【感想・ネタバレ】日の名残りのレビュー

あらすじ

短い旅に出た老執事が、美しい田園風景のなか古き佳き時代を回想する。長年仕えた卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々……。遠い思い出は輝きながら胸のなかで生き続ける。失われゆく伝統的英国を描く英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。

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旅は、人生を思い返すきっかけになったりします。
この物語は、執事であるスティーブンスが、旅の最中に自身の人生を思い返す物語です。
どこまでも完璧な執事であり、どこまでも完璧な執事であろうとするスティーブンス。そんな彼の働き方や生き方を、自分の働き方や生き方と比べて読み進めると面白いと思います。
登場人物が多く、すべての登場人物の名前がカタカナのため、最初は混乱しやすいですが、主要な登場人物は複数回出てきてだんだん人柄をつかめるようになってくるので、とにかく読み進めることをお勧めします。
また、スティーブンスの語りで進んでいくため、文章が丁寧で読みにくく感じるかもしれません。こちらについても、とにかく読み進めてみていくと、次第に慣れて心地よくなっていくと思います。

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Posted by ブクログ

映画公開時に、映画を見て小説も読んだんだけどまったく理解してなかった、と思う。
カズオ・イシグロのノーベル賞受賞(受賞から数年経っちゃってるけど)でちゃんと読んでみることにした。

1956年、オックスフォードの由緒正しいお屋敷ダーリントンホールに勤める初老の執事スティーブンスは、今のご主人ファラディ氏の休暇に伴い小旅行を計画した。ダーリントンホールは以前は名門貴族ダーリントン卿の持ち物だったが、卿の死後アメリカ人富豪ファラディ氏が屋敷を買い取り、スティーブンスはそのまま新しいご主人に仕えている。政財界に携わり世界の情勢に影響力を持つイギリス人貴族と、戦後の自由なアメリカ人。ご主人の違いにも悩む。それより一番の悩みは使用人の未経験や不足によりお屋敷のご奉仕が行き届かなくなっていることだ。
スティーブンスには一つの解決方法を望んでいた。20年以上前にお屋敷を結婚退職した女中頭のミス・ケントン(結婚後はミセス・ベン)に復帰してもらうことはできないだろうか?ミス・ケントンとはたまに交わす便りだけの仲だ。そしてスティーブンスは最近受け取った手紙に、彼女が人生に悩んでいること、ダーリントンホールにいた頃を懐かしむ気持ちを読み取っていた。そこで彼女の住む西岸の町クリーヴトンに行ってみることにしたのだ。
…というのは建前、どうやらスティーブンスはミス・ケントンと自分の間に別の関係が成り立つことができたのではないかと考えているっぽい。

この小説は、ミスター・スティーブンスが読者に向かって語るという一人称形式。1956年の小旅行、第二次世界大戦前後のダーリントン卿につかえていた頃のこと、現在のファラディ氏とのこと、そして長年悩み続けている、執事に必要なもの、特に『品格」とはどのように身につけることができるのか。
一人称なので『このような状況になり、私はこのように発言したけれど、それを言うに至った心境や本心はこのようなものなんです」という本音と建前のようなものも見える。そしてさらに読者には、その奥の彼の本心も見え隠れしてくる。…要するに彼が語ることは表面的で取り繕ってる感じなんです。
彼はいかにもみんなが思い浮かべる執事で、自分の考えは表に出さず御主人様の考えに従い、屋敷の隅々の細かいところまで目を光らせ、言葉や立ち居振る舞いは慇懃で、常に完璧を目指し、ご主人やお客様が何を望んでいるかを瞬時に悟り意に沿うサービスを提供する。ご主人やその客には最大限の敬意とおもてなしを行い、他の従業員には厳しくも適度な距離を保って接する。「あなたの未熟さが…」とか言うけれども人格否定ではなくて自分と同格の人間と認めたうえで言っている感じではあるんだけど、私にはお屋敷努めは務まらんなあ(^_^;)

