あらすじ
江戸時代の大坂・道頓堀。穂積成章は父から近松門左衛門の硯をもらい、浄瑠璃作者・近松半二として歩みだす。だが弟弟子には先を越され、人形遣いからは何度も書き直させられ、それでも書かずにはいられない。物語が生まれる様を圧倒的熱量と義太夫のごとき流麗な語りで描く、直木賞&高校生直木賞受賞作。
※この電子書籍は2019年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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2019年直木賞(上半期)受賞作
江戸時代の大阪、人形浄瑠璃を描いた人情もの。
後書き読んでビックリしたけど、主人公の近松半二は実在の人物なんやね。妹背山婦女庭訓も実在するなんて!こんな小話が知れるから文庫本はやっぱいいな♪
半二を中心に台詞はコテコテの関西弁。
妻のお佐久は京言葉。単身赴任者としてはちょっとホームシックになるがなっ的なお話。
役どころのお三輪の語りは斬新な使い方
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すごく読みやすいのに、すごく半二の気持ちがダイレクトに伝わってくる、不思議な本。虚が実を取り込む、まさにその渦に自分も巻き込まれたのだと思う。
人形浄瑠璃の知識はまったくなかったけど、この本を読んで一度見てみたいと思った。ただ、もうその時点で近松半ニの描いていた未来とは今は大きく違うんだろうなと考えると、すごく切ない気持ちになる。時代は変わるもので誰が悪いわけではないけど、言い表せない悲しみが胸に来る。
浄瑠璃の栄枯盛衰もさることながら、人の生と死も描かれているのが特徴的。そこにあったのに消えてしまった実感が、文章を通してひしひしと伝わるから、とてつもない喪失感にこちらも襲われる。
作り手ではないけど、言わんとしてることがすごくわかる部分もあった。不思議だけど自分にとっては興味深く魅力的で衝撃的な一冊だった。
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歴史に興味がある人はもちろん、ない人でも十分に楽しめる。時代小説には分類されない程度の作風。
人形浄瑠璃(操浄瑠璃/文楽)に魅せられた近松半二という男の一生を描いた時代物語。舞台は江戸時代・大阪。
この世は狂言と表現する半二、どんな辛いことがあっても、それを面白がれる男である。人生で浮かないときにも、一歩引いて楽しめる目を持てるのではないだろうか。
物語を描き上げていくということの熱量がひしひしと感じられる。それでいて軽快な語り口は読む手を離さない。一気に読め、引き込まれる作品。いつのまにか半二にとりつかれている、というより我々がとりついてしまっているんじゃないかと思うほどのめりこんだ。晩年を描く「三千世界」では息も絶え絶え。大変見事な小説だと思う。
物書きをするひと(どんなジャンルでも)にはぜひ読んで、のめりこむ驚きを味わってほしい。
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人形浄瑠璃(文楽)作者、近松半二の人生が青年期、妹背山に向かう絶頂期、そしてピークを超えたあとの晩年が丁寧に描かれていた。幼い半二が芝居に魅せられる姿に自分を重ねながら読んだ。また、他で演じられた作品を別の作者が書き直して人形浄瑠璃や歌舞伎の演目になっていたことを知り、驚いた。“盗作”ではなく“リスペクト”、“アレンジ”してより新しい世界を開く。そのムーブメントは「渦」のようだなあ、と思った
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浄瑠璃に生きた近松半二。
器用に生きたという印象はなく、愚直に浄瑠璃に向き合っている一生懸命さが伝わる物語。
個人的には、半二を支えたお佐久の存在がとても魅力的。
メインで登場する人物ではなかったのにもっと知りたいと思わせる人物。女性としても人間としても見習いたい憧れに近い感情が生まれました。
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2022/10/7
おんもしろい!
芸術家の業の話、大好物!
今回は人形浄瑠璃作家。歌舞伎作家もいるけど。
書かずにいられない人たち。
歌舞伎は役者のもの、人形浄瑠璃は作家のもの。なるほど。
もちろん人形を動かす人も大事、裏方も大事だけど。
今も映画は監督のものとか言うものね。
私、1回だけ文楽見たことあるんよね。
楽しめたし楽しめた私やるなと思った思い出。
私はフィクションを摂取してなんとか生きてる人間なので、フィクションを作り出す人は命の恩人です。
ありがとう。
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直木賞受賞作はオモロナイっちゅー印象があったんやけど,認識を改めなあかん.大島先生の作品の中で,いっちゃんええと思います.
