大島真寿美のレビュー一覧

  • ツタよ、ツタ

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    ツタさんと同じように、この本はちっとも「おとなしくない」小説だった。ページをめくるたびに、ぶわっと風が吹いたり、一面に光が、そして闇が広がったりした。

    小さな人間の生きざまが、雑に切り捨てられたり、良いところだけ大げさに取り立てられたりすることなく、熱をはらんだ獣のように飛びこんでくる。

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    2021年01月20日
  • 空に牡丹

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    花火に夢中になった一人の男の一生。
    特にドラマティックな展開がある訳ではない。
    御一新からの激動の時代を感じながらも、田舎町での暮らしが淡々と語られる。

    それが却って新鮮で、よかった。

    親戚の話を聞くように、ふと気が向いたらまた読んでみよう。

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    2020年03月06日
  • あなたの本当の人生は

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    よかった…

    人生に迷っている時期に、本当の人生を知りたくて、あと大島真寿美さんが好きで、手に取った一冊。

    物語が始まる、希望で幕を下ろす小説。

    人生に横道も本道もない、獣道を行く。

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    2020年02月17日
  • ツタよ、ツタ

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    自分を見つめること。今の自分は本当の自分?これは私か私でないものか……
    短慮でも熟慮でも決めたことは決めたこと。瞬間の反発か流された結果か、そこにいるのはそれを選んできた自分。

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    2020年01月22日
  • ほどけるとける

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    なんだかほんわかとした表紙に惹かれて購入、
    こんな表現は変かもしれないけど、
    足湯に浸かっているような感覚の読書体験。
    確かに浸かってはいるんだけど、身体の感覚に馴染みすぎて、自身の体験を振り返っているような。
    大和湯で働く世間的にはちゃらんぽらんな美和の、スローなテンポで進む物語と、
    ひと夏を仮の家で過ごす、はかなく温かい物語。
    いいくみあわせだった。

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    2020年01月18日
  • 戦友の恋

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    本の雑誌を購読している。その中で、蔦屋書店を通じて本の雑誌社が選んだ数冊を送ってもらえるサービスがある。いつもどうしても偏ったものを読んでしまう。
    こういった、「恋」と名のつくもの、ページ数が少ないものは、内容も見ずに手に取らない。
    人に選んでもらった数冊は、すべて大変刺激的であった。このお話も、じんわりと胸に残る。どこが、と言われたら人間関係なのかな、はっきりと言えないが、数年後に必ず読み返すと思う。ミステリばかり読んでいたが、
    これを機会に同じような作品に手を伸ばし始めている。

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    2019年08月27日
  • あなたの本当の人生は

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    今年はまだ2月だが、今現時点でのNo1作品。
    優しい語り口に暖かい雰囲気。
    とにかく、コロッケがバツグンに効いている。
    心温まる傑作でした。

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    2019年02月15日
  • 戦友の恋

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    恋愛小説と思うと構えてしまう自分がいて、というのはそれを読んで感じ入った記憶が殆ど無いからであって、本作も入手してみたものの、なかなか手が出なかった作品。”読むのが怖い”で大森氏も絶賛しているのを見て、それならばってことでトライ。で、これがまた素晴らしかったんです。やはり出色は表題作だけど、それ以外も色んな人間模様が描かれていて、バラエティ豊かで○。サラッと読める分量だけど、しっかり余韻を残す物語でした。

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    2018年03月08日
  • 明日町こんぺいとう商店街 招きうさぎと七軒の物語【電子限定特典付】

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    ネタバレ

    【あらすじ】
    この路地を曲がれば、そこはもう、すこし不思議な世界の入口―。ひとつの架空の商店街を舞台に、七人の人気作家がお店を開店し、短編を紡ぐほっこりおいしいアンソロジー。商店街のマスコット「招きうさぎ」がなつかしくあたたかな物語へと誘います。

    【感想】

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    2017年08月07日
  • ふじこさん

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    多感で繊細だけど鋭い視点を持っている女の子と、家族との温度差をひしひしと感じる作品。
    どの作品も素敵ですが、「ふじこさん」が特に好きです。
    「夕暮れカメラ」、会話のかみ合わなさにせつなくなったけど、おばあちゃんを見つめる主人公のまなざしにぐっと来る。
    「春の手品師」、ファンタジーチックながら思春期の壊れやすさを見事に描いていて、惹きこまれました。
    読んでよかった!

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    2015年12月15日
  • 戦友の恋

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    読み終わってすぐ、もう一度読んだ。
    淡々と語られる、大島真寿美の文章は心地よい。

    1行目にして“生前”という単語が出てくる、亡き友を偲ぶ物語だ。

    親友の玖美子の他にも、別れや、別れの予感のようなものに満ちている。
    元彼、すなわち、既に別れた人との食事。
    親友との思い出の場所のオーナーは、病に倒れ、入退院を繰り返し、確実に弱っているように思われる。
    それに伴い、想い出のその店も、なんとなくもう潮時を迎えていそうな…

    逆に、死んだと思っていた音信不通の人がひょっこり現れたり、偶然、幼なじみに再会したり。

    平凡な一日は、しかし健やかな一日でもあり、友の死につづける世界の中で、ヒロインは毎日生

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    2015年07月01日
  • 宙の家

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    【本の内容】
    女子高に通う雛子の家は、マンションの11階にある4LDK。