二つの世界大戦を通して時代が変わっていく渦中のため、登場人物たちの国の運営に関する考え方の違いも見えます。
 民主主義とは言え何も知らない素人は政治に口出ししない方が良い。
 知的階級だけが国を動かす立場に就くべき。
 それぞれのものが自分のふさわしい立場や役割を保ちそこから出るべきでない。
 身分に関わらず『品格」は持てるのだから、全員が意見を持つのだ。
それらは、かつてダーリントン卿のもとで見聞きしたもの、1956年現在の旅で新たな意見に出会ったものたちだ。
長年仕え続けたダーリントン卿は、紳士としては完璧で、自分たち上流階級が国を導く気持ちが強い。スティーブンスは卿に使えることにより、世界を揺るがす決定に自分たちのサービスが影響していることを感じていた。しかし第一次世界大戦後のドイツの困窮に心を悩ませたダーリントン卿は、第二次世界大戦前後ではナチスとの繋がりを囁かれてしまい、晩年と死後はその名誉を失っていた。
現在のご主人はファラディ氏は執事にもアメリカ人らしきジョークを投げかけてくる。スティーブンスはファラディ様は自分がジョークを返すことを期待されているのではないか?と考えるて精一杯のジョークを返したつもり、なのだが相手からは『え?なんだって?」とジョークと認識してもらえない…このジョークに関してのやり取りは『おっさん、慣れないことは無理すんな」と言いたくなる(^_^;)
この『スティーブンスが実際に言ったりやったりしたこと、そのためにスティーブンスが考えたこと、それを読んで読者が考えること」の構造が一番見えるのはやっぱりミス・ケントンとのこと。スティーブンスが実際に行ったりやったりしたことは礼儀を保った仕事だけの関係、そのために考えたことは『ドアを開けるべきかと思ったのだが」など巻kネイが変わるかもしれない機会は何度もあったこと、読者はその奥に『ロマンスを感じてるの?」と見る。でもさー、親族が亡くなった相手に向かって『お悔やみを伝えるべきかと思ったが」実際にやったのは仕事が行き届いていない小言や、相手を愚かな未熟者扱いだもんなあ…。
そしてスティーブンスが仕事上で悩むのは『品格」のこと。ダーリントン卿に仕えていたころ、少しはそれを身につけた時があったと思う。だがその後は?そして自分が思っているものが本当に『品格」なのか?そして今の現在はそのような『品格」は必要なのか?それはミス・ケントンと再会して言葉をかわした後にさらに悩む。
終盤、スティーブンスは一人で考える。自分には品格などなかったのではないか、過ぎ去った日々に取り残してしまったものはあまりにも多かったのではないか。
小説ではずっと『スティーブンスが語ることは表面的で、その向こう側に本心があるはずだ」と見えていたんだけど、最後の悔恨は深刻なんだけども取り繕った感じのない清々しさがあった。
そしてたまたま言葉をかわした男の『一日の家で夕方が一番いい」という言葉に目が覚めた思いを持つ。自分は老いた。かつてのような伝統に基づいた完璧なご奉仕はできない。しかし時代が変わった今、ファラディ氏には新たにご主人と執事の関係が築けるのだ。例えばファラディ様のお気に召すジョークだって、自分はこれから取り入れる事ができる。
自分は老いて、かつての古き良きものも失われつつある。だが人生は夕方こそ一番良いのだろう。


いやーー、一人称のためにスティーブンスの取り繕ったような自分中心なところが読みながらスッキリしない、彼の言う事の向こう側を考えちゃっていたんだが、終盤ですっきり!
人に語るという形式ながらも対外的に作った感じだったスティーブンスが、彼の奥深くの悩みを受け入れて、読み心地が爽やかだ。彼の「品格」は、世界を変えるその場にいてわずかながらに役割を果たしたってことではなくて、自分自身の悩みに向かい合って前に進むことに決めたということだと思う!

