大島真寿美のレビュー一覧
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操浄瑠璃の作者・近松半二の一生。全く知らなかった人だが、人形浄瑠璃のことなど近松門左衛門の名前くらいしか知らないものな。その半二の『あちらこちらの芝居やら人形浄瑠璃やらを見にいったり、作者部屋でああでもないこうでもないと話しあったり、浄瑠璃の丸本やらなにやら読みふけったり、学びたいものがあればそれらを学びにいったり、食べたり飲んだり遊んだり、気が向けば少し遠出をしたり』といった生き様が、立て板に水の如くの独り語りや丁々発止の掛け合いの形で道頓堀の賑わいとともに創作の呻吟も暗くならずに軽やかにスルスルとテンポ良く語られる。ただ、頁に白いところがないくらいにぎっしり詰まった語り口に、これが延々と続くのには、如何に話が面白かろうと、ちと参った。主人公よりも、お末やお佐久やお三輪にお熊に絹も女たちが皆逞しいことのほうが印象に残った。こういうのを読むと、ほな一度、文楽とやらを見にいこかと、いつもはなるのだが、今回はあまりそんな気にならなかった。食わず嫌いなんだけどな、難儀なこっちゃ。
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仕事に打ち込む人間の生涯を追う作品は、良い。
主人公の年が若くなくても、舞台が江戸時代でも、青春を感じる。人形浄瑠璃に明るくなくても、主人公の熱量に引っ張られてしまう。
主人公近松半二が言い表す「渦」。浄瑠璃・歌舞伎の過去から今までの作品、人々が混じりあって、そこからまた新しく何かが生まれてくる。死ぬまで「もっと良くなる、もっと良くしなくては」と挑む姿に、著者もまたこういう気持ちで作品を書いているのだろうか、と思いながら読んだ。
割と人物の描かれ方がさっぱりしている印象だった。半二という浄瑠璃を書く以外の欲が薄い人物を中心に世界を見ているからなのか。現実にいたらやりづらい人物もいるが、「顔も見たくない」と思わせるほどの人物はおらず、何なら半二も情熱的だと思う反面、あっさりした所もあって、不思議な印象を受けた。
半二が正三の死を受けて、頭ではもうどこにもいないと分かっていても街中で不意に会えそうで歩き回るシーンに、誰でもそういう気持ちになるのか、と思った。 -
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西加奈子『円卓』のこっこからの、チョコリエッタ。
個性的というか、偏屈で凶暴な何かを心に住まわせている少女の小説を、偶然にも立て続きに読むことになった。
幼時、家族旅行での車で事故を起こし、母を失った知世子。
それから父親との関係もうまくいかない。
事故以来母親代わりを務めてくれた従妹の霧湖とも、愛犬のジュリエッタが死んで以来、うまくいかない。
霧湖は自分のために就職もできなかった。
今、霧湖は結婚を考え始めている。
知世子は成長につれ霧湖からも心が離れつつあるが、いなくなるのも受け入れられない。
知世子の高2の夏、映画研究会の先輩、正岡正宗のバイクで連れまわされ、あちこちで映像を撮ることになる。
二人とも、感受性は鋭いけれど、表現がたどたどしい。
勿論、この二人が恋愛関係になることもない。
文体は明晰。
河原で行きずりの子どもたちとハーモニカを吹く場面や、親戚の淑子と過ごす秋の海辺など、映像的な美しさがある。
もうちょっと知世子に寄り添えたなら、楽しめたのかもしれない。
近日中に、大島さんのトークライブを視聴する機会がありそうだ。
それまでに『渦』を読んでみたい。 -
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初め、とても戸惑った。
フジリネンのおじさんの、「」なしになっていく怒涛のセリフに。その後、美和ちゃんや佐紀さん、タエさんやおじいさん、みんなのセリフも、こんな調子でどんどん喋り倒していく。声が聞こえてきそうなくらい。すごい、生きてる人の、熱量を感じる。どんどん引きずり込まれてしまった。
