飛田茂雄のレビュー一覧

  • 浮世の画家〔新版〕
    名作「日の名残り」と同じように、自分なりのポリシーを持って難しい時代を生きた老人の回想という形をとっている。
    老人は戦時中に、愛国心を支えるような活動をしてきた画家。一時期は高い地位を得ていた(それも本人の記憶の中だけで、実際はどうだったのか、最後の方には現実と記憶の乖離も考えられるようになっている...続きを読む
  • 母なる夜
    アメリカのスパイとしてナチスドイツに仕えた男が、戦中・戦後の出来事について綴った手記という形をとっている。一人称でありながら、心情はとてもドライに描かれる。ハードボイルド的といっても良いかもしれない。彼はユダヤ人迫害の正当性など何一つ信じていないのに——彼自身が言うところの分裂症的に——表向きは完璧...続きを読む
  • 神話の力
    聞き手であるジャーナリストのビル・モイヤーズと、語り手である神話学の権威であるジョーゼフ・キャンベルとの対話を通して、神話に対する疑問や現代社会における神話の存在意義や影響等について考察した、両者の深い知識量による示唆に富んだ一冊。

    神話は詩であり、隠喩である。
    そして神話とは究極の心理の一歩手前...続きを読む
  • 浮世の画家〔新版〕
     こういう感想文を投稿するのは初めてなのでご容赦ください。以下の感想は読み終わったばかりの勢いで書いています。


     最初から最後まで、画家・小野の視点で描かれている。『価値観の変動』と『生き方』に焦点を当てた作品だと感じた。私がこの本から受け取ったメッセージを以下に示す。

    《価値観は時代とともに...続きを読む
  • キャッチ=22〔新版〕 上
    いわゆるひとつの反戦小説。
    ただ、普通の反戦モノと違って湿っぽい雰囲気は全くなく、ほぼ全編にわたってブラックユーモアにあふれてる。
    にもかかわらず、戦争の悲惨とか矛盾をくっきりと浮かび上がらせてるのは見事だと思う。
    案外、これくらい吹っ切れた書き方をした方が、かえって人間には伝わりやすいのかもしれな...続きを読む
  • 神話の力

    具体的な神話について詳細が語られるような本ではなく、インタビュアーに応える対話形式。

    この本を読もうと思ったのは、令和元年を迎えるにあたって、天皇家ってなんだ?という疑問から古事記の解説本を読んで、その本のコラムに、古事記と共通する他国の神話の話が幾つも紹介されていて世界の神話の共通性に興味が湧...続きを読む
  • 母なる夜
    人生において自分が何の役なのか、自分の役は善悪どちらなのか、自分を見つめる周りの目にはどう映るのか、それを知らないまま生きることも幸せな人生の一つの答えなんじゃないかなと思う。 それを知り、生きる意味や目標を追求することは普遍のテーマだけど、その達成は同時に失う事も所有することとなり、誰もが小さなレ...続きを読む
  • 浮世の画家〔新版〕
    再読
    カズオイシグロの一人称で語られる第二作目の長編小説。謎解きのよう。
    主人公は忘れることと記憶することの間で生きている。
    人間の記憶というのは矛盾してるものなのだなー。
  • 浮世の画家〔新版〕
    2回目。いつも素晴らしい小説をありがとう。

    初めて日の名残りを読んだ時はたまげたけど、テーマほんとうにそっくり。
    日の名残りの方が華やかさと鮮やかな色彩感があって好きだけど、地味で淡々としていて暗いこちらも良い小説。
    主人公のやるせなさや辛さも、周囲の気まずさや不満も、どちらも手に取るようにわかる...続きを読む
  • 神話の力
    神話学者との対談を書き起こした書籍。世界各国の神話から人類の普遍的なイメージや価値観を探っていく。いわゆる「悟りの境地」をここまで明文化できるのかと驚嘆した。体験をもって、時間・空間や存在・非存在を心から超越した境地。
  • 神話の力
    世界中に、インターネットなど情報を伝達する共通の科学的基盤が無い時代に、神話という形で世界各地に共通する要素を持つ物語が存在している。

    そういった神話の人間への意味合いを、そこに存在する隠喩を繙くことで人間を導く力があるということを述べている。こどもから大人への転換、英雄物語、等人生のなかで生きる...続きを読む
  • 母なる夜
    なぜ人はこうも寂しいものなのかという事をつくづく感じるばかり。畳み掛けるユーモアの効いた皮肉にズキズキ心が痛む。
  • 神話の力
    アイゼンハワー大統領がコンピューターでいっぱいの部屋に入り、並んでいる機械に向かって「神は存在するかね」と質問した。
    するとあらゆる機械が動き出し、ライトが点滅し、歯車が回り始め、しばらくすると声が聞こえたーー
    "Now there is." (今いる)と。
  • 神話の力
    神話はどうやってできたか?この問いを考えると、人が肉体的にも精神的にも何か超越したものを言語でどうにか表すために、作られてきたことがわかるだろう。世界に神話は数あれど、似たような話が多数存在するのはなぜだろう。はたして神話は今現代に生きる人に何を教えてくれるのだろう。神話の話から人生の哲学の話に変わ...続きを読む
  • 神話の力
    「ストーリー・ウォーズ」からのジョーゼフ・キャンベル。世界共通の神話母型があり「スターウォーズ」はそれに則っている、と知っているつもりだったが、ちゃんと書籍で読んだのは初めてでした。いま自分にとって必要な時に必要な本、というか必要な読書体験だったような気がしています。次は「千の顔を持つ英雄」に行くし...続きを読む
  • 神話の力
    どうして世界にはこんなにも神話があるのか? どうして、これほどに形を変えて、類似した神話が存在するのか? そのようなありふれた疑問に対して、比較神話学の『ひ』の字も知らない素人にも興奮と驚きをもたらしてくれる示唆に満ちた一冊。数年ごとに繰り返し読んでいけば、また新たな発見があるだろう。
  • 母なる夜
    自分の生き方を持っているからこそ、何も考えていない者を嘲笑う様子が考えさせられる。この作者はユーモアに関しては誰にも負けない物を持っているように思う。この作品では、終わり方が無情であるということもあり、深く印象に残って消えない。
  • 神話の力
    世界の捉え方が変わる種類の名著。たとえば、
    アダムとエバは対立観念を知ることで追放された。つまり超越者とは対立観念では認識することができないものであって、一の世界においてしか感知できないもの。我々が言葉や感覚で捉え認識することすらできないもの。
    訳本が書店で見つからないのが難点
  • 神話の力
    神話を題材にしつつ、筆者は生きることそのものを祝福している。P99〜のインディアン部族の首長の言葉があまりに美しく、英語本と日本語本を交互に何度も読んだ。
  • 神話の力
    キャンベル氏の本。内容が盛りだくさん。物語を書く上で、参考になるかと思い、読んでみた。

    これは、再読しないといけないなぁ。