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2026年02月01日

Posted by ブクログ

途中まで、いや、6割読むまで!何が面白いんだろう。ここから何が起こるんだろうと考えながら読んでいましたが、最後まで何も起こりませんでした。

ネタバレとなりますが、この、「信頼できない語り手」の無意識のバイアスを上手に表現していて、読後は、スティーブンへ思いを馳せ、作者の技巧に感嘆することになると思います。

興味があれば!ぜひ!

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2026年01月26日

Posted by ブクログ

品格とは何かを問う素晴らしい小説。

主人公のスティーブンスは偉大なる執事として、感情を排した献身こそが品格であると信じ生きてきた。
しかし、幾つかの出来事が示す様に、その信念によって自らの人生を縛り、結果として取り返しのつかない後悔を生んでいった。

では彼は自らの心に誠実でなかったから、品格がなかったのか?そうは思えない。

もしここで彼が過去を否定し、失敗を他人のせいにし、感情を受け入れていなければ品格のない人間に成り下がっていたのかもしれない。
しかし、彼は旅の中で、自らの後悔を受け入れ、人生を投げ出さず、執事として生き続けることを選んだ。

自らが生きてきた人生に向き合い、後悔を受け入れ、責任を持ってそれでも未来へ歩いていった。
この姿勢こそが、この作品の示す人として本当の「品格」であるのだと感じた。

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2026年01月11日

Posted by ブクログ

 訳者が相当に技量のある人なのだと思う。特に感嘆詞などは、一体これに該当する英語は何になるのだろうと想像しても全く思い浮かばないが、不自然に思う瞬間や違和感を感じる瞬間は全くなかった。物語を楽しめた。
 一方、訳者の技量に頼らず生の英語によってダイレクトに本書を読みたいという気持ちも芽生えた。日本語でこんなに心地よく読めたなら、英語ならどれだけ素晴らしいか、、。
次は英語で読むべきだろう。

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2026年01月05日

Posted by ブクログ

『正しい人生』などというものがこの世にあるのだろうか?そんなことは誰にも分からない。
それゆえに、人生を捧げて全力を尽くした「何か」が、今思えば間違っていたということもあるだろう。
でも、それでいいのかもしれない。
燦然と輝いた太陽が沈む頃、『日の名残』とも言うべき光もまた美しいものなのだ。

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2025年12月30日

Posted by ブクログ

執事という職業自体が私にとっては、外国文学の中でしか触れることのない職業で、執事がどんなものかは作品の中で想像するしかないが、このお話の主人公は第二次世界大戦前から大戦後までをイギリスの貴族のお屋敷で働いていた1人の執事。初めは、世界大戦中の、貴族や国の重要人物のお話だったら、もっと面白そうなのに、なんで、執事のお話なんだろう?と思って読んでいた。主人のダーリントン卿が出会う国の中枢の人物たちとの話が漏れ聞こえてきて、執事は、ダーリントン卿がいかに立派な考えを持っているかということを説明していく。でも、何せ、漏れ聞こえてくる情報だけしか私たちには知らされないから、なんだか、曖昧でもやがかかってる感じ。
それが、本当の本当にラストになって、「このお話の言いたかったことは、これだったんだ!」と私は気づいた。執事のスティーブンスは、ミスケントンの想いに気づかない鈍感さだったけれど、私も同じで、最後の最後になって、やっと、わかった。

夕方がいちばんいい時間なんだ。足を伸ばして、のんびりするのさ。

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

福大病院図書室で借りる。久々感動の本。何がよいのか?スッと言葉が出ない。が、読みながら残りページ(紙の厚さ)が少なくなっていくのが残念になるという初めての経験をした。まだ終わってほしくない、まだ読み続けたいと。主人公が「品格」にとてもこだわりがあり自分も「品格」ある行動をせねばと思うようになった。

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2025年12月18日

Posted by ブクログ

 途中までよくわからなかったが、最後の方になってどういう話だったのかわかる気がした。
 スティーブンスが首相、外相、駐英ドイツ大使リッベントロップの会談をうまく凌いで幸福感を感じるが、その20年後に分かった女中頭の自分への恋慕の情がそれをふいにしてしまった。スティーブンスは鈍感すぎた。僕も読んでる最中全く気が付かなかったから鈍感なのかなと思った(笑)
 解説を読んで分かった気になったが、自分でわからなかったのが悔しい。また読みたい。