    どうにかこうにか宙空を、地球と一緒にぐるぐる回っている。

    暇さえあれば寝てしまう雛子、歳の割にしっかりした小学生の弟・真人、時々ヒステリックな母の圭以子。

    同居する祖母の萩乃が「運針の病」にかかってしまったことで、ぎりぎり保たれていた均衡がゆらぎ出した…。

    不安定な心のうつろいと喪失に、まっすぐにむきあう姉弟の物語。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    眠ってばかりいる高校生の雛子を主人公とする、家族の物語。

    詩的なタイトルは、マンションの11階にある雛子の住み処を表したもの。

    空の家、ではなく、宙の家。

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    2014年08月29日
  • 戦友の恋

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    変わってしまったかつて行きつけのライブハウスで、自分の歴史を知らない若い女子の横に座り、変わってしまった味のペペロンチーノを食べながら、昔の思い出に耽る。この年取った感がいい。戦友のような友人を突然亡くしてからの日々が淡々と綴られる本書。生きてる彼女は年を取るのだ。優本!

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    2014年01月11日
  • 宙の家

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    マンションの11階、空のすぐそばにある場所で暮らす雛子一家。なんとなく保たれていた均衡は祖母の萩乃が「通信不能」状態になったことで一気に崩れだす・・・
    「宙の家」だけでも完結しているが、後日譚の「空気」も含めて、この話はひとつにまとまっているような気がする。
    全体に漂うなにかもやもやとして抜け出せないもどかしさ、けれど透き通る空気。
    ここに「答え」はひとつも出てこない。けれどそれでよい気がする。答えはないのでなく、「書かれていない」だけであるような。

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    2012年09月30日
  • チョコリエッタ

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    主人公はすこしおかしい女子高生。これといった山場もなく、続くモノローグ。
    好みが分かれる作品だと思いますが、私はどストライクでした。しかも解説は野中柊さん!
    読後までずっと漂っている喪失感とか、読後はすこし増している気がする幸福感とかが心地よくて、もやもやしているときとかに読みたい一冊です。
    「道」、見てみたいなあ…

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    2012年09月22日
  • 虹色天気雨

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    ネタバレ

    NHKのドラマ、「ビターシュガー」の原作者として大島真寿美さんを知りました。この本はその第一章。
    口語体が中心のするりと読める文章。仕事合間の移動時間での読書にもかかわらず、一日で読めてしまった。「」(かっこ)で表さない会話が多いことも特徴かな。かっこをつけない会話って、ドラマや映画で風景画を映しながらバックで流れる会話のよう。
    結論から言うと、わたしはこのお話が好きだった。それも、かなり。日本版SATCのようという表現はたしかにそうかもしれない。ただそこで繰り広げられる会話や動作にはきっとSATC以上に共感できるはず。なぜならそこには、日本ならではの謙遜や遠慮、社交辞令も、とてもたくさん出て

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    2011年12月16日
  • 宙の家

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    とてもいい作品。久々に気持ちをスーッと突き抜けてくミント味の物語を読んだ気がする。

    2019.8.11 再読
    直木賞を記念しての再読。
    登場人物みんなの心に影が見えるのは、背景に青い空があるから。光が強ければ影が濃い。
    でもそンなこともどうでもよくなるくらい、青い空が見える。物語自体は派手さは無いのに、読後感がすごく良い。

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    2019年08月11日
  • ビターシュガー 虹色天気雨2

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    端的に言えば四十路の女性3人の友情物語
    ですが、友情らしい熱く深くおしつけがましい感じはないです

    解説の方も書かれている通り、登場人物の距離感がいいけれど
    なかなかこんな距離感を保ちつつ誰かと仲良くするのは難しいように思います
    そんなこともないのかな…?ただの力不足かもしれません

    カンニングの竹山さんが(何故か他局で)番宣していたこと
    主演3人の女優さんはニュースか何かで知っていたことで
    奈津=和久井さん、まり=鈴木砂羽さん、三宅ちゃん=竹山さん
    だと勝手に思いこんで読んでいました(笑)

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    2011年10月21日
  • 香港の甘い豆腐

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    17歳女子高生。なんとなくいろんなことがうまくいかない。学校にも行かなくなってしまった彩美。全ての根源は父親がいないこと、と言ってしまったばっかりに父親に会いに香港に連れて行かれ…香港の猥雑な街角と、傍若無人なのに優しい人々と、美味しい食べ物に囲まれているうちにこんがらがった心がほぐれていく過程が優しく綴られる。17歳の頃、感じていたやるせなさのようなよるべなさのような言葉にできないもやもやがここにぎゅっと詰まっている。しかし彩美のおばあちゃんのステキなことといったら!

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    2011年08月01日
  • うまれたての星

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    数々の「書き手の業」を描いてきた大島さんが、近松門左衛門の次に選んだのは、なんと漫画家!はい、彼女たちも、確かに業を持っていた。作中では、鵺と表現されている。

     1969年、人類が月面着陸をした年に出版社に就職した辰巳牧子は、経理補助として「週刊デイジー」「別冊デイジー」編集部で働き始める。親分肌の川名編集長が率いる「週デ」は、漫画班・活版班・グラフ班に分かれて編集部員一同、日々忙しく動き回り、「別デ」を率いる小柳編集長は、才能あふれる若い漫画家たちを見出し、次々にデビューさせていた。

     半世紀以上経って、紙媒体から電子媒体に変わるなんて、誰も思っていなかった頃、少女漫画にぽつぽつとスタ

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    2025年11月24日