道頓堀の渦の中で生きた近松半二の一代記.なんやいっぺん,文楽っちゅーもんをちゃんと観なあかんかなーっちゅー気にさせてもらいました.
せやけど大島先生,大阪弁がほんまに自然やわ.
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人形浄瑠璃への情熱がひしひしと伝わって、半二たちのその熱が巻き起こした渦に巻き込まれるように、私も浄瑠璃を観たくなった。
時代が変わった今も、渦はずっと渦巻いているのだ。
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根拠なく前向きになれる作品でした。面白かったです。どうやら半二が言うところの『渦』は現在もぐるぐると回り続けて新しいものを生み出しているようです。
江戸時代の浄瑠璃作者、近松半二を主人公をとした作品。完全に作者のフィクションと思って読みはじめたのだが、近松半二は実在の人物。『妹背山婦女庭訓』は現在でも人気の浄瑠璃および歌舞伎の演目だそうだ。
移籍や分裂、宗旨替えや旗揚げなどの話は現代の小劇団が舞台だと生々しくなってしまうのだが、250年前の人形浄瑠璃一座が舞台だと素直に拝読することが出来た。
また、半二の代表作『妹背山』のストーリーは本作中の記述を読む限りではまるで劇団新感線のなかじまかずきの作品のよう。歌舞伎や文楽も選り好みせずに観とかなきゃダメですね。
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これまで読んだことのないジャンルの小説で興味深かった。 近松半二この世界では有名だがわたしは全く知りませんでした。 天才は作品に没入すると、ストーリーが降ってくる様に書かずにはいられなくなるってパターン。
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大島さんは、色々なジャンルの作品を描かれるので驚く。
時代ものでは花火に魅せられ、打ち込んだ男の物語『空に牡丹』を読んだが、江戸の話だった。これは大阪道頓堀の操浄瑠璃作家、近松半二を描いたもので、ことばから文化から、まるで違う時代劇だ。浄瑠璃のことを学ばれているのはもちろん、その上方言葉の自然な表現、しなやかさから、「大阪ほんま本大賞」なるものも受賞している。
浄瑠璃をよく知らなくても、近松半二の生涯、創作の様子は面白く、それだけで十分楽しめるし、浄瑠璃作家、人形遣い、歌舞伎作家、役者の世界など、芸能に携わる人たちの姿が浮かび上がってきてなお面白い。妻のお佐久、娘のおきみが半二を支える様子もいい。
作家や役者、人形遣いが彼岸に旅立っても悲壮感はなく、芸能は繋がっているという希望が感じられる。それが連綿として栄え、現在に至っている。
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ふらつきの若の「あの話がこうなって、こう見せて、こう直して…」と文楽の立作者として生き生きと熱を帯びるその語り口に引き込まれていく。渦だ。文楽は大阪の無形文化財で税金で保護されているのを良く言わないニュースを聞いた事があるが、もう一度"伝統ではなく庶民の"エンターテイメントとして盛り上げてはどうか。
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人形浄瑠璃の世界。
全く知らない芝居の世界を覗き見る面白さ。
芝居に夢中で生活もままならないような男たちが、演じたり、作ったり、見に通ったり。
生き生きとしていて、ワクワクする世界でした。
終盤、妹背山婦女庭訓の筋書きを描くシーン。歌舞伎芝居の作者である善平がきて、俄に動き始める展開が良い。
みんなで興奮して言い合いながら、どんどん先に進んでいく感じ。まるでアクションシーンのようなスピード感で、痛快でした。
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江戸時代の大坂・道頓堀、浄瑠璃作家近松半二の物語
テンポの良い大阪弁で語られ、生き生きとした登場人物たちに江戸時代ということを忘れてしまいそうで、文楽を題材にした架空の人物のストーリーかと思っていたら、近松半二は実在の浄瑠璃作家だったと知り、驚きました。
物語を作り出す苦労。
書いても舞台をヒットさせなければいけないプレッシャー。
読んでいるこちらの方までそのプレッシャーに苦しくなってしまうほどでした。
人形浄瑠璃といえば、今は文楽として知られていて、私も子供の頃大阪の国立文楽劇場に観に行ったことがありました。
薄暗さとリアルな人形と言葉が難しいイメージしかなくて‥。
でも、こうして今も続く文楽の、作品作りに生涯をかけ、人形浄瑠璃を愛した人たちの熱い思いを知り、改めて文楽を観に行ってみようと思います。
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近松半二が実在する人物だと思わずに読んでいました。それほど会話が自然で他の登場人物との関係も面白かった。章ごとに父、幼なじみ、師匠、妻とどんどん関わっていく人が変わり、飽きません。