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2025年12月17日

Posted by ブクログ

カズオイシグロは難解だ、
訳文だからか私の読解力不足だからか読みづらい、
映画にもなってるそうなのでイージーそうなそっちから読めばよかったか?
なんて逡巡を口笛で飛ばす読後感です。
氷河期世代で仕事人間たる私には、重みが残りました。
仕事を選んできた人生に後悔はないか?と問われるとイエスと即答できない。
同じように仕事を選んできたあの人にも、読んで欲しい。

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2025年11月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 時代は第二次世界大戦の後,1950年代。
 執事スティーブンスは、現在はアメリカ人の主人に仕えているのだが、主人が帰省する間、かつて同僚だった女中頭に会いにいくことになった。かつてかれらは、有力貴族ダーリントン卿に仕えていた。物語は大半は、旅中で想起される戦前の出来事(1920〜30年代くらい)が中心となっている。
 ダーリントン卿は、政界にコネを持ち、その屋敷は幾度のなく国際政治上の密会の場となっていた。そして、スティーブンスは主人に心酔していた。彼は、ダーリントン卿がいかに偉いか、ということを何度も回想している。
 と同時に、そのように高らかに誇張されることによって、その陰にあった(が実は明らかに見えていたはずの)物事が示唆される。
 読んでいくうちに、スティーブンスの回想には自己欺瞞があることを、読者は感じとるはずだ。彼は幾度となく「品格」とは何かという問いを反芻している。だが、彼自身は、ダーリントン卿の親ドイツという負の側面を、見て見ぬ振りをしていたのだ。
 彼は記憶を辿っていくうちに、自分でも自己欺瞞に気づき始める。物語の途中で、彼の想起の仕方がいつの間にか変化しているように感じられた。
 こういう疑問が出てくる。本当は見て見ぬ振りをしてはいなかったのではないか。すなわち、時間が経って自分の過去の思い出し方が変化してはじめて、見て見ぬ振りをしていたということになった、のではないか。記憶が変化してはじめて、その過去が生まれたのではないか。
 物語の終局、スティーブンスが桟橋近くのベンチでバスを待っていたとき、居合わせた老人との会話のなかで、こう告白する。
 「卿にお仕えした何十年という間、私は自分が価値あることをしていると信じていただけなのです。自分の意思で過ちをおかしたとさえ言えません。そんな私のどこに品格などがございましょうか?」(350頁)
 スティーブンスは海を見て泣く。彼の記憶は変わってしまったのだ。彼はかつての過去を、もう二度と思い出せまい。

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2025年11月06日

Posted by ブクログ

こーれはすごい
まるで実在する執事が滔々と自らの職業人生を語っているかのようで、ノンフィクションの自伝を読んでいるような錯覚に陥りそうになる
確かな構成力に加えて生真面目な執事が時折見せる人間臭さや登場人物の会話など、ここまでのリアリティと緻密さをもって細部まで描き切る著者の筆致の力量に圧倒された

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2025年11月02日

Posted by ブクログ

英国貴族のダーリントン卿と、その名家に仕える執事のスティーブンス、ミスケントンの3人を中心とした物語です。スティーブンスの回想録になっていて全て口語調で書かれています。そのため読みやすく、当時のダーリントン家で行われている会合や執事として働いている情景が鮮明に浮かんでくるため、没入感が素晴らしかったです。とにかく真面目で堅物なスティーブンスの人柄も良い味が出ています。

この物語の最大の魅力としては、3人ともが自らの「人生」と深く向き合っていることです。それぞれが自らの信念のもと進む道を決断・選択しているのですが、上手くいかずに後悔、そして苦悩・・・といったシーンが描かれています。そのため、「もしあのとき違う選択をしていたら・・・」という、もう一つの人生の可能性に関して深く考えさせるような内容となっています。タイトルが「日の名残り」としている点からも、その点が大きな主題になっているのかな?と勝手に推測していますが、そういった点を読者に想像させるような構成が本当に素晴らしいです。

