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優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設へールシャムの親友トミーやルースも「提供者」だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度……。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。解説:柴田元幸
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Posted by ブクログ
すごい話だった... 優秀な介護人キャシーの1人語りで描かれる回想のストーリー。キャシーは誰に話しかけていたのかなあ "提供者"という言葉、ヘールシャムでの講師陣の謎の発言など、平和な幼少時代の描写の隅々に少し不穏な空気が漂う。 どんどんキャシーたちの立ち位置が明らかになり、物...続きを読む語に引き込まれていった。 真相、物語の運び、全てが美しく整った完璧なフィクションだったと思う。 如何にも近い未来起こりそうな...倫理を考えさせられる話。 情景描写が細やかで、海外文学独特の読みにくさが無かった。すごく良い文章。 キャシーのトミーに対する態度・心情のすべてがもどかしい恋心に基づいたものであるように感じた。 これは長い時間を経た恋愛の物語であるとも捉えられるような。 あまりに救いのない残酷な物語だと思ったけれど、静かな諦念と共に運命を受ける主人公たちの強さに心を打たれた。私だったら受けいられらない。 ヘールシャムの思い出は、私が受け取った以上に大きな心の支えになって、強さに繋がってるんじゃないかと思った。
このお話を読んだのは何年前だろう。もう優に10年ぐらいは経っているのかもしれない。 そのせいでキャラクターの名前や、展開までもが朧げだ。それでもこの話の醸し出す空気感は今でも忘れられないままで、私が数冊本を選べと言われたらこれが出てくるだろう。 それぐらい当時の私にも、今の私にも強烈な印象を残してい...続きを読むる。 まず特色として感じたのは、主人公および世界が、正常を持ち合わせていないことだ。 よくある物語では、正常の中の異常が書かれる。 つまり、異常な出来事は異常として書かれる。 「そんなのおかしい!」みたいなことを、誰かは言ってくれる。 この物語ではそんな救済はほとんどない。 主人公たちがおかしいことに気づいても、生まれながらにそういう世界で生きてきた主人公たちだ。 私たちでさえ気づくような「おかしさ」に怒りさえ覚えないままだ。 このお話にずっと続く、痛みへの麻痺感がある。 痛々しく寒々しい出来事に、ちゃんと悲しんでくれる人が1人もいない。 そしてその鎮痛剤のような空気感は、後半出てくる医療的シーンといやな親和性がある。 ずっと、温室とか、抗菌室とか、そういう「管理された安全」の空気が途切れないのは流石に名作すぎる。 あまりにも面白い。近々読み返そうと思った。
語れるほど本を呼んでいないけれど、今まで読んだ本では一二を争うほどの作品でした! カズオ・イシグロは「日の名残り」を読んでとても良かったと思ったのですが、これはそれを遥かに越えた読書体験でした! 自分と他人の心の動きや、繊細で不完全な人間関係の動きが、過剰なまでの記憶の詳細な描写から知らず知らず...続きを読むに身にしみて、ある時ぶわっと感情があふれる瞬間があって、泣いてしまったシーンや泣きそうになったシーンがいっぱいありました。 今までどこか登場人物と読者である自分の間に見えない壁があったような気がしましたが、この作品では、主人公のキャシーの体験を一緒に体験しているかのようで、余韻がすごく、忘れられない読書体験のひとつとなりました。 人間って、フィクションのようにきれいでスマートな駆け引きや、やりとりができるわけじゃなくて、ぎこちなくて微妙な関係や、意図してないことをなぜか言ってしまったり、逆に本当に伝えたいことがまっすぐに伝えられないから遠回りしてみたり完璧じゃないから、キャシー達の物語にどこか共感してしまうと思いました。 あらすじや最初の流れから、ミステリーのような驚きの展開と衝撃を期待してしまうかもしれませんが、私にはそんなことよりも主人公キャシーと、トミーとルースの関係性の人間ドラマに心を動かされたので、そこがメインだと思いました。 読んだ後に、この話は、ネタバレ、どんでん返し云々じゃないないから、イシグロ氏はネタバレOKっていってたのかなと思いました。 私はちょーおすすめします!