本題の浄瑠璃との関係も純粋で良い。今まで全く知らなかった文楽について触れることができて良かったです。
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2019年上期直木賞受賞作。
江戸時代の大阪、人形浄瑠璃の作者・近松半二の人生を描いたエンターテイメント。
歌舞伎や能、狂言は、見たことがありますが、人形浄瑠璃はありません。
以前、母がもの凄い昔に見た時の話を聞いたことがあります。人形を操る人が見えなくなって、人形が生きているように見えるくらい、その世界に引き込まれた。と。
「妹背山婦女庭訓」は、そんな浄瑠璃だったのかもしれませんね。一度見てみたくなりました。
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人形浄瑠璃作者、近松半二の一代記。
浄瑠璃が下火になっていく時期に、大ヒット作「妹背山婦女庭訓」を書いた人だ。
うん、むか~し、文学史の教科書でちらっと見たような。
その半二を、エンパシーの人として(そんな言葉は使っていないが)描く。
これが、この作品の肝なのではないか。
なんでも取り込んでいく人。
一見、人柄としては天才的な感じには見えないのが面白い。
勃興していく歌舞伎も、衰退していく浄瑠璃も、作り手たちは混然一体となって、何か面白いものを作ってやろうという熱気を持っている。
それが、この時期の道頓堀というところ。
半二も、物語や、キャラたちに呼びかけられたように作品を作り出す。
読んでいるこちらも、わくわくする。
一方、虚実皮膜の世界で、虚無の淵を覗いてしまう作者たちの存在も描かれる。
半二の幼馴染、並木正三が代表だ。
また、よい浄瑠璃のためならどんなことでもするという、人形遣いの初代吉田吉三郎。
その思いの強さのために身を滅ぼしていく、ある種悲劇の天才タイプ。
こんな人たちが周囲に点綴され、半二の作者としての強靭な在り方が際立ってくる。
読み終わっても、もうしばらく、作品の世界に浸っていたい気分がした。
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人形浄瑠璃作家の近松半二の半生。人形浄瑠璃なんて、今までちんぷんかんで興味もそれほどなかった世界だったけど、作家の苦悩だったり、歌舞伎と拮抗していた時代背景だったり、何より、関西弁がテンポよくてとても楽しめた。
妹背山婦女庭訓、どんなお話しなんだろう?三輪ちゃんに会ってみたいな。
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副題「妹背山婦女庭訓 魂結び」。
もう一人の近松、操浄瑠璃(あやつりじょうるり。現在の文楽)の作家・近松半二の一代記です。
ちょっと変わった構成です。主役の半二の一代記なのですが、一つの章では一つの事件に絞って扱い、脇役も章ごとに代わって行きます。事件は時系列で並んでいるのですが、章の書き出しは前の章の結末より少し前という事も有ります。ただシンプルに一章一事件(テーマ)なので頭の中に入って来やすい。
人形浄瑠璃そのものはしっかりと描かれておらず文楽ファンの方には物足りなく感じる人も多いようです。しかし、(文楽に留まらず)物書きとしての半二の熱気や悩み、当時の世相を全編大阪弁で描いた、直木賞受賞作にふさわしい読み応えのある力強い物語でした。
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夢中になれることはありますか。
操浄瑠璃、人形に魅せられたある男の物語。移りゆく時代の中、浄瑠璃に生き、浄瑠璃に死んでく。・・・
死ぬまで夢中になれる物を私たちは見つけることができるだろうか。
日の目を見ない葛藤、好きなものをとことんまで追求してゆく心意気。
気づき、別れ、老い、人、山、男、女
この世の全てのものが渦となって巻き込み、巻き込まれ、今に繋がっている。そんな哲学的な気づきまで与えてくれる。そんな作品。
おすすめです。
「わしらの拵えるもんは、みんなこっから出てくるのや。このごっつい道頓堀いう渦の中から」
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最近はずっと直木賞受賞作品を読み漁っており、さすが直木賞外れはないなと思っていたが残念ながらこれは私の好みではなかった。大島さんの作品はピエタ以降数多読んでいるので期待していただけに残念。
文楽について全く知識がないので最後の最後でこの主人公が実在の人物、そして妹背山婦女庭訓が実際の演目だと知って驚くとともに親近感が一気に沸いた。
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近松半二の生涯を書いた小説。
この本読むまで知らなかったです、半二さん。
何なら、近松門左衛門の愛弟子かな?と思っていたら
それも違い、私淑して「近松半二」と名乗り始めたらしいことを知りました。
本書はほぼ関西弁で書かれています。義太夫の語り口調のような。
続編もあるようなので読んでみます!