また、フィクションながらも当時の時代背景の細部まで緻密に反映されている点が凄いです。
第一次世界大戦後でドイツに対して弾圧を強めるか、それとも宥和的な政策を取るか英国内や諸外国との間で不和が生じていた政治的な時代背景をもとに、秘密裏の会合で各国の駆け引きしている様子も描かれています。また、英国貴族が没落していった時代背景も表現されていたり、文学作品として見事に昇華されています。ブッカー賞受賞作品はダテじゃないですね。本当に素晴らしい作品でした。

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2025年09月23日

Posted by ブクログ

素晴らしい作品だった。雇主が戦前戦後の欧米各国の思惑に翻弄され失意の中で去る話、女中頭の過去と現在の話。最終的には、執事も前を向いてジョークにまず向き合おうとこの旅を経て思えた事、何もかもが素敵なストーリー。
カズオ・イシグロの本の中で、マイベストです。

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2025年09月19日

購入済み

面白くてすんなり読めました

サー・カズオイシグロの作品を読むのはこれが初めてでしたが、冒頭からすんなり読めて良かったです。
大好きなドラマ「ダウントンアビー」の世界を楽しめました。主人公のドライブ中の描写も以前旅行した時のイギリスの田園風景が目に浮かぶようでした。
どちらかというと主人公より元女中頭のミス・ケントンに感情移入して読後感はどことなく悲しかったですが、他の方のレビューを読むと主人公もミス・ケントンも過去を振り返った上で希望を持って未来に歩み出す物語なのかもと思います。なかなか深い物語です。

#深い

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2024年04月16日

mac

ネタバレ 購入済み

人生の黄昏

一部ご紹介します。
・「わしはあんたの言うことが全部理解できているかどうかわからん。
だが、わしに言わせれば、あんたの態度は間違っとるよ。
いいかい、いつも後ろを振り向いていちゃいかんのだ。
後ろばかり向いているから、気が滅入るんだよ。
なんだって?昔ほどうまく仕事ができない?
みんな同じさ。いつか休む時が来るんだよ。
わしを見てごらん。隠退してから、楽しくて仕方がない。
そりゃ、あんたもわしも、必ずしももう若いとは言えんが、それでも前を向き続けなくちゃいかん」
「人生楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。
みんなにも尋ねてごらんよ。夕方が一日でいちばんいい時間だって言うよ」

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2022年09月30日

Posted by ブクログ

スティーブンスの鈍さが最後まで一貫していたのが良かった。確かに彼は卿の判断を信じただけの受動的な人間だが、それについて思索を巡らせることができる時点で立派な人物だと思った。

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2026年01月19日

Posted by ブクログ

ひたむきで有能な執事の残りの人生を失意の中に放り込まず、ユーモラスに締めくくってくれたイシグロに拍手。

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2026年01月03日

Posted by ブクログ

おじさんの虚無。

読んでいる途中、激しい感情の起伏は起こらないけれど、執事さんの脳内トークの言い訳に味があって、だんだんと面白くなってくる。
そして、しみじみとする。

品とノスタルジアの小説。

仕事ばかりしてプライベートを台無しにする日本のおじさんに(おばさんにも)お勧めする。

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2025年12月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

後悔と過ちの日々。ただその一切はすぎていく。

品格のために執事の服を常に脱がずにいたスーティーブンスが、最後に「自分で決断しなかったこと」を悔いて泣いてるシーンがとても印象的だった。
いままでほぼ全編にわたってスティーブンスの仕事の素晴らしさ、正しさを説かれていた身としては冷や水をかけられる思いだった。