未来の話ではなく過去であるという設定がとても気に入った。歴史を学ぶとなぜそんなことが?ということが平気で起こっている。でもそれが現在に住んでいるということ。生活そのものが不条理に包まれていることを染み込ませられながら生きていく、そこから抜け出すという発想すら無に帰すどうしようもない空気はすごくクリー...続きを読むンな灰色で軽やか。 キャシーは結局誰に話しかけていたんだろう。
カズオ・イシグロの本を読んだことがないなぁと思い、手に取ってみました。 まったく何の前知識もなく読み始めたのですが、最初は、何のことを語っているのか分からない表現があり、頭の中に、すこし「?」をもちながら読み進めました。物語は、ある種の青春群像かなと思いながら、話に引き込まれていったのですが、物語後...続きを読む半で、彼らが何者であるか分かったときの、ショックというか、悲しさというか、虚しさというか… 読後感は、必ずしもすごくいいものではないと思いますが、読書体験としては、他に代えがたいものがあるのではないかと思います。
ヘールシャムやコテージでの生活を回想するパートが、丁寧ですごく好き。外の世界について想像を巡らせたり、ちょっとしたことで激しく動揺したり、友達と険悪になったり、保護官のあれこれについて仲間と議論し合ったり…。施設で育った主人公たちの描写がリアルで、辻村深月さんの「琥珀の夏」を思い出した。 訳もきれい...続きを読むで、すっと入り込めて一気に読んでしまった。
苦しいほど切ない。 作中、いくつも希望が生まれては消え、展示館を通じて提供までの猶予を得られるかもしれないという最大の希望がただの噂にすぎなかったと知る。 主要な登場人物であるキャシー、トミー、ルースはそれぞれの性格が細部まで描かれており、漫画やアニメのキャラクターのような「仲良し3人組」になりきら...続きを読むない部分にリアルさを感じた。 全員がとても人間臭い部分を持っていて、3人それぞれに自然と感情移入してしまう。 だからこそ、終盤は物語を読み進めるのが辛くなってくる。 ヘールシャムの生徒たちも、保護官も、マダムも登場人物が優しい人ばかりで、その優しさが社会の仕組みや時代の流れにかき消されてしまうというやるせなさが表現されており、大きな力に惑わされずに本物の優しさを見極められる人でありたいと思った。 カズオ・イシグロを読んだのはこれが2作目で、1作目は癖のある文章に苦戦したが、今ではそれに慣れてむしろ心地よく感じるほどになったので、他の作品も楽しみたい。
豚や牛といった家畜が人間に食われるために生きていることを考えて暗い気持ちになりますが、この小説もそれに劣らぬ真っ暗な読後感を持ちました。読み終えて6年以上経つが、思い出して震えが止まらなくなる怖さがある。
「わたしを離さないで」について
ノーベル賞作家のカズオ・イシグロが端正な筆致で綴る、ある女性の人生の物語。 提供者を慰める介護人の職に長くついていた女性。彼女が職を辞めるにあたり、自分のこれまでの人生、特に生まれ育ったヘールシャムで仲間と過ごした日々を回顧する。 提供者、介護人など説明なく出てくる言葉の意味が、女性の回想から次...続きを読む第に明らかになってくるにつれ、世界の残酷な姿が浮かび上がってくる。 この世界の真実は、SF小説のファンならばすぐに見当がついてしまうだろう。 読みどころは、むしろ小説としての巧さ、人間描写の厚みの部分だ。大きな状況に翻弄される主人公たちが、小さな人間関係にすがる姿がなんとも哀しく映るのだ。
#切ない
物語はキャシーの回想 何者として生まれたのか 保護官 提供者といった聞きなれないワードが並ぶ中…人と同じように成長する人生が端正な語りで描かれてゆく まず第一印象は静かな長編だった。思い出の美しさ昔の宝物の箱を覗いたようなイメージが、そして物語の世界観の異様さ、これは読中も読後ももどう受け入れるべ...続きを読むきか…倫理的問題があったと思う 物語序盤で少なからず読者は気づくのでネタバレではないと思うがクローン人間の世界ということ。しかし普通に教養をうけ青春も、何者なのかを明かされた時 息が止まってしまった。生徒たちは抗うことなく静かに飲み込んでゆく、自分だったら狂ってしまうのに静かに受け入れた彼らをどう思うのか。つまり解説にあった"作品世界を成り立たせる要素一つひとつを読者が自分で発見すべき" がそういうメッセージなんだと 仲良しのルースとのテープを渡す受け取ることの丁寧な描写に尊さを感じずにはいられない 勿論、ジュディさんの音楽が聴きたく検索し映画化されてるのを知り10年も前のコメント欄にて"寮で枕を抱きながら聴きたい"を見つけ胸がいっぱいになるそんな流れだった(この本を読んだ多くの人がそこに辿り着いてほしく思う) 青春の一瞬の煌めき、友達トミーとテープを探すシーン。ついに見つけたが、この探す時間が終わってしまう 見なかったことにしようかとか、本当は僕が見つけたかったんだとか、もう2人とも抱きしめたくなる ラストにこの物語を引っ張ってくれてた?謎が明かされ、そしてこれも静かに受け入れてく…哀しくもどうすることもできないリアリティが一貫してあった。どのような教養をすべきだったか。静かに受け入れてくと書いたが実際は恨んでたりするともとれるかなと。ラストまでルースやトミーのことを思いうキャシーの優しさ思いの数々に視界が揺れた 最後に自分はこの世界を全く望んでない、今の技術がどれほど進んでいようが死を受け入れる時がくれば受け入れるべきだと揺るがなく思う 好きなフレーズ引用 これからテープ探しを始めようとしたあの瞬間 突然 世界の手触りが優しくなりました
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わたしを離さないで
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カズオ・イシグロ
土屋政雄
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