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人形浄瑠璃は観たことがない。歌舞伎も現代風にアレンジされたもの以外、観たことがない。言葉が分からないと思ってるからかな。昔の話が分からないのではなくて、何を言ってるか言葉が分からないだろうから、、という先入観もあって観たことがない。
時は江戸時代、近松半二という人形浄瑠璃の作者の生涯を、関西に居ない人は意味が分かるかなぁと思ったくらい思いっきりの大阪弁で語られるスタイルで話は進んでいく。最初はなかなか話に入っていけなかったけど、後半からはものすごい熱量が押し寄せてきて、ぐるぐるぐるぐる、渦の中に飲まれていました。物語はどこから生まれてくるのか。ぐるぐるぐるぐる渦の中に全部全部ある。
これだけ人を熱狂させる人形浄瑠璃、分からないかもしれないけど、観てみたい。
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歌舞伎VS浄瑠璃という世界観が熱かった。作品よりも役者に人気が出てしまうのは今の時代にも通じるところがありそう。
芸に捧げ、人を楽しませることに命を燃やす姿がかっこいい。
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浄瑠璃作者・近松半二の生涯を描いた作品。文三郎が好きでした。この時代の人たちの人情味に親しみが湧きますね。物語が進めば進むほど、読者であるはずの自分も渦に巻き込まれていく感覚があり不思議な物語でした!文楽を観に行きたくなります(^^)
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操浄瑠璃の作者・近松半二の一生。全く知らなかった人だが、人形浄瑠璃のことなど近松門左衛門の名前くらいしか知らないものな。その半二の『あちらこちらの芝居やら人形浄瑠璃やらを見にいったり、作者部屋でああでもないこうでもないと話しあったり、浄瑠璃の丸本やらなにやら読みふけったり、学びたいものがあればそれらを学びにいったり、食べたり飲んだり遊んだり、気が向けば少し遠出をしたり』といった生き様が、立て板に水の如くの独り語りや丁々発止の掛け合いの形で道頓堀の賑わいとともに創作の呻吟も暗くならずに軽やかにスルスルとテンポ良く語られる。ただ、頁に白いところがないくらいにぎっしり詰まった語り口に、これが延々と続くのには、如何に話が面白かろうと、ちと参った。主人公よりも、お末やお佐久やお三輪にお熊に絹も女たちが皆逞しいことのほうが印象に残った。こういうのを読むと、ほな一度、文楽とやらを見にいこかと、いつもはなるのだが、今回はあまりそんな気にならなかった。食わず嫌いなんだけどな、難儀なこっちゃ。
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良くも悪くも、いわゆる時代ものというより現代ふうに書かれた小説だと思った。
モノローグや台詞が多いのがその理由の一つであるが、とっつき安い分、その世界、つまりその時代に入り込んだ感がそれほどなかった。
小説の世界、つまり登場する人物たちと接している気持ちにはなるのだが、その意味では入り込んでいると言えるのだが、江戸時代を生きている感じが持てなかった。
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仕事に打ち込む人間の生涯を追う作品は、良い。
主人公の年が若くなくても、舞台が江戸時代でも、青春を感じる。人形浄瑠璃に明るくなくても、主人公の熱量に引っ張られてしまう。
主人公近松半二が言い表す「渦」。浄瑠璃・歌舞伎の過去から今までの作品、人々が混じりあって、そこからまた新しく何かが生まれてくる。死ぬまで「もっと良くなる、もっと良くしなくては」と挑む姿に、著者もまたこういう気持ちで作品を書いているのだろうか、と思いながら読んだ。
割と人物の描かれ方がさっぱりしている印象だった。半二という浄瑠璃を書く以外の欲が薄い人物を中心に世界を見ているからなのか。現実にいたらやりづらい人物もいるが、「顔も見たくない」と思わせるほどの人物はおらず、何なら半二も情熱的だと思う反面、あっさりした所もあって、不思議な印象を受けた。
半二が正三の死を受けて、頭ではもうどこにもいないと分かっていても街中で不意に会えそうで歩き回るシーンに、誰でもそういう気持ちになるのか、と思った。
Posted by ブクログ
操浄瑠璃を見たことがないのだけど、「面白さ」があまり伝わらなかったかな。
物語の進みも遅いし、途中で飽きてしまった・・・・。
書き上げた話がどんな物語なのだろうと興味は覚えるんだけど、
調べてみたようとか、見てみたいとはならない程度の本だったなー。