カズオ・イシグロのレビュー一覧
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子供の良きAF(人工親友)になるべく開発された人型AIクララを語り手に、病弱な少女ジョジーとの出会いから別れまでが描かれる。
クララは観察眼に優れ勉強熱心で優秀なAFだけど、人の心の機微には疎く淡々とした言動の描写からやはり人間とは違う存在なのだと改めて感じさせられる。観察と学習を繰り返した末に、人の心や感情は模倣できるのか。
終盤、人間に作られた存在であるクララが文字通り自身を犠牲にして主人であるジョジーを救おうとする健気さに心打たれた。
AIは人間の道具なのか、パートナーなのか。心とは、優しさとは。
近い将来、こんな未来がくることもあり得るのだろうかと考えさせられる結末だった。
機械が -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公の女性は、本当にできた人だと思った。舅にも優しく、逆らわず、古い価値観にとらわれていることも受け入れて相手を立てている。自分勝手な知り合いの頼みごとも断らず、わがままな言動にも怒らずに付き合う。お金まで貸してあげる。とにかく怒るということがない。そういう姿に「なんてできた人なんだろう」と思った。
でも、今の彼女の状況を知ると「あれ?」と思う。離婚し、外国人と再婚している。ピアノ教師には意地悪な嘘までつく。あの時、舅に合わせていたのも本心じゃなかったのかもしれない。夫との離婚の理由も、恵子に何があったのかも明かされないままだ。
それでも、ニキの新しい価値観には理解を示していて、そこには相変 -
「わたしを離さないで」について
ノーベル賞作家のカズオ・イシグロが端正な筆致で綴る、ある女性の人生の物語。
提供者を慰める介護人の職に長くついていた女性。彼女が職を辞めるにあたり、自分のこれまでの人生、特に生まれ育ったヘールシャムで仲間と過ごした日々を回顧する。
提供者、介護人など説明なく出てくる言葉の意味が、女性の回想から次第に明らかになってくるにつれ、世界の残酷な姿が浮かび上がってくる。
この世界の真実は、SF小説のファンならばすぐに見当がついてしまうだろう。
読みどころは、むしろ小説としての巧さ、人間描写の厚みの部分だ。大きな状況に翻弄される主人公たちが、小さな人間関係にすがる姿がなんとも哀しく映るのだ。
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ネタバレ初めて読んだカズオ・イシグロ作品です。
自分が非常に遅読なのもあり、主人公であるクララの(おそらく瞳の)「箱」で描写される風景を想像をするのに時々苦労してゆっくり読んでいました。
少年少女の心に寄り添い支えるための人工親友=AF(Artificial Friend)であり本作の主人公でもあるクララ。
彼女の目を通して一人の少女とその周りのことが語られていきます。
「向上措置」やそれに関係する差別ともいえる風景などが垣間見えるディストピアのような世界観。
クララが寄り添う少女ジョジーに忍び寄る死の影、ジョジーの母親クリシーの穏やかならぬ心、ジョジーの親友で措置を受けていないリックの将来・・ -
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とても長いとても良い作品。ちょっと時間掛かってしまったが、途中で見失なうことなくなっ。ラストのお母さんと再会する場面は 遅いホント遅いから 孤児だったマフィンの為だけに中国人に奴隷になって生きるしかないお母さんが哀れ過ぎる、孤児だったマフィンではなくなっ。戦争が悪いと言えばそれまでだけど、やっぱ叔父のイギリス人かな地獄に堕ちなきゃならないのは。マクドナルドの立ち位置がわからないのと危険な戦闘地帯をいるわけがない両親を探してアキラ似の日本人と一緒にいる所もわからないのと娘のジェニファーの存在がどこに向かうのかと1番わからないのは解説が一言も入ってこないって事 カズオイシグロの読みたいの読めたの -
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ネタバレカズオ・イシグロらしい記憶を辿る旅。
過ぎ去ってしまった時への郷愁、おぼろげであり、夢のようであり、心に確実に刻まれた感覚、忘れがたいのに指の間からこぼれ落ちていく切なさ。
近未来のSFだったり、中世ヨーロッパだったり、どこが場面だったとしても、その通奏低音は変わらないのだが、今回は探偵の物語。戦前、戦中の上海租界とイギリスを舞台が舞台。
前半、なかなか進まない中にも主人公の自我の強さ、探偵小説としては楽観的な展開に(探偵小説ではないのでそれ自体は構わないのだが)、後半の展開はスリリングというより目を閉じたくなる内容で、ゆっくりとした展開のうちに自分がどれだけ主人公に感情移入していたかに気付か -
購入済み
副題から分かるように全ての短編に音楽の要素が出てきますが、もうひとつの「夕暮れ」はどういうことだろうと思いながら読んでいました。訳者あとがきにも書かれていましたが、音楽以外にももうひとつ男女関係・夫婦関係の危機というモチーフも全ての短編に共通しています。登場人物皆もう若くなく、ある人は結婚した時の状況とはお互いの関係や自分の感情や人生に求めるものが変わっていたり…。こういう人生の盛りを過ぎてそれでも残りの人生を生きていく人々を「夕暮れ」という言葉で表現しているのでしょうかね。思えば『日の名残り』もそのような意味合いでしたか。
ひとつひとつ心にしんみりとした感覚を残す短編でおすすめです。 -
Posted by ブクログ
ノーベル文学賞をとってからもう6年か。もともとノーベル賞に興味はなかったけれど、当時、カズオイシグロの受賞を聞いたときはびっくりした。
彼の作品は全部読んでいて、好きな作家の一人だったから。
映画『日の名残り』を観たのがきっかけで、カズオイシグロを知り、原作を読んだ。
そしていつものように、好きな作家の作品は出版された順番に読んでいきたいと思い、『遠い山なみの光』から順に読んでいった。
読めば読むほどはまっていく。
ノーベル文学賞受賞記念講演を収録した本作は、スピーチであるせいかとても読みやすい。でもぎゅっと大切なことが詰まっている。
『日の名残り』のくだりでは、まさに私が一番好きな部分に