ただ、後悔した先の、過ちを犯した先の日々が目の前にはただ広がる。もし過去に戻ってそこ後悔を解消したところで、自分の望む未来が手に入るなんて確証はない。

「これでよかったんだ」と、ただただ明日に向かって歩いていく事。明日をより良いものにするために、ジョークの勉強をしようと決めるスティーブンスはあまりにもいじらしかった。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

目的がわかりやすく終盤に配置されていて、読み進めるほどに何が起きるのか期待させられてしまう物語だった。はじめ、スティーブンスはたいへん有能な執事かのように見えるのだが、だんだんと信頼できなくなっていく。どうも仕事一辺倒で、他の面が疎かになっているのではないかと。だが全てがスティーブンスの語りゆえに、その疑念が読者に伝わっているのは、だんだんとスティーブンスの自信が揺らいでいることの表れでもあるという構造がおもしろい。

物語終盤、スティーブンスのこれまですべての自信が一気に崩れ落ちてしまう。そこから終わりまでがあまりにも短いのもこの物語の特徴のように思う。だから、「昔ほどうまく仕事ができない?みんな同じさ。いつかは休むときが来るんだよ。」「夕方が一番いい時間」という言葉から晩年の身の振り方を感じ取るのもいいが、終盤までの一連の流れを「後悔のないように生きるためにはどうすればいいのか?」という考察のとっかかりとするのが楽しめるのではないかと個人的には思った。

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

主人公に比べるとまだまだ若輩者だけど、過去の自分の行動や選択を振り返って、選ばなかったその先の人生について考えることがある。まぶしく輝くような時間が過ぎ、まばゆさが薄闇に包まれていく時間こそが一番いい時間だと、人生になぞらえながら読んだ。美しい物語だった。

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2025年11月22日

Posted by ブクログ

序盤から執事として勤めてきた過去回想とミスケイトンとの馴れ合いが続く。

物語の後半まではスティーブンスが行なってきた仕事ぶりと、そこで巻き起こる歴史の変革に自分がいる感覚に没頭しているようにも見えた。

この作品が信頼できない語り手の回想だったことを理解し始め、「今までのあのシーンのこういう事だよな!!」と私も解釈しながら読めて面白い。

ラストスパートでは、過去ばかり目を向けてはいけないというメッセージ性が沢山書かれており、自分に言われてるかのようで、前を向こうと思いました。

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2025年11月06日

Posted by ブクログ

古き良きイギリスの原風景が美しく描かれ、映画で触れるくらいしかなかった社交界、執事の世界、その厳しさも垣間見ることができた。

史実との整合性は不明、仄かな恋愛ストーリーはあったものの、執事が昔を懐かしみ、振り返っているだけなのに、退屈せず、なぜこんなに惹き込まれてしまうのか、、、自分でもよくわからなかった。

それにしても、翻訳がうますぎる。。。全く違和感なく、読み進められた。

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

この作品は、大きな事件もなく、執事スティーブンスの日常が淡々と描かれていますが、その静けさの中に彼の過去や現在、そしてこれからの人生への深い思索が込められています。

特に最終章では、自らの人生を振り返り、これまでの生き方やこれからの在り方を静かに見つめる姿に強く心を打たれました。

読後、自分自身の人生とも重なり、「これまでの人生は何だったのか」「これからどう生きていくのか」という問いが胸に残りました。

年齢を重ねるほどに、仲間の死や老いに直面し、生きる意味を考える機会が増えます。

ただ日々を過ごすだけでは満たされないもどかしさや、今の現状を変えるにはなにか怖気付いてしまうという思い――この作品はそんな中年期の揺らぎを静かに映し出しています。

若い頃には理解できなかった深い味わいを、今だからこそ感じられる一冊でした。

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2025年10月11日

Posted by ブクログ

これぞカズオ・イシグロ!という名作。
英国の美しい情景や伝統を描きながら、人間ってこうだよね…というリアルが詰め込まれている。

英国の執事の一人称視点で物語が描かれる。
人生をかけて仕えた主人への尊敬や、世間からの評判への後ろめたさ、後悔、恥辱、仕事への誇り、不器用な恋愛等、主人公の中で色んな感情がごちゃ混ぜになった結果、自分に不都合な事実や出来事に蓋をして、自分に都合の悪い部分を隠した主人公の語りが続く。

