あらすじ
第二次大戦中、ヒトラーの対米宣伝に携わった劇作家ハワード・キャンベルの真意とはなにか? 第二次大戦中、ヒトラーの擁護者として対米宣伝に携わった劇作家ハワード・W・キャンベル・ジュニア--はたして彼は、本当にアメリカの裏切り者だったのか? 鬼才ヴォネガットがたくまざるユーモアとシニカルなアイロニーに満ちたまなざしで、自伝の名を借りて描く、時代の趨勢に弄ばれた一人の知識人の内なる肖像。
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Posted by ブクログ
アメリカのスパイとしてナチスドイツに仕えた男が、戦中・戦後の出来事について綴った手記という形をとっている。一人称でありながら、心情はとてもドライに描かれる。ハードボイルド的といっても良いかもしれない。彼はユダヤ人迫害の正当性など何一つ信じていないのに——彼自身が言うところの分裂症的に——表向きは完璧にナチスの手助けを続ける。生き延びるために罪を背負わざるを得ない、このような人物を一体どう捉えればよいのだろう。どこまでも辛い物語だが語り方には優しいまなざしが感じられ、そのギャップが強く印象に残る作品だった。
Posted by ブクログ
人生において自分が何の役なのか、自分の役は善悪どちらなのか、自分を見つめる周りの目にはどう映るのか、それを知らないまま生きることも幸せな人生の一つの答えなんじゃないかなと思う。 それを知り、生きる意味や目標を追求することは普遍のテーマだけど、その達成は同時に失う事も所有することとなり、誰もが小さなレシと同じ結末を迎えることになると思うから。
Posted by ブクログ
自分の生き方を持っているからこそ、何も考えていない者を嘲笑う様子が考えさせられる。この作者はユーモアに関しては誰にも負けない物を持っているように思う。この作品では、終わり方が無情であるということもあり、深く印象に残って消えない。
Posted by ブクログ
いやー!面白い
ヴォネガットお得意のナンセンスな超展開でしょって思いながらも
各展開ごとにいちいちわくわくしてしまった
妻との再会では思わず泣いた・・・ それなのに!笑
正直何も考えないで読んでもこれだけ面白い本はなかなか無い
本当にストーリーだけでも最高の本ですが、メッセージもしっかりあります
正義とか善意とか誠実さとかそいいったものの脆弱性
生きるということ それと戦争
こんなただ面白いだけの本なのに考えさせられることも多く、
ただものじゃありませんカートヴォネガット
彼の著作を全部読みたいと思いました
Posted by ブクログ
戦争に巻き込まれた一人の男の悲しい物語だが、ヴォネガット特有のユーモアも相まってとても優しい語り口になっている。
従軍して地獄を経験したヴォネガットの思いがストレートに込められている作品で、SF色はない。
Posted by ブクログ
レーベルはSFだけどSFではないんだよね…
ある種問題作かもしれません。
(まあ仮の人物としてがSFか?)
一人の二重スパイがこの状況にまで
至るまでのお話。
結局言ってしまえば、
戦争というものは様々な憎しみの種を植え付け
どこまでも暴走していくということ。
まあそれでもこのキャンベルは
うまく立ち回ったとは思うのよ。
じゃなきゃ最初につかまった時点で
とっくに絞首刑になっているので。
そして一時の幸せであろう生活までもが
途中で暗転してしまう恐ろしさ。
それが彼にとっての「報い」だったのかもしれません。
結局は彼は望んで
延長されていた罪を受けることになります。
そうなるとどんなにすごい人でも
あっという間に牙をむいてくるということ。
それはズッ友と信じていた人まで。
戦争はむごい。
Posted by ブクログ
ヴォネガットの著作では、自己の体験を強く反映しながらも、読み終わってから主人公がどんな人間だったか思い出せないことが多かったりするけれど、本作は妙に記憶に残る。
それは、主人公が、自分のやってきたことをごまかそうとせず、そして最終的に自分の意志で選択をするからなのだろう。