いっぽう、美和ちゃんが「3D」に見えてくる男性は、姿のみの描写で、一切の言葉を発しない。美和ちゃんが見たままの世界だから。
「戦友の恋」の佐紀さんと、美和ちゃんで、映画にしてほしい。タイトルみたいにゆったりとしたテンポで、セリフだけで物語が進んでいくみたいな。瞑想キャスティングが始まるわ。 -
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親友、という以上に、人生の一時期を濃密にわかちあった女友達を、突然失ってしまったとしたら。
さみしい、とか、辛いという言葉では言い表せない喪失を抱えて、でも何気ない顔をしながら、その後の人生を生きていく、30代半ばの女性の話。
死んだ彼女をともに知っていた人たちや、主人公がそうと知らない形で愛した人たちが搭乗するけれど、そこから何か、流行りの「エモい」ドラマに発展するわけではない。人生ってそんなものじゃない。淡々と日は流れるようでいて、でもそこかしこに、永遠に喪われた人の影がともにある。
「喪うことに慣れてしまったからこそ、ようやく繋がった、ようやく見つけたこの細い線を手放してはならないのではないか」。そう気づかせてくれたことこそ、今はいない友が残してくれた最後の贈り物といえるのだろう。
とはいえ、主人公より年をかさねてきた今でも、これから来るはずの喪失に耐えられるかどうか、まったく自信はないのだが。いつか来るその日の先に、開けた風景の中に立つことを願って。 -
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この本、なんで読もうと思ったのかなぁ。大島真寿美さんだったからとは思うのだが、他には何かなぁ。
明治初期、旧名主の次男・清助が、東京で観た花火に魅せられ、花火作りに身代かけて夢中になっていくという物語。
しかし、何だかあっさりしているな。大きな事件が起こるわけでもなく、時代の波に翻弄されるわけでもなく、花火作りにのめり込んで傍から狂人扱いされるわけでもなく。
東京で妾に焦れ込む長男に代わり曲がりなりにも家を守る次男に対し、周囲はその心情に寄り添うでもなく唯一の道楽には仕方なく目を瞑るといった体で進む話に、読者の私も同じような心境で読み進めてしまう。
清助も悪い人間ではなく、読んだあと口も悪くないので★★★にしたけど、あまり深みもなく、本音は2.5といったところ。
表紙の山下清を見れば、コロナのせいで花火大会がない夏の寂しさがより募る…。 -
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ネタバレスカイツリーを見上げる下町のかたすみに、
ひっそりと息づく商店街がありました。
それがー『明日町こんぺいとう商店街』
こんべいとうの角は、24個って知っていましたか?
戦後の焼跡に、24軒のお店が集まって歩きだしたこの小胆がは、
だから明日町こんぺいとう商店街。いつまでも味が変わらない。
ひとつとして同じ形がないこのお菓子には。
「商店街の永年の繁盛、お客様の健康長寿」を祈り、
「個性のある商店街づくり、店づくり、そして人づくり」という
願いが込められています。
さあ、今日も店がひらきます。
明日町商店街シリーズもこの本で第4弾です。
それぞれのお店の話を、違う作家さんが書かれているアンソロジー。
初めましての作家さんもあり、この本をきっかけにその作家さんの本を読むことも度々でした。
第4弾はこの7つの物語。
『サクマ手芸店』 寺地はるな
『ツルマキ履物店』 蛭田亜紗子
『川平金物店』 綾瀬まる
『~中古楽器・中古レコードの買取販売~ しゑなん堂』 芦原すなお
『インドカレー マーマレード』 前川ほまれ
『カフェスルス ~コアラちゃんの巻~』 大島真寿美
『おもちゃ屋「うさぎや」』 山本幸久
大島真寿美さんの『カフェスルス』は第2、第3巻にも登場しています。
”明日町こんぺいとう商店街”の中でもすきな作品の一つ。
初めましての作家さんは
蛭田亜紗子さん、芦原すなおさん、前川ほまれさん。
第4巻の中では、綾瀬まるさんの『川平金物店』と前川ほまれさんの『インドカレー マーマレード』が一番好みです。
ただ、1巻、2巻の方が面白かったかな…