大島真寿美のレビュー一覧
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ネタバレ明治の終わり、琉球の士族の娘として生まれたが、没落。名古屋へ嫁いだが、離婚。別の相手との結婚。投稿を繰り返していた雑誌から、突然掲載の話が持ち上がる。
「千紗子」というもう1人の自分は、幼い頃から書きたい!という衝動を育んできた。ついにその時が来たのだ。全てを注ぎ込んだその手記は、掲載されるや否や、思いがけない反応が返って来る。
離婚したものの、その後のツタの人生は、波乱とはいえない。ツタの密かな情念が生んだ衝動は実を結ばなかった。淡々と進む物語。大島さんらしく突き放した表現。入り込めない、込ませない客観的な視線が、物語の核心をあぶり出す。
ツタよ、ツタと呼びかけたのは誰だったのか。作者の大島 -
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Posted by ブクログ
このアンソロジーも3シリーズめなんですね、早いなー。
大島真寿美さんのカフェスルス、久しぶりに読めて嬉しかった。
さすがと思ったのは島本理生さん。さすがすぎる、1人だけ空気が違ったし、このアンソロジーに不揃いというかミスマッチ感もあるんだけどスパイスにも取れて、脱帽。不穏感がハンパないのに甘美だから好き。
それと加藤千恵さんの話も可愛かった。男なんて恋なんてロクなもんじゃないと息巻く10歳の女の子が多肉植物専門店を営む叔母に、すごくいい人もいると言われてから少しだけ世界が変わったそのときが好き。
あとは彩瀬まるさんも楽しみにしてたのですがちょっとイマイチかなー。主人公が同世代ってあって婚活感は -
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Posted by ブクログ
スカイツリーのお膝元の架空の商店街を舞台に、7人の作家さんがお店を開店、短編を繋ぐアンソロジー。
まず設定が面白い。
そして文体も手法もそれぞれ違うのに、なんだろう、違和感なく一冊まるっとアンソロジーとしてではなくひとつの作品としてまとまっている印象。
それぞれの物語にちょっとずつ他のお話のお店が登場して、繋がっている感じがいい。
よそのお店が出てくると、もう一回その店のお話に戻って読んでしまったりして、実際に商店街を歩くように、あっちこっち寄り道しながら読んでしまう本。
そして最後のお話のラストのラストで、また一番最初のお店にお客さんを呼び戻しちゃうあたりが、うまいなぁ〜!
一冊 -
Posted by ブクログ
離婚調停中の両親を持つ高校二年生の依子の物語。
父は福岡に赴任中、母親と暮らしていたが、母親も上海に長期出張することになる。
北海道にある母親の実家へ行けと言われ、途方に暮れる依子に、「うちに来る?」と住みかを提供してくれたのは友だちの梢。
両親共働きで子供一人の依子の家は、おしゃれなマンション。
梢の家は、祖父母・両親・子ども三人でにぎやか。
以前は居候も絶えなかったという。
あまりの『家庭』の姿の違いにおどろく依子だが、割とすぐに馴染んでいく。
しかし、立派に仕事をしているにもかかわらず、驚くほど幼稚で身勝手な両親だ。
(特に、幼稚な父親は嫌だな)
それに対して、依子は醒めているという -
Posted by ブクログ
日々を退屈して過ごしていた、高校一年生の女の子が、一皮むける本。
つるん、と、まるでライチの皮をむくように。
ひと夏物語でもある。
同じ年頃の人に読んでもらいたい、もう自分は真似したくても出来ない、輝かしい物語だ…
と思ったけれど、おばあちゃん、後日譚の中に、何気に凄いことが描いてある。
いくつになっても遅すぎることはないのか…
香港にはやはり特別な力があるのだろうか?
人間の生命力に作用するカンフル的街なのか?
「父親も知らない」自分を、否定から肯定へと変化させたヒロインの、成長ぶりが鮮やかだ。
…けれど、やはり大島真寿美なので、淡々とした文章で語られる。 -
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