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戦時中、日本精神を鼓舞する作風で名をなした画家の小野。多くの弟子に囲まれ、大いに尊敬を集める地位にあったが、終戦を迎えたとたん周囲の目は冷たくなった。弟子や義理の息子からはそしりを受け、末娘の縁談は進まない。小野は引退し、屋敷に籠りがちに……。著者による序文を収録した新版。
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Posted by ブクログ
時代の空気感がよくわかる。戦中の正義は戦後の悪となり、個人が信じたものも否定されてしまう。それでも家族を思う気持ちは大切だと思った
2回目。いつも素晴らしい小説をありがとう。 初めて日の名残りを読んだ時はたまげたけど、テーマほんとうにそっくり。 日の名残りの方が華やかさと鮮やかな色彩感があって好きだけど、地味で淡々としていて暗いこちらも良い小説。 主人公のやるせなさや辛さも、周囲の気まずさや不満も、どちらも手に取るようにわかる...続きを読むから、読んでて少ししんどくなる部分すらあった。 今主人公を責める周りの人たち、すなわち二人の娘や素一や三宅家の人たちは、戦争中は何を考えてどう行動してたの? 主人公が先陣切ってやったことが戦後的価値観に照らし合わせれば良くない行いだとしても、当時彼ら周囲の人たちはそれを支持して尊敬したんじゃないの? 戦後「民衆は騙されてたんだ!」とかいう民衆の無責任さ、そう言いたくなるのわかるけど、でも一歩立ち止まって考えてみなよ!!! と言いたくなる。 彼らのも、小野とは違う方向からの自己正当化の一つよね。 小野の苦悩や考えれば考えるほどねじれてしまう建前と本心、自己正当化って側から見てるとなんて痛々しいの。自分でも痛々しい自覚あって必死に隠してるんだろうな、彼は。
引退した心穏やかな画家の、内面に潜む葛藤を深く鋭く描いている。 前作『遠い山なみの光』と同じく、地域や世代による認識の狭間で揺れる主人公だ。だがこの作品ではそれがより洗練されている。 これをさらにキレイに纏め、舞台をイギリスに移したものが次作の『日の名残り』と言えそうだ。 次の世代の方々との考え方...続きを読むの違いに、自分がどう上手に折り合いをつけていくかは、僕も常に向き合っている課題だ。 主人公はその答えを 『受け入れる柔軟性を持ちながらも、自己の本質的な考えは変えない』点に見出した。この回答は今後の僕に大きな示唆を与えてくれるだろう。 カズオ・イシグロ作品の多くに言えることだが、活字を追うこと自体に幸せを感じた。文中の単語一つ一つに込められた著者の深淵な思いとか、そういうものをあれこれ詮索しながら読むのが実に楽しいのである。
主人公の思い出した通りに(時間軸が飛び飛びに)話が進んでいくので、少々読みづらく感じることもあったが、挫折することなく読み終えることができて良かった。次はメモをとりながら読み返そうと思った。 本の内容とは全く関係ないが、この本を読み終わってから「無言館」に行った時に、絵で成功し、立場(階級、地位)を...続きを読む得たために、おそらく戦地に行くことはなかった主人公と、絵で生きていきたいという夢を持ちながらも戦地に行き、帰らぬ人となった若者たち。この2つを通して、戦争と芸術の関係は何だろうかと考えることができて、それも良かったと思う。
カズオ・イシグロの第二作。戦後日本を舞台としていること、一人称の回想の語りによる作品であることは前作『遠い山なみの光』と同様。登場人物同士の視点や価値観のズレが読者に異和を感じさせながら展開していくことも共通しているが、大きく異なるのは『遠い山なみの光』におけるズレは未来に対する視点の違いにあったの...続きを読むに対して本作におけるズレは過去に対する認識のズレが描かれているところ。一人称の語りという構成上、語り手である小野の認識上の問題と事実との差分をどう捉えるか、そして語られることの背景で語られないことをどう推測するか、聞き手であり読み手である私たちの解釈の余地が素晴らしく表現された作品だなと感じる。
時代の流れの中で、持て囃されたり、批判されたりするものは一変する。戦前戦後は特に激変する中、迎合したり、反省して死すら選ぶ人も描かれている中、自分の信念を貫いたと信じ切ることの悲哀が、回りくどい会話や微妙な人との邂逅によってぼんやりと浮かび上がってくる。変化し続けることが重要、という無意識に根ざされ...続きを読むた価値観を揺さぶられる体験となった。
