作品一覧 2024/01/19更新 クララとお日さま 試し読み フォロー イギリス人の患者 試し読み フォロー クララとお日さま 試し読み フォロー 守備の極意 試し読み フォロー 千の輝く太陽 試し読み フォロー ダロウェイ夫人 試し読み フォロー 月と六ペンス 試し読み フォロー 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー 試し読み フォロー 日本文学史 古代・中世篇 試し読み フォロー ねじの回転 試し読み フォロー 日の名残り 試し読み フォロー 夜想曲集 試し読み フォロー 忘れられた巨人 試し読み フォロー わたしを離さないで 試し読み フォロー 1~14件目 / 14件<<<1・・・・・・・・・>>> 土屋政雄の作品をすべて見る
ユーザーレビュー 夜想曲集 カズオ・イシグロ / 土屋政雄 副題から分かるように全ての短編に音楽の要素が出てきますが、もうひとつの「夕暮れ」はどういうことだろうと思いながら読んでいました。訳者あとがきにも書かれていましたが、音楽以外にももうひとつ男女関係・夫婦関係の危機というモチーフも全ての短編に共通しています。登場人物皆もう若くなく、ある人は結婚した時の状...続きを読む況とはお互いの関係や自分の感情や人生に求めるものが変わっていたり…。こういう人生の盛りを過ぎてそれでも残りの人生を生きていく人々を「夕暮れ」という言葉で表現しているのでしょうかね。思えば『日の名残り』もそのような意味合いでしたか。 ひとつひとつ心にしんみりとした感覚を残す短編でおすすめです。 こんぺいとう わたしを離さないで Never Let Me Go カズオ・イシグロ / 土屋政雄 物語の全容を知らないということがこの作品を楽しむ上でとても重要で、私はできる限り多くの人にこの物語を楽しんで欲しいと思っているので、内容にはなるべく触れずにレビューをする。 「介護人」キャシーの幼少時代から現在までをカズオ・イシグロお得意の回顧録形式で綴る。 幼少期にはヘールシャムと呼ばれる学校で...続きを読む育ち、学校を出た後はコテージと呼ばれる施設で生活を送る。 その幼少期から青年期にいたるまで、先生や先輩、そして学校の仲間と多くの人々との関わりがあるが、とりわけルースとトミーとの3人の関係が想起の中心となる。 学校生活だったり、友人関係だったり。本人達にも理解のできない行動規範のようなものが少しあるものの、ごくごく普通の少年少女の成長が、背景が語られないままに綴られていく。 この、背景が語られない、十分な情報が与えられないというのがこの作品の大きな特徴となる。 とくにほとんどの情報がない序盤では、語られているいかにもジュブナイルな人間関係に注目するしかなく、自然ルースやトミーがどのような人間なのかということを深く理解するに至る。 皆普通の子供だよなあなんて思いながら中盤にさしかかろうとするところで、新たな情報が投入される。 すると読者の、彼らを見る目がガラッと変わる。変わった目でさらに物語を読み進める。彼らが青年期にさしかかる頃の話を読む。 語られるのは引き続き仲間関係のこと、性に関すること、そして恋に関わることが中心になるが、同時に自分たちに与えられた役割の中でどのような人生を歩むべきかというアイデンティティの問題にも焦点が当てられる。 読者も、この新たに与えられた情報を知識として彼らのアイデンティティについて深く考えさせられる。 そして後半から終盤、彼らがそれぞれの人生を歩むようになる頃、読者もほとんどすべての情報が与えられる。 引き続き、語られるのは彼らの普通の生活。普通って言ったらおかしいけど、彼らから見れば与えられた役割の上での当たり前の生活。 語り手のキャシーが体験する感情だって、青年期の女性が経験するようなあたりまえのもの。 それでも我々読者が、与えられた新しい情報のフィルターを持って解釈をすると、とても重大で切ないものとなる。 すべての情報が与えられるのは最終盤。私はこれから読む皆さんに、ここに到達したときの気持ちを味わって欲しい。 最終盤、情報がすべて所与になったとき、キャシーが語った、彼らからすると(そして私たちも序盤はそう思っていた)ごくごく普通の思い出がびっくりするくらいに色づき、まるで読者自身の記憶であるかのように大切で愛おしいものに感じられることになる。すごい切ない。本当に切ないんだけど、これはなかなかない体験。すごい。 重要な情報が与えられないっていうプロット自体は昔から数多くある。特にSFでは多く、ぱっと思い浮かんだところだと、古くは星新一なんかがお得意とした語り口である。 カズオ・イシグロがすごいのは、自らが得意とする「記憶」というテーマに対してこの手法を使うことで、ものの見事に私たちの記憶自体もコントロールしたところにある。 新たな情報を時宜にかなったタイミングで投入し、私たちの過去の情報を書き換え、今後の読み方の印象を変える。 この技術はすごい。ノーベル文学賞ってやっぱり伊達じゃないんだなと改めて感じた。 もうほんと、私もすごい頑張って核心に一切触れずにレビューしたので、皆さん是非読んで欲しい。体験してほしい。 Posted by ブクログ 日の名残り カズオ・イシグロ / 土屋政雄 面白くてすんなり読めました サー・カズオイシグロの作品を読むのはこれが初めてでしたが、冒頭からすんなり読めて良かったです。 大好きなドラマ「ダウントンアビー」の世界を楽しめました。主人公のドライブ中の描写も以前旅行した時のイギリスの田園風景が目に浮かぶようでした。 どちらかというと主人公より元女中頭のミス・ケントンに感情移入し...続きを読むて読後感はどことなく悲しかったですが、他の方のレビューを読むと主人公もミス・ケントンも過去を振り返った上で希望を持って未来に歩み出す物語なのかもと思います。なかなか深い物語です。 まるこ クララとお日さま カズオ・イシグロ / 土屋政雄 筆者は作品についてのインタビューで、AIや機械の合理性と人間がもつ感情について、さまざまな視点からコメントを残しています。 「中庸」 AI(技術や合理性)が社会にもたらす善悪 人間(感情や非合理性)が社会にもたらす善悪 双方の面を咀嚼していかなければと感じました。 Posted by ブクログ クララとお日さま カズオ・イシグロ / 土屋政雄 AIの一人称視点で書かれているので、読み手がAIに同化していく感覚がおもしろい。『侍女の物語』のときも思ったが、情報量が少なくても、書き手が知ったことと読み手がもらえる情報が同量だと、フェアでストレスを感じにくい。 人を人たらしめるものはなにか。感情を持ったAIは人と同じと言えるか。信仰を持ったAI...続きを読むはどうか。AIの"神"は、奇跡を起こせるか。 Posted by ブクログ 土屋政雄のレビューをもっと見る