大島真寿美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
すごく読みやすいのに、すごく半二の気持ちがダイレクトに伝わってくる、不思議な本。虚が実を取り込む、まさにその渦に自分も巻き込まれたのだと思う。
人形浄瑠璃の知識はまったくなかったけど、この本を読んで一度見てみたいと思った。ただ、もうその時点で近松半ニの描いていた未来とは今は大きく違うんだろうなと考えると、すごく切ない気持ちになる。時代は変わるもので誰が悪いわけではないけど、言い表せない悲しみが胸に来る。
浄瑠璃の栄枯盛衰もさることながら、人の生と死も描かれているのが特徴的。そこにあったのに消えてしまった実感が、文章を通してひしひしと伝わるから、とてつもない喪失感にこちらも襲われる。
作り -
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Posted by ブクログ
久しぶりにアンソロジーを読んだかも。中島さん、大島さんが初めて…かな?どれも日常な感じでスッと馴染んで読みやすくて、その中に何か引っ掛かるものがあって良かった。
隣に座るという運命について/中島京子
読み始めからスッと読めて、この本読みきれそうだなと思った。なんか途中ふわふわしてて迷子になりそうになったけど、サッと読み終えて面白かったな、と思えた。
月下老人/桜庭一樹
どこかにありそうなハチャメチャストーリー始まって面白かった。
停止する春/島本理生
途中までごちゃごちゃしててわけわからんくなりかけてたけど、後半でスッと収束して心に残った。
P95「生きたいと思うことと、死にたいと思う -
Posted by ブクログ
歴史に興味がある人はもちろん、ない人でも十分に楽しめる。時代小説には分類されない程度の作風。
人形浄瑠璃(操浄瑠璃/文楽)に魅せられた近松半二という男の一生を描いた時代物語。舞台は江戸時代・大阪。
この世は狂言と表現する半二、どんな辛いことがあっても、それを面白がれる男である。人生で浮かないときにも、一歩引いて楽しめる目を持てるのではないだろうか。
物語を描き上げていくということの熱量がひしひしと感じられる。それでいて軽快な語り口は読む手を離さない。一気に読め、引き込まれる作品。いつのまにか半二にとりつかれている、というより我々がとりついてしまっているんじゃないかと思うほどのめりこんだ。晩年を