戦後を舞台に、戦前、戦中に画家として活躍した小野が自身の過去を語る回顧録形式の小説。 日本を破滅へと導いた軍国主義を是とし、その信念をもって数々の絵画を発表。 当時大いに受け入れられ賞賛された価値観は、敗戦後には唾棄すべきものとして扱われる。 新しい価値観を理解し、それを認め、受容すること。 それ...続きを読むが戦後で生きていくためには必要なのだが、価値観を変容し、新たなアイデンティティを形成するのは並大抵のことではない。 軍国主義を積極的に支持していたことに対する罪悪感、後ろめたさを拭い去ろうとする心の葛藤。 小野自身とて、もともと軍国主義など信奉していなかったのだというエクスキューズや、今や自身と袂を分かった弟子たちもかつては自分の考えを大いに支持し礼賛していたということを思い出す。 一方で、自身のかつての言動のせいで、自分の娘の結婚などに悪影響が出てしまっていることを危惧し、当時の関係者に当時のことはあたかも「なかったこと」にしてくれるよう求めたことを思い出す。 新しい価値観は認める。しかしそれを認めるとなると、古い価値観をもっていた時代に行ったこと、それに費やした時間はすべて無駄であったということになってしまう。 過去をすべて否定するのか、否定せずに受け入れることができるのか。 この小説はその壮絶な葛藤を、カズオ・イシグロの長編2作目にしてはやお家芸となる「曖昧な記憶」をもって見事に描いている。 舞台設定と表現方法は前作『遠い山なみの光』にとても近い。 戦後十数年で長崎に生まれ、その後すぐに海外に移住したというやや特殊な環境も影響しているのか、戦後という時代に特別な思い入れがあるのだろう。 また、彼が興味の対象としている、「変化する価値観の受容」あるいは「アイデンティティの崩壊と再生」みたいなテーマにとって、敗戦国の戦前、戦後というのはおあつらえ向きということもあるのだろう。 前作では女性の戦後価値観変化の受容、そして今作では男性の戦後価値観変化の受容を扱っている。 変化を受容するというのは、人格的な危機である。 事象AとBがあり、今まではAが正解でBが不正解だったものを、これからはBが正解でAが不正解となる生活を強いられる。 正解の人生を歩んできたと思っていたのが、突然、自分の人生は不正解だと言われる。これは危機である。 そこで、今までの人生を否定せず、新しい価値観を受容する必要があるのだが、そんな緊急事態に際して心が行うのは、記憶の再整理である。 矛盾する価値観に対して、それが矛盾でなくなるように、うまい具合に記憶を再整理し、整合的な記憶として、新たな価値観を自然に受け入れていく作用機序が人間の心にはある。 本作では、前作以上にその心の作用機序をうまく物語に取り込んでいるように見える。 すごい作品だと思う。 すごい作品だと思うんだけどね、私、カズオ・イシグロが描く子供が生意気すぎて受け入れられないんですよね・・・ 物語上で必要な役割だっていうのもわかってるんだけどね。読んでるとビンタしたくなってくる。 たまにビンタ超えて竜巻旋風脚たたきこみたくなる。 私には受容する装置がないらしい。 それでも、素晴らしい作品なのは間違いない。
あなたのやったことは間違いだ、と言われるのは腹が立ちます。間違いか間違いではないかの前に、自分以外の誰かに言われることに、まず腹が立つだろうと思います。なぜなら、間違いかどうかを決めるには「これが正解」という基準が必要ですが、その正解はどこから来るのかが人によって違うはずだからです。私が行った「何か...続きを読む」は、私の基準によれば正解だったのです。なのに、「あなたは間違いだ」と言われる「正解」はどこから? この本の「小野」が、娘2人から、義理の息子から、弟子から、次女の婚約相手から「間違いを犯した」と判断されたのは、小野が活躍したのが戦争中で、その後「戦後」ではなく「敗戦後」になり、「正解」が正反対になったのが原因でしょう。小野は自分の「間違い」を認めますが、でもあの時はこういう幸福感があった、またある時はこういう信念があった、と繰り返し確認しているのは、「だから自分の人生としてはこれが『正解』だ」、と思うからだと思います。ですがこのように小野が、自分はあの時「間違った」のではなくこう考えたからああいう行動をしたのだ、と振り返れるのは、その行動を取ることについて「考えた」結果だったからだろうと思われます。つまり、この本を読んで「考えた」ことは、「間違ってはいけない」のではなく、「考えずにやってはいけない」のだろうということです。そうしないと、過去の過ちを振り返ろうにも覚えていないという事態になりかねません。そして、「間違いだった」と認めた後はどうすればいいか? また「考える」ことが必要なんだと思います。
戦争前後の人間関係を回想を交えて語る一人称小説です。これまで築き上げた自分と時代や価値観の変化にどう折り合いをつけていくか苦悩する様子が本人目線で綴られています。 主人公の記憶や印象に基づいた真実が事実であるとは限らない曖昧さに翻弄されました。過去の出来事が徐々に明らかになるにつれて、「自分が捉え...続きを読むる自分」と「他人から見た自分」の乖離も露わになり、痛みを感じました。
以前「記憶というものは思い出すたびに書き換えられている」と読んだ。終戦により今まで是とされてきたことが悉く覆される中、様々な記憶があやふやになり、自分のアイデンティティもあやふやになりかける主人公。 戦時中にいわゆる大人であった人は自分自身の崩壊とその再構築に苦労しただろうと想像した。
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