<翻訳文学試食会>で名前が出ていたので読んでみた。かなりの難物でした(^_^;)
第二次世界大戦中に、イタリアの近くのピアノーサ島に駐屯するアメリカ空軍部隊がある。
主人公はアッシリア系アメリカ人で爆撃助手のヨッサリアン。彼は「生き残る」ことを第一としていた。そのためには手段を選ばない!そもそも空軍を希望したのだって、長い長い訓練期間のうちに戦争が終わるだろうと思ったから。だって神様は俺達の味方らしいし、戦争はすぐに終わるんだろ。
でもヨッサリアンが前線に送られても戦争は続いている。
どんな物語か掴めず苦労した…(+_+;)
まず文章が回りくどい。
「彼のことを知っているのは、彼のことを知らない人以外の人々だった」みたいな感じ。
軍規や上官下官関係も、絡み合って矛盾し合っている。そして所属する兵士たちも気が変になってるので隊での会話も堂々巡りです。
「だれもおまえを殺そうとしていないだろ」「じゃあなぜおれを撃つんだ」「やつらはあらゆる人間を撃つだけだ」「やつらとは誰だ」「やつら全員だ」「それならなぜやつらがおれを殺さないと言えるんだ」みたいな感じです。
時系列もかなり乱れています。章立ては細かいのですが、その章の中でも時間は行ったり着たり、そして一つの事柄があとになってまた語られ、その後また語られ…。ちゃんと読めば事の真相が多角的に見えてくるはずですが、上に書いた通りにかなり分かりづらい文章なので、私には理解できないことばかり…(-_-;)
題名の「キャッチ=22」とは?
ヨッサリアンが所属する空軍部隊には「責任出撃回数」が決まっていた。ヨッサリアンだって最初は真面目に出撃していた。でも軍には絶対の軍規「キャッチ(落とし穴)=22」があるのだ!
「隊員が責任出撃回数を達成したって?それなら倍に増やそう☆」となるのがこのキャッチ=22。
隊員たちが「命懸けで何度も出撃して頭がおかしくなった」と戦闘任務免除願いを出す。すると狂人の彼は出撃を免除され…ないんですよ。「免除願いを出すということは、危険を認識しているということなので、彼はまともだ!」として、またまた出撃しなければならない。するとまた頭がおかしくなるので免除願いを出し、するとまた「正気だ」と判断され…、るのがキャッチ=22。
こんな部隊にいるので隊員たちもすっかりおかしくなっている。
●ハングリー・ジョーは、責任出撃回数を達成するためにかなり頑張って出撃していたのだが責任出撃回数増やされてゆくので、毎晩悪夢に雄叫びを上げながらも、自分が危険でないと安心できない精神状態になってしまった。
●グレヴィンジャーは、行進で躓いたら「隊列を乱し、無分別な行動をし、挑発的な大逆罪だ」として軍法会議にかけられてしまった。
●マイローは卵やソーセージ調達で特権を得ている。
●ドプスは何度も何度も責任出撃回数が挙げられることに怒り「キャスカート大佐をブッ殺そうぜ!」と息巻く。
●オアは「リンゴほっぺになりたいんだ」とリンゴを頬張っている。彼が乗った機が海に不時着した時は積み込んである救急用品を使いまくって、釣りをしたり、同乗者にはお茶まで振る舞っていた。(これはおかしいヤツというより、楽しいヤツ?)
●スナーク伍長はマッシュポテトに石鹸を潰して入れた、が、みんなもイカれてるので気が付かなかった!?
●ブラック大尉は、なんか色んな相手に嫌がらせしている?
●キャスカート大佐は、隊員が責任出撃回数に達するたびに数を増やす。
●メイジャー少佐は、父親に変な名前をつけられたことで陰気な性格になり、軍では箸にも棒にも引っかからないためにかえって昇格した。みんなが自分を避けるので、彼もみんなを避けるようになった、ので、部下たちは作戦の報告もできない。
●ー・ド・カヴァリー少佐は、一見威風堂々とした老人だが、才能を見せたのは将校らに貸し出すアパートメント、要するに娼館…。
●シャイスコプフ中尉は兵士に行進ばっかりさせる。
●ダニーカ軍医は、兵士たちの飛行回数免除のための書類を書けるはずだけど、それをやると自分が処罰されるので「キャッチ=22」で見て見ぬふり。
このなかでも一番イカれたことをするのがヨッサリアンだった。
●「俺のテントに死人がいるぞ!」と騒ぐ。(ヨッサリアンが来る前に戦死した兵士)
●慢性的に肝臓がおかしいと入院した。(同室の一人が、人当たりのよいムカつく奴なので出てきた)
●他にもしょっちゅう入院する。(だって病院のなかのほうが病院の外より病人が少ないし、落ち着いて理由があった死を迎えられるんだ)
●「通信機がおかしい!」と騒いで基地に引き返す。(結果として懸命な判断だった)
●他の兵士や上官のテントに突撃して騒ぐ。(気持ちはわかる…)
●全裸で整列する。(搭乗者の死体を浴びたので軍服を着ないと決めたらしい)
このイカれたような行為はすべてヨッサリアンが生きて帰るための本能だった。
<ヨッサリアンは永久に生きようと、あるいはせめて生きる努力の過程において死のうと決心していた。だから空に飛び上がるたびに彼が自分に課した唯一の任務は、ただもう生きて地上に降り立つということだけだった。P55>
そのため銃撃機に乗るときも無茶苦茶な飛行をするんだが、ドイツ軍戦闘機も狙うけれどもうっかり撃てない状態?になるので、ヨッサリアンと同じ隊の飛行兵たちは(無茶苦茶なんだけど)ヨッサリアンの機に率いられて飛ぶことは好んでいた。
<それは卑しくきたならしい戦争であり、ヨッサリアンはそれがなくても生きていけた。(…略…)歴史はヨッサリアンの若死にを要求してはいないし、正義はそれなくして満たされるはずだし、進歩はそれを条件にしてはいないし、勝利もそれに依存してはいなかった。人間が死ぬのは必然のことであるとしても、どの人間が死ぬかは周囲の状況によって定まることであり、ヨッサリアンは状況の犠牲にだけはなりたくなかった。P128>
でもアメリカって戦争していない頃から無茶苦茶だったよね?ということも見える。
●ハルフォート酋長の先住民族の土地は石油が出るので白人に追い立てられ、新たな土地にも石油が出たのでまた追い立てられ、次の土地でも石油が出たので…、でもこの話は嘘か本当か分からん。
●それぞれ、性的にも相当乱れている…
これだけ無茶苦茶なこの世界、自分がまともでないとわかってるほうがまともだよね?
イカれた行為を繰り返すヨッサリアンは「あいつはそれほど狂っちゃいませんぜ」「あのきちがい野郎は、いま残されている唯一の正気な人間かもしれんぞ」(P210あたり)と言われてる。
無茶苦茶な戦場、無茶苦茶な日常が繰り広げられるうちに上巻終了しちゃったんだけど(^_^;)