【感想・ネタバレ】浮世の画家〔新版〕のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年05月05日

 こういう感想文を投稿するのは初めてなのでご容赦ください。以下の感想は読み終わったばかりの勢いで書いています。


 最初から最後まで、画家・小野の視点で描かれている。『価値観の変動』と『生き方』に焦点を当てた作品だと感じた。私がこの本から受け取ったメッセージを以下に示す。

《価値観は時代とともに...続きを読む移ろい行くものだから、誰しも後になって自らの過ちに気がつくかもしれない。しかし、『自分の信念に従って、全力で生きた』ならば、それの信念が間違いであったとしても後悔はしないであろう。》


 また、この作品では、とかく何かを明言するのを避ける傾向にある。しかし、多数の場面を組み合わせて、人の心の動きを鮮やかに描いていた。



 以下に大まかな作品の流れを示す(完全なるネタバレです)。

 戦時中、小野は〈地平ヲ望メ〉という版画作品で広く影響を及ぼした。この作品に描かれた精神は「お国の為に戦う」(だと考える)。作品は、当時の小野の信念に基づき描かれ、地域で大いに賞賛されたらしい。

 しかし、終戦後にこの絵のテーマとなった精神は批判される。さらに、若者も当時の『権力者』への憎しみを曝け出す。それは、若者が『権力者』に、仲間の命を奪われたと考えるからである。

 小野は、回想中に自らの過ちと、人々に与えた損害に正面から向き合い認める。価値観は移ろいゆくものであるからである。当時は良しとされていたものが、現代では悪になってしまうのである。

 しかし、当時の小野が『自らの信念に従って、全力で行動した』という事実は変わらない。そして、彼は自らの過ちは認めても、当時の『生き方』には業績以上の満足感を得ていたのである。


 一方、若者の言う『権力者』とは、将校・政治家・実業家達であったと判明する。そこで小野は自らが感じた責任の大きさは、自分の職業に見合っていなかったと悟る。けれども、確実に社会に影響を及ぼした者としての責任を感じ、また、自らの信念を貫いた事に誇りを持ちながら生きるのである。

 

 

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Posted by ブクログ 2019年08月23日

再読
カズオイシグロの一人称で語られる第二作目の長編小説。謎解きのよう。
主人公は忘れることと記憶することの間で生きている。
人間の記憶というのは矛盾してるものなのだなー。

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Posted by ブクログ 2019年07月28日

2回目。いつも素晴らしい小説をありがとう。

初めて日の名残りを読んだ時はたまげたけど、テーマほんとうにそっくり。
日の名残りの方が華やかさと鮮やかな色彩感があって好きだけど、地味で淡々としていて暗いこちらも良い小説。
主人公のやるせなさや辛さも、周囲の気まずさや不満も、どちらも手に取るようにわかる...続きを読むから、読んでて少ししんどくなる部分すらあった。


今主人公を責める周りの人たち、すなわち二人の娘や素一や三宅家の人たちは、戦争中は何を考えてどう行動してたの?
主人公が先陣切ってやったことが戦後的価値観に照らし合わせれば良くない行いだとしても、当時彼ら周囲の人たちはそれを支持して尊敬したんじゃないの?
戦後「民衆は騙されてたんだ!」とかいう民衆の無責任さ、そう言いたくなるのわかるけど、でも一歩立ち止まって考えてみなよ!!!
と言いたくなる。
彼らのも、小野とは違う方向からの自己正当化の一つよね。
小野の苦悩や考えれば考えるほどねじれてしまう建前と本心、自己正当化って側から見てるとなんて痛々しいの。自分でも痛々しい自覚あって必死に隠してるんだろうな、彼は。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年08月15日

戦前から戦後にかけて、主人公の意識の変化や、心情の揺れが丁寧に描かれていて、とても興味深かった。
時代に翻弄される人々の様子もリアルに描かれていて、激動の時代に想いを馳せる事が出来た。

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Posted by ブクログ 2019年06月13日

ある一人の男の意識の流れ。この作品に漂う静けさ。ドラマを見たせいもあり、主人公の小野は、渡辺謙さんだった。

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Posted by ブクログ 2019年05月26日

夏目漱石の『それから』とか、太宰治の『斜陽』のように、破滅的な最後に向かっていくのかと思っていました。これはこれで好きです。

翻訳版の文体のためか、今まで触れた同氏の作品と比べると、舞台がそうであるからという理由以上に、日本的な印象を強く受けました。

一方、少し気になる点もいくつかありました。
...続きを読む
語り手である小野さんの話がいちいち脇道に逸れるのは、もちろんそれが物語の肉付けとして重要なエピソードだからなんですが、「逸し方」っていうのはそう何パターンもあるわけではないので、「またか」と少し気が散る印象がありました。
それから、誰かの発言を思い出した直後に「本当にそういう表現をかの人が使ったかどうかは定かではないが……」というのもちょっと多かった。もちろん、小野さんが記憶のフィルターを通して過去を語っているということを強調する意味で大変有効な表現なのでしょうが、多用されるとこれも「またか」と思わざるを得なかったです。

それでも、人物の気持ちの機微とか、戦前戦中戦後と移り変わる日本の機運みたいなものへの戸惑いが、丹念に描かれていて、しかも救いのない話でないところが、なにか希望のようなものをもたらしてくれる気がしました。

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Posted by ブクログ 2019年08月17日

浮世絵の画家の新版
老画廊は過去を回想しながら、自からが貫いて来た信念と新しい価値観の狭間に揺れる。
1986年にウイットレッド賞を受賞

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