワコンになった今、商店街って、逆に新しいのでは?と思い始めた。
一軒目『サクマ手芸店』寺地はるな
糸子と康恵はアラ還の従姉妹同志で、康恵の母から受け継いだ手芸店を二人で営む。
見た目と名前がまるで逆の、二人の「女の人生」は・・・
二軒目『ツルマキ履物店』蛭田亜沙子
23歳の小嶌以都(こじま いと)は、店主の鶴巻勲(つるまき いさお)に靴の修理を習っている。
老靴職人と以都の交流。
赤い靴にまつわる数奇な物語も。
三軒目『川平金物店』彩瀬まる
狭い小屋の中では一番弱い者がつつかれる。
命の恩人・茂さんを慕うチャボの桜さん。
四軒目『〜中古楽器・中古レコードの買取・販売〜しゑなん堂』芦原すなお
ロック好きの女子大生と、ロック好き中年の店主・レノンさんの交流。
名曲は色褪せない。
五軒目『インドカレーマーマレード』
絵美と岳(がく)の若夫婦で営む、本格スパイスのカレー店。
仲良し夫婦に危機が。
六軒目『カフェ スルス〜コアラちゃんの巻〜』大島真寿美
昔の演劇仲間のアラ還女子たちで始めたお店も、三年持った。
そして、彼女たち自身も驚くような変貌と成長を遂げるのであった。
お店は生き物。
七軒目『おもちゃ屋「うさぎや」』山本幸久
一冊の締めくくりのお話。
ほぼ全てのお店の名前と女性たちの名前が登場すると言っても過言ではない。
女性が元気な商店街、男子も頑張らなくっちゃ!
商店街に未来はある。 -
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ネタバレ大切な人を失った山本佐紀の失意と再生の物語。
泣けた。
第一章のワタルくんとの出会いの場面からもう涙が出た。
私自身が大事な人を亡くしてしまったような、なんだかそんな気持ちになりました。
喪失感に苛まれながらも、自分を取り巻く環境は何かが変わったようで、でも何も変わってないようで。
心にポッカリ開いた穴も、いつの間にか塞がっているようで、でも実は塞ぎきれてなくて。
大事な人は亡くなってしまったけれど、でも自分は彼女のいない世界で生きて行かなくてはいけない。
っていうもどかしさというか切なさというか、そういう空気が漂ってるのが、なんか胸に刺さるなー。
という感じもしたけれど、でも、スランプという長い長い喪を抜け出た佐紀は、きっとまた前以上に前進できるんじゃないかな。なんて思ったりしました。
とても素敵なお話でした。
装丁もかわいいですよね。 -
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副題「妹背山婦女庭訓 魂結び」。
もう一人の近松、操浄瑠璃(あやつりじょうるり。現在の文楽)の作家・近松半二の一代記です。
ちょっと変わった構成です。主役の半二の一代記なのですが、一つの章では一つの事件に絞って扱い、脇役も章ごとに代わって行きます。事件は時系列で並んでいるのですが、章の書き出しは前の章の結末より少し前という事も有ります。ただシンプルに一章一事件(テーマ)なので頭の中に入って来やすい。
人形浄瑠璃そのものはしっかりと描かれておらず文楽ファンの方には物足りなく感じる人も多いようです。しかし、(文楽に留まらず)物書きとしての半二の熱気や悩み、当時の世相を全編大阪弁で描いた、直木賞受賞作にふさわしい読み応えのある力強い物語でした。 -
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スカイツリーが見える、東京の下町。
古くからのお店と新しいお店が混じり合う、明日町こんぺいとう商店街の、七軒のお店の物語を7人の作家が描くアンソロジー。
既読の作家さんは、大島真寿美さん、彩瀬まるさん、千早茜さん、中島京子さん。
それぞれの持ち味が出ていて、どれも面白かった。
大山淳子さんの『あずかりやさん』が、盲目の店主が一日百円で大切なものをあずかるというお店を舞台にしていて、にぎやかな商店街の中、しんとしずかな店という感じが良かった。
アンソロジーを手に取ると、こうして新しく好みに合いそうな作家さんが見つかるのが楽しみ。
こんぺいとう商店街シリーズとして続刊もあるらしいので、続きものんびり読みたい。
また違う作家さん、違うお店が登場するのか、それともまた同じお店も登場するのかな?
『カフェ スルス』がどんなお店になっていくのか、続きが読みたい。