そのため、話の核心にもやが掛かったような進行に気持ち悪いなあと思うのだが、これが人間のリアルだよね、ということなのだろう。

日本にはない執事の文化が興味深かった。

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2026年01月13日

Posted by ブクログ

「クララとお日さま」を読んで著者の別作品に興味が湧き、英国最高の文学賞ブッカー賞を受賞作と知り、期待して読み始めましたが、取り立てて特別の感動を感じませんでした。
英国の品格ある執事としての理想を追求する主人公スティーブンス、女中頭として同じ館で働き始めたミス·ケントン、主人公に思いを募らせるケントンと執事としての役目に没頭してその思いに気づかないスティーブンスとの切ないやり取り。
ダーリントン卿に絶対の信頼感を抱き、その高潔な人格を持つ主人に仕えることこそ執事の本望であると仕えるも、敗戦国ドイツと祖国イギリスの間を取り持とうと卿が奔走するも人々から中傷を浴び、また、自分の過ちもあったことを吐露するダーリントン卿。
ダーリントン卿が亡くなり、館を買われた新しい主人から休みを貰い、結婚で辞めたケントンからの手紙でもう一度働かないかと打診する為にケントンと会いに旅に出るスティーブンス、再会したケントンから昔の思いを聞くも哀しく別れたスティーブンスが公園の夕日、日の名残りを眺めながら過去を追想するシーンは印象的でした。
ただ、執事の品格や民主主義ではなく高貴な貴族こそが国を導くという考えはいかにも昔のイギリスであり、本作の歴史的背景であるその記述に厚みや心の震えは起きませんでした。ブッカー賞の受賞理由のひとつはそこにあるのでしょうか?

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

後半一気に面白くなるタイプの本。ナチドイツ周辺の歴史的な知識があればもっと面白く読めたかもしれない。信念を突き詰めるのもひとつの素敵な生き方だと思うが、スティーブンスは色々なものを引き換えに差し出しすぎたのだろうと思う。人間臭くてよかった。ストーリー展開の派手な物語ではないので、時々眠くなるけれど、日の名残り、というタイトルがしっくりくる穏やかでノスタルジックな小説だと感じた

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2025年11月24日

Posted by ブクログ

かなり前に読んだものの再読。

前半部分はわりと覚えていたのに、ミスケントンと再会する場面を全く覚えてなかった…。
でもそのお陰で新鮮に楽しく読めました。

当時も思ったけれど、私みたいに歴史的背景や知識がなくても、主人公の執事としての日常や矜持、過去の日常についての独白が続くのに、退屈せずにどんどん読める。

スティーブンスは執事としては忠誠心があって優秀かもしれないけど、遊びがなくて、人に対して不器用で鈍感で空気が読めないところがイラッとしつつ段々と可愛らしく思えてくる。

個人的には言葉遣い一つで登場人物の印象も変わると思っているので、作家さんが書いた言語で読みたいのだけれど、こちらの訳も十分魅力的に描かれていて品があって美しい文章たちでした。

彼が人生の夕暮れにこの旅ができてよかった。
またしばらくして読み返すのもいいかもしれない。

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2025年10月21日

Posted by ブクログ

序盤から中盤にかけて退屈だなあと思いながら読んだ。執事たるものこうあるべきとか御主人のこととかそういうことばかりで。ところが中盤以降、徐々に小さくゆらゆらと燃え上がる何かが起こってくる。ちょっと先が気になってきたという状況がやってくる。最後にその燃え上がる何かが弾けるのかと思いきや、そのままゆらゆらして消えていった。そんなお話でした。あと読んでいて感じたのは、スティーブンスに対して「ええ、それはなあ…」という場面が多かった。もちろんこれは自分が現代の日本で生きているという状況で、かつ執事文化にもイギリス文化にも馴染みがないものにとってはなかなか書かれているもの全体を深く味わうことが難しかった。
でも、最後にケントンはスティーブンスに色々と告白をしたのに、彼の旅の道中たくさん色々と思いを巡らせあそこが分岐点だったなんて語ってたのに、最後まであの態度を変えられなかったことにはがっかりだよ、それも人生といえばそれまでのことなのかもしれないけど。ギャグなんかよりヒューマンドラマを見たまえスティーブンス?

