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Posted by ブクログ
イギリスの女流作家。初期の“Jacobʼs Room”(1922)あたりから伝統小説のプロットや性格概念に対して実験的再検討を試み、”Mrs. Dalloway”(1925)や”To the Lighthouse”(1927)などで刻々と移り変わる人物の意識の流れを叙述していく方法を確立
ウルフは外側のリアリズム、すなわち人間の外面的なものをいかに現実らしく書くかを重視した19世紀のリアリズムを否定し、独自の新たなリアリズムを作り出そうとした。
いわゆる実験小説と呼ばれる彼女の三つの作品、『ジェイコブの部屋』『灯台へ』『ダロウェイ夫人』を比較してみると、それぞれの作品における客観的時間の長短は極端に異なっている。
『ジェイコブの部屋』→ジェイコブの幼少期から戦争に出て死ぬまでの20年間
『灯台へ』→10年を挟んだ前後それぞれ1日づつ
『ダロウェイ夫人』→朝起きてからパーティーまでの10数時間人物を外側からでなく、内側から描こうとする。
『灯台へ』においてもウルフはこの方法を採用しているが、実験第一作『ジェイコブの部屋』では多数の人物を登場させ、各場面でそれらの人々の目に映るジェイコブを描いたが、それに比べると、彼女の技法の用い方はその時より効果的になっている。
Posted by ブクログ
淡くて美しい、まさにロンドンの6月のような文章。ラベンダーやヒヤシンスの香りが漂ってくるよう。
一方、権威への恐怖や自分の狂気への恐怖、同性愛に違い感情等も描かれているのが意外だった。
細部を読む小説だと思う。
ウルフは難しいと言われている通り、最初は、意識の流れや事実を流れるように織り交ぜて描く手法に戸惑った。
でも、普段自分達の意識や考えもそんなものだし、そういう小説として距離を取って読むと途端に細部の美しさが花開いた。
『ダロウェイ夫人』が発表されたのは1925年。大正14年。日本では普通選挙法が施行された年。
私の祖母はすでに生まれている。
その時イギリスでは、第一世界大戦の深い爪痕を、特にミドル〜ロークラスに残しながらも、
(ハイクラスが始めた戦争だろうが、実際に打撃を受けるのは彼らではなく、そして彼らに戦死した者達の死は意味を及ぼさない、なんてこともこの小説の中には示されている)
一方では豪奢で19世紀的なパーティが開かれている。
そのパーティの主であるクラリッサが、パーティの日の1日、ロンドン内を散歩し、起こった出来事と考えを流れるように描いている。
ウルフの「時」の描き方が好き。
「広場の濃い茂みのあちこちには、強烈な光がまだしがみついている。夕方が蒼ざめ、薄れていく。」
「夕方をそこに串刺しにした。引き止められる夕方。」
ビッグベンの刻の音とともに。
時をこんな言葉と共に感じられるなんて、なんて贅沢。
Posted by ブクログ
ドイツの音楽家マックスリヒターが、ウルフ原作のバレエ音楽の作曲をしていて、この作品を知った。
世界的に有名な女流作家といえば他にブロンテ姉妹やオースティン、パールバックなどがいるけれど、ウルフの作品からは最も純度が高く痛々しいほどの女を感じる。
ブロンテ姉妹やオースティンの作品は、物語として筋が通っていて、長いながらも読者が型を見失わない作りになっている気がした。
ダロウェイ夫人の場合、一つ一つの動作や空気感の描写が優れているがゆえに全体像が見えにくい。
扱っている時間的な流れは小さいのに、絶えず繰り広げられる感情のスペクタクル。
まさに、有機的で予測がつかない女性の繊細な心を表していると思う。
面白い話なんて起承転結の型が分かってればある程度書けそう(それなりの才能があれば)だけど、このようにありのまま心情の波をなぞったような美しい作品は稀有だと思う。
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