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2025年10月10日

Posted by ブクログ

お堅いお仕事小説
脱線に次ぐ脱線がとても長い…ただ物語をつくりこむ執筆の凄さ、そして前作同様 静かな物語だったのを感じた

今作もイシグロ氏による回想、文学用語の信頼できない語り手 と呼ばれてる物語だった
わたしを離さないで から入った方が多いと思われる、今作物語はこちらも少し悲劇的に描かれてて、雇主だった者の過ち、女中の思いを気づけなかったなどが最後に想いにふけながら終わってく。しかし見知らぬ男との夕刻の話、つまりダーリントン卿との時間は素晴らしいものではあったのだと、イギリスの執事とはこれほどの仕事で素晴らしくあったのだとと思わせるような内容だった

誰にでも一生懸命のとき、じっくり考慮したとしても周りが見えなく選択の判断を悔やむこと一つや二つだってある、しかしというかやはり前を向けば新たな出会い、自分なりの楽しみを見つけられると、そんな想いが伝わってくる日の名残りだった

好きなフレーズ引用
人生が思いどおりいかなかったからと言って 後ろばかり向き 自分を責めてみても それは詮無いことです
私どものような人間は何か真に価値あるもののために微力を尽くそうと願い それを試みるだけで十分であるような気がいたします

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2025年10月07日

Posted by ブクログ

自分の領分において他人との境界含め自分の関与すべき物事を徹底的に分別して、努力次第で自分の掌中に収まる目の前の物事をコツコツと行い、穏やかな生活を維持していくスティーブンス。
自分の範囲を限定するのではなく手を伸ばす意欲を持てば政治においても人間関係においても多くに触れられて自分で舵を切れるという見方もあるかもしれないが、自身の環境はコントロール不能な側面が多いため、知識の補填や強い意志でどうにかなるものではない(3日目夜ハリーの語る品格への疑念)。スティーブンスはあまりに頑固で枠内に収めることに気を取られすぎているので、関与すべき、関与できる範囲を自ら狭めているような気もするが。
ああすればよかった、こうすればよかったの一言で正解の選択肢を振り返って単純に丸つけをできるほど、記憶も含めて人生、世間の流れは明確なものでも操作可能なものでもない。後になって負の側面が目立つようになった選択を信奉し、過ちと後々判断される行為に従事した人たちが善悪で評価され、全ての信念と誇りを一概に否定されるのは酷すぎる。一貫性を好む性質がどこに適応されるかな問題なだけな気もしてくるし(時代によって更新される正解を追求する一貫性or自分が決めたものに寄り添い続ける一貫性)。父の衰え、病に際して情動を抑えて執事としてのあり方を遵守すらのすら、品格という信念、一貫性。
人の人生をとやかく講評すること自体必要ないことだし、必ず発生するそういった野次に反応するのも馬鹿げているけど、何かを信じて自分の身を捧げる覚悟をもって生きてきた。そういう姿勢がそこにあったということを認識して、仄かな灯で照らされた夕方に温かく迎え入れられるような、そんな生でありますように。ジョークのように、丸つけから離れた文脈で色づいた夕景に恵まれますように。

イシグロカズオは回想が鮮明すぎず、不確かなところがそのまんまぼやけた形で描写されているのが好き

歴史わかんない!

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2025年10月05日

Posted by ブクログ

(⁠⌐⁠■⁠-⁠■⁠)下働きの妄想ロードムービーてなもんか、読後感は夕焼け

⊂|⊃
[ಠ⁠_⁠ಠ]執事だろ!

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2